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魔女サービラ
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ブリーストンの町に常駐している騎士団の責任者である団長のオッツが、部下から報告を受けていた。
彼は30代後半ぐらいの年齢で伸ばした髪を後ろで束ねていた。
彼は数か月前、王都から赴任してきたばかりであった。
「それで……こちらの被害はどれくらいだったのだ?」
オッツが尋ねると部下が報告を行っていた。
「はい……。誰も死亡した者はいません」
「そうか……。それはよかった……」
オッツは安堵の息を吐いていた。戦闘になっても死者が出ないのが1番いいのである。
「ところで、あの2人が今回も出撃したんだな?」
彼が質問すると部下は答えていた。
「はい、アニウスとオトフリートが出撃したと聞いております……」
「そうか……。まあ、あの2人にとっては当然の事のだからな」
2人が傭兵達を圧倒する程の強さを持っていたことはオッツには分かっていた。
敵の数倍もの戦力を彼等は持っているのだ。傭兵達にとって、あの2人が来たことで命運は尽きたのである。
「報告ご苦労だった……。下がっていいぞ……」
オッツは部下を下がらせると、椅子の背もたれにもたれ掛かった。そして、溜息をついた。
「まったく……アニウスとオトフリートの奴め! 毎度、毎度出撃しおって!」
彼は愚痴をこぼしていた。
彼等の実力は分かっているが、無謀な戦い方をするので、その都度兵士や傭兵達の被害が気になっていたのである。
「何とか、あの2人を止める方法はないものか……」
オッツが呟いていると彼の部屋にアニウスとオトフリートの2人が入って来たのである。
「やあ、団長! 帰って来たぜ!」
オトフリートが大声で言うとオッツは顔をしめていた。
「アニウスにオトフリート……お前達は戦う事しか考えていないのか? もう少し冷静に考えて行動しろ」
しかし、彼等はヘラヘラと笑って受け流していた。
「大丈夫だ! 俺達は無敵だ!」
オトフリートが胸を張って言うと、オッツは溜息をついていった。
「そうかもしれんが……もう少し、慎重に行動してくれ! お前達が大丈夫でも、味方の被害が甚大になったら大変だぞ!」
彼の言葉にアニウスは鼻で笑っていた。
「フン……。俺達がいれば、やられることはない!」
アニウスの言葉を聞いてオトフリートも頷いていた。
「そうそう! 兄貴の言う通りだ! 俺達が負けるわけがないだろう?」
そんな彼等の言葉にオッツは呆れていた。この2人は自分の力を過信している……。
「もういい……。好きにしろ……」
彼はそう言うと溜息をついていた。その時、部屋の中に突然、女性が現れたのである。
「ちょっといいかしら? 貴方達に伝えたい事があって来たの」
その女性は黒髪に整ったエキゾチックな顔立ちをしていた。そして、褐色の肌を持ち漆黒の瞳を持つ妖艶な美女だったのだ。
年齢は20代半ばに見え、この国の服装ではない異国風の黒いローブを着ていた。
彼女は魔女であり、彼等に能力を与え配下としていたのである。
「どうしたんだ? サービラ?」
アニウスが彼女に訊いていた。
「最近になって、この町に他の魔女の気配を読み取ったわ」
彼女の話を聞いて、オトフリートが聞いてきた。
「君以外の魔女だって!?」
彼の興奮した顔を見て、サービラが微笑みながら頷いていた。
「ええ……。魔女は私以外にもいるの……。その内の1人がやって来たみたい……」
「へえ……どんな魔女なんだ?」
オトフリートが聞くとサービラが説明を始めた。
「そこまでは分からないわ。ただ、分かっている事はこの町にいると云うことね……」
「なるほど……。それは興味深い話だな」
彼がサービラの話を聞いていると彼女は意気揚々とした表情を浮かべた。
「ふふっ……、貴方達にとって戦う事は楽しみでしょう?」
「そうだな、近い内に戦う事になるだろうな……。楽しみだぜ!」
オトフリートも得意満面に話しているとオッツも彼女に話し掛けていた。
