マイホーム戦国

石崎楢

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第212話:大和国改造計画始動

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1571年になった。
正月の慌ただしさも通り過ぎた頃、私は宇陀山の自宅に帰ってみた。
現代では言えば、有休消化を含めた冬季休暇みたいな気分であったのだが・・・

「う・・・動かない・・・」
残念なことに車庫のアクセラのエンジンが始動しなかった。
さすがにここまで動かさなければこうなってしまうだろう。

「ワン・・・」
サスケが私を慰めてくれるかのように足にしがみついてきた。
「サスケ。モフモフさせてくれ・・・」
「わふ・・・」
なんか久しぶりに愛犬とのひと時。
思い出してみれば、休みはこれが日常だった。
しかしこの時代に来てからは、もう自分ではどうにもならないところまで来ている感がある。
アクセラが動かなくなったことは、現代との縁が本当になくなってしまったことを意味している。
そんな気がしてならなかった。

「ぶふぉ~!!」
そんな私の寂しげな顔を覗き込むとドングリや木の実を手渡そうとする黒い物体。
「シンイチか・・・ビックリしたぞ。」
我が家の愛犬ゴールデンレトリバーのサスケにとって、この時代の友であるツキノワグマのシンイチだった。
よく考えればシンイチとの付き合いも長い。

「冬眠しないのか?」
素朴な疑問を投げかけてみた。
「ぶふぉ~(タイミング逃した)」
よくわからないが、何となく冬眠し忘れたのだろう。

「義父上様。ゆっくりとしていってくださいね。シンイチも義父上とサスケが来てくれて嬉しいのよ。」
楓は洗礼を受けて切支丹になっていた。
美佳からもらったシスターのコスプレがすこぶる可愛い。

「ああ、あと二、三日はのんびりと過ごさせてもらうよ。」
そう答えてはいるが、我が家周辺にはたぬきやら鹿やらウサギやらが住み着いている。
心優しきシンイチを慕う獣たちのようだ。

まるで童話や日本昔話の世界じゃないですか・・・

そしてやたらと動物たちは楓に懐いている。
人と動物の触れ合いか・・・いつの時代でも素敵なことよね・・・

「閃いたぞ・・・」
そう・・・この時代に動物テーマパークを作ってみたらどうだろう。
大和に政務の中心を移すのだから、人が訪れることは必然。
諸国の大名やその関係者たちも訪れてくる可能性がある。
そのご家族さん・・・特に御子さんや姫君たちが喜ぶ施設が必要ではないか。

「楓。人を集めるぞ。」
「義父上様。突然、どうしたの?」
そんな風に驚きつつも楓は宇陀山城下町の上役たちを集めてくれた。
実際にはみんな顔馴染みのはずだが、

「ははッ!!」
平伏したまま顔を上げてくれない。

「どうしたんですか? みなさん顔を上げてください。」
「我らなど将軍様に顔をお見せできるわけありませぬ!!」

悲しくなるものだ・・・人と人との元々あった関係が地位などで壊れてしまう。
やはりこのような世の中は間違っている。
将軍という役職がどれだけ偉い立場かはわかっている。ただそれは肩書であり、この国の・・・日ノ本の礎を築いているのは私ではない。一般市民=民のみなさんなのだ。
まずは立憲君主制を一刻も早く確立しなければならない。一人でも多くの民が笑うことが出来る世の中の為に・・・
立ち止まってはいられない。まずは手始めにこの宇陀山の地に作るのだ、動物テーマパークを。

こうして私は宇陀山城アニマルパーク(仮)設立委員会を立ち上げると人を集めた。
どこかで聞いたことあるような施設名だが、微妙に違うから大丈夫・・・なはず。

「え~・・・拙者が宇陀山城あに・・・アニマル浜口パックン(仮)設立委員会委員長の龍口千之助と申します。」
千之助の緊張気味の挨拶。
途中からわざとと思えるぐらい名前間違えているぞ・・・しかもあの人をパックンって・・・アニマル越え!?

「同じく宇陀山城あに・・・マイティ井上パトラッシュ(仮)設立委員会委員の土蜘蛛の銀八でございます。」
久しぶりの銀八。
ただマイティ井上のようなパトラッシュは想像がつかねえ。わざと間違えているにしてもよく知っているな・・・マイティ井上さんのことを。

「そしてワシが宇陀山城アニスファーム設立委員会名誉顧問の百地丹波じゃ。」
伊賀忍軍頭領の一人である百地丹波である。
というかじいさんってば相当年季の入ったアニヲタ!?私はメモリー・ジーン派です。

彼らは私が作った計画書に目を通す。

「お任せください、殿。(てめえ・・・なんで俺は真っ当な任務が少ない?一応は忍びではなく侍っしょ?)」
千之助が眼を輝かせて声を上げた。

「万事ぬかりはないように致しましょう。(俺、字を読むのが苦手で何が書いてあるかよくわからん)」
銀八は真剣な眼差しだ。

「ワシの生涯最後の大仕事じゃな。(スタッフをイケてる女子ばかりにしてやるぞ・・・ウヒャヒャヒャ)」
百地丹波は笑みを浮かべながら応えてくれた。

「良かったね、義父上様。」
「ぶふぉ~♪(俺、頑張るよ。)」

楓とシンイチも嬉しそうで何より。
こうして私は一路、サスケを伴い多聞山城への帰路に就くのだった。


その頃、多聞山城大広間では頭を抱える二人の男の姿。

「石川殿・・・これは・・・」
「あのオッサン・・・マジでヤッたろうか・・・」

竹中半兵衛重治と石川五右衛門である。
その二人の目の前には計画書があった。
その表紙には『ホストクラブGOEMON 開店計画書』と書かれている。
私の中に眠らせていた計画が遂に実行される時がきたのだ。
戦国の世は男尊女卑が根強い。
『GOEMON』開店こそが、ある意味で男女平等への第一歩だと思っているのだ。

「この俺が女に金を貢がせて生きていけだと・・・舐めやがって!!」
怒り心頭の五右衛門。
そこに1人の男がやって来た。

「五右衛門、オマエはこの戦国の世の南都にて夜の王を目指さないというのか?」
「勝政様、アンタってば何を殿に毒されてんだ!!」

六兵衛は既に艶やかに装飾された着物を身に纏っている。

「夜の王に俺はなる!!」
違いだろうが!!」
「まあ冗談はさておき・・・私がホストクラブGOEMONオーナーの滝谷六兵衛勝政だ。GOEMONにようこそ、阿国おくに!!」
「そういうセリフはあからさまにパクっちゃダメ。というか阿国生まれてねえし!!ロ●オとジュリ●ットの関係と違って俺と阿国は関係ねえし。マジで阿国生まれてねえし!!」

六兵衛にひたすらツッコむ五右衛門だが、

「石川殿。どんな仕事でも一生懸命やって成功すれば金というものが入ってきます。金に綺麗も汚いもありはしませんぞ。」
そこに明智左馬助秀満も艶やかな装飾の着物を身に纏い姿を現した。

「その台詞はマジで●王のパクリ、パクリすぎオマエら!!」
怒りに震える五右衛門であった。

戦ばかりではいけない。平和の礎を築くために民を人々を喜ばせる政治。
正しいと信じて、私はひたすら尽力していくのである。

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