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 貴族の家紋を使うことを許された職人はその家から信頼にたると認められたことを意味する。
 本来なら高級店のみが得られる権利だ。胸ポケットに刺繍したり鞘や剣に刻むことで、己の物であるという意味と、己の家を誇る気持ちを表しているのだ。

 そして、王家紋章の使用許可が降りたということは王族の信頼を得たということだった。
 店長組にはこれまでにない栄誉だと大喜び。

 アルトも三店舗を複合した店を構えると宣言した。三人の専用工房を設け、要望があれば店舗に繋がった居住スペース、あるいは近くに家を建てるか、彼らの様々な要望を叶えるとまで言う。

 つまり、三人は誇りを持って仕事を続けていけることが確約されたのだ。

 今更だが、ヴァレリアは三人が転売ヤー侯爵に取り込まれた技術について聞いてみた。
 シャノンとローガンはそれぞれ装飾技術だが、ジェマは魔石の加工技術だ。

「私の国では『石言葉』というものがあってね? その石言葉に合う術式を施すと魔法とよく似た力を発揮するの」
「石言葉?! あの、パワーストーンにもありますか?!」
「えぇ。たくさんの石にあるわ」
「そうなのね?! なら、頑張ったら広告に使えそうな言葉が出てくるかもしれない!」

 早速今からパワーストーン類を持って来ようとローガンに声を掛けてヴァレリアは部屋を飛び出した。
 少なくとも、アルトとシャノンは食いつく所が違うと思ったが、天下のヴァレリア様なので黙して見送った。

「今の話、本当なのか」
「オラはそんな技術聞いたことないぞ?」

 アルトの問い掛けとシャノンの疑問に、ジェマは微笑む。

「それは、私が作り上げた技術ですから」





 ジェマの技術は現段階中で色々な石には施せないと知った。誕生石という概念もあるらしく、それならばこっちをメインにしてアクセサリーを売り出すことに。ちなみに脳筋ではうまい文句は思い付かなかったが、ジェマが考え付いてくれた。

「ということがありまして……」
「アルトから聞いていましたよ」

 武器専用の収納魔道具、商品名『ホルダー』の試作を使ってみたいというフォンとルーカス、それにミラに渡した。
 ミケーネの武器は自分の爪だから必要はない。見た目が華奢なのにバリバリの接近戦アタッカーだった。羨ましい。

「ヴァレリア様の髪飾り、とってもきれいですね!」

 ハーフアップに纏めた髪を菱形のバレッタで留めている。大きなアメジストがカットされ、その周りを小さなホワイトオニキスが囲っている。一応、お守りの効果もあるらしい。

 お礼を言って、みんなが作ってくれたんだと宣伝を兼ねて自慢する。これから遅れを取り戻していかなければ。
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