完結 元エリート刑務官、転移先は異世界のブラック監獄!? 下っ端スタートから囚人たちと更生改革します!』

カトラス

文字の大きさ
40 / 62

第39話『帝都の影──“新たな魔王”の噂』

しおりを挟む
 ダンジョンから戻った翌朝、俺はクルスと所長室で向き合っていた。窓の外は曇天で、どこか落ち着かない風が吹きつけている。



「確認しておきたい。お前たちが倒したのは、あくまで“魔物の侵入口”を塞いだだけにすぎない」



 クルスの口調は冷静だが、その目はまるで剣のように鋭い。テーブル越しに彼と対峙するたび、言葉の一つひとつが心を試されているような気分になる。



「分かってます。だけど、あの地下で──明らかに“指示系統”のある魔物の動きを見ました。偶発的な侵食じゃない。計画された侵略です」



 俺の言葉に重ねるように、後ろの壁にもたれていたレオンが声を上げる。



「魔物の背後に、知性を持つ“何か”がいる。あの骸骨騎士グレバルドを見ただろ? ただのアンデッドじゃなかった。誰かの強力な意思で召喚され、操られていた」



 クルスはしばし沈黙した後、机の引き出しから古びた羊皮紙を取り出した。それを俺たちに差し出す。



「……これは帝都で回収された“魔族文書”の断片だ。そこにはこう記されている──“かつて魔王が滅びし地に、再び影が蘇らん。導く者は“王の意志”を継ぎしもの”と」



「“王の意志”……つまり、新たな魔王、ってことか?」



「仮説だがな。だが、帝都が襲われた時の連携、戦術、封印の解放──偶然にしては出来すぎている。何者かの手によって仕組まれた可能性が高い」



 俺は息を呑み、視線をレオンに向けた。



「新たな魔王の候補に、心当たりはあるか?」



 レオンは眉をひそめ、拳を握りしめる。



「……ひとり、いる。かつての戦いの終わり、魔王の瘴気を浴びて、正気を失った魔導士──アルセリス。あいつなら魔王の力を吸収し、再構築するだけの魔力と知性がある」



 その名前が出た瞬間、クルスの表情がわずかに揺れた。



「記録上、アルセリスは“行方不明”。死体も確認されず、痕跡も残さなかった。……まさか、あの日からずっと水面下で動いていたと?」



 ナナが不安そうに口を開く。



「じゃあ、今回帝都を襲ったのって、もしかして……アルセリスが黒幕?」



 俺はナナの肩に手を置いて、首を横に振った。



「確証はない。だが、魔物の動きと魔力の流れ──確かに“あいつの魔導の癖”を感じた」



 室内には重い沈黙が漂った。



 やがて、レオンが壁に拳を打ちつけ、低く唸るように言った。



「今度こそ、俺がケリをつける。あの影を狩るのは──この手だ」



 窓の外、曇天の隙間から一筋の光が差し込む。



 監獄島ガランツァ──かつて世界のはずれと呼ばれたこの場所は、今や新たな戦の渦中にある。



 “王の意志”を継ぐ者。それが魔導士アルセリスであるならば、俺たちは過去の遺産ではなく、未来を懸けた戦いに挑むことになる。



 そしてこの時、俺たちはまだ知らなかった。

 “新たなる魔王”が、すでに次なる手を打ち始めていたことを──。



 なお、魔物の侵入口が監獄の地下にあった理由について、古文書によれば、かつてこの島には封印の祭壇が築かれていたという。監獄施設が建てられるより以前、魔王討伐後の“危険遺構”として帝国が隠蔽した痕跡がある。つまり、監獄そのものが最初から“封印の蓋”だった──。



 アルセリスは、かつてレオンと共に戦った最強の魔導士のひとりであり、その実力は戦場で数百の魔物を一夜にして灰にするほどだった。冷静沈着で知的、他者に対しては寡黙だが、魔法に関しては誰よりも情熱的で理論に厳しかった。



 しかし、魔王を討伐した直後、アルセリスはその遺骸から発せられた“悪の魔素”に触れてしまった。それにより彼の中には魔王の意思の一部が流れ込んだとされ、以降、徐々に変質していった。やがて彼は姿を消し、消息を絶った。



 レオンはかつて、その背中に追いつこうと全力で走った仲間の裏切りに、今も割り切れぬ思いを抱えていた。だが、アルセリスの強さも狂気も、誰より知っているからこそ、今回の事態に最も強い危機感を持っていたのだった。



 なお、魔物に“指示系統”が存在する場合、単なる暴走とは異なり、戦略的な行動が可能となる。戦闘では連携が生まれ、無駄のない襲撃が展開される。拠点制圧や封印の解除といった高度な作戦も実行可能となり、魔物の脅威は飛躍的に増す。今回の帝都襲撃でも、そうした知性ある指揮系統の存在が疑われている。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

異世界で貧乏神を守護神に選ぶのは間違っているのだろうか?

石のやっさん
ファンタジー
異世界への転移、僕にはもう祝福を受けた女神様が居ます! 主人公の黒木翼はクラスでは浮いた存在だった。 黒木はある理由から人との関りを最小限に押さえ生活していた。 そんなある日の事、クラス全員が異世界召喚に巻き込まれる。 全員が女神からジョブやチートを貰うなか、黒木はあえて断り、何も貰わずに異世界に行く事にした。 その理由は、彼にはもう『貧乏神』の守護神が居たからだ。 この物語は、貧乏神に恋する少年と少年を愛する貧乏神が異世界で暮す物語。 貧乏神の解釈が独自解釈ですので、その辺りはお許し下さい。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...