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第9話:今も昔も横のつながりは重要でしょう。
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沢城・・・宇陀三将と謳われた沢氏の居城であった。
松永弾正による大和侵攻からの宇陀強襲により沢氏は伊賀に逃亡。
その後、松永の配下である高山飛騨守友照が城主として入城した。
その沢城にて・・・
「ああ・・・聖母マリア様・・・」
マリア像を前にひたすら祈りを捧げている男がいる。
この男こそ高山友照34歳(数え年)。
キリシタンの武将としてこの辺りでは知らぬ者がいない。
戦っては一騎当千の強者、領主としては善良で民に慕われる文句なしの男。
「殿、失礼いたします。」
そこに家臣が入ってきた。
「どうした?」
友照は祈りを止めた。
「お目通りを願う者が来られておりまする。」
「どのような者か?」
「そ・・・それが・・・。」
家臣は動揺しながらその名を伝えると
「すぐに通すのじゃ。」
友照は立ち上がると城の大広間へと向かった。
「お初にお目にかかります。 私は山田城城主の山田大輔と申します。」
私は今、沢城の大広間にいる。
高山家の家臣が勢揃いする奥にイケメン俳優みたいな顔した殿様が座っている。
あの人が高山友照か・・・。
堺への道中でどうしても寄らねばならぬ場所が私の中にあった。
沢城である。
赤埴信安からよく話に出たのが沢城の高山友照のことであった。
出来れば戦いたくない、敵ながら尊敬できる男だと大絶賛。
俗に言うデキる男ってヤツか・・・。
42歳で係長だった私・・・同僚で32歳の係長がいた。
38歳の課長もいた・・・年下の上司ってやり辛いよね。
まあその逆もあり年上の部下も扱いづらいだろうね・・・。
しかし取引先ならば話は別だ。
ちょっとぐらい上の役職の人でも、仕事から飲み友達になるという横の関係を築くことが出来る。
酒を止めた私は愚痴の聞き役として取引先に重宝されたものだ。
まあ・・・とにかくやることは・・・
高山友照の懐柔である!!
「おお、噂には聞いておりますぞ。私が沢城城主の高山飛騨守友照じゃ。」
なんとこちらに頭を下げてくれた・・・マジで良い人っぽいぞ♪
よし・・・
「単刀直入に申し上げます。まず私は高山殿と争う気は全くございません。」
「それは私も同じです。」
友照と目が合った・・・なんてピュアな瞳をした34歳(数え年)。
「戦乱の世が嘆かわしいと思います・・・聖母マリア様もデウス様も嘆いておられると思います。」
「!!」
私の言葉に高山家の家臣たちが反応した。
「山田殿・・・いや・・・大輔殿。あなたもそう感じられるのですか。」
友照は立ち上がると私に近づいてくる。
「アーメン・・・」
私の手をとると胸元の十字架をかざし祈りを捧げるではないか!!
「アーメン!!」
野太い声で連呼しながら高山家の家臣たちも胸元の十字架をかざし祈りを捧げはじめるではないか!!
髭面や顔中傷だらけの見るからに歴戦の強者といった方々なのに、キラキラと子供のような眼差しで私を見つめてくる。
そう、高山友照は家族も家臣もキリシタンだった。
岳人からそのように教えられていたのだが・・・。
ホンモノだ・・・この人達はホンモノだ。
ホンモノ過ぎてかなり怖いが・・・。
よし・・・とどめだ!!
「実は私の娘を連れてきております・・・お目通り許してくださいますか?」
「お目通りも何も・・・許すも何もありませんぞ、是非お目にかかりたいですぞ。」
完全に私を信用している、なんていい人だ。
「美佳、入りなさい。」
「はい、失礼いたします。」
美佳が大広間に姿を現した。
「!?」
高山家の家臣たちが固まる。
「おお・・・おお・・・。」
友照はなんと涙を流し始めた。
美佳はシスターのコスプレをしていた。
うむ・・・我が娘ながら可愛いではないか♪
その隣には宣教師のコスプレをした六兵衛がいる。
待て・・・六兵衛のコスプレはいらないんですけど!?
かなり怪しいんですけど!?
「アナタハ、カミヲ、シンジマスカ?」
あれ? 六兵衛さんノリノリ?
っていうか美佳ちゃん、六兵衛さんに何を教えているの!?
