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第五章
オレンジな恋
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約束の日
佐伯がマンションの前に
車でやってきた。
マンションの前、
既に立っていた美晴。
「おはようございます」
わざわざ車から
降りてきた彼。
晴れやかな笑顔。
「おはようございます」
美晴、軽く頭を下げた。
「家で待っていても
良かったのに」
彼の着ている水色のタオル生地のポロシャツを
見つめる美晴。
(とても爽やかだわ)
(私の服装、大丈夫かしら?)
(彼が言ってくれた言葉
「新木さんに似合う色だと思う」を、
頼りに選んだんだんだけど)
美晴の服は
落ち着いたオレンジ色の
マキシワンピースに
クリーム色かぎ針編みのニットカーデ。
「いえ、お待たせしたら
悪いので」
じっと、美晴の姿を
眺める佐伯。
「オレンジ、やっぱり似合うね。
今日のカッコ、
なんていうか……可愛い」
彼が頬を緩める。
(どうしよう。
胸がいっぱいなんだけど)
「あ、ありがとうございます」そう言うのが
やっとの事だった。
車の中には、
FMのラジオが流れていた。
発進する車。
「ここに住んで長いの?」
「はい。かれこれ
8年位になりますね」
「住みやすい?」
(落ち着こう。
自然体で。
マイナスなイメージを
もたれない様に
ネガティブな発言は
避けなきゃ)
美晴は終始、
笑顔を絶やさなかった。
「横浜の相鉄沿線の駅が、
最寄り駅なんだ」
「横浜は、坂が多くて
自転車では
とてもじゃないが
生活できないよ。
車か原チャリが
絶対に必要になるね」
「そうですか」
「ここ」
高層マンションの
地下駐車場へ入ってゆく車。
「どうぞ」
重厚なドアを開けて、
彼は微笑んだ。
白い壁。
長い廊下。
美晴は玄関で胸をおさえた。
(彼の家に入る事なんか
想像出来なかった。
緊張してどうにかなりそう)
(並んでしか
手に入らない限定品を
いきなり、
ただでゲット出来た時よりもさらに数段上の
ミラクル。
それくらい奇跡だ)
カーテンも薄い水色だった。
美晴、何気なく
お土産の水羊羹の箱を
出しながら聞いていた。
「これ、お土産です。
すっごく綺麗にしてるんですね。
それに素敵」
「あ、わざわざいいのに」
水羊羹を受け取ったあと
彼は、ゆったりしたソファを美晴にすすめた。
「どうぞ、座ってて。
今、麦茶でも入れるから」
「ありがとう」
ソファに座り、
部屋の中を見回した。
清潔感があるし、
車同様余計なものが
一切なかった。
トレーに湯飲みを
のせてくる佐伯
テーブルに置かれた
二つの湯飲み
向かい側に佐伯が座った。
「甘いもの好きなんだよね。俺」
(彼が甘いもの好きだって、知ってる。
美恵子から仕入れた情報)
佐伯、おいしそうに
羊羹を食べる。
「パーティーの司会やってたのが、
俺の親戚でね。
失恋して落ち込んでる俺を
無理やり引っ張り出したんだ」
(来たくて来たんじゃ
無かったんだ)
「でも、行って良かったと
今は思ってる」
美晴がテーブルの上に
置いていた手。
前に乗り出した彼の手が
ゆっくりと重なった。
(え?)
美晴の手に
重ねられた彼の大きな手。
「新木さんに会えたから」
恐る恐る顔をあげる美晴。
佐伯のまっすぐで
優しい瞳が
美晴をとらえていた。
「俺と付き合う事、
考えてみてくれない?」
(私が憧れてた人と
付き合う?
考えも付かない。)
「あの、私」
「新木さん、言ってたよね。
話しかけてもいいですか?
