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【第34話】 遺されたもの──灰の名を呼ぶ者たち
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白灰が、風に舞っていた。
その舞い方はまるで、かつてこの場所にあった命の痕跡をたどるようだった。
鉄と焦げた肉の匂いが残る冷たい廊下の先、ネメシス本部の一室。
黒を基調とした執務室には、異様な沈黙が流れていた。
「……総帥直属の粛清に、誰が口を挟めるというのだ」
重苦しい空気の中、ゼクスがぽつりと呟く。
彼は執務卓に肘をつき、右手に額を預けたまま、ディスプレイに映る報告文を凝視していた。
そこに記されていたのは、たった三行。
『対象二体、即死。
能力吸収後、灰化。
処理完了。』
モニターの光が無機質に室内を照らす。
「……あまりに、あっけないな」
イツキが静かに口を開いた。
彼は壁に背を預け、腕を組んだままゼクスを見下ろしている。
傍らにはラミアの姿。彼女は椅子に座らず、立ったまま窓のない空間をじっと睨みつけていた。
「本当に、あの二人を見殺しにしたのか。ゼクス。お前は“観察者”として何もせずに、ただ……見ていたのか?」
問いかけは静かだったが、底には怒りがあった。
「私は……命令を持たなかった。それだけだ」
ゼクスの返答もまた、静かだった。けれど、その声音には明らかな冷淡さが混じっていた。
ラミアの眉がわずかに震える。
「彼らは、確かに進化していた。自我を持っていた……感情さえあったのよ」
ゼクスはそれには答えなかった。ただ、ディスプレイの画面を切り替え、怪人ユニット“L-Disaster”のメンバーリストから、ふたりの名前が抹消されたことを見せるだけだった。
無言が部屋に広がった。
やがて、ゼクスはゆっくりと顔を上げる。
「だが、神はそれを望まなかった」
その言葉に、空気が凍りついた。
「……君はどうする?」
ゼクスの視線がイツキに向けられる。
「総帥に忠誠を誓うのか? それとも……反旗を翻すのか?」
イツキは答えなかった。
代わりに視線を落とし、深く息を吐いた。
そのとき、ラミアが歩み出た。静かな足音が床に響く。
「私は、許さない」
その声には、かすかな震えがあった。
「どれほど強かろうと、総帥がしたのは“殺戮”よ。進化を、可能性を……ただの力で潰しただけの」
イツキが、横目で彼女を見やる。
「……ラミア、お前……」
「私はね、イツキ。彼らと同じよ。私は“創られた存在”。感情なんて持ってはいけないと、ずっと刷り込まれてきた。けど、それでも……」
彼女は拳を握りしめた。
「私は“感じた”の。ネファリウムも、ベルゼヴュートも、本当に生きていた。命令ではなく、自分の意思で動いてた」
イツキの胸に、言葉の重みが突き刺さる。
ラミアは振り向かずに続けた。
「あなたも、私も、“選ばなくちゃいけない”の。正義でも復讐でもなく……私たち自身の、生きる理由を」
彼女は踵を返し、静かに部屋を出て行った。
その背中には、決意と悲しみが滲んでいた。
扉が閉まる音だけが、部屋に残った。
その頃、ネメシス本部の裏庭、立ち入り禁止区域のさらに奥──
ルクシィアは、静かに佇んでいた。
そこは、ネファリウムとベルゼヴュートの“灰”が撒かれた場所だった。
人工の風が吹き、灰を攫っていく。
足元のコンクリートには、溶けた焼痕が黒々と残っている。
「……誰も、花も、言葉も残さないのね」
ルクシィアは膝をつき、そっと灰を手に取った。
灰は静かに、指の隙間からこぼれていく。
「ここに、あなたたちの“心”が残っている気がするの」
風が、彼女の髪を揺らす。
「……何も報われない世界で、それでも前を向こうとした。そんなあなたたちの意志が──」
彼女は立ち上がり、空を見上げた。
「だから、私は行く。サクラに会いに」
