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第38話『勇者の剣と看守の信念』
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骸骨騎士グレバルドを打ち倒し、地下封鎖作戦は成功に終わった──かに見えた。
しかし俺の心にはまだ重くのしかかるものがあった。
魔物との戦い、そして“勇者”レオンとの共闘。
その中で俺と彼の間には、どうしようもなく違う価値観があることを痛感させられた。
「お前は甘すぎる」
封鎖が完了し、通路で一息ついた俺たちに、レオンが言い放った。
「更生だの信頼だの……それで魔物が退くとでも思ってんのか? この世界は理不尽で、力のない奴から死ぬ」
彼の鋭い目が、俺の腹をえぐるようだった。
「……それでも、信じる価値はあると思ってる。俺は“あの世界”で、力だけじゃ何も救えなかった」
俺は静かに、だが確かな思いを込めて返した。
「その“あの世界”ってのが、日本だかなんだか知らねぇけどよ」
レオンは剣を肩に担ぎ、壁にもたれてこちらに視線を送る。
「俺はずっと“力”でしかどうにもならねぇ現実を見てきた。魔王を倒したあと、平和が来ると信じてた。でも……それを利用した奴らがいた」
「帝国、か」
「そうだよ。俺は囚人になったわけじゃねぇ。殺されかけて、ここに“封印された”だけだ」
レオンの瞳には深い怒りと諦念が混ざっていた。剣も魔法も使いこなし、仲間を救い、魔王を討った男。その彼が、いまや監獄の地下に封印されていた。
「仲間だった魔導士、アルセリス……あいつに裏切られた。魔王の力を浴びたあの瞬間から、何かが狂ったんだ。あいつはもう、元のアルセリスじゃなかった」
俺は息を飲む。
「……魔王の力が、乗り移ったってことか?」
「ああ。アルセリスは、魔王を討ったと同時に“何か”に侵された。悪意に満ちた魔力が、あいつを少しずつ蝕んでいった。俺には止められなかった」
「そのアルセリスが、帝都を──」
「多分な。あいつが黒幕だろう。いまの帝都の惨状、魔物の侵攻……全部、アルセリスの“変質”と無関係とは思えねぇ」
しんと静まり返った通路の中、封印の残滓がまだ微かに漂っていた。
「俺はな、ハヤト。人を信じることなんて、何度も諦めかけた。でも、お前を見て少しだけ思い出したよ。……俺も、信じた時代があった」
「レオン、お前は今も仲間を思ってる。だったら、それはまだ終わっちゃいない」
俺の言葉に、レオンがふっと鼻で笑った。
「……お前、変わってんな。こんな場所で、信じることをまだ諦めてねぇ奴がいるとはな」
「お互い様だろ。封印されながらも、まだ世界を守ろうとしてるんだ。お前も」
わずかに口角を上げたレオンが、剣を肩から下ろし、俺に向かって言った。
「……おい、名前、ちゃんと覚えたからな。ハヤト。俺の“仲間”になってやってもいいぜ」
「言い方が上からすぎるんだよ、お前は」
俺たちは互いに笑った。
わずかだが、確かに絆の芽が育ち始めていた。
それは──
この監獄に灯った“次なる希望”の証でもあった。
「……なあ、ハヤト。お前のいた世界、どんな場所だった?」
レオンがふいに問いかけてきた。
「俺のいた“日本”って国はな……剣も魔法もないけど、法と制度と知識で世界を動かしてた。理不尽もあったが、それでも人は希望を信じてたんだ」
「ふん、希望ね……あんたがまだそれを捨てちゃいねぇってのは、よくわかったよ」
レオンは小さく笑い、視線を前へ向けた。
──希望。それは、かつて失われたもの。
そして今、ここガランツァの監獄に、再び灯り始めていた。
しかし俺の心にはまだ重くのしかかるものがあった。
魔物との戦い、そして“勇者”レオンとの共闘。
その中で俺と彼の間には、どうしようもなく違う価値観があることを痛感させられた。
「お前は甘すぎる」
封鎖が完了し、通路で一息ついた俺たちに、レオンが言い放った。
「更生だの信頼だの……それで魔物が退くとでも思ってんのか? この世界は理不尽で、力のない奴から死ぬ」
彼の鋭い目が、俺の腹をえぐるようだった。
「……それでも、信じる価値はあると思ってる。俺は“あの世界”で、力だけじゃ何も救えなかった」
俺は静かに、だが確かな思いを込めて返した。
「その“あの世界”ってのが、日本だかなんだか知らねぇけどよ」
レオンは剣を肩に担ぎ、壁にもたれてこちらに視線を送る。
「俺はずっと“力”でしかどうにもならねぇ現実を見てきた。魔王を倒したあと、平和が来ると信じてた。でも……それを利用した奴らがいた」
「帝国、か」
「そうだよ。俺は囚人になったわけじゃねぇ。殺されかけて、ここに“封印された”だけだ」
レオンの瞳には深い怒りと諦念が混ざっていた。剣も魔法も使いこなし、仲間を救い、魔王を討った男。その彼が、いまや監獄の地下に封印されていた。
「仲間だった魔導士、アルセリス……あいつに裏切られた。魔王の力を浴びたあの瞬間から、何かが狂ったんだ。あいつはもう、元のアルセリスじゃなかった」
俺は息を飲む。
「……魔王の力が、乗り移ったってことか?」
「ああ。アルセリスは、魔王を討ったと同時に“何か”に侵された。悪意に満ちた魔力が、あいつを少しずつ蝕んでいった。俺には止められなかった」
「そのアルセリスが、帝都を──」
「多分な。あいつが黒幕だろう。いまの帝都の惨状、魔物の侵攻……全部、アルセリスの“変質”と無関係とは思えねぇ」
しんと静まり返った通路の中、封印の残滓がまだ微かに漂っていた。
「俺はな、ハヤト。人を信じることなんて、何度も諦めかけた。でも、お前を見て少しだけ思い出したよ。……俺も、信じた時代があった」
「レオン、お前は今も仲間を思ってる。だったら、それはまだ終わっちゃいない」
俺の言葉に、レオンがふっと鼻で笑った。
「……お前、変わってんな。こんな場所で、信じることをまだ諦めてねぇ奴がいるとはな」
「お互い様だろ。封印されながらも、まだ世界を守ろうとしてるんだ。お前も」
わずかに口角を上げたレオンが、剣を肩から下ろし、俺に向かって言った。
「……おい、名前、ちゃんと覚えたからな。ハヤト。俺の“仲間”になってやってもいいぜ」
「言い方が上からすぎるんだよ、お前は」
俺たちは互いに笑った。
わずかだが、確かに絆の芽が育ち始めていた。
それは──
この監獄に灯った“次なる希望”の証でもあった。
「……なあ、ハヤト。お前のいた世界、どんな場所だった?」
レオンがふいに問いかけてきた。
「俺のいた“日本”って国はな……剣も魔法もないけど、法と制度と知識で世界を動かしてた。理不尽もあったが、それでも人は希望を信じてたんだ」
「ふん、希望ね……あんたがまだそれを捨てちゃいねぇってのは、よくわかったよ」
レオンは小さく笑い、視線を前へ向けた。
──希望。それは、かつて失われたもの。
そして今、ここガランツァの監獄に、再び灯り始めていた。
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