って高校のときに」
美晴、呆然と佐伯を見つめる。
あれは……
高校の廊下だ。
二月十四日だった。
「チョコ、渡すんでしょう?」
目を輝かせている美恵子。
「うん、放課後に渡す」
窓から見た景色。
中庭に雪が
しんしんと降り積もっていた。
(天気予報だと今日一日、
関東地方は
雪の予報だったけど)
白い雪が降っている
もっと向こうの校舎、
4階から斜めに
見おろす位置
一階廊下に
彼の姿を見つけた。
彼は、バスケ部一年生の
マネージャーである女の子と
向かい合っていた。
何か深刻そうに
話しているようだった。
女の子が後ろ手に
持っていた箱を
前に出して彼に渡していた。
頭を少しかいて
困ったような様子で
彼は何かを言っている。
彼を見つめていた
マネージャーは、右手の甲で
目の辺りを拭っている。
左手には
箱を抱えたままだった。
口を閉じたままの彼。
そんな彼に
一礼してマネージャーは
回れ右をし
廊下を走っていった。
(見てはいけないものを
見たかも)
(明らかにマネージャーは
彼にチョコの箱を
渡している様子だったよね)
(もし仮に、
私がチョコを渡しに行ったら、
チョコを受け取ってさえ
もらえない場合、
泣くだろうか、
今のあの子みたいに)
「今日、バスケ部の練習に
顔出すみたいよ。あのかた」
廊下にぼうっと
立っていた美晴の横へ
やってきた美奈子。
「ありがと。わかった」
笑顔を見せた美晴。
ホームルームの後、
美恵子が美晴の席に
急いでやってきた。
「どこで渡すの?」
「うん。どうしよう」
「呼び出そうか?」
「ううん。自分で
なんとかしたいから」
渡り廊下。
辺りには、雪が降っている。
壁にはりついて
体育館へ向かう彼が来るのを
待っていた美晴。
(やばっ、
手は、かじかんできたし、
鼻水出てきた。
コンディションは最悪。)
階段から
降りてきた彼は、
チームメイトと一緒だった。
「あの」
渡り廊下で
話しかけてきた女を
驚いたように見る彼と
彼のチームメイト。
「あの佐伯くん、
ちょっとだけいいですか?」
彼のチームメイト、
訳のわかったような
わからないような顔を見せた。
「先に行ってるな」
二人きりになった渡り廊下。
外には雪が
昼休み見たときより
だいぶ地面に積もっていた。
「あの、1年4組の新木美晴と言います。
名前だけでも
おぼえてもらえませんか? これ、受け取ってください」
チョコの入った黄色の箱を差し出した。
顔は下へ
向けていたから
彼の表情はわからない。
彼の少し汚れた
上履きの先を見つめた。
外側へ開いていた
彼の両足は、
どっしりとその場に
根を下ろしたように
動く気配は無かった。
「どうも。それだけ?」
逆に質問されて
驚いた美晴。
顔を上げて彼を見た。
「は、はい。
バレンタインデーなので
チョコを渡したくて。
それだけです」
(こうして目の前で
見ると遠くから見るよりも
遥かに男っぽいし。
かっこいい)
彼の放つ独特の
雰囲気に
たじろいでいた美晴。
美晴が差し出した箱は、
彼が受け取り軽く頭を
下げてくれた。
「どうも」
「こ、これから部活ですか?」
「うん。練習」
ふっと、微笑んだ時に
目が細まった彼。
(ああ、いいなあ笑顔)
「頑張ってください。
あ、あの今度
話かけてもいいですか?」
「ん? おう」
美穂の渡した箱を
持った左手を
雪空へ上げた彼。
正確に言うと
屋根はあったのだから
屋根の方向に上げたと
いう事だ。
彼の格好いい姿。
久しぶりに
雪が積もって
白くなった校庭。
ソファに並んで
腰掛ける美晴と彼。
「あれから、
気になってさ。
新木さんって女の子のこと」
「まさか」
「ほんと。
いつ、話しかけてくるのかなーって。
ずっと、待ってた」
「うそっ!」
(覚えてたの?
私の事)
驚いた美晴。
「でも、全然、
話しかけてこないんだから。新木さん」
「あの、覚えてたんですか? 私の事」
彼は笑った。
「ああ、パーティーで
新木さんと目が合って、
まさかって!
