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第58話 『開戦――浮遊都市アイル・セリオール攻防戦』
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まるで世界の果てを切り裂くかのように、黒雲を裂いて現れた空の魔城──暗黒都市アイル・セリオール。
その姿は、空の深淵に突き刺さる漆黒の刃のようで、見る者すべての心に畏怖を刻みつける。
鋭く尖った塔と、内部から立ちのぼる禍々しい魔力の波動。かつて魔王が君臨していた要塞とは比にならない異質さが、空を裂いて浮かんでいた。
俺たちは、ついにこの瞬間に立った。帝都の上空に浮かぶその浮遊都市こそ、最終決戦の舞台だった。
「よし、第一陣、準備完了だ!」
俺の号令に、地上部隊と空挺部隊の兵士たちがそれぞれ力強く頷く。
今回の作戦は空と地上の二面作戦。
空挺部隊が浮遊都市へ直接突入し、内部制圧を担う。その先発にはレオン、俺、そしてベルンたちが加わっていた。
■
俺たちは、空を裂いて飛び立った。
漆黒の浮遊都市アイル・セリオールを睨みつけながら、帝都から発進した空挺船団の一隻――その甲板で、俺は風を感じていた。
「……まもなく目標地点に到達する!」
風にかき消されそうな副官の声が、空挺部隊の全兵に響き渡る。
俺はその声を背に、目を細めて前方を見据えた。
黒雲に覆われた空の奥、アイル・セリオールが、まるで世界の終端を告げる刃のように空に突き刺さっていた。
雷光が城壁を縁取り、そこに蠢く魔物の群れの影が、まるで瘴気そのもののように見える。
「覚悟はできてるな、隼人」
レオンが俺の隣で笑った。肩を回し、腰の剣を軽く抜いて、陽炎のように揺れる殺気を放ってくる。
「ああ。ここが俺たちの戦場だ。もう誰かに守られるんじゃない。俺たちが、この空を奪い返すんだ」
飛空艇の投下口が開かれる音が響いた。
冷たい空気が一気に流れ込み、兵士たちがそれぞれ装備を確認し、気合を込めて前を向く。
「第一波、突入用意!」
俺の指示に呼応して、ベルンや空挺部隊の面々が頷いた。
「行くぜえええっ!」
ベルンが大声を張り上げ、体当たりのように空へ飛び込んでいく。
俺も後に続いた。
胸に抱いた剣と、背中に背負った希望をそのままに。
風が唸りをあげる中、俺たちは降下しながら、すでに空中待機していた敵部隊を視認。
ガーゴイル、ワイバーン、魔晶の翼をもつ飛行魔獣たちが、浮遊都市を守るように群がっていた。
「敵確認!空中戦闘、展開するぞ!」
レオンの剣が閃き、空中でガーゴイルを真っ二つに裂いた。
ベルンは空中で回転しながら、鉄槌のような拳でワイバーンを撃墜する。
俺も剣を構え、敵の隙を見つけては一閃、二閃。
この空を、絶対に敵には渡さない。
空戦は混沌としていたが、俺たちは確実に前に進んでいた。
ヴェルの魔導支援が遠隔で戦局を支え、美優の補助魔法が戦線の崩壊を防ぐ。
「南門が見えた!突入口を確保しろ!」
俺の叫びに、仲間たちが進路を変え、残存魔物を押しのけながら突破。
やがて、空の門が破られる音とともに、俺たちはアイル・セリオールへの最初の突破口を開いた。
まだ戦いは始まったばかりだ。
だが、俺たちは確かにこの空を斬り拓いた。
空挺部隊の突入は、希望の剣となって空に刻まれたのだ。
■
戦の喧騒が天へと昇る中、私は静かに手を組んで祈っていた。
ここは、帝都の高台に設けられた臨時の後方支援拠点。
聖紋で囲まれた魔法陣の中心に立ち、私は空へ意識を集中させる。
「隼人さん……みんな、無事でいて……」
その声は誰にも届かないが、心から願った。
風がざわめき、空が軋むような音を立てる。
浮遊都市アイル・セリオールが空の果てで、まるで黒い雷雲のようにうごめいていた。
私は、魔法具《白珠の杖》を掲げ、詠唱を始める。
「癒光いこうよ、届いて……《広域治癒陣・星の花》」
杖の先から拡がった光の粒が、空を仰ぎ、まるで星々のように舞い上がる。
空挺部隊の兵士たちの傷が癒え、彼らの疲労が和らいでいく様子が、遠隔術式の魔法視から確認できた。
「南西空域、接触あり! 第六部隊が交戦中です!」
報告を受け、私は魔導通信具に向かって声を送る。
「こちら後方支援本部、癒しの光を送ります。踏ん張ってください、必ず届きますから」
返ってきたのは、かすれた声と、震えるような「ありがとう」だった。
魔法陣の熱が全身を貫く。
一度に広域治癒を行う負荷は大きい。だが、止まるわけにはいかなかった。
