マイホーム戦国

石崎楢

文字の大きさ
15 / 238

第8話:私が領主になっている(4)

しおりを挟む
我が家のリビングに北畠の使者がやってきた。
もうリビングではなく、時代に合わせて板敷の広間にリフォームしている。
私と岳人、義輝、六兵衛で使者を迎えた。

「お初にお目にかかります。拙者は大宮吉守と申します。」
北畠の使者は頭を下げる。
「どうもどうもご丁寧に私は山田大輔です。」
私は名刺を取り出すと大宮吉守に渡した。

「・・・なんですかこれは?」
「名刺です。」

「単刀直入に申し上げます。」
「はい。」
「山田大輔殿・・・。赤埴信安殿と共にこの宇陀の地を任せるとのお達しです。」
「えっ?」
「我が主君、伊勢の国司である北畠具房様は山田様を高く買っておられます。」
大宮吉守は書状を渡してきた。
私は広げてみた。

よ・・・読めない、達筆すぎて読めないんですけど。

「なるほど、ここを山田城として・・・義兄上を山田城城主としてこの辺りを領地として任せるとのことですか。」
義輝が書状を私から取り上げると内容を伝えてくれた。

「滝谷六兵衛、九兵衛の両人は山田殿にお仕えして良く盛り立てろとのことだ。」
義輝の言葉に六兵衛は笑顔になる。
「赤埴信安殿からのたっての願いだそうだ、六兵衛。」
「ハハッ!!」
六兵衛は頭を下げた。

北畠の使者を麓まで見送った私は義輝に問いかけた。
「どうなると思う?」

既に義輝には全てを話している。
我が家族が未来から来たということを・・・。
我が家の造り、服装、アクセラなどを見てすぐに納得してくれた。

「いずれは戦だろうな・・・。」
義輝は岳人の頭をポンと叩いた。

「そうだね・・・北畠には尾張の織田信長の脅威があるしね、こちらに構ってられないと思う。」
「織田信長、桶狭間で今川義元を討ったヤツだな。」
岳人の言葉に義輝は拳を握りしめる。

「だから僕たちで松永をどうにかしろってことだろうね。」
岳人は私を見る。

「これって歴史が変わっている・・・変えているんだよな。」
「歴史を変えても生き残らないと・・・僕はやるよ!!」

岳人がここまで男らしいとは思わなかった。
歴史オタクで日本史、西洋史を小学生の頃に極めたと豪語はしていたが、学校の成績は社会以外は普通であった。
運動も小学生の頃はサッカークラブに所属しておりベンチ入りはしていたがレギュラーではなかった。
あまり感情を表に出さない岳人が成長している。
それだけでも私は戦国時代にタイムスリップして良かったのではないかと思ってしまった。


この日を境に近隣の農民たちから体力の優れた者の徴兵を始めた。
義輝の指導の下で槍隊、弓隊に分けられた。
更にその中でも才能のある者は岳人率いる特殊部隊に回された。
ハルバードや鈎鎌槍、団牌といった西洋、中国の武具を使用する部隊である。
残念ながら騎馬隊は農民中心であるために編成できなかった。
義輝、六兵衛、九兵衛の3人のみである。

私はというと、私は戦車に乗ることになった。
もちろん戦車といっても現代の戦車ではなく馬が引く戦車である。
ただの馬車にしか思えないので、戦場に出た時のことを考えると一抹の不安は拭えない。

それにしても刀鍛冶の唐次郎が近隣から腕利きを集めてくれたおかげで岳人のアイディアが具現化されていく。
この日本の戦国時代に在りえない戦術がとれると岳人が言っていた。

そして私はこの我が家である山田城と我が領地を守る為に旅に出ることにした。
目指すは堺の町である。
岳人曰くはこの時代を生き抜くには鉄砲が必需。
火縄銃を手に入れてそれを元に近代兵器に改造したいらしい。
私が火縄銃の購入とそれを生産できる鉄砲鍛冶をスカウトするのだ。
自らが赴くことで誠意を伝えることができるだろう。
元商社マンの・・・営業職の実力を発揮したい。

私の護衛として六兵衛が同行することになった。
義輝曰くは、このわずかの間に恐ろしい程に強くなったということだ。
元から強かった六兵衛が義輝の指導で・・・
剣豪将軍に恐ろしい程強くなったと言わしめたのなら安心だ。
更に一緒に付いてきたいということで美佳も同行する。
六兵衛がいるなら安心だろう。


みんなに見送られて私と美佳、六兵衛は旅立った。
さあ・・・目指すは堺だ。


しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

処理中です...