マイホーム戦国

石崎楢

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第7話:私が領主になっている(3)

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翌朝の食卓、普通に義輝が家族の輪に入っている。
私は違和感を感じたいのだが、義輝の人徳なのか・・・溶け込んでいるのだ。

「失礼いたします。」
そこに六兵衛がやってきた。

「あら、六ちゃん朝ご飯まだなら一緒に食べる?」
「奥方様、お気遣いありがたき幸せ。されど朝は済ませて参りました。」
朋美の言葉に六兵衛は平伏する。

「六兵衛殿、そんなにいつもかしこまらないでいいじゃないですか。ところで九兵衛殿はどんな感じですか?」
「はっ。幸い深手ではなく七日もすれば大丈夫かと。」
「深手じゃないのが何よりですね。」
私はホッとした。
「良かった・・・九ちゃん無事で・・・。」
美佳は涙ぐんでいる。
「本当だね。」
岳人も笑顔を見せた。

「ところで山田様、こちらの方は本当に・・・」
六兵衛が義輝を見る。

「私は大輔殿が義弟の山田義輝と申す、そういうことにしてくれぬか。」
「そうそう、私の義兄弟になった山田義輝殿ですよ。」
「義兄弟の契りを交わしたならば殿をつけるのはやめてくださらぬか。」
「そうだね、義輝様。」
「様って・・・。」
「っていうか義輝神?」
「ナメてるよね・・・俺のことナメてるよね?俺って元将軍だよ?」
義輝と私のやり取りに六兵衛は呆気にとられている。

「九兵衛殿にもこのことをお伝えください、きっと理解してくれるでしょう。」
「はっ!!」
六兵衛は平伏すると帰っていった。


昼下がりの麓の町の練兵所。

10体並べたわらの人形を瞬時で真っ二つにする義輝。
一同、感嘆のため息をつくしかない。

「これが塚原卜伝殿直伝の剣・・・。」
六兵衛は震えている自分に気が付いた。

滝谷六兵衛は24歳という若さでありながらこの宇陀の地では知らぬ者がない武芸の達人であった。
国人の秋山氏との戦では15の首級を上げる武功を立てたこともある。
しかし義輝の剣を目の当たりにして畏怖するしかなかった。

「義輝様、弟子にしてくださいませぬか?」
六兵衛は平伏する。

「六ちゃん、弟子はとらないよ。」
義輝は首を横に振る。
「はっ!!残念で・・・」
「だが、共に日々の修行をしようぞ!!」
「はっ!!ありがたきお言葉!!」
義輝の言葉に六兵衛はまるで子供のような無邪気な笑顔を見せるのだった。

その頃、六兵衛の屋敷では
「美佳様、大丈夫でござりまする。」
「いいのよ♪じっとしていて・・・気持ちいいでしょ♡」
「あっ・・・痛いっっ!?」


美佳は九兵衛の傷の手当をしていた。
「やはり慣れていないとダメかな、ごめんね九ちゃん。」
舌を出す美佳を九兵衛はじっと見つめている。

「美佳様は義輝様のことをどのように考えられておられますか?」
「・・・。」
九兵衛の問いかけに美佳はうつむいた。

「拙者は・・・拙者は美佳様の御為ならばいつでも命を投げ出す覚悟で・・・」
「待って!! それ以上は言わないでよ。」
九兵衛の言葉を遮った美佳は顔を上げた。

「私は九ちゃんも義輝オジサマも大好きよ、誰も死んで欲しくないからね♪」
美佳は九兵衛に微笑みかけた。

・・・俺は・・・この女(ひと)の為に生きよう・・・殉じよう。
九兵衛も美佳に笑顔を見せるのだった。


「フン~♪ フンフンフン~♪」
気持ちの良い風が吹いているものだ。
私は鼻歌まじりで久しぶりにアクセラを水洗いしている。

「わんわんわん!!」
「わふわふ・・・。」
「ワォッ!ワォ~ン!!」
サスケは近隣から野犬を集めてその首領になっている。
若干、犬ではなく狼も交じっていたりするのは気のせいだろうか。


そのとき農民が麓から息を切らして走ってきた。
「山田様、大変じゃ~!!」
「どうしたのですか?」
「北畠様のお使いが参られましたァ!!」

北畠・・・赤埴信安殿から聞いたことがある。
赤埴家の主君であり伊勢の国司である高名な大名だったはずだ。

「すぐにお通しください。」
そして私は空を見上げた・・・雲一つない澄み切った青空だ。
現代にはない美しい青・・・。

そう、私は戦国時代の荒波にこれから飲まれていく予感を感じていたのだった。
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