227 / 238
第220話:桶狭間絶対防衛線
しおりを挟む
1571年4月、尾張国桶狭間。
ここはかつて織田信長が今川義元を奇襲で討ち取った合戦場である。
「何とも因縁めいた・・・。フッ・・・我ながらおかしなものだ。」
ここに砦を築いていた木下藤吉郎秀吉は思い出していた。
私の策と信長様の豪胆且つ迅速な行動力があの勝利に繋がった。
此度は策というよりもどちらが強いかという正面からの打ち合い。
こういう戦い方には慣れておらん・・・
秀吉率いる八千の兵が桶狭間の砦を守っている。
そこから等間隔に各地からの援軍が左右に陣を敷いていた。
「藤吉郎、大和から更なる援軍じゃ。」
秀吉に池田恒興が声をかける。
「なんと・・・松倉重信殿に続いて・・・」
「大軍だ・・・二万の兵だぞ・・・」
「に・・・二万!?」
秀吉は驚きを隠せなかった。
「しかも大将は滝谷六兵衛勝政殿・・・」
「なんと・・・大輔殿の右腕ではないか・・・」
「副将には三鬼なる豪傑たちだそうじゃ。」
「赤井直正、籾井教業、荒木氏綱・・・名将の中の名将・・・参ったぞ。」
秀吉は苦笑すると頭を抱え込んだ。
「藤吉郎、朗報に何を悩む?」
「あまりに恩がありすぎて返せそうにない・・・そういうことですぞ。」
「ならばこの戦のあとに織田家は山田大輔殿に忠誠を誓えば良いだろう。」
「なんと!?」
「今のワシの願いは織田の家の存続・・・吉法師様の血を・・・正統たる血統を残すことじゃ。」
「なるほど・・・」
池田恒興の言葉に秀吉はうなずくと笑みを浮かべていた。
そして六兵衛と秀吉は久しぶりの対面を果たした。
「よくぞ来られました、勝政殿。」
「木下様の御為なればということでございます。」
二人は固い握手を交わす。
「畿内全域から集め申した。ただこれ以上の増援は山田家としては難しいのでございます。」
「やはり毛利ですな。」
「左様でございます。殿のお人好しぶりが仇になりました。」
「まあそれが大輔殿の魅力でござろう。」
和やかに語らい合う六兵衛と秀吉。
それを見つめている前田利家の姿があった。
「又左殿。何か気になることでもございましょうか?」
伊賀からの援軍の小原元規は相変わらずの穏やかな表情を見せる。
「勝政様と久々にお会いできるとは嬉しいものです。」
「そうだな・・・ワシも嬉しいが、それだけではない・・・」
「わかりますよ。」
元規はそう言うと空を見上げた。
「だからこそ私が早い時期から尾張に来ることになったのですから。」
「ではやはり何かをしてくると?」
「はい・・・我らの若君が必ず何かを仕掛けてこられましょう。」
「ワシは大輔殿と岳人殿が戦われるなど考えたくはないぞ。」
「・・・」
利家の言葉に元規は答えることができなかった。
私も考えたくはない・・・・
ただ・・・
元規は思い出していた。
尾張に出発する前日のことである。
伊賀国の仮守護所の大広間に義輝と元規、仁興英圭の姿があった。
「俺はそう考える・・・」
義輝の言葉に元規たちは動揺を隠しきれない。
「では義輝様は上杉と若君が繋がっていると・・・馬鹿な・・・」
英圭は自分の手が無意識に震えていることに気が付いた。
「あくまでも俺の読みに過ぎない。だからこそ元規を尾張に向かわせるのだ。」
「ならば私も・・・」
「英圭にはまた別の役目がある。」
「・・・」
不満そうに引き下がる英圭をすまなそうに見つめる義輝。
「元規は岳人とは龍王山城攻めからの仲だ。それ故に、俺が元規を送りこむ意図を岳人は察するだろう。俺が警戒しているとな。」
「それで私の任務とは?」
「近江と美濃の国境へと兵を動かしてもらう。」