二度見したよ。
でもってさ、
高校の時と同じ事
言われたから」
(覚えててくれたんだ)
「インプレッションカードにね、
わざと書かなかったんだ。
誰の番号も」
「そうなんですか。なぜ?」
「俺から
話しかけてみたかったから。新木さんに」
(どうしよう。
嬉しすぎる)
「飲みに誘って
断られなかったら、
言うつもりだったんだけど。高校の話」
美晴、大きく頷く。
「言わなくても
いいかなって思えた。
過去の出会いが無くても
今が楽しかったから」
佐伯の手が
美晴の手を握る。
「運命かもって思えたんだ。あのパーティーの日」
「佐伯さん」
佐伯が美晴の手を
握りなおす。
「俺、ずっと
言えなかったけど。
実は、新木さんに
チョコもらってから
気になってて。
話かけられなくて、
後悔してた。
話しかければ
良かったって」
「俺じゃだめかな?
新木さん」
「まさか!
駄目じゃないです。
むしろ、嬉しすぎて。
私……夢かもって」
「夢じゃないよ。」
「俺は、ここにいる。
新木さんと……」
美晴、頷く。
佐伯の顔が
テーブル越しに近づく。
自然と瞼を閉じる美晴。
重なる唇。
「キス以外にも、
一緒にしたい事が
たくさんあるんだ」
美晴の目じりから
涙が流れた。
(佐伯さん、
今も貴方が好きです)
(夢。夢ならずっと
覚めないように)
もう一度、
二人の唇が近づいて重なる。
美晴、更に
瞼をぎゅっと閉じた。
「もっと、
俺に話しかけて。美晴」
佐伯の手が
美晴の腰に回った。
唇を話した後も
お互いに見つめ合って、
たくさんの会話を楽しんだ。
夜が徐々に更けてゆく。
満月が空に
大きく輝いているのを、
佐伯と美晴は
並んで窓から見上げた。
これから始まる二人の恋を
オレンジ色した満月が
微笑んで
見守って
くれているような夜だった
完
佐伯がマンションの前に
車でやってきた。
マンションの前、
既に立っていた美晴。
「おはようございます」
わざわざ車から
降りてきた彼。
晴れやかな笑顔。
「おはようございます」
美晴、軽く頭を下げた。
「家で待っていても
良かったのに」
彼の着ている水色のタオル生地のポロシャツを
見つめる美晴。
(とても爽やかだわ)
(私の服装、大丈夫かしら?)
(彼が言ってくれた言葉
「新木さんに似合う色だと思う」を、
頼りに選んだんだんだけど)
美晴の服は
落ち着いたオレンジ色の
マキシワンピースに
クリーム色かぎ針編みのニットカーデ。
「いえ、お待たせしたら
悪いので」
じっと、美晴の姿を
眺める佐伯。
「オレンジ、やっぱり似合うね。
今日のカッコ、
なんていうか……可愛い」
彼が頬を緩める。
(どうしよう。
胸がいっぱいなんだけど)
「あ、ありがとうございます」そう言うのが
やっとの事だった。
車の中には、
FMのラジオが流れていた。
発進する車。
「ここに住んで長いの?」
「はい。かれこれ
8年位になりますね」
「住みやすい?」
(落ち着こう。
自然体で。
マイナスなイメージを
もたれない様に
ネガティブな発言は
避けなきゃ)
美晴は終始、
笑顔を絶やさなかった。
「横浜の相鉄沿線の駅が、
最寄り駅なんだ」
「横浜は、坂が多くて
自転車では
とてもじゃないが
生活できないよ。
車か原チャリが
絶対に必要になるね」
「そうですか」
「ここ」
高層マンションの
地下駐車場へ入ってゆく車。
「どうぞ」
重厚なドアを開けて、
彼は微笑んだ。
白い壁。
長い廊下。
美晴は玄関で胸をおさえた。
(彼の家に入る事なんか
想像出来なかった。
緊張してどうにかなりそう)
(並んでしか
手に入らない限定品を
いきなり、
ただでゲット出来た時よりもさらに数段上の
ミラクル。
