98 / 240
中央教会編
四章 第十一話 あの日の贈り物
しおりを挟む
前回までのあらすじ
バーガル王国とギルメスド王国の間に位置するメスト大森林に突如として現れた凶暴化した魔物たち。
両国ともに戦力総出で魔物に対応するが、予想外の魔物の強さに苦戦を強いられていた。
八雲朱傘の序列三位であるラダルスを殺したベイガルがその場に現れ、同じく序列四位のゼーラは激昂する。
ゼーラ激しい怒りにより押されるベイガルであるが、その場から逃げられてしまう。
バーガルの冒険者たちも魔物たちの対応に当たるが、兵士も冒険者も傷つき、未だに鎮まる気配の無い魔物たちに対して徐々に疲れが見え始めてくる。
そんな中、森林の中央付近から突如として激しい雄叫びが響き渡り魔物たちが一斉に向きを変え始めた。
状況を飲み込めない中、バーガル王国の冒険者であるノット、バモン、ソルカの目の前には既に死体となったSランクのヘルワイヴァーンが二体倒れ臥したのだ。
「冒険者、兵士各位に告ぐッ! 全員、今すぐに後退せよ!!」
辺りの騒然とした雰囲気の中にリュードの声が響いた。そして少しの間があった後、その場にいた者たちはハッとなりその命令に従って、徐々に後退を始めていく。
「ねえリュード、本当にあれが救援部隊ってことでいいんだよね?」
「ああ、そうだ。丁度今通信を受け取った。すぐに私たちもここから離れるぞ。残念だが私たちでは彼らの足手纏いになるだけだからな」
「ケッ、普通Sランクがこんなあっさりやられるもんなのかよ。······おい、ソルカ。なにボケっと突っ立ってんだよ。早く行くぞ」
しかしながらソルカはバモンの言葉に応じることなく驚き放心したような表情でゆっくりと自分の前を指さした。
「······来たぞ」
リュードの声とともに二人はソルカの指さす方を見る。
「ッ——」
ソルカの指す方向には天にまで届くような紫色の巨大な光が伸び、それに応じて空の色が薄暗く変化していた。しかしその光景よりもソルカたちが驚いたのはそこから感じ取れる無尽蔵にも思えるほどの力だった。そしてその光は暫く天を照らすとスッと消えていき空は元の姿に戻る。
「行くぞ、危険だ」
そして四人はそのまま前線から後退していった。
一方、ギルメスド王国近くにもその衝撃波は広がっていた。
「バルバダ、動ける? 骨は完全に折れてしまっているようね」
ミルファは先程ベイガルに蹴り飛ばされたバルバダの元へと向かっていた。
「おう、少し痛むが問題ねえ。それよりさっきのは何の音だ」
「まだ分からないわ。ただもし新しい魔物なら状況はかなりまずいわ。今はハルトさんが来たから回復班が間に合っているけど、正直なところ時間の問題よ」
「でもよ、なんか様子が変だぜ。ほら」
バルバダの向く方を見ると魔物たちは徐々に森林の中央へと向かっていたのだ。そんな時、二人の前にハルトが現れた。
「ミルファ、バルバダを連れて一度後退しろ。様子がおかしい。ここは一度俺に任せろ」
「わかりました。ではここは頼みます」
ハルトは二人の背中を見守った後、向きを変えて再び森の中央を向くと、隣にゼーラがきた。
「ハルトさん、奥に進みますか? 正直に言うとかなり危険な様子を感じますが」
「確かに森の中心に魔物は向かっているが、問題は突然現れた存在だ。敵かは分からないが少なくともグラムがいなければ危険だろう。安全確保のために近くの魔物を一通り狩って暫くは様子見だ」
「了解」
そしてその渦中の中心にいた者たちはというと。
「つまらんぞ、おいトキワ、リンギル。お主らとはまだ戦ったことがなかったな。ここで我と戦わぬか?」
「オメエは馬鹿かよ。ジンに言いつけんぞ。もうちょい周りを見て暴れろ」
「ああ、今は遠慮しておく」
閻魁が一通り暴れ回ったため辺りはかなりめちゃくちゃな状態になっていた。
「すげえよボルさん。今の状態だと俺一人でAランク何十体も相手にできるぜ」
傭兵達はラストエントによる自身の超強化に興奮していた。
「通常状態でこのレベルまでいけないとダメ。ジンの強化魔法の練度が高いだけでそれに頼っていたらいずれ痛い目にアウ」