「……今度こそ、誰も失わないために」
思い浮かぶのは、隼人の横顔。
あの人の隣で、私はまた、人を守る力を得た。
その時、後方支援本部を包むように瘴気の影が広がった。
黒き魔素のかたまり──浮遊都市からの瘴気が、風に乗ってこちらへも届き始めていたのだ。
私はすぐさま杖を逆手に握り、地を叩くように結界術式を展開する。
「《聖障壁・銀月》!」
淡い銀の光が半球状に拡がり、拠点を包み込んだ。
瘴気が結界にぶつかり、ジュウと音を立てながら弾かれていく。
仲間たちの後ろ盾であり続けること。
それが今の私にできる、たったひとつの戦いだった。
だから私は祈り続ける。
空にいる誰かが倒れないように。
地にいる誰かが、帰る場所を見失わないように。
私は――この世界で、“聖女”として、生きている。
■
「……レオン、行けるか?」
「へっ、ああ。剣は錆びついちゃいねぇ。地獄のど真ん中でも切り拓いてみせるぜ」
レオンは肩を回し、腰の剣を軽く抜いて見せた。その眼差しは真っ直ぐで、かつての勇者としての気迫が戻っているようだった。
「みんな……どうか、無事で帰ってきてね」
美優が転移陣の魔法制御盤に手を置きながら、優しく、けれど強い決意を湛えて俺たちを見つめていた。
彼女の眼差しは、今や一人の看護師ではなく、この世界の“聖女”としての覚悟が宿っている。
「俺は……俺のいるべき場所で戦うよ」
俺はそう呟いた。
たとえこの世界に来る理由が誰かに与えられたものだったとしても──この瞬間、自分の足で立ち、自分の意思で剣を握っている。
それこそが、俺がこの世界で生きてきた“証”だ。
「隼人、そろそろ時間だ」
ヴェルが魔力ゲートの起動を告げた。空間の裂け目が広がり、淡い光が差し込む。
「行こう」
俺たちはそれぞれの場所へ向かって動き出した。
空へ、地上へ、自らの使命のもとに。
「おい、隼人」
背後からレオンが声をかけてくる。
「こんな時に言うのもなんだが……お前とは、ここまで来られてよかったと思ってる」
「……何だよ、らしくないな」
「バーカ。最後かもしれねぇから言ってるだけだ。さっさと行くぞ!」
笑いながら、レオンは俺より一歩先に転移の光の中へと飛び込んだ。
その背を追い、白く輝く空間へと身を投じた──。
いよいよ、開戦の火蓋が切られる。
そしてその先に待つのは──
世界の終焉か、希望の夜明けか。
戦いの舞台は、浮遊都市へと移る。
その姿は、空の深淵に突き刺さる漆黒の刃のようで、見る者すべての心に畏怖を刻みつける。
鋭く尖った塔と、内部から立ちのぼる禍々しい魔力の波動。かつて魔王が君臨していた要塞とは比にならない異質さが、空を裂いて浮かんでいた。
俺たちは、ついにこの瞬間に立った。帝都の上空に浮かぶその浮遊都市こそ、最終決戦の舞台だった。
「よし、第一陣、準備完了だ!」
俺の号令に、地上部隊と空挺部隊の兵士たちがそれぞれ力強く頷く。
今回の作戦は空と地上の二面作戦。
空挺部隊が浮遊都市へ直接突入し、内部制圧を担う。その先発にはレオン、俺、そしてベルンたちが加わっていた。
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俺たちは、空を裂いて飛び立った。
漆黒の浮遊都市アイル・セリオールを睨みつけながら、帝都から発進した空挺船団の一隻――その甲板で、俺は風を感じていた。
「……まもなく目標地点に到達する!」
風にかき消されそうな副官の声が、空挺部隊の全兵に響き渡る。
俺はその声を背に、目を細めて前方を見据えた。
黒雲に覆われた空の奥、アイル・セリオールが、まるで世界の終端を告げる刃のように空に突き刺さっていた。
雷光が城壁を縁取り、そこに蠢く魔物の群れの影が、まるで瘴気そのもののように見える。
「覚悟はできてるな、隼人」
レオンが俺の隣で笑った。肩を回し、腰の剣を軽く抜いて、陽炎のように揺れる殺気を放ってくる。
「ああ。ここが俺たちの戦場だ。もう誰かに守られるんじゃない。俺たちが、この空を奪い返すんだ」
飛空艇の投下口が開かれる音が響いた。
冷たい空気が一気に流れ込み、兵士たちがそれぞれ装備を確認し、気合を込めて前を向く。
「第一波、突入用意!」
俺の指示に呼応して、ベルンや空挺部隊の面々が頷いた。
「行くぜえええっ!」
ベルンが大声を張り上げ、体当たりのように空へ飛び込んでいく。
俺も後に続いた。
胸に抱いた剣と、背中に背負った希望をそのままに。
風が唸りをあげる中、俺たちは降下しながら、すでに空中待機していた敵部隊を視認。