「な・・・」
「既に蒲生賢秀にその旨は伝えておる。元規は近江の兵と共に岳人の動向に目を光らせろ。」
義輝はそう言い残すと大広間を出ていった。
「俺は考えたくはない・・・。だが義輝様の洞察は確かなモノ・・・。」
「仁興殿・・・。」
「まあ若君と戦うことになれば俺が生き残れる保証はない。後は任せたぞ、元規。」
元規にはその時の英圭の寂しそうな顔が忘れられなかった。
「今生の別れとは思いたくはない・・・」
「小原殿、何を言うか?」
「単なる独り言・・・戯言でございます・・・」
「・・・早う戦の無い世の中になって欲しいものじゃな。」
「はい、我らで必ずや成し遂げましょう。」
利家は元規の言葉に笑みを浮かべる。
「ああ・・・ワシも槍を振るうよりはまつの上で腰を振る方が楽しいからのう。」
「既に御子が三人とお聞きしますが?」
呆れ顔の元規に対し自信に満ちた利家は言い放った。
「限界まで子作りじゃ!!」
そのためにも必ずこの戦に勝つ・・・
負けて生きながらえようとは思わん。
そんな利家の強い決意の表れでもあった。
尾張国小牧城。
木下藤吉郎秀吉の盟友にして腹心である蜂須賀小六正勝が五百の兵で守備についていた。
「五百の兵で山田の麒麟児と相対するとは大役も大役じゃて。この戦の後は褒美をたらふく頂かねばな。」
美濃国の方角を見つめて正勝はそううそぶいた。
その傍らでは地図を広げて考え込んでいる浅野長吉の姿もあった。
ただ単純に山田岳人が上杉に加担するであろうか?
私はそうは思わない。あの麒麟児に野心や野望というものはない。
ただその心中にあると思われるものは・・・
「あえて混沌を楽しむか・・・山田岳人。」
長吉が思わず呟く。
それをあえて聞こえぬふりをする蜂須賀小六正勝であった。
1571年5月、遂に上杉輝虎率いる上杉軍が刈谷城に到着した。
上野、越後、越中、信濃の兵と三河の完全制圧によりその兵の数は四万にまで膨れ上がっていた。
「何とも・・・壮大な・・・これが我らの・・・」
刈谷城城主を任されていた岩井信能は嘆息するばかり。
「弥次郎(本庄繁長)らの兵と合わせれば六万。我らも実に強うなったわ。」
小島弥太郎にとっても感慨深い光景であった。
「あの今川義元が散りおった桶狭間じゃ。織田との決戦も近い。」
上杉輝虎は眼光鋭く先を見据えている。
「そしてな、この戦の後には名を改めようと思っておるのじゃ。」
「なんと!?」
家臣団一同は輝虎の言葉に色めき立つ。
「不識庵謙信とな。」
「さすがに信心深き我が殿じゃ。」
輝虎の言葉に直江景綱は感嘆の声をあげた。
歴史の改変により上杉輝虎は未だに謙信という法号を称してはいなかったのである。
「それにしても桶狭間にはかなりの兵が待ち受けておるな。しかも強き者たちばかりじゃ。数では有利だがな・・・木下藤吉郎など侮れぬ者ばかり。特にワシが気になるのは滝谷勝政。若いながらも大輔殿の宿将の宿将と聞く。」
輝虎は家臣団を見回す。
「何のことなどございませぬぞ!!」
その時、声を上げたのは猛将と名高い柿崎景家であった。
「やつらは確かに強き者共。しかし我らの方がより強いと考えれば良いこと。真っ向からより強き力で打ち砕くまでよ!!」
「オオッ!!」
たちどころに士気が高まる家臣団。
山田岳人など気にせずとも、我らの力のみで織田など粉砕してくれようぞ。
それをただ頼もしく思う輝虎であった。
上杉輝虎の刈谷城入城は即座に桶狭間の秀吉たちにも伝わった。
「総兵力は六万か。信じられぬ大軍だな。」
秀吉は苦笑するしかなかった。
「およそ倍近い・・・やりがいがあるものですな。」