「は、はい。すみません」
そしてヒュード族の空撃部隊は空を飛び、散らばりながら魔物の対応に向かっていた。
「なあドルトン。俺ってこんな強かった? Aランク一撃とか初めてなんだけど」
「いいえ、安心してください。普通のあなたはもっと弱いですよ。まあ驚いているのは私もなのですがね」
「お前達、何ボウっとしている、殺すぞ」
「す、すいません」
(こえぇ)
事実、ガルミューラも含めてヒュード族の皆は自身の成長に驚いていた。
そのため魔物の数はかなり多かったが苦戦することはなかったのだ。
「お姉ちゃん、あれ何?」
ミルの指さす方向からはギシャルが狂気じみた顔で地面を走っていた。ギシャルはヒュード族を発見するとその不気味な笑みを更に深くし、地面を強く蹴った。するとその小ぶりな身体は宙を舞い急速なスピードで接近してきた。
そして空中で腰からムチを取り出すとムチをしならせ身体全体を使い異常なまでの速度で攻撃が繰り出される。
「ッ——」
しかしガルミューラは巨大な『水麗』を片手で持つと一瞬でムチの先端まで移動して水麗に絡め威力を殺した。
「クシャシャシャシャッ! お前らなにもんだぁ? 見たことねえな」
ギシャルはムチを一瞬にして小さく縮めるとスッと地面に着地した。
「お前こそ急に攻撃してくるとは物騒な奴だな。今の私達と一人でやる気か?」
それを聞くとギシャルはジトッとした目で全員を舐め回すように見つめた。
「まぁあ、そうだなあ。どうするか」
ギシャルは不気味に首を傾げ目を瞑って暫く考え込み、ゆっくりと目を開けた。
「おめえらの歪んだ顔を見るのは後でいいや。どうせ全員最後は痛ぶって、痛めつけて俺が殺してやるからヨォ?」
「待てッ」
ガルミューラが止めようとしたがギシャルの隣には黒い空間が生まれスッとその中に消えていった。
そして暫くして魔物達を狩り終えると再びトキワたちの元へと帰っていった。
強化魔法のおかげもあり長引くかと思われた魔物達との攻防は徐々に治ってゆき昼を過ぎた頃にはひと段落がついていた。そして現在、バーガル王国から状況を確認したブルファンとリュードがボルたちの元まで御礼をしにきていた。
因みに、ジッとできない代表の閻魁は一人でそのままボーンネルへと走って帰っていった。
「皆様、前回に引き続いての協力、大変感謝致します」
「ダイジョウブ。それより負傷した人達はドコ? 死なせたらまたジンが悲シム」
「は、はい。ですが傷が深い者が多く······」
「溜めてきたから大丈夫」
するとボルはゼルタスを取り出して溜めていた魔力を惜しげもなく治癒魔法に費やした。
そんな光景を見ていたノット達三人はボル達に近づき話しかける。
「なあ、あんたら一体何者だ? 本当に小国のボーンネルから来たのかよ」
「バモン、失礼であるぞ」
小国という言葉を言ったバモンを遮るようにブルファンは制止した。
「でも、バモンの意見はもっともよ。帝王もいない一国にこの戦力は流石に過剰だわ」
「いいや、別に構わねえぜ。まあ本物の怪物は今国にいるんだがよ······」
トキワはそう話した瞬間、背筋がビクっとなるのを感じた。
(これ以上ってどういう)
ノットは詳しく聞きたかったが何故か怖くなりグッと押し黙った。
「これで大丈夫、暫くは休マセテ」
ブルファン達がボルの方を見ると先程までグッタリとしていた冒険者たちや衛兵は徐々に呼吸が落ち着き始めていた。
(戦闘系じゃなかったの····)
ソルカも心の中でそう思いつつもノットと同じくしてグッと押し黙った。
「そういえば、先程ムチを持った怪しい奴がいたぞ。名前は聞いていないがおそらく今回の凶暴化した魔物たちと関わっている可能性が高いと見て間違い無いだろ」
「マジか、強かったか?」
「強化魔法をしていたからあまりハッキリとは言えないが相当な手練れだろうな。それにまだ何かを隠してそうな雰囲気もあった。小柄で不気味な奴だ」
「左様でございますか。では十分注意させて頂きます」
そして暫くの間、メスト大森林方面の安全を確かめた後、帰ることにした。
「よっし、じゃあな。俺らも帰るぜ」
「はい、お気をつけて」
そうして閻魁に遅れてトキワたちもボーンネルへと帰っていた。
その頃、ボーンネル。
ジンは集会所の部屋にクレースたちと仲間の帰還を待っていた。
つい先程まで少し不安があったけどトキワからの魔力波で全員の無事が確認できて取り敢えず一安心できたのだ。
そして何故か先に閻魁だけ帰宅し、そのまま部屋に入ってくるなり自慢気に目の前に立って大活躍したという話をし始めた。
「そして我がドカンッ! バキンッ! ドンッ! この拳で地面をかち割り我特製の妖力弾を空にぶちまけてバキーンというわけだ!! まあその後は雑魚ばかりだったからな。我が出るまでもなかったわ」
「擬音が多くて何を言っているのか分からんわ」
「あはは、でもお疲れ様。ヴァンが帰ってきたらみんなにご馳走食べさせたいって言ってたよ」
そして閻魁は興奮気味に擬音多めの解説をした後、それを聞くとすぐにヴァンのレストランへと向かっていった。
「······今誰かいた感じがしなかったか」
そんな時クレースはそう言って部屋の周りを見渡した。どうやらパールはいち早く気づいたようだがすぐに驚いた様子を見せた。
「ごめんジン、マーキングできなかった」
「大丈夫だよ。それより、ゲルオードが来た時にいた人と一緒の気配がしなかった?」
「ああ、確かにな」
クレースはドアを開けると足元にキラリと光るものが見えた。
「これは······」
(なぜ、ここに)
「どうしたのクレース?」
「大丈夫だ。なんでもない」
そしてクレースはそっと自分のポケットにそれをしまった。
バーガル王国とギルメスド王国の間に位置するメスト大森林に突如として現れた凶暴化した魔物たち。
両国ともに戦力総出で魔物に対応するが、予想外の魔物の強さに苦戦を強いられていた。
八雲朱傘の序列三位であるラダルスを殺したベイガルがその場に現れ、同じく序列四位のゼーラは激昂する。
ゼーラ激しい怒りにより押されるベイガルであるが、その場から逃げられてしまう。
バーガルの冒険者たちも魔物たちの対応に当たるが、兵士も冒険者も傷つき、未だに鎮まる気配の無い魔物たちに対して徐々に疲れが見え始めてくる。
そんな中、森林の中央付近から突如として激しい雄叫びが響き渡り魔物たちが一斉に向きを変え始めた。
状況を飲み込めない中、バーガル王国の冒険者であるノット、バモン、ソルカの目の前には既に死体となったSランクのヘルワイヴァーンが二体倒れ臥したのだ。
「冒険者、兵士各位に告ぐッ! 全員、今すぐに後退せよ!!」
辺りの騒然とした雰囲気の中にリュードの声が響いた。そして少しの間があった後、その場にいた者たちはハッとなりその命令に従って、徐々に後退を始めていく。
「ねえリュード、本当にあれが救援部隊ってことでいいんだよね?」
「ああ、そうだ。丁度今通信を受け取った。すぐに私たちもここから離れるぞ。残念だが私たちでは彼らの足手纏いになるだけだからな」
「ケッ、普通Sランクがこんなあっさりやられるもんなのかよ。······おい、ソルカ。なにボケっと突っ立ってんだよ。早く行くぞ」
しかしながらソルカはバモンの言葉に応じることなく驚き放心したような表情でゆっくりと自分の前を指さした。
「······来たぞ」
リュードの声とともに二人はソルカの指さす方を見る。
「ッ——」
ソルカの指す方向には天にまで届くような紫色の巨大な光が伸び、それに応じて空の色が薄暗く変化していた。しかしその光景よりもソルカたちが驚いたのはそこから感じ取れる無尽蔵にも思えるほどの力だった。そしてその光は暫く天を照らすとスッと消えていき空は元の姿に戻る。
「行くぞ、危険だ」
そして四人はそのまま前線から後退していった。
一方、ギルメスド王国近くにもその衝撃波は広がっていた。
「バルバダ、動ける? 骨は完全に折れてしまっているようね」
ミルファは先程ベイガルに蹴り飛ばされたバルバダの元へと向かっていた。
「おう、少し痛むが問題ねえ。それよりさっきのは何の音だ」
「まだ分からないわ。ただもし新しい魔物なら状況はかなりまずいわ。今はハルトさんが来たから回復班が間に合っているけど、正直なところ時間の問題よ」
「でもよ、なんか様子が変だぜ。ほら」
バルバダの向く方を見ると魔物たちは徐々に森林の中央へと向かっていたのだ。そんな時、二人の前にハルトが現れた。
「ミルファ、バルバダを連れて一度後退しろ。様子がおかしい。ここは一度俺に任せろ」
「わかりました。ではここは頼みます」
ハルトは二人の背中を見守った後、向きを変えて再び森の中央を向くと、隣にゼーラがきた。
「ハルトさん、奥に進みますか? 正直に言うとかなり危険な様子を感じますが」
「確かに森の中心に魔物は向かっているが、問題は突然現れた存在だ。敵かは分からないが少なくともグラムがいなければ危険だろう。安全確保のために近くの魔物を一通り狩って暫くは様子見だ」
「了解」
そしてその渦中の中心にいた者たちはというと。
「つまらんぞ、おいトキワ、リンギル。お主らとはまだ戦ったことがなかったな。ここで我と戦わぬか?」
「オメエは馬鹿かよ。ジンに言いつけんぞ。もうちょい周りを見て暴れろ」
「ああ、今は遠慮しておく」
閻魁が一通り暴れ回ったため辺りはかなりめちゃくちゃな状態になっていた。
「すげえよボルさん。今の状態だと俺一人でAランク何十体も相手にできるぜ」
傭兵達はラストエントによる自身の超強化に興奮していた。
「通常状態でこのレベルまでいけないとダメ。ジンの強化魔法の練度が高いだけでそれに頼っていたらいずれ痛い目にアウ」
「は、はい。すみません」
そしてヒュード族の空撃部隊は空を飛び、散らばりながら魔物の対応に向かっていた。
「なあドルトン。俺ってこんな強かった? Aランク一撃とか初めてなんだけど」
「いいえ、安心してください。普通のあなたはもっと弱いですよ。まあ驚いているのは私もなのですがね」
「お前達、何ボウっとしている、殺すぞ」
「す、すいません」
(こえぇ)
事実、ガルミューラも含めてヒュード族の皆は自身の成長に驚いていた。
そのため魔物の数はかなり多かったが苦戦することはなかったのだ。
「お姉ちゃん、あれ何?」
ミルの指さす方向からはギシャルが狂気じみた顔で地面を走っていた。ギシャルはヒュード族を発見するとその不気味な笑みを更に深くし、地面を強く蹴った。するとその小ぶりな身体は宙を舞い急速なスピードで接近してきた。
そして空中で腰からムチを取り出すとムチをしならせ身体全体を使い異常なまでの速度で攻撃が繰り出される。
「ッ——」
しかしガルミューラは巨大な『水麗』を片手で持つと一瞬でムチの先端まで移動して水麗に絡め威力を殺した。
「クシャシャシャシャッ! お前らなにもんだぁ? 見たことねえな」
ギシャルはムチを一瞬にして小さく縮めるとスッと地面に着地した。
「お前こそ急に攻撃してくるとは物騒な奴だな。今の私達と一人でやる気か?」
それを聞くとギシャルはジトッとした目で全員を舐め回すように見つめた。
「まぁあ、そうだなあ。どうするか」
ギシャルは不気味に首を傾げ目を瞑って暫く考え込み、ゆっくりと目を開けた。
「おめえらの歪んだ顔を見るのは後でいいや。どうせ全員最後は痛ぶって、痛めつけて俺が殺してやるからヨォ?」
「待てッ」
ガルミューラが止めようとしたがギシャルの隣には黒い空間が生まれスッとその中に消えていった。
そして暫くして魔物達を狩り終えると再びトキワたちの元へと帰っていった。
強化魔法のおかげもあり長引くかと思われた魔物達との攻防は徐々に治ってゆき昼を過ぎた頃にはひと段落がついていた。そして現在、バーガル王国から状況を確認したブルファンとリュードがボルたちの元まで御礼をしにきていた。
因みに、ジッとできない代表の閻魁は一人でそのままボーンネルへと走って帰っていった。
「皆様、前回に引き続いての協力、大変感謝致します」
「ダイジョウブ。それより負傷した人達はドコ? 死なせたらまたジンが悲シム」
「は、はい。ですが傷が深い者が多く······」