それくらい奇跡だ)
カーテンも薄い水色だった。
美晴、何気なく
お土産の水羊羹の箱を
出しながら聞いていた。
「これ、お土産です。
すっごく綺麗にしてるんですね。
それに素敵」
「あ、わざわざいいのに」
水羊羹を受け取ったあと
彼は、ゆったりしたソファを美晴にすすめた。
「どうぞ、座ってて。
今、麦茶でも入れるから」
「ありがとう」
ソファに座り、
部屋の中を見回した。
清潔感があるし、
車同様余計なものが
一切なかった。
トレーに湯飲みを
のせてくる佐伯
テーブルに置かれた
二つの湯飲み
向かい側に佐伯が座った。
「甘いもの好きなんだよね。俺」
(彼が甘いもの好きだって、知ってる。
美恵子から仕入れた情報)
佐伯、おいしそうに
羊羹を食べる。
「パーティーの司会やってたのが、
俺の親戚でね。
失恋して落ち込んでる俺を
無理やり引っ張り出したんだ」
(来たくて来たんじゃ
無かったんだ)
「でも、行って良かったと
今は思ってる」
美晴がテーブルの上に
置いていた手。
前に乗り出した彼の手が
ゆっくりと重なった。
(え?)
美晴の手に
重ねられた彼の大きな手。
「新木さんに会えたから」
恐る恐る顔をあげる美晴。
佐伯のまっすぐで
優しい瞳が
美晴をとらえていた。
「俺と付き合う事、
考えてみてくれない?」
(私が憧れてた人と
付き合う?
考えも付かない。)
「あの、私」
「新木さん、言ってたよね。
話しかけてもいいですか?
って高校のときに」
美晴、呆然と佐伯を見つめる。
あれは……
高校の廊下だ。
二月十四日だった。
「チョコ、渡すんでしょう?」
目を輝かせている美恵子。
「うん、放課後に渡す」
窓から見た景色。
中庭に雪が
しんしんと降り積もっていた。
(天気予報だと今日一日、
関東地方は
雪の予報だったけど)
白い雪が降っている
もっと向こうの校舎、
4階から斜めに
見おろす位置
一階廊下に
彼の姿を見つけた。
彼は、バスケ部一年生の
マネージャーである女の子と
向かい合っていた。
何か深刻そうに
話しているようだった。
女の子が後ろ手に
持っていた箱を
前に出して彼に渡していた。
頭を少しかいて
困ったような様子で
彼は何かを言っている。
彼を見つめていた
マネージャーは、右手の甲で
目の辺りを拭っている。
左手には
箱を抱えたままだった。
口を閉じたままの彼。
そんな彼に
一礼してマネージャーは
回れ右をし
廊下を走っていった。
(見てはいけないものを
見たかも)
(明らかにマネージャーは
彼にチョコの箱を
渡している様子だったよね)
(もし仮に、
私がチョコを渡しに行ったら、
チョコを受け取ってさえ
もらえない場合、
泣くだろうか、
今のあの子みたいに)
「今日、バスケ部の練習に
顔出すみたいよ。あのかた」
廊下にぼうっと
立っていた美晴の横へ
やってきた美奈子。
「ありがと。わかった」
笑顔を見せた美晴。
ホームルームの後、
美恵子が美晴の席に
急いでやってきた。
「どこで渡すの?」
「うん。どうしよう」
「呼び出そうか?」
「ううん。自分で
なんとかしたいから」
渡り廊下。
辺りには、雪が降っている。
壁にはりついて
体育館へ向かう彼が来るのを
待っていた美晴。
(やばっ、
手は、かじかんできたし、
鼻水出てきた。
コンディションは最悪。)
階段から
降りてきた彼は、
チームメイトと一緒だった。
「あの」
渡り廊下で
話しかけてきた女を
驚いたように見る彼と
彼のチームメイト。
「あの佐伯くん、
ちょっとだけいいですか?」
彼のチームメイト、
訳のわかったような
わからないような顔を見せた。
「先に行ってるな」
二人きりになった渡り廊下。
外には雪が
昼休み見たときより