しかしその横にいる六兵衛からは悲壮感が全く感じられない。
「一人で二人を倒せば良いだけでしょう。」
「何とも言えぬ理屈ぞ・・・ワハハハ!!」
そんな六兵衛に感化されたかのように秀吉も不思議と穏やかな気持ちになっていた。
この砦に近づくまでにどれだけの上杉の兵を削れるか・・・
元規は既に竹中半兵衛から授けられた罠を張り巡らせていたが、不安はぬぐえなかった。
やがて押し寄せてくるであろう上杉の大軍への恐怖感である。
私が死を恐れている・・・
そんな元規の肩に手を乗せたのは松倉重信。
「小原元規殿。まだおぬしは若い。ワシもまだまだ若輩者ではあるがな。」
「やはり私の恐れというものが感じられましたか・・・」
「死を恐れぬ者は確かに強い。ただ死んではその先を見ることができぬ。」
「・・・はい・・・。」
元規は重信の言葉の重みを感じ取っていた。
筒井順慶様の・・・あの方が生きておられれば・・・
死を恐れるのは悪しきことではない・・・生き残らなければ・・・
美濃国稲葉山城。
岳人のもとにも上杉輝虎の刈谷城入城の報が届いていた。
「さあ・・・役者が揃ったね。こちらも準備は万端だ。七日後ぐらいに戦いは始まるよ。」
岳人は笑みを浮かべると赤龍たちを見つめる。
「・・・」
官兵衛は複雑な胸中であった。
このようなこと・・・あってはならぬ・・・ありえぬ。
だが・・・だがしかし・・・
「重通、貞通・・・大輝を頼むよ。」
「ははッ・・・」
岳人の言葉に平伏する稲葉重通、貞通兄弟。
「もう我らも覚悟を決めております。」
稲葉兄弟の目つきは明らかに武人そのものと化していた。
「も・・・申し訳ございませぬ。」
氏家直昌、安藤定治らは怯えきった表情でただ床に頭を打ちつけていた。
「構わないよ。美濃をガラ明きにする訳にもいかないしね。多分、英圭や蒲生賢秀さんが気付くだろうけど。対処は任せるよ。」
岳人は笑みを絶やさない。
さあ・・・敵は桶狭間にありってね・・・
どう転ぶかが楽しみだ。
僕に果たしてどれだけの天運が備わっているか・・・
本当の僕が試されるんだ。
改変後の未来に語り継がれる第二次桶狭間の戦いの幕がまもなく上がる。
ここはかつて織田信長が今川義元を奇襲で討ち取った合戦場である。
「何とも因縁めいた・・・。フッ・・・我ながらおかしなものだ。」
ここに砦を築いていた木下藤吉郎秀吉は思い出していた。
私の策と信長様の豪胆且つ迅速な行動力があの勝利に繋がった。
此度は策というよりもどちらが強いかという正面からの打ち合い。
こういう戦い方には慣れておらん・・・
秀吉率いる八千の兵が桶狭間の砦を守っている。
そこから等間隔に各地からの援軍が左右に陣を敷いていた。
「藤吉郎、大和から更なる援軍じゃ。」
秀吉に池田恒興が声をかける。
「なんと・・・松倉重信殿に続いて・・・」
「大軍だ・・・二万の兵だぞ・・・」
「に・・・二万!?」
秀吉は驚きを隠せなかった。
「しかも大将は滝谷六兵衛勝政殿・・・」
「なんと・・・大輔殿の右腕ではないか・・・」
「副将には三鬼なる豪傑たちだそうじゃ。」
「赤井直正、籾井教業、荒木氏綱・・・名将の中の名将・・・参ったぞ。」
秀吉は苦笑すると頭を抱え込んだ。
「藤吉郎、朗報に何を悩む?」
「あまりに恩がありすぎて返せそうにない・・・そういうことですぞ。」
「ならばこの戦のあとに織田家は山田大輔殿に忠誠を誓えば良いだろう。」
「なんと!?」
「今のワシの願いは織田の家の存続・・・吉法師様の血を・・・正統たる血統を残すことじゃ。」
「なるほど・・・」
池田恒興の言葉に秀吉はうなずくと笑みを浮かべていた。
そして六兵衛と秀吉は久しぶりの対面を果たした。
「よくぞ来られました、勝政殿。」
「木下様の御為なればということでございます。」
二人は固い握手を交わす。
「畿内全域から集め申した。ただこれ以上の増援は山田家としては難しいのでございます。」
「やはり毛利ですな。」
「左様でございます。殿のお人好しぶりが仇になりました。」
「まあそれが大輔殿の魅力でござろう。」
和やかに語らい合う六兵衛と秀吉。
それを見つめている前田利家の姿があった。
「又左殿。何か気になることでもございましょうか?」
伊賀からの援軍の小原元規は相変わらずの穏やかな表情を見せる。
「勝政様と久々にお会いできるとは嬉しいものです。」
「そうだな・・・ワシも嬉しいが、それだけではない・・・」
「わかりますよ。」
元規はそう言うと空を見上げた。
「だからこそ私が早い時期から尾張に来ることになったのですから。」
「ではやはり何かをしてくると?」
「はい・・・我らの若君が必ず何かを仕掛けてこられましょう。」
「ワシは大輔殿と岳人殿が戦われるなど考えたくはないぞ。」
「・・・」
利家の言葉に元規は答えることができなかった。
私も考えたくはない・・・・
ただ・・・
元規は思い出していた。
尾張に出発する前日のことである。
伊賀国の仮守護所の大広間に義輝と元規、仁興英圭の姿があった。
「俺はそう考える・・・」
義輝の言葉に元規たちは動揺を隠しきれない。
「では義輝様は上杉と若君が繋がっていると・・・馬鹿な・・・」
英圭は自分の手が無意識に震えていることに気が付いた。
「あくまでも俺の読みに過ぎない。だからこそ元規を尾張に向かわせるのだ。」
「ならば私も・・・」
「英圭にはまた別の役目がある。」
「・・・」
不満そうに引き下がる英圭をすまなそうに見つめる義輝。
「元規は岳人とは龍王山城攻めからの仲だ。それ故に、俺が元規を送りこむ意図を岳人は察するだろう。俺が警戒しているとな。」
「それで私の任務とは?」
「近江と美濃の国境へと兵を動かしてもらう。」
「な・・・」
「既に蒲生賢秀にその旨は伝えておる。元規は近江の兵と共に岳人の動向に目を光らせろ。」
義輝はそう言い残すと大広間を出ていった。
「俺は考えたくはない・・・。だが義輝様の洞察は確かなモノ・・・。」
「仁興殿・・・。」
「まあ若君と戦うことになれば俺が生き残れる保証はない。後は任せたぞ、元規。」
元規にはその時の英圭の寂しそうな顔が忘れられなかった。
「今生の別れとは思いたくはない・・・」
「小原殿、何を言うか?」
「単なる独り言・・・戯言でございます・・・」
「・・・早う戦の無い世の中になって欲しいものじゃな。」
「はい、我らで必ずや成し遂げましょう。」
利家は元規の言葉に笑みを浮かべる。
「ああ・・・ワシも槍を振るうよりはまつの上で腰を振る方が楽しいからのう。」
「既に御子が三人とお聞きしますが?」
呆れ顔の元規に対し自信に満ちた利家は言い放った。
「限界まで子作りじゃ!!」
そのためにも必ずこの戦に勝つ・・・
負けて生きながらえようとは思わん。
そんな利家の強い決意の表れでもあった。
尾張国小牧城。
木下藤吉郎秀吉の盟友にして腹心である蜂須賀小六正勝が五百の兵で守備についていた。
「五百の兵で山田の麒麟児と相対するとは大役も大役じゃて。この戦の後は褒美をたらふく頂かねばな。」
美濃国の方角を見つめて正勝はそううそぶいた。
その傍らでは地図を広げて考え込んでいる浅野長吉の姿もあった。
ただ単純に山田岳人が上杉に加担するであろうか?