「溜めてきたから大丈夫」
するとボルはゼルタスを取り出して溜めていた魔力を惜しげもなく治癒魔法に費やした。
そんな光景を見ていたノット達三人はボル達に近づき話しかける。
「なあ、あんたら一体何者だ? 本当に小国のボーンネルから来たのかよ」
「バモン、失礼であるぞ」
小国という言葉を言ったバモンを遮るようにブルファンは制止した。
「でも、バモンの意見はもっともよ。帝王もいない一国にこの戦力は流石に過剰だわ」
「いいや、別に構わねえぜ。まあ本物の怪物は今国にいるんだがよ······」
トキワはそう話した瞬間、背筋がビクっとなるのを感じた。
(これ以上ってどういう)
ノットは詳しく聞きたかったが何故か怖くなりグッと押し黙った。
「これで大丈夫、暫くは休マセテ」
ブルファン達がボルの方を見ると先程までグッタリとしていた冒険者たちや衛兵は徐々に呼吸が落ち着き始めていた。
(戦闘系じゃなかったの····)
ソルカも心の中でそう思いつつもノットと同じくしてグッと押し黙った。
「そういえば、先程ムチを持った怪しい奴がいたぞ。名前は聞いていないがおそらく今回の凶暴化した魔物たちと関わっている可能性が高いと見て間違い無いだろ」
「マジか、強かったか?」
「強化魔法をしていたからあまりハッキリとは言えないが相当な手練れだろうな。それにまだ何かを隠してそうな雰囲気もあった。小柄で不気味な奴だ」
「左様でございますか。では十分注意させて頂きます」
そして暫くの間、メスト大森林方面の安全を確かめた後、帰ることにした。
「よっし、じゃあな。俺らも帰るぜ」
「はい、お気をつけて」
そうして閻魁に遅れてトキワたちもボーンネルへと帰っていた。
その頃、ボーンネル。
ジンは集会所の部屋にクレースたちと仲間の帰還を待っていた。
つい先程まで少し不安があったけどトキワからの魔力波で全員の無事が確認できて取り敢えず一安心できたのだ。
そして何故か先に閻魁だけ帰宅し、そのまま部屋に入ってくるなり自慢気に目の前に立って大活躍したという話をし始めた。
「そして我がドカンッ! バキンッ! ドンッ! この拳で地面をかち割り我特製の妖力弾を空にぶちまけてバキーンというわけだ!! まあその後は雑魚ばかりだったからな。我が出るまでもなかったわ」
「擬音が多くて何を言っているのか分からんわ」
「あはは、でもお疲れ様。ヴァンが帰ってきたらみんなにご馳走食べさせたいって言ってたよ」
そして閻魁は興奮気味に擬音多めの解説をした後、それを聞くとすぐにヴァンのレストランへと向かっていった。
「······今誰かいた感じがしなかったか」
そんな時クレースはそう言って部屋の周りを見渡した。どうやらパールはいち早く気づいたようだがすぐに驚いた様子を見せた。
「ごめんジン、マーキングできなかった」
「大丈夫だよ。それより、ゲルオードが来た時にいた人と一緒の気配がしなかった?」
「ああ、確かにな」
クレースはドアを開けると足元にキラリと光るものが見えた。
「これは······」
(なぜ、ここに)
「どうしたのクレース?」
「大丈夫だ。なんでもない」
そしてクレースはそっと自分のポケットにそれをしまった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います
こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!===
ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。
でも別に最強なんて目指さない。
それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。
フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。
これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる