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 王都を出て馬車で向かうこと半日。エリアスガルズ西部のレンドル。ライリーが言っていた元仲間のいる冒険者ギルドだ。今日はアルトと二人っきりのお出掛けである。

 どうやら前々から話を付けていたようでアルトから彼がフォンだと紹介された。ナナリー達の元仲間で現職ギルドマスター。

 彼に付いて行こうとするとチンピラみたいな冒険者達が絡んできた。どうしたんだボンボン? と、ニタニタ笑いながら雑な絡み方をしてくる。

 たった今ギルドマスターの親しげだったのを見ていないのか。

「ヴァレリア、フォンおじさんと一緒に奥へ行っていなさい。すぐ片付けてくるから」
「分かりました」

 物をあまり壊さないようにと窘めたフォンに連れられ、奥にあるギルドマスターの部屋へと避難。数秒後、怒声と爆音が聞こえてた。しかし扉を閉めると音がパタリと聞こえなくなった。

「一応、ヴァレリアさんのお父さんにご紹介いただきましたが、私はフォン・メンジュンと申します」

 フォンはアルトとペアで組んでいた平民出身の男性だとライリーから聞いている。物腰柔らかだが気さくな人で、約束は守る誠実な人だ。あのアルトがヴァレリアを預けたのだから、信頼に値する人物なのだろう。

「あの、非常識だとは思うんですが、二つほど聞きたいことがあります」
「何でしょう? お答えしますよ」

 フォンにヴァレリアのステータスを見せて、まずはステラが本当に増えないかを聞いてみた。
 眉尻を下げたフォンは、通説は、と少し濁す。

「なら、これは知ってますか?」

 そう言って、ヴァレリアは二つ目のステラを押して限界突破画面を開いて見せた。フォンの顔を見上げながら、この画面が出るのは普通なのか尋ねる。

 表情が明らかに硬直した。そんなのは知らないと言わんばかり。ヴァレリアは三個目から順々に十個目まで押していった。

「……これ、は……」
「フォンさんのも見せてもらっても良いですか?」

 見せてくれたフォンのステータスは赤色で、五つのステラが灯っている。同様に黒いステラが五つある。やっぱり合計十個だ。

 六個目の限界突破開いて見せた。やはり限界突破と書いてあった。それらを見て、フォンの顔付きが変わった。

「これは私も知りません。お父さんには教えましたか?」
「いえ、教えていません。父はお城に勤めていますし……その、あの冒険者さんをボコボコにしてるかと思うと……」
「そうでしたか。良かった、アルトじゃなくてナナリーに似てくれて本当に良かった」

 父親似じゃないと知ってそんなに感動することだろうか。アルトの黒歴史が公開された瞬間だった。
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