ボーンネル 〜辺境からの英雄譚〜

ふーみ

文字の大きさ
61 / 240
ボーンネルの開国譚2

二章 二十三話 一の力

しおりを挟む
一方、ベインが閻魁たちを転移させる少し前。

百鬼閣のかなりの高さから飛び降りたはずのジャスパーはスタッと地面に着地するとボルの前に立った。

「ほう、近くで見るとさらに練り上げられた闘気が見えますね。素晴らしい」

「クレース、パール先に行ってて、すぐに追いツク」

「随分と余裕そうですね。この状況をお分かりで?」

いつの間にかジャスパーに続いて他の援軍の部隊が数千人という数でボル達のことを取り囲んでいたのだ。

「ウン。そっちの地上部隊はほぼゼンメツ。こっちはムキズ」

「フンッ、まあ今はそうですね」

焦るような素振りも見せず呆れたような顔で逆に煽られたジャスパーは少しイラッとする。ボルはこう見えてトキワのような煽り性能を持っているのだ。

(ゼルタス、使っていいよ)

(分かりましたボルさん)

「じゃあ後でね、クレース、パール」

「ああ、早く来いよ」

「ばいばーい」

ボルは再びゼルタスで地面を強く叩いた。そしてそれと同時にゼルタスから地面へと三色の魔力が流れ込んでいく。

「隔てろ、ガルドのカベ」

ボルの声に応じて地面はミシリっと音をたて地下から地響きが聞こえてくる。
地響きはさらに大きくなり、やがて地面が再び揺れ動いた。

「なっ」

そして突然、ボルから少し横の地面の一部が不自然に隆起し始める。
徐々に隆起した地面から色のついた鉱石が現れ壁を形作ったのだ。
その壁は大量の魔力を帯びており、ガルド鉱石に魔力が込められたものであった。
瞬く間に城壁ほど巨大に伸びたその壁は目の前のジャスパー達とクレースたち二人を分断する。

「まだこれほどの魔力を残していたとは」

(貯めてたダケ)

「まあいいです。真っ直ぐ進んでも地獄が広がるだけですから」

そしてクレース達は百鬼閣に向かいボルがその場に一人残る。
ボルの周りを取り囲むのは武装した傭兵の集団であった。その中には元々冒険者であった傭兵や金で雇われた傭兵など様々であり、全員がかなり屈強な体つきをしていた。目の前の光景を見ていた傭兵達は警戒するようにボルのことを見て武器を構える。

「もう魔力は残っていないはずです。さあ、苦痛を与えなさい」

その声を聞いて傭兵達は一斉にボルへ向かって走っていく。
そして三つの部隊に分かれ、ボルを三方向から囲い込むような陣形をとる。

「囲いこめ! 攻撃を分散させるんだ!」

その傭兵の声をよそにボルはゼルタスを何もない場所で思い切り振り翳した。

「ハァアッ!?」

それと同時に空気は殴られたように衝撃波となって右方向からきた傭兵集団を吹っ飛ばす。
右側の先頭にいた傭兵は硬い防具など関係なく空を舞うとそのまま鈍い音を立てて地面に叩き潰された。

「怯むな! 進め!!」

しかし何度も死地をくぐり抜けて来た経験のある傭兵達はその光景にも怯まず攻めてくる。

「一斉に攻めなさい。私が防御壁を張ります」

その声を聞いて傭兵達は同時に三方向からボルに向かってきた。
そしてボルはもう一度衝撃波をつくり出す。

「やらせません」

タイミングよくジャスパーが防御壁を形成しそれを防いだ。

「グッ、バケモノですね」

その威力から遠くにいたジャスパーは魔法の反動を受ける。
ボルは右手に持っていたゼルタスを丁寧に地面に置くと、左から来た傭兵の先頭を体重が乗った重い一撃で殴った。

「ガハッ!······」

殴られた傭兵は後ろに吹っ飛びさらに後ろにいたもの達を巻き込んで20mほど吹っ飛ぶ。

(ボルさん?)

(血がついちゃうかもしれないカラ)

「数で抑えろ!! 単独で正面からは向かうな!!」

本能的に危険を感じたジャスパーは大声で指示を出した。
傭兵はそれに従って四方八方からボルに剣を向け、後ろからはボルに魔力弾の銃口が向けられる。

しかし、鋭く重たい斬撃は素手で受け止められる。

重なった剣はまるで意味を為さず、ただ一人の手によって止められ、代わりに何人もの巨体が吹き飛ばされた。
ジャスパーによる魔法と魔力弾を死角から放っても予期していたように跳ね返されてカウンターを繰り出される。

「何なんですか! あなたはッ!!」

理不尽なボルの強さに堪らず大声を上げてジャスパーの怒りはさらに増していった。
そしてその後もあらゆる攻撃が素手のボルの前に弾かれていくのをただジャスパーは眺めていた。

「もう、構いません。使い物にならない傭兵などただの囮になりなさい」

今のままでは全滅させられると感じたジャスパーは杖を手に取った。
それと同時に傭兵集団の後ろの方で密かに魔力を練り込んでいた魔法部隊からの魔力がジャスパーの杖に注ぎ込まれていく。

「死になさいッ!!」

狂気に満ちた表情で杖に込められた魔力に対してさらに自身の魔力を流し込んでいく。

「奏でよ、狂気なる調和を。
 生み出せ死の結晶を。
 その音色は死を運び、祝福となりて我が前に現れん」

その杖からは深く、暗い結晶が生み出され、ゆっくりとボルや傭兵のいる場所まで上昇していく。
何一つ音のないその魔法は来るべき何かを予感させるように、少しの光を見せ、辺りの雰囲気を呑み込んでいった。

「死の交響曲(デッド・シンフォニア)」

そうして破壊をもたらす極級魔法が今まさに繰り出そうとされていたのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...