「どうやって、この部屋に入って来たんだ……?」
「あら、簡単な事よ……。瞬間移動の魔法でやって来たのよ」
彼女はそう答えるとオッツは了解していた。
「そうか……。くれぐれも、俺達以外から見られるなよ。お前の事が知られたら、面倒な事になるからな!」
「大丈夫よ……。貴方達以外には見られないから」
サービラが笑みを浮かべて答えていた。
「そうか……ならいいが……」
オッツは溜息をついていたのだ。
(それにしても、一体どんな奴等なのだろうか……)
彼は頭を悩ませていた……。
時は夕暮れになり、ブリーストンの町の酒場にアニウスとオトフリートがいた。
彼等は酒を飲みながら、これからの戦いについて話し合っていたのだ。
「これから、どうすんだよ。 この町に魔女がいるってよ」
オトフリートが笑いながら言うとアニウスも笑みを浮かべていた。
「そうだな……。戦うのは初めてだが、人間相手とは違って魔女は面白そうだな!」
彼は酒を飲んで上機嫌になっていた。
「そうだろう! 弱い奴等を相手にするよりも、強い奴等と戦いたいぜ!」
オトフリートが豪快に笑いながら話しているとアニウスも頷いていた。
「まあ、どんな奴が来ようが負けはしないさ」
兄弟は自信満々だった。2人が話していると酒場に数人の女性と1人の男が入って来たのである。
(なんだ? あの連中は……?)
兄弟が怪訝そうにしていると、彼等は空いている席に座って飲み物を注文し始めたのだ。
「なあ、あの連中を見てくれよ。女はみんな美女じゃないか?」
オトフリートが話しているとアニウスも認めていた。
「そうだな……。その内、3人は10代後半ぐらいだな……」
彼等は品定めするように女達を見ていた。そして、2人はある事に気が付いた。
明らかに20代の女性が他の仲間達に指示を出しているのだ。
「あの女は20代ぐらいか……。かなり美人だぞ」
オトフリートが呟くとアニウスも頷いていた。2人共、女性の中でも美人な部類に入る20代の女性を興味を持って見ていたのだ。
「ああ……美人だが、あの雰囲気は只者じゃないな……」
アニウスが言うとオトフリートも頷いていた。
そう、この女性はランシーヌだったのである。
彼は30代後半ぐらいの年齢で伸ばした髪を後ろで束ねていた。
彼は数か月前、王都から赴任してきたばかりであった。
「それで……こちらの被害はどれくらいだったのだ?」
オッツが尋ねると部下が報告を行っていた。
「はい……。誰も死亡した者はいません」
「そうか……。それはよかった……」
オッツは安堵の息を吐いていた。戦闘になっても死者が出ないのが1番いいのである。
「ところで、あの2人が今回も出撃したんだな?」
彼が質問すると部下は答えていた。
「はい、アニウスとオトフリートが出撃したと聞いております……」
「そうか……。まあ、あの2人にとっては当然の事のだからな」
2人が傭兵達を圧倒する程の強さを持っていたことはオッツには分かっていた。
敵の数倍もの戦力を彼等は持っているのだ。傭兵達にとって、あの2人が来たことで命運は尽きたのである。
「報告ご苦労だった……。下がっていいぞ……」
オッツは部下を下がらせると、椅子の背もたれにもたれ掛かった。そして、溜息をついた。
「まったく……アニウスとオトフリートの奴め! 毎度、毎度出撃しおって!」
彼は愚痴をこぼしていた。
彼等の実力は分かっているが、無謀な戦い方をするので、その都度兵士や傭兵達の被害が気になっていたのである。
「何とか、あの2人を止める方法はないものか……」
オッツが呟いていると彼の部屋にアニウスとオトフリートの2人が入って来たのである。
「やあ、団長! 帰って来たぜ!」
オトフリートが大声で言うとオッツは顔をしめていた。
「アニウスにオトフリート……お前達は戦う事しか考えていないのか? もう少し冷静に考えて行動しろ」
しかし、彼等はヘラヘラと笑って受け流していた。
「大丈夫だ! 俺達は無敵だ!」
オトフリートが胸を張って言うと、オッツは溜息をついていった。
「そうかもしれんが……もう少し、慎重に行動してくれ! お前達が大丈夫でも、味方の被害が甚大になったら大変だぞ!」
彼の言葉にアニウスは鼻で笑っていた。
「フン……。俺達がいれば、やられることはない!」
アニウスの言葉を聞いてオトフリートも頷いていた。
「そうそう! 兄貴の言う通りだ! 俺達が負けるわけがないだろう?」
そんな彼等の言葉にオッツは呆れていた。この2人は自分の力を過信している……。
「もういい……。好きにしろ……」
彼はそう言うと溜息をついていた。その時、部屋の中に突然、女性が現れたのである。
「ちょっといいかしら? 貴方達に伝えたい事があって来たの」
その女性は黒髪に整ったエキゾチックな顔立ちをしていた。そして、褐色の肌を持ち漆黒の瞳を持つ妖艶な美女だったのだ。
年齢は20代半ばに見え、この国の服装ではない異国風の黒いローブを着ていた。
彼女は魔女であり、彼等に能力を与え配下としていたのである。
「どうしたんだ? サービラ?」
アニウスが彼女に訊いていた。
「最近になって、この町に他の魔女の気配を読み取ったわ」
彼女の話を聞いて、オトフリートが聞いてきた。
「君以外の魔女だって!?」
彼の興奮した顔を見て、サービラが微笑みながら頷いていた。
「ええ……。魔女は私以外にもいるの……。その内の1人がやって来たみたい……」
「へえ……どんな魔女なんだ?」
オトフリートが聞くとサービラが説明を始めた。
「そこまでは分からないわ。ただ、分かっている事はこの町にいると云うことね……」
「なるほど……。それは興味深い話だな」
彼がサービラの話を聞いていると彼女は意気揚々とした表情を浮かべた。
「ふふっ……、貴方達にとって戦う事は楽しみでしょう?」
「そうだな、近い内に戦う事になるだろうな……。楽しみだぜ!」
オトフリートも得意満面に話しているとオッツも彼女に話し掛けていた。
「どうやって、この部屋に入って来たんだ……?」
「あら、簡単な事よ……。瞬間移動の魔法でやって来たのよ」
彼女はそう答えるとオッツは了解していた。
「そうか……。くれぐれも、俺達以外から見られるなよ。お前の事が知られたら、面倒な事になるからな!」
「大丈夫よ……。貴方達以外には見られないから」
サービラが笑みを浮かべて答えていた。
「そうか……ならいいが……」
オッツは溜息をついていたのだ。
(それにしても、一体どんな奴等なのだろうか……)
彼は頭を悩ませていた……。
時は夕暮れになり、ブリーストンの町の酒場にアニウスとオトフリートがいた。
彼等は酒を飲みながら、これからの戦いについて話し合っていたのだ。
「これから、どうすんだよ。 この町に魔女がいるってよ」
オトフリートが笑いながら言うとアニウスも笑みを浮かべていた。
「そうだな……。戦うのは初めてだが、人間相手とは違って魔女は面白そうだな!」
彼は酒を飲んで上機嫌になっていた。
「そうだろう! 弱い奴等を相手にするよりも、強い奴等と戦いたいぜ!」
オトフリートが豪快に笑いながら話しているとアニウスも頷いていた。
「まあ、どんな奴が来ようが負けはしないさ」
兄弟は自信満々だった。2人が話していると酒場に数人の女性と1人の男が入って来たのである。
(なんだ? あの連中は……?)
兄弟が怪訝そうにしていると、彼等は空いている席に座って飲み物を注文し始めたのだ。
「なあ、あの連中を見てくれよ。女はみんな美女じゃないか?」
オトフリートが話しているとアニウスも認めていた。
「そうだな……。その内、3人は10代後半ぐらいだな……」
彼等は品定めするように女達を見ていた。そして、2人はある事に気が付いた。
明らかに20代の女性が他の仲間達に指示を出しているのだ。
「あの女は20代ぐらいか……。かなり美人だぞ」
オトフリートが呟くとアニウスも頷いていた。2人共、女性の中でも美人な部類に入る20代の女性を興味を持って見ていたのだ。
「ああ……美人だが、あの雰囲気は只者じゃないな……」
アニウスが言うとオトフリートも頷いていた。
そう、この女性はランシーヌだったのである。
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