だいぶ地面に積もっていた。
「あの、1年4組の新木美晴と言います。
名前だけでも
おぼえてもらえませんか? これ、受け取ってください」
チョコの入った黄色の箱を差し出した。
顔は下へ
向けていたから
彼の表情はわからない。
彼の少し汚れた
上履きの先を見つめた。
外側へ開いていた
彼の両足は、
どっしりとその場に
根を下ろしたように
動く気配は無かった。
「どうも。それだけ?」
逆に質問されて
驚いた美晴。
顔を上げて彼を見た。
「は、はい。
バレンタインデーなので
チョコを渡したくて。
それだけです」
(こうして目の前で
見ると遠くから見るよりも
遥かに男っぽいし。
かっこいい)
彼の放つ独特の
雰囲気に
たじろいでいた美晴。
美晴が差し出した箱は、
彼が受け取り軽く頭を
下げてくれた。
「どうも」
「こ、これから部活ですか?」
「うん。練習」
ふっと、微笑んだ時に
目が細まった彼。
(ああ、いいなあ笑顔)
「頑張ってください。
あ、あの今度
話かけてもいいですか?」
「ん? おう」
美穂の渡した箱を
持った左手を
雪空へ上げた彼。
正確に言うと
屋根はあったのだから
屋根の方向に上げたと
いう事だ。
彼の格好いい姿。
久しぶりに
雪が積もって
白くなった校庭。
ソファに並んで
腰掛ける美晴と彼。
「あれから、
気になってさ。
新木さんって女の子のこと」
「まさか」
「ほんと。
いつ、話しかけてくるのかなーって。
ずっと、待ってた」
「うそっ!」
(覚えてたの?
私の事)
驚いた美晴。
「でも、全然、
話しかけてこないんだから。新木さん」
「あの、覚えてたんですか? 私の事」
彼は笑った。
「ああ、パーティーで
新木さんと目が合って、
まさかって!
二度見したよ。
でもってさ、
高校の時と同じ事
言われたから」
(覚えててくれたんだ)
「インプレッションカードにね、
わざと書かなかったんだ。
誰の番号も」
「そうなんですか。なぜ?」
「俺から
話しかけてみたかったから。新木さんに」
(どうしよう。
嬉しすぎる)
「飲みに誘って
断られなかったら、
言うつもりだったんだけど。高校の話」
美晴、大きく頷く。
「言わなくても
いいかなって思えた。
過去の出会いが無くても
今が楽しかったから」
佐伯の手が
美晴の手を握る。
「運命かもって思えたんだ。あのパーティーの日」
「佐伯さん」
佐伯が美晴の手を
握りなおす。
「俺、ずっと
言えなかったけど。
実は、新木さんに
チョコもらってから
気になってて。
話かけられなくて、
後悔してた。
話しかければ
良かったって」
「俺じゃだめかな?
新木さん」
「まさか!
駄目じゃないです。
むしろ、嬉しすぎて。
私……夢かもって」
「夢じゃないよ。」
「俺は、ここにいる。
新木さんと……」
美晴、頷く。
佐伯の顔が
テーブル越しに近づく。
自然と瞼を閉じる美晴。
重なる唇。
「キス以外にも、
一緒にしたい事が
たくさんあるんだ」
美晴の目じりから
涙が流れた。
(佐伯さん、
今も貴方が好きです)
(夢。夢ならずっと
覚めないように)
もう一度、
二人の唇が近づいて重なる。
美晴、更に
瞼をぎゅっと閉じた。
「もっと、
俺に話しかけて。美晴」
佐伯の手が
美晴の腰に回った。
唇を話した後も
お互いに見つめ合って、
たくさんの会話を楽しんだ。
夜が徐々に更けてゆく。
満月が空に
大きく輝いているのを、
佐伯と美晴は
並んで窓から見上げた。
これから始まる二人の恋を
オレンジ色した満月が
微笑んで
見守って
くれているような夜だった
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