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「侯爵の転売用のお店ですか?」
「いや、取り込まれた店だよ」
「? 取り込まれたお店?」

 転売用の家の資材全てを差し押さえた時、他の被害者達に謝罪金にすべて消えたが、被害を受けた店は経営権が何故かヴァイオレット家に譲渡されたらしい。普通は元に戻るものだろう。

「どれかを潰してシオンの二号店にしよ」
「お待ちくださいお父様!」

 店の情報を見せてもらった。金細工屋、石屋、魔道具店の三店舗だ。意外に取り込んでいないなと思ったが、今まで被害にあっていた店をアルトはバッサリ切り捨てるだろう。それでは彼らが可哀想だ。

 助け船を出せるだろうと彼らの商品を見せてもらうことになった翌日、家に三店舗の商品と一緒に店長まで運ばれていた。まるで犯罪者が処刑を告げられ怯えているようだ。

 金細工屋の店主はシャノン、石屋店主はローガン。この二人はドワーフだ。魔道具屋の女店主はジェマという美人だった。

 商品を見せてもらったが、金細工屋は意匠を凝らした金細工。魔道具屋は魔石を使った魔道具。石屋は石細工。鉄鉱石から魔石、それに安いという色彩豊かな石……どう見てもパワーストーンだ。

 この世界ではどんなにきれいな石でも魔石の方が価値がある。
 この世界のお守りが窮地には結界を張ったり、身体能力を常に上げてくれたりと物理的に効果を発揮するからだ。

 しかし、このパワーストーン系の石をアクセサリーの飾りとして使えば安価で売り出せそうだ。ローガンは主に石に関するアドバイスや販売、それに二店舗に石を卸せばさらに安くなるだろう。デザインには必ずシャノンが絡む。魔道具屋も石に関連する道具のようだし、この三店舗で共同経営をすれば効率よく商品を作れるだろう。
 転売ヤー侯爵がそこまで狙っていたのではないかと問うと三人は一様に首を振った。

「それじゃあ、皆さんにお任せ――」
「まずはヴァレリア様に献上品ですね!」
「そうだな。成果が上げられなければ全店潰す」
(このカス親父ーー!!)

 そんな軽々しく言うな、お店を作るのは大変なんだぞと子供らしい言葉で嗜めたが、店長三人にはどうやらアルト攻略法が分かったらしい。

「ヴァレリア様のブランドを作りましょう!」
「うん?!」
「そうだ名案だ!」「そうしよう!」

 あっという間に別室に連行されると、その後助けて頂きありがとうございますと拝み倒されてしまった。こちらこそ横暴な父親で申し訳ないと土下座。父親のツケはその娘が支払わねばなるまい。
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