私はそうは思わない。あの麒麟児に野心や野望というものはない。
ただその心中にあると思われるものは・・・
「あえて混沌を楽しむか・・・山田岳人。」
長吉が思わず呟く。
それをあえて聞こえぬふりをする蜂須賀小六正勝であった。
1571年5月、遂に上杉輝虎率いる上杉軍が刈谷城に到着した。
上野、越後、越中、信濃の兵と三河の完全制圧によりその兵の数は四万にまで膨れ上がっていた。
「何とも・・・壮大な・・・これが我らの・・・」
刈谷城城主を任されていた岩井信能は嘆息するばかり。
「弥次郎(本庄繁長)らの兵と合わせれば六万。我らも実に強うなったわ。」
小島弥太郎にとっても感慨深い光景であった。
「あの今川義元が散りおった桶狭間じゃ。織田との決戦も近い。」
上杉輝虎は眼光鋭く先を見据えている。
「そしてな、この戦の後には名を改めようと思っておるのじゃ。」
「なんと!?」
家臣団一同は輝虎の言葉に色めき立つ。
「不識庵謙信とな。」
「さすがに信心深き我が殿じゃ。」
輝虎の言葉に直江景綱は感嘆の声をあげた。
歴史の改変により上杉輝虎は未だに謙信という法号を称してはいなかったのである。
「それにしても桶狭間にはかなりの兵が待ち受けておるな。しかも強き者たちばかりじゃ。数では有利だがな・・・木下藤吉郎など侮れぬ者ばかり。特にワシが気になるのは滝谷勝政。若いながらも大輔殿の宿将の宿将と聞く。」
輝虎は家臣団を見回す。
「何のことなどございませぬぞ!!」
その時、声を上げたのは猛将と名高い柿崎景家であった。
「やつらは確かに強き者共。しかし我らの方がより強いと考えれば良いこと。真っ向からより強き力で打ち砕くまでよ!!」
「オオッ!!」
たちどころに士気が高まる家臣団。
山田岳人など気にせずとも、我らの力のみで織田など粉砕してくれようぞ。
それをただ頼もしく思う輝虎であった。
上杉輝虎の刈谷城入城は即座に桶狭間の秀吉たちにも伝わった。
「総兵力は六万か。信じられぬ大軍だな。」
秀吉は苦笑するしかなかった。
「およそ倍近い・・・やりがいがあるものですな。」
しかしその横にいる六兵衛からは悲壮感が全く感じられない。
「一人で二人を倒せば良いだけでしょう。」
「何とも言えぬ理屈ぞ・・・ワハハハ!!」
そんな六兵衛に感化されたかのように秀吉も不思議と穏やかな気持ちになっていた。
この砦に近づくまでにどれだけの上杉の兵を削れるか・・・
元規は既に竹中半兵衛から授けられた罠を張り巡らせていたが、不安はぬぐえなかった。
やがて押し寄せてくるであろう上杉の大軍への恐怖感である。
私が死を恐れている・・・
そんな元規の肩に手を乗せたのは松倉重信。
「小原元規殿。まだおぬしは若い。ワシもまだまだ若輩者ではあるがな。」
「やはり私の恐れというものが感じられましたか・・・」
「死を恐れぬ者は確かに強い。ただ死んではその先を見ることができぬ。」
「・・・はい・・・。」
元規は重信の言葉の重みを感じ取っていた。
筒井順慶様の・・・あの方が生きておられれば・・・
死を恐れるのは悪しきことではない・・・生き残らなければ・・・
美濃国稲葉山城。
岳人のもとにも上杉輝虎の刈谷城入城の報が届いていた。
「さあ・・・役者が揃ったね。こちらも準備は万端だ。七日後ぐらいに戦いは始まるよ。」
岳人は笑みを浮かべると赤龍たちを見つめる。
「・・・」
官兵衛は複雑な胸中であった。
このようなこと・・・あってはならぬ・・・ありえぬ。
だが・・・だがしかし・・・
「重通、貞通・・・大輝を頼むよ。」
「ははッ・・・」
岳人の言葉に平伏する稲葉重通、貞通兄弟。
「もう我らも覚悟を決めております。」
稲葉兄弟の目つきは明らかに武人そのものと化していた。
「も・・・申し訳ございませぬ。」
氏家直昌、安藤定治らは怯えきった表情でただ床に頭を打ちつけていた。
「構わないよ。美濃をガラ明きにする訳にもいかないしね。多分、英圭や蒲生賢秀さんが気付くだろうけど。対処は任せるよ。」
岳人は笑みを絶やさない。
さあ・・・敵は桶狭間にありってね・・・
どう転ぶかが楽しみだ。
僕に果たしてどれだけの天運が備わっているか・・・
本当の僕が試されるんだ。
改変後の未来に語り継がれる第二次桶狭間の戦いの幕がまもなく上がる。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~
杵築しゅん
ファンタジー
戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。
3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。
家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。
そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。
こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。
身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる