異世界賢者の魔法事件簿

星見肴

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2章 誘拐・融解事件

79話 クライマックスは見逃せない

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 和葉はローブのフードに刺繍されている模様について尋ねた。やはり、ペルーナ教会の紋章だという。本に朱印で紋章がスタンプされていれば当然教会所有のものだとも確認を取った。

「そうだね。それがどうしたの?」
「霜の魔神、ヨートゥンを知っているだろうか?」
「あぁ、あの禁忌召喚神の? 何で聞いて……」

 カルロスがカッと目を見開く。

「ちょっと待って! まさか、それが目的だったりしないよね?!」

 夢の話だから証拠として採用するには難しいと前置きして、彼らが研究している場所と持ち出された神晶石の在り処を伝える。教会の人間がシャラリアに帰る時の中継地点の別荘であることを伝えると、カルロスはもう呆れて首を振るだけになってしまった。

「苦労が絶えないな」
「あはは……『なってない大人』がいると若者は苦労するって、カズハさんが言ってくれただろう? もう慣れてるよ」
「苦労性だ。将来、君が禿げないか心配だ」
「それで具体的な手伝いとは言ってはいるが、何を手伝ってくれるんだ?」

 ケイが訊ねた。

「今、地下水路の『共有要地』の権限は審問調査官が握ってるの、通達来てなかった?」
「そういえばそうだったな」ケイが言った。
「リーダーが何を言おうとも僕は審問調査官だからね。権限がないなんて言わせない。君達に地下水路の通行権限を解放するんだ。ちょっと、ゾンビが面倒だけど、アンデット討伐なら僕達教会の十八番芸さ。任せてよ」

 にっこりとカルロスが笑う。
 今までずっと神妙な顔だったから心配だったが、カラアゲを食べに来ている時のような、素の彼に戻っているのだろう。

「確実に摘発へ至ると思うが、大丈夫なのか?」
「もちろん。僕自身は準備してきたから、それは大丈夫さ」

 あぁでも、とカルロスは和葉を見上げる。

「カズハさん、ちょっとお願いがあるんだけど……僕に何かあった時は、僕の弁護人として証人喚問に応じてくれる?」
「応じよう。マルセイ達の弁護は処刑されることになってもやらないが、君の弁護はしないと私が首を吊って死にたくなる」

 ふふふ、とカルロスが肩を震わせて笑う。

「頼りになるなぁ」
「それは、こちらの台詞だ。君にはこの事件の間、ずっと助けられてきた。改めて礼を言いたい。最後まで手を貸してくれて、ありがとう」

 カルロスは少々呆けた後、気恥ずかしそうに頬を赤らめながらふわりと微笑んだ。

 ■□■□■

 鍵を持ってきたアシュレイから鍵を受け取った。正装に着替えていて、普段の彼とは見違えるように別人だ。
 カルロスがいることに驚いていたが、地下水路の解放権限を和葉達……正確には、軍人を除いた一般人にのみ開放してくれると約束した。リーダーが一応、軍人を規制しているから、それに則ってカルロスは和葉達をご指名してくれたのだ。
 ダニエルは軍人ではなくアシュレイ直属の『ナハト』だから一般人枠として入れるように許可をくれることになった。

「聞くが、本気で摘発を?」
「もちろん。何のための審問調査官だと思ってるの? それに、ここまでマルセイ達が馬鹿やってたら帝国との関係に響くでしょ。だから、『フリ』は必要なんだ」

 カルロスが「まぁ」と続ける。

「帝国もちょっと面倒になると思うけど……今回の事件はさすがにシャラリアも黙っていられないからね。『アレ』の使用すると思う。徹底的にやらないとシャラリアとしては示しがつかないだろうからね」
「……そうか」

 二人の言葉のやりとりはここで終了。アシュレイがサビータに送り出された。
 どこかと聞いたら、まさかの『テテ・ルカン』の裏口だ。無許可ではなく、訪問販売に関連した交渉をした時に、裏口なら使用していいと許可をもらったそうだ。
 つまり、軍人がみんなテテ・ルカンのお店の裏口からぞろぞろと出て行って、その後アシュレイも出て行く……想像するだけでも面白い光景だ。

「それじゃ、行ってくるよサビータさん。僕の退学処理お願いね」
「えぇ、分かったわ。でも私も、行くわ」
「「えっ」」

 ケイとカルロスが声を揃えた。

「だって、ここまで学生達も見てきたのよ? 最後だけお預けなんて、ズルいでしょ?」
「確かに。クライマックスこそ見れなかったらつまらない」
「私は正面だけど、地下水路はお願いね」
「あっ、間に合ってよかった!」

 そう言って、リーセルが会議室に入って来た。

「これ、カズハさんに頼まれてたミサンガです」

 渡されたのは緑が基盤の、ストライプ模様のミサンガだ。

「作れたんですね」
「はい。効果もばっちりですよ! 職員の皆さんに試してもらって、お墨付きをもっています!」

 ふんす、と自信に満ち溢れたリーセルの表情だ。和葉が『フォルンゲルグ』に召喚されてから見てきた明るい表情に、とても近い。

(やっぱり、リーセルが糸で編んだ魔道具って効果がおかしいと思うんだよな……)
「これ、売り出してみないか?」
「こういうの使う人って、囚人ぐらいじゃないですか?」
「言っていなかったけど、本当はジュリエさんに使ってもらう予定だったんだ。彼女なら泣いて喜ぶだろう」
「そ、そんなにですか?」
「あぁ。彼女も、スキルでは苦労してきたみたいだから」

 リーセルに礼を言って、和葉達もドアを潜り抜ける。そして、サビータも。
 行ってきますとリーセルやシーラ、冒険者ギルドに残るメンバーに手を振って和葉達は地下通路へ向かった。
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