ガーゴイル、ワイバーン、魔晶の翼をもつ飛行魔獣たちが、浮遊都市を守るように群がっていた。
「敵確認!空中戦闘、展開するぞ!」
レオンの剣が閃き、空中でガーゴイルを真っ二つに裂いた。
ベルンは空中で回転しながら、鉄槌のような拳でワイバーンを撃墜する。
俺も剣を構え、敵の隙を見つけては一閃、二閃。
この空を、絶対に敵には渡さない。
空戦は混沌としていたが、俺たちは確実に前に進んでいた。
ヴェルの魔導支援が遠隔で戦局を支え、美優の補助魔法が戦線の崩壊を防ぐ。
「南門が見えた!突入口を確保しろ!」
俺の叫びに、仲間たちが進路を変え、残存魔物を押しのけながら突破。
やがて、空の門が破られる音とともに、俺たちはアイル・セリオールへの最初の突破口を開いた。
まだ戦いは始まったばかりだ。
だが、俺たちは確かにこの空を斬り拓いた。
空挺部隊の突入は、希望の剣となって空に刻まれたのだ。
■
戦の喧騒が天へと昇る中、私は静かに手を組んで祈っていた。
ここは、帝都の高台に設けられた臨時の後方支援拠点。
聖紋で囲まれた魔法陣の中心に立ち、私は空へ意識を集中させる。
「隼人さん……みんな、無事でいて……」
その声は誰にも届かないが、心から願った。
風がざわめき、空が軋むような音を立てる。
浮遊都市アイル・セリオールが空の果てで、まるで黒い雷雲のようにうごめいていた。
私は、魔法具《白珠の杖》を掲げ、詠唱を始める。
「癒光いこうよ、届いて……《広域治癒陣・星の花》」
杖の先から拡がった光の粒が、空を仰ぎ、まるで星々のように舞い上がる。
空挺部隊の兵士たちの傷が癒え、彼らの疲労が和らいでいく様子が、遠隔術式の魔法視から確認できた。
「南西空域、接触あり! 第六部隊が交戦中です!」
報告を受け、私は魔導通信具に向かって声を送る。
「こちら後方支援本部、癒しの光を送ります。踏ん張ってください、必ず届きますから」
返ってきたのは、かすれた声と、震えるような「ありがとう」だった。
魔法陣の熱が全身を貫く。
一度に広域治癒を行う負荷は大きい。だが、止まるわけにはいかなかった。
「……今度こそ、誰も失わないために」
思い浮かぶのは、隼人の横顔。
あの人の隣で、私はまた、人を守る力を得た。
その時、後方支援本部を包むように瘴気の影が広がった。
黒き魔素のかたまり──浮遊都市からの瘴気が、風に乗ってこちらへも届き始めていたのだ。
私はすぐさま杖を逆手に握り、地を叩くように結界術式を展開する。
「《聖障壁・銀月》!」
淡い銀の光が半球状に拡がり、拠点を包み込んだ。
瘴気が結界にぶつかり、ジュウと音を立てながら弾かれていく。
仲間たちの後ろ盾であり続けること。
それが今の私にできる、たったひとつの戦いだった。
だから私は祈り続ける。
空にいる誰かが倒れないように。
地にいる誰かが、帰る場所を見失わないように。
私は――この世界で、“聖女”として、生きている。
■
「……レオン、行けるか?」
「へっ、ああ。剣は錆びついちゃいねぇ。地獄のど真ん中でも切り拓いてみせるぜ」
レオンは肩を回し、腰の剣を軽く抜いて見せた。その眼差しは真っ直ぐで、かつての勇者としての気迫が戻っているようだった。
「みんな……どうか、無事で帰ってきてね」
美優が転移陣の魔法制御盤に手を置きながら、優しく、けれど強い決意を湛えて俺たちを見つめていた。
彼女の眼差しは、今や一人の看護師ではなく、この世界の“聖女”としての覚悟が宿っている。
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俺はそう呟いた。
たとえこの世界に来る理由が誰かに与えられたものだったとしても──この瞬間、自分の足で立ち、自分の意思で剣を握っている。
それこそが、俺がこの世界で生きてきた“証”だ。
「隼人、そろそろ時間だ」
ヴェルが魔力ゲートの起動を告げた。空間の裂け目が広がり、淡い光が差し込む。
「行こう」
俺たちはそれぞれの場所へ向かって動き出した。
空へ、地上へ、自らの使命のもとに。
「おい、隼人」
背後からレオンが声をかけてくる。
「こんな時に言うのもなんだが……お前とは、ここまで来られてよかったと思ってる」
「……何だよ、らしくないな」
「バーカ。最後かもしれねぇから言ってるだけだ。さっさと行くぞ!」
笑いながら、レオンは俺より一歩先に転移の光の中へと飛び込んだ。
その背を追い、白く輝く空間へと身を投じた──。
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