「おお・・・」
あれ? 家臣の皆さんが六兵衛を拝んでいるんですけど・・・。
「高山友照様、私が山田大輔の娘の美佳でございます。」
美佳は私の隣に座ると平伏した。
「平伏などしないでくだされい!!」
友照は慌てだす。
「私の美佳という名はミカエル様から父が名付けてくださいました。」
美佳の言葉に
「おお・・・何と美しい響き・・・すぐにマリアとジュストを呼ぶのだ。」
友照は涙を流しているではないか。
凄いね・・・宗教のチカラって凄いね・・・。
ちなみに美佳とミカエルは全く関係ない・・・美佳ちゃんアドリブ凄すぎ!!
そして友照の妻と息子がやってきたが、美佳を見ると驚愕の表情を浮かべる。
「妻のマリアと息子のジュストでございます。」
友照の隣にマリアとジュストが座った。
すぐに2人は十字架をかざし美佳に祈りを捧げる。
この少年がジュスト・・・岳人が言っていた高山右近か・・・。
ジュスト=右近は美佳と目が合うと赤面した。
美佳もそれをわかった上で悪戯な笑顔でジュストを見つめ続けている。
「アナタハ、カミヲ、シンジマスカ?」
六兵衛さん、まだ言っているし・・・みんなスルーしているんだけど。
「もう言葉は要りませぬな・・・大輔殿。」
友照は笑顔で私の手を握る。
「ありがとう。」
ここまでくればタメ口もOK♪
「我ら、主君松永弾正様の命であろうと山田城は攻めませぬ。」
「我らも同じく北畠殿の願いであろうと沢城には攻めませぬ。」
私と友照はガッチリと握手をした。
一晩の盛大なおもてなしを受けた後、翌朝にわたしたちは堺へ向けて出発した。
その際に友照の命で旅の護衛として1人の侍が加わった。
島清興25歳(数え年)・・・後の勇将島左近である。
更に友照の子高山右近ジュスト重友も同行することになった。
やたら長くなるので重友と呼ぶことにした。
重友は見聞を広めたいということでの同行だが、多分違うだろう。
「美佳殿、お疲れではないですか?」
「大丈夫よ、シゲちゃん・・・優しいね♪」
美佳とのやり取りですぐに赤面する重友はピュアだ。
岳人にもやっと同年代の友達ができそうだな・・・
見上げれば本当に澄み切った青い空だ。
たまにサラリーマンであったこと忘れさせてくれる。
しかし、まだ私は知らなかった・・・
戦乱の世の・・・戦国時代の恐ろしさを・・・。
松永弾正による大和侵攻からの宇陀強襲により沢氏は伊賀に逃亡。
その後、松永の配下である高山飛騨守友照が城主として入城した。
その沢城にて・・・
「ああ・・・聖母マリア様・・・」
マリア像を前にひたすら祈りを捧げている男がいる。
この男こそ高山友照34歳(数え年)。
キリシタンの武将としてこの辺りでは知らぬ者がいない。
戦っては一騎当千の強者、領主としては善良で民に慕われる文句なしの男。
「殿、失礼いたします。」
そこに家臣が入ってきた。
「どうした?」
友照は祈りを止めた。
「お目通りを願う者が来られておりまする。」
「どのような者か?」
「そ・・・それが・・・。」
家臣は動揺しながらその名を伝えると
「すぐに通すのじゃ。」
友照は立ち上がると城の大広間へと向かった。
「お初にお目にかかります。 私は山田城城主の山田大輔と申します。」
私は今、沢城の大広間にいる。
高山家の家臣が勢揃いする奥にイケメン俳優みたいな顔した殿様が座っている。
あの人が高山友照か・・・。
堺への道中でどうしても寄らねばならぬ場所が私の中にあった。
沢城である。
赤埴信安からよく話に出たのが沢城の高山友照のことであった。
出来れば戦いたくない、敵ながら尊敬できる男だと大絶賛。
俗に言うデキる男ってヤツか・・・。
42歳で係長だった私・・・同僚で32歳の係長がいた。
38歳の課長もいた・・・年下の上司ってやり辛いよね。
まあその逆もあり年上の部下も扱いづらいだろうね・・・。
しかし取引先ならば話は別だ。
ちょっとぐらい上の役職の人でも、仕事から飲み友達になるという横の関係を築くことが出来る。
酒を止めた私は愚痴の聞き役として取引先に重宝されたものだ。
まあ・・・とにかくやることは・・・
高山友照の懐柔である!!
「おお、噂には聞いておりますぞ。私が沢城城主の高山飛騨守友照じゃ。」
なんとこちらに頭を下げてくれた・・・マジで良い人っぽいぞ♪
よし・・・
「単刀直入に申し上げます。まず私は高山殿と争う気は全くございません。」
「それは私も同じです。」
友照と目が合った・・・なんてピュアな瞳をした34歳(数え年)。
「戦乱の世が嘆かわしいと思います・・・聖母マリア様もデウス様も嘆いておられると思います。」
「!!」
私の言葉に高山家の家臣たちが反応した。
「山田殿・・・いや・・・大輔殿。あなたもそう感じられるのですか。」
友照は立ち上がると私に近づいてくる。
「アーメン・・・」
私の手をとると胸元の十字架をかざし祈りを捧げるではないか!!
「アーメン!!」
野太い声で連呼しながら高山家の家臣たちも胸元の十字架をかざし祈りを捧げはじめるではないか!!
髭面や顔中傷だらけの見るからに歴戦の強者といった方々なのに、キラキラと子供のような眼差しで私を見つめてくる。
そう、高山友照は家族も家臣もキリシタンだった。
岳人からそのように教えられていたのだが・・・。
ホンモノだ・・・この人達はホンモノだ。
ホンモノ過ぎてかなり怖いが・・・。
よし・・・とどめだ!!
「実は私の娘を連れてきております・・・お目通り許してくださいますか?」
「お目通りも何も・・・許すも何もありませんぞ、是非お目にかかりたいですぞ。」
完全に私を信用している、なんていい人だ。
「美佳、入りなさい。」
「はい、失礼いたします。」
美佳が大広間に姿を現した。
「!?」
高山家の家臣たちが固まる。
「おお・・・おお・・・。」
友照はなんと涙を流し始めた。
美佳はシスターのコスプレをしていた。
うむ・・・我が娘ながら可愛いではないか♪
その隣には宣教師のコスプレをした六兵衛がいる。
待て・・・六兵衛のコスプレはいらないんですけど!?
かなり怪しいんですけど!?
「アナタハ、カミヲ、シンジマスカ?」
あれ? 六兵衛さんノリノリ?
っていうか美佳ちゃん、六兵衛さんに何を教えているの!?
「おお・・・」
あれ? 家臣の皆さんが六兵衛を拝んでいるんですけど・・・。
「高山友照様、私が山田大輔の娘の美佳でございます。」
美佳は私の隣に座ると平伏した。
「平伏などしないでくだされい!!」
友照は慌てだす。
「私の美佳という名はミカエル様から父が名付けてくださいました。」
美佳の言葉に
「おお・・・何と美しい響き・・・すぐにマリアとジュストを呼ぶのだ。」
友照は涙を流しているではないか。
凄いね・・・宗教のチカラって凄いね・・・。
ちなみに美佳とミカエルは全く関係ない・・・美佳ちゃんアドリブ凄すぎ!!
そして友照の妻と息子がやってきたが、美佳を見ると驚愕の表情を浮かべる。
「妻のマリアと息子のジュストでございます。」
友照の隣にマリアとジュストが座った。
すぐに2人は十字架をかざし美佳に祈りを捧げる。
この少年がジュスト・・・岳人が言っていた高山右近か・・・。
ジュスト=右近は美佳と目が合うと赤面した。
美佳もそれをわかった上で悪戯な笑顔でジュストを見つめ続けている。
「アナタハ、カミヲ、シンジマスカ?」
六兵衛さん、まだ言っているし・・・みんなスルーしているんだけど。
「もう言葉は要りませぬな・・・大輔殿。」
友照は笑顔で私の手を握る。
「ありがとう。」
ここまでくればタメ口もOK♪
「我ら、主君松永弾正様の命であろうと山田城は攻めませぬ。」
「我らも同じく北畠殿の願いであろうと沢城には攻めませぬ。」
私と友照はガッチリと握手をした。
一晩の盛大なおもてなしを受けた後、翌朝にわたしたちは堺へ向けて出発した。
その際に友照の命で旅の護衛として1人の侍が加わった。
島清興25歳(数え年)・・・後の勇将島左近である。
更に友照の子高山右近ジュスト重友も同行することになった。
やたら長くなるので重友と呼ぶことにした。
重友は見聞を広めたいということでの同行だが、多分違うだろう。
「美佳殿、お疲れではないですか?」
「大丈夫よ、シゲちゃん・・・優しいね♪」
美佳とのやり取りですぐに赤面する重友はピュアだ。
岳人にもやっと同年代の友達ができそうだな・・・
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