Maria

エターナル★

文字の大きさ
55 / 65

リリス

しおりを挟む

 「奴が来たぞ!!」
 「我々の反逆者!」
 「気狂いの淫乱女め!!」

コロシアムの入り口から聞こえてきた
高く鋭いヒールの音と共に、
数億人もの人々が叫びだした。

しばらく罵声を発していると、
そこからは美しい黒の服を着て
黒いヒールを鳴らす
キリシャの反逆者が現れた。
彼女の後ろには
ゼウスとハデスが並んでいる。

反逆者の名はリリス。
彼女はこれから、
我々の目の前で殺される。

彼女は無表情で堂々と歩き
真ん中にいるキリストの方へ歩いた。
リリスはキリストの手によって
殺されるのだ。
方法は簡単。
彼女の心臓に5発、
撃つだけだ。

キリストは
両手の中の金の拳銃をじっと見つめ、
もう1度マリアを見た。

キ「……っ…」

彼女はニコニコ笑いながら、
コロシアムの皆に手を振っていた。
皆は彼女に怒鳴りながら
サムズダウン、
いわば親指を下に向けていた。
リリスはただただ、
それを笑って見ていた。

マ「やっほ~♪」

あまりにもひどくて、
見てられなかった。

あぁ、マリア。
お前は本当に変わってしまったのか?
それともその行動には
何か……意味でもあるのか?

泣きそうになるキリストを
隣にいたエロスが肩を叩いて慰めた。

すると、
急にマリアが
どこか一点を見つめ固まった。
数億人もの人々が
それに気付かず罵声を浴びせる中、
キリストとエロスだけがそれに気付いた。

彼女はしばらくそれを見つめると
何かとてつもないショックを受けたように、
唇を僅かに震わせ
眉を目に見えないほどに寄せ
目を静かに閉じた。
よく見ると、
それは小声で
何か呟いているようにも見えた。

ク「反逆者リリス、
  速やかにキリスト様の前に来なさい。」
マ「………」

クロノスが冷たくリリスに言い放つ。
先程の彼女はどこえやら。
彼女は何もかもどうでも良さそうな瞳で
あちこちを眺めながら、
ゆっくりキリストの前まで来た。
その彼女の変化に違和感を覚えながらも
キリストは辛そうに
彼女の心臓に銃口を当てながら
リリスに聞いた。

キ「…………何故……俺達を、
  俺を……裏切った?」

すると、
リリスは驚いたように目を大きく開いた。
信じられないとでも言わんばかりに
彼女はこちらを見つめると、
体をこちらに密着させ
今にも消えてしまいそうな声で
ただ一言、言った。

マ「裏切ったのは……貴方じゃない…」
キ「?」

バァァンッ!
バンバンバン!
バァァァァンッ!!

キ「……っ…………?!」

数秒の間、
何もわからなかった。
ひとつだけ、
理解出来た事と言ったら
彼女が一粒の涙を流して倒れたことだ。

キ「マリア?」

彼女は自分の手で引き金を引いたのだ。

つい、いつもの癖で
キリストは倒れるマリアを抱きかかえた。

 「イェェェァ!!!!」
 「奴は死んだァーーー!!!」

リリスの死を確認すると、
皆は嬉しそうに狂喜乱舞した。
喜ばしい歓声の中、
キリストだけが泣きながら彼女を抱きしめた。



キ「…愛してたよ………」



***********

マリアが消えてからのキリシャの主は
やはりキリストが務めた。
組織は主の色に染まるものというのは
本当の事で、
マリアのせいで落ちぶれたキリシャも
たったの1ヶ月で
あっという間に
元の裏組織界のボスとなった。

………いや、
『元の』というのは間違いだ。

マリアがいなくなってからのキリシャは
全く面白みのない
冷たい団体となっていた。

人の死を簡単に見る事の出来る
この冷たく暗い世界では彼女だけが、
皆に愛を、
暖かさを与えてくれていたのだ。

いつでも、
どこかで必ず鳴っていた
あの高く鋭いヒールの音はもう、
今はない。

それは、
暖かかったその組織に
あの光が入ってくる事は、
もう、
二度と無い事を重々と感じさせてきた。





……To be continued


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

処理中です...