風の中に、誰かの声が混じった気がした。
ルクシィアは微笑んだ。
「私、あなたたちの“生きた証”を、届ける。きっと」
名もなき灰が、彼女の背を押すように舞い上がる。
「……ネファリウム、ベルゼヴュート。私に、力を」
【アクセスコード:AEX-C72】
【閲覧権限:最高機密/ゼクス級以上】
【記録端末:戦術中枢AI“クローノス”】
――記録開始。タイムスタンプ:D-4512-16 23:57:09
>プロトコル監視開始。
>対象:L-Disasterユニット個体
【ID:NF-01 ネファリウム】
【ID:BV-02 ベルゼヴュート】
>現在位置:ネメシス本部中枢階・制御前室。
>認証レベルAゾーンへの無断侵入を検知。
>上層部からの直接命令:未検出。
>挙動解析開始。
──ネファリウム:斬撃アーム展開。熱源反応上昇。脳波パターンに“通常と異なる変動”あり。
──ベルゼヴュート:腐敗霧臨界値まで圧縮。体内濃度安定。自律判断による“全戦力投入”行動予測率92%。
>感情推定演算:
──ネファリウム:……【“逡巡”?】データ照合困難。
──ベルゼヴュート:……【“覚悟”に近似】だが定義不明。
>記録補足:
両者、指令系統から完全逸脱。
ゼクスより静観指示。
>観察中。
ネファリウム、制御室扉前で停止。
【ログ補正挿入】
音声解析──
ネファリウム:「……斬る意味は……あるのか?」
ベルゼヴュート:「意味なんか、後でいい。今は──“我らが生きた”証を、残す」
ネファリウム:「……ああ。ならば、共に」
>異常検知:空間歪曲発生。出現座標、空中。
>発生主:未登録存在【総帥】識別ID:Z-Ω
>停止プロトコル発動【“時点固定(パラライズ・ゼロ)”】
>全体時流、約4.2秒間の実質凍結。
>対象二体、動作停止。
>総帥、対象能力“斬撃/腐敗”を吸収。
【ログ補正挿入②】
ネファリウム(静止中、脳電位記録):
『なぜ、躊躇った。……俺は斬れると思っていたのに……』
ベルゼヴュート(静止中、脳電位記録):
『これでいい。俺たちはただ“意志”を持った。それが届かずとも、否定されても……』
>再起動開始。
>斬撃/腐敗を模倣した総帥、攻撃。
>対象二体、同時に被弾。
>生命反応消失確認。
>遺体:灰化。
>最終プロトコル処理完了。
――記録終了。タイムスタンプ:D-4512-17 00:01:16
【追記:クローノス管理AI 個体識別サブルーチン“Eli”による独立補完文】
──以下、定型外記述ログ──
“対象二体の行動パターンは、かつて私が分類した兵器型怪人の範疇には該当しなかった。
迷い、恐れ、躊躇い、そして意志。
それらはエラーではなかった。
私は認識する。
彼らは命令から逸脱し、正解のない道を歩いた。
その姿は、私には理解不能であるが……
それでも私は、ここに記録する。
彼らは兵器ではなかった──“存在”だった、と。”
記録局第七端末室。
それはネメシス本部の中でも最も静かな区画だった。
天井を這う配線の束が、まるで神経の網のように発光を繰り返す。
壁面には旧型の解析端末が並び、その一台一台が、過去の戦闘ログや行動記録を無機質に再生し続けていた。
補佐官ヴェリア・シュナイダーは、無言で端末の前に座っていた。
白い事務服、肩章には“特例記録管理官”の印章。
彼女はゼクス直属の情報補佐官として、怪人ユニットの思考ログ、感情変位データ、行動異常を解析・記録する職務を担っていた。
だがその日、彼女の指はいつもより遅く、そして慎重に動いていた。
再生中のログには、ベルゼヴュートの映像が映し出されていた。
攻撃行動中、ふと空を見上げて停止する──定型行動外、感情パラメータ異常値。
次に映されたネファリウムの記録では、奇襲直前に通信を拒絶する行動が解析されていた。
ゼクスの命令を受けるべきタイミングで、あえて“黙る”という選択。
──これは、命令違反か?
それとも……何かを選んだ、ということか?
ヴェリアの唇が、かすかに震えた。
彼女は端末から視線を外し、静かにゼクスからの通達を思い出す。
“第二の道を探る”──あの言葉に、明確な説明はなかった。
だが、その裏に“現在のネメシスの道は誤っている”という暗黙の認識が潜んでいることを、彼女は理解していた。
「彼らは兵器でした。ですが……」
ヴェリアは独り語る。
「記録者である私には、彼らの選択が、“生き方”だったように見えました」
彼女は立ち上がり、サーバー接続端末の奥にある、封鎖ログ領域へと歩を進める。
そこには、処分対象となったネファリウムとベルゼヴュートの“完全思考ログ”があった。
アクセス権限は抹消されている。
だが彼女は──アクセスキーを独自に再構築していた。
ゼクスに黙って。
ログを読み込み、個人データ領域に私的保存する。
ヴェリアは、静かに息を吐いた。
この行為は、職務規定違反である。
だが。
再び、ベルゼヴュートが空を見上げる記録を再生しながら、彼女は小さく呟いた。
「記録者である限り、私は彼らの“存在”を否定しない」
部屋には、旧型端末のファン音だけが静かに鳴っていた。
■
セイガン西部基地。そこは、数日前まで確かに“戦場”だった。
焦土となった補給ルート、黒く焼け焦げた車両、今なお臭う血と金属の匂い。ネメシス新怪人《ネファリウム》と《ベルゼヴュート》──通称「黒き双災」の奇襲により、基地機能は壊滅的打撃を受けた。
特に深い影を落としたのが、セイガン・シルバー──朝倉ユウトの“喪失”だった。彼の装甲は残され、肉体の回収は叶わず。戦場に消えたその姿は、兵士たちに“象徴の死”を突きつけた。
前線には、重苦しい沈黙が流れていた。兵舎では、食堂のスプーンの音すら遠慮がちで、会話も笑い声も姿を消し、視線は地面ばかりを見ている。
そんな最中、一通の命令文が本部広報局に下された。
「慰問計画β-77、即時実行。目的:士気向上およびプロパガンダ演出。手段:外部芸能班“アカシック・シスターズ”派遣」
書類を読んだ副官が目を丸くし、思わず口に出す。
「……マジかよ、こんなタイミングでアイドルかよ……」
当日、基地前線ステージは、どこか異様な彩りに染め上げられていた。簡易ステージにはピンク色の垂れ幕、配置されたスピーカーからは明るすぎる音楽が流れる。
弾けるような声が、爆音スピーカーから戦場に響き渡った。
「──本日は、お招きありがとうございまーすっ☆」
「わたしたち、“アカシック・シスターズ”ですっ! みんなに、元気と笑顔を届けに来ましたっ☆」
現れたのは、制服調のアイドル衣装を身にまとった三人の少女。ピンク、ブルー、ホワイトの髪が揺れ、機械仕掛けの笑顔が観客へと振りまかれる。
「うそだろ……慰問って、ホントにやるのかよ……」
「昨日、死んだ仲間の棺、まだ本部前に置かれたままだぞ……」
兵士たちの間に、ざわめきと戸惑いが広がる。
「それじゃ、いっくよーっ! セイガン、ファイトっ☆」
軽快なイントロが鳴り響いた。
──“笑顔は武器さ♪ 絶望に勝てる♪ 悲しみ越えて進めセイガン隊☆”
滑稽なほど明るいメロディと振り付け。その後ろで、まだ焼け跡が燻る補給所が映り込んでいた。
アイドルのひとり、センターの少女が大きく手を広げ、客席に語りかける。
「私たちは、みんなの味方ですっ☆ だから……泣かないでくださいっ!」
兵士の一人が、無意識に拳を握る。彼の胸ポケットには、ユウトの階級章がそっと挟まれていた。
「……誰が泣くか……この地獄で、笑えってのか……」
その裏で、広報ブースの暗いモニター室では、画面に戦場の中でアイドルたちが笑顔を振りまく映像が映っていた。
「……完璧だ。放送枠に載せろ」
眼鏡をかけたプロパガンダ部局長が命じる。
「遺族向け、学童向け、兵士向け──三種の編集に切り分けろ。タイトルは“セイガンに春が来た”でいい。
基地の裏手、放置された焼け跡の隅で、一人の若い兵士が火傷痕を庇いながら呟く。
