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 冒険者になるため訓練だと外で走り込もうとしたが、大慌てで連れ戻された。何故か自分の家の庭ですら危険だという。仕方がないから家でスクワットや、反復横飛びを取り入れた。

 冒険者は野外で料理をするからと忙しい厨房を見学した。
 実はこの家の料理、あんまりおいしくない。この国は調理技術が発展していないようだ。

 最初は料理長のハリスや厨房の料理人組にメチャクチャ細かい要望していたが、結局は実演する形になった。それが美味しいと評判だ。

 今ではみんなも料理の腕を磨こうとヴァレリアのレシピを会得すると、日に日に味がヴァレリアの手料理を軽々超えていった。

 調子に乗ったヴァレリアは、みんなに色んなお菓子を作ってみせた。そうすればあっという間に教えた時よりずっとずっとおいしくなって返ってくる。さすが職人だ。

 こうやって、真剣に仕事に取り組む人が作る物は何でも美味しい。

か しかし、それからアルトからの猛烈なアタックが始まった。

 冒険者なんかより料理人にならないかいとか、店を構えようとか、料理人の腕があってこその絶賛なのだが、最近は毎日のように色々な店舗の写真を見せてくる。ここは狭いが立地条件が良い、ここの店舗は貴族達が住む一等地にある。
 冒険者は反対だが、別の道なら全力で薦めてくれるようだ。

 アルトの申し出をやんわり断り続ける日々の中、エリンの授業がお休みのある日。今日はお客が来ると聞いて、小さなタルトを作り、フルーツで飾り付ける。

 苺に似たドロップベリーという果物を半分にカットして、花が咲いているように飾り付けたり、スライスした果物をくるくる巻いて薔薇みたいにしたり、あとは適当に飾ったり。それでもセンスが必要だ。残念ながら、クソザコ令嬢ではお花の飾りしか美しくなかった。

 その最中に来客を告げるベルが鳴り響く。夢中になって飾り付けていたみんながあっ! と声を上げたのにはちょっと笑ってしまった。

 やばいやばい、紅茶の用意ができてないぞ! と大慌て。
 用意をお願いし、客人達の足留めは任せろとヴァレリアは意気揚々と厨房を飛び出して行った。
 応対していたのはライリー。そこには見覚えのある焦げ茶色の髪。

「フォンさんだ!」
「お久し振りです、ヴァレリアさん」
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