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 しかし、冤罪だったのに結果は良かったのか。あそこから連れ出したとは、今いる場所から逃げたかったのか?

 コナーの今いる所と言えば、王立医師団薬師。エリートが通う場所だと思ったが……。

(いや待てよ。もしかして、ブラック企業……――いや、あり得るんじゃない?)

 だって薬師のコナーがヴァレリアの記憶検査に来たのだ。記憶の分野は脳神経系か精神科ではなかろうか。

 しかし、それならもう少し疲れているように見えだろう。何より、疲れていただけならマフィアに入ってから後悔するのではないか?

 連れ出してくれて良かったとは、『パンドラ』に入って良かったと思ったからだ。

 そして、コナーはガイアに忠誠心を見せている。
 なら、『パンドラ』はそれほど悪い団体ではないということか?

「うん、分からんから寝よ」







 ガイアとシリルの突撃研究所訪問から二日後、今日はヴァレリアに会いたい人がいると言うアルト。断っても良い、無理しなくて良いと言うから相手は誰か尋ねたら、なんと陛下だ。何故断るのを前提に話すのだ。断ってはいけないだろう。

 ろくでもない内容だと言うが、アレンとの婚約話ではないという。

「この前、陛下達がシオンに来ただろう? 商品に専門的な契約を結べないか……つまりは、シオンを王家専門店にしたいんだ」
「……それはつまり?」
「要はね、王様達のために作ってほしいってことなんだ」
「王室御用達ということではないんですか?」
「そういう意味ではなかったね」

 アルトがわざと濁しているのか、それとも本当なのかよく分からない。対応はすべきだろうとヴァレリアはシオンの帳簿を見せてもらった。

 桁がおかしくて一回帳簿を閉じたが、もう一度確認して目が点になった。





 フレデリックが家にやって来た。
 応接間では早速、シオンの話がされた。内容はアルトの言った方が正しい。専門的に契約を結んで、必要事に必要数を卸してほしい。もちろん最優先だ。王室御用達ではあるが、こちらのことは一切考えられていない。

「それはどんなに人が待っていてもですか」
「それは、確かに申し訳ない。でも……――」

 ヴァレリアが出したのは、予約待ちの名簿を渡す。ちなみにハードカバーの本ぐらいに暑い予約表に目を通させる。ちなみにその一冊で五千件以上もある。
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