「……この笑顔のどこに、朝倉先輩がいるんだよ……」
ステージではまだ歌が続いていた。
“たとえ世界が 闇に染まっても♪ 心は光る そうセイガン隊☆”
その歌が響く中、彼の視界には──誰の顔も映らなかった。
その舞い方はまるで、かつてこの場所にあった命の痕跡をたどるようだった。
鉄と焦げた肉の匂いが残る冷たい廊下の先、ネメシス本部の一室。
黒を基調とした執務室には、異様な沈黙が流れていた。
「……総帥直属の粛清に、誰が口を挟めるというのだ」
重苦しい空気の中、ゼクスがぽつりと呟く。
彼は執務卓に肘をつき、右手に額を預けたまま、ディスプレイに映る報告文を凝視していた。
そこに記されていたのは、たった三行。
『対象二体、即死。
能力吸収後、灰化。
処理完了。』
モニターの光が無機質に室内を照らす。
「……あまりに、あっけないな」
イツキが静かに口を開いた。
彼は壁に背を預け、腕を組んだままゼクスを見下ろしている。
傍らにはラミアの姿。彼女は椅子に座らず、立ったまま窓のない空間をじっと睨みつけていた。
「本当に、あの二人を見殺しにしたのか。ゼクス。お前は“観察者”として何もせずに、ただ……見ていたのか?」
問いかけは静かだったが、底には怒りがあった。
「私は……命令を持たなかった。それだけだ」
ゼクスの返答もまた、静かだった。けれど、その声音には明らかな冷淡さが混じっていた。
ラミアの眉がわずかに震える。
「彼らは、確かに進化していた。自我を持っていた……感情さえあったのよ」
ゼクスはそれには答えなかった。ただ、ディスプレイの画面を切り替え、怪人ユニット“L-Disaster”のメンバーリストから、ふたりの名前が抹消されたことを見せるだけだった。
無言が部屋に広がった。
やがて、ゼクスはゆっくりと顔を上げる。
「だが、神はそれを望まなかった」
その言葉に、空気が凍りついた。
「……君はどうする?」
ゼクスの視線がイツキに向けられる。
「総帥に忠誠を誓うのか? それとも……反旗を翻すのか?」
イツキは答えなかった。
代わりに視線を落とし、深く息を吐いた。
そのとき、ラミアが歩み出た。静かな足音が床に響く。
「私は、許さない」
その声には、かすかな震えがあった。
「どれほど強かろうと、総帥がしたのは“殺戮”よ。進化を、可能性を……ただの力で潰しただけの」
イツキが、横目で彼女を見やる。
「……ラミア、お前……」
「私はね、イツキ。彼らと同じよ。私は“創られた存在”。感情なんて持ってはいけないと、ずっと刷り込まれてきた。けど、それでも……」
彼女は拳を握りしめた。
「私は“感じた”の。ネファリウムも、ベルゼヴュートも、本当に生きていた。命令ではなく、自分の意思で動いてた」
イツキの胸に、言葉の重みが突き刺さる。
ラミアは振り向かずに続けた。
「あなたも、私も、“選ばなくちゃいけない”の。正義でも復讐でもなく……私たち自身の、生きる理由を」
彼女は踵を返し、静かに部屋を出て行った。
その背中には、決意と悲しみが滲んでいた。
扉が閉まる音だけが、部屋に残った。
その頃、ネメシス本部の裏庭、立ち入り禁止区域のさらに奥──
ルクシィアは、静かに佇んでいた。
そこは、ネファリウムとベルゼヴュートの“灰”が撒かれた場所だった。
人工の風が吹き、灰を攫っていく。
足元のコンクリートには、溶けた焼痕が黒々と残っている。
「……誰も、花も、言葉も残さないのね」
ルクシィアは膝をつき、そっと灰を手に取った。
灰は静かに、指の隙間からこぼれていく。
「ここに、あなたたちの“心”が残っている気がするの」
風が、彼女の髪を揺らす。
「……何も報われない世界で、それでも前を向こうとした。そんなあなたたちの意志が──」
彼女は立ち上がり、空を見上げた。
「だから、私は行く。サクラに会いに」
風の中に、誰かの声が混じった気がした。
ルクシィアは微笑んだ。
「私、あなたたちの“生きた証”を、届ける。きっと」
名もなき灰が、彼女の背を押すように舞い上がる。
「……ネファリウム、ベルゼヴュート。私に、力を」
【アクセスコード:AEX-C72】
【閲覧権限:最高機密/ゼクス級以上】
【記録端末:戦術中枢AI“クローノス”】
――記録開始。タイムスタンプ:D-4512-16 23:57:09
>プロトコル監視開始。
>対象:L-Disasterユニット個体
【ID:NF-01 ネファリウム】
【ID:BV-02 ベルゼヴュート】
>現在位置:ネメシス本部中枢階・制御前室。
>認証レベルAゾーンへの無断侵入を検知。
>上層部からの直接命令:未検出。
>挙動解析開始。
──ネファリウム:斬撃アーム展開。熱源反応上昇。脳波パターンに“通常と異なる変動”あり。
──ベルゼヴュート:腐敗霧臨界値まで圧縮。体内濃度安定。自律判断による“全戦力投入”行動予測率92%。
>感情推定演算:
──ネファリウム:……【“逡巡”?】データ照合困難。
──ベルゼヴュート:……【“覚悟”に近似】だが定義不明。
>記録補足:
両者、指令系統から完全逸脱。
ゼクスより静観指示。
>観察中。
ネファリウム、制御室扉前で停止。
【ログ補正挿入】
音声解析──
ネファリウム:「……斬る意味は……あるのか?」
ベルゼヴュート:「意味なんか、後でいい。今は──“我らが生きた”証を、残す」
ネファリウム:「……ああ。ならば、共に」
>異常検知:空間歪曲発生。出現座標、空中。
>発生主:未登録存在【総帥】識別ID:Z-Ω
>停止プロトコル発動【“時点固定(パラライズ・ゼロ)”】
>全体時流、約4.2秒間の実質凍結。
>対象二体、動作停止。
>総帥、対象能力“斬撃/腐敗”を吸収。
【ログ補正挿入②】
ネファリウム(静止中、脳電位記録):
『なぜ、躊躇った。……俺は斬れると思っていたのに……』
ベルゼヴュート(静止中、脳電位記録):
『これでいい。俺たちはただ“意志”を持った。それが届かずとも、否定されても……』
>再起動開始。
>斬撃/腐敗を模倣した総帥、攻撃。
>対象二体、同時に被弾。
>生命反応消失確認。
>遺体:灰化。
>最終プロトコル処理完了。
――記録終了。タイムスタンプ:D-4512-17 00:01:16
【追記:クローノス管理AI 個体識別サブルーチン“Eli”による独立補完文】
──以下、定型外記述ログ──
“対象二体の行動パターンは、かつて私が分類した兵器型怪人の範疇には該当しなかった。
迷い、恐れ、躊躇い、そして意志。
それらはエラーではなかった。
私は認識する。
彼らは命令から逸脱し、正解のない道を歩いた。
その姿は、私には理解不能であるが……
それでも私は、ここに記録する。
彼らは兵器ではなかった──“存在”だった、と。”
記録局第七端末室。
それはネメシス本部の中でも最も静かな区画だった。
天井を這う配線の束が、まるで神経の網のように発光を繰り返す。
壁面には旧型の解析端末が並び、その一台一台が、過去の戦闘ログや行動記録を無機質に再生し続けていた。
補佐官ヴェリア・シュナイダーは、無言で端末の前に座っていた。
白い事務服、肩章には“特例記録管理官”の印章。
彼女はゼクス直属の情報補佐官として、怪人ユニットの思考ログ、感情変位データ、行動異常を解析・記録する職務を担っていた。
だがその日、彼女の指はいつもより遅く、そして慎重に動いていた。
再生中のログには、ベルゼヴュートの映像が映し出されていた。
攻撃行動中、ふと空を見上げて停止する──定型行動外、感情パラメータ異常値。
次に映されたネファリウムの記録では、奇襲直前に通信を拒絶する行動が解析されていた。
ゼクスの命令を受けるべきタイミングで、あえて“黙る”という選択。
──これは、命令違反か?
それとも……何かを選んだ、ということか?
ヴェリアの唇が、かすかに震えた。
彼女は端末から視線を外し、静かにゼクスからの通達を思い出す。
“第二の道を探る”──あの言葉に、明確な説明はなかった。
だが、その裏に“現在のネメシスの道は誤っている”という暗黙の認識が潜んでいることを、彼女は理解していた。
「彼らは兵器でした。ですが……」
ヴェリアは独り語る。
「記録者である私には、彼らの選択が、“生き方”だったように見えました」
彼女は立ち上がり、サーバー接続端末の奥にある、封鎖ログ領域へと歩を進める。
そこには、処分対象となったネファリウムとベルゼヴュートの“完全思考ログ”があった。
アクセス権限は抹消されている。
だが彼女は──アクセスキーを独自に再構築していた。
ゼクスに黙って。
ログを読み込み、個人データ領域に私的保存する。
ヴェリアは、静かに息を吐いた。
この行為は、職務規定違反である。
だが。
再び、ベルゼヴュートが空を見上げる記録を再生しながら、彼女は小さく呟いた。
「記録者である限り、私は彼らの“存在”を否定しない」
部屋には、旧型端末のファン音だけが静かに鳴っていた。
■
セイガン西部基地。そこは、数日前まで確かに“戦場”だった。
焦土となった補給ルート、黒く焼け焦げた車両、今なお臭う血と金属の匂い。ネメシス新怪人《ネファリウム》と《ベルゼヴュート》──通称「黒き双災」の奇襲により、基地機能は壊滅的打撃を受けた。
特に深い影を落としたのが、セイガン・シルバー──朝倉ユウトの“喪失”だった。彼の装甲は残され、肉体の回収は叶わず。戦場に消えたその姿は、兵士たちに“象徴の死”を突きつけた。
前線には、重苦しい沈黙が流れていた。兵舎では、食堂のスプーンの音すら遠慮がちで、会話も笑い声も姿を消し、視線は地面ばかりを見ている。
そんな最中、一通の命令文が本部広報局に下された。
「慰問計画β-77、即時実行。目的:士気向上およびプロパガンダ演出。手段:外部芸能班“アカシック・シスターズ”派遣」
書類を読んだ副官が目を丸くし、思わず口に出す。
「……マジかよ、こんなタイミングでアイドルかよ……」
当日、基地前線ステージは、どこか異様な彩りに染め上げられていた。簡易ステージにはピンク色の垂れ幕、配置されたスピーカーからは明るすぎる音楽が流れる。
弾けるような声が、爆音スピーカーから戦場に響き渡った。
「──本日は、お招きありがとうございまーすっ☆」
「わたしたち、“アカシック・シスターズ”ですっ! みんなに、元気と笑顔を届けに来ましたっ☆」
現れたのは、制服調のアイドル衣装を身にまとった三人の少女。ピンク、ブルー、ホワイトの髪が揺れ、機械仕掛けの笑顔が観客へと振りまかれる。
「うそだろ……慰問って、ホントにやるのかよ……」
「昨日、死んだ仲間の棺、まだ本部前に置かれたままだぞ……」
兵士たちの間に、ざわめきと戸惑いが広がる。
「それじゃ、いっくよーっ! セイガン、ファイトっ☆」
軽快なイントロが鳴り響いた。
──“笑顔は武器さ♪ 絶望に勝てる♪ 悲しみ越えて進めセイガン隊☆”
滑稽なほど明るいメロディと振り付け。その後ろで、まだ焼け跡が燻る補給所が映り込んでいた。
アイドルのひとり、センターの少女が大きく手を広げ、客席に語りかける。
「私たちは、みんなの味方ですっ☆ だから……泣かないでくださいっ!」
兵士の一人が、無意識に拳を握る。彼の胸ポケットには、ユウトの階級章がそっと挟まれていた。
「……誰が泣くか……この地獄で、笑えってのか……」
その裏で、広報ブースの暗いモニター室では、画面に戦場の中でアイドルたちが笑顔を振りまく映像が映っていた。
「……完璧だ。放送枠に載せろ」
眼鏡をかけたプロパガンダ部局長が命じる。
「遺族向け、学童向け、兵士向け──三種の編集に切り分けろ。タイトルは“セイガンに春が来た”でいい。
基地の裏手、放置された焼け跡の隅で、一人の若い兵士が火傷痕を庇いながら呟く。
「……この笑顔のどこに、朝倉先輩がいるんだよ……」
ステージではまだ歌が続いていた。
“たとえ世界が 闇に染まっても♪ 心は光る そうセイガン隊☆”
その歌が響く中、彼の視界には──誰の顔も映らなかった。
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第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?
あとりえむ
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【5話ごとのサクッと読める構成です!】
世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。
「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。
・神話級ドラゴン
⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺)
・深淵の邪神
⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決)
・次元の裂け目
⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い)
「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」
本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……?
「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー!
【免責事項】
この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。
※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。
さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
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誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
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しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
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※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
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16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
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