マイホーム戦国

石崎楢

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第28話:太り御所、城下町に現る。

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宇陀川城にも梅雨の季節が訪れた。
気がつけばもう一年ぐらい経つのか・・・。

私は例によって城下町を眺めていた。

開発が進み、人が集まるから交易が盛んになる。

「今も昔も変わらないもんだね・・・。」
「わふ・・・」
気がつくとサスケが隣に座っていた。


義輝たちが龍王山城を落としてから私の名声が高まっている。
以前、私を殺そうとした吉野の小川家が傘下に加わった。
北畠からの使者もよく訪れるようになった。
どうやら北畠家当主の北畠具房が美佳のことを気にいっているらしい。
どんな男なのだろう・・・その北畠具房という男は・・・。

宇陀川城の練兵所。
今日も仕官を求める野心溢れる若者たちで溢れていた。

なかなか見込みのある男はいないな・・・。

ため息交じりに見守っている一人の男がいた。
黒岩大雅、この地に私が居を構えてからの最古参の家来の一人である。
最古参とはいっても年齢はまだ数えで19歳の若者だ。
腕も立つが何より頭が切れるので登用における試験官を任せている。

野心溢れる若者たちの中に何故か一人だけ異質な者がいた。
巨漢のその若者は団子を食べながら登用試験を待っている。

なんだ・・・アレは・・・

そして今日も登用試験が始まった。
まずは若者同士の立ち合いだ。
最後の一人の勝者のみが次の試験に進める。


なんじゃ・・・なんじゃそれ・・・
大雅は目を疑った。

巨漢の若者の立ち合いなのだが、代わりに違う若者が戦っている。

「お~い、それはダメ!! 自分で戦いなさい。」
大雅が立ち合いを止めた。

「ブヒ・・・まあまあ・・・これで勘弁してブヒよ♪」
巨漢の若者は大雅に小判を一枚渡す。

「ダメ・・・買収されないから!! 自分で戦え!!」
大雅の言葉に巨漢の若者は肩を落として下がっていった。
そして対戦相手に小判を渡す。

「うわ・・・参りました♪」
対戦相手は倒れた。

「おい・・・何もしていないのに倒れるか?」
大雅はツッコむしかない状況・・・

すると巨漢の若者が言った。
「これが・・・これが本当の無刀取りブヒよ・・・。」

「か・え・れ!!」
大雅はブチ切れた。

そこに
「クロちゃん、何を騒いでいるの?」
美佳がやってきた。
龍王山城から戻って来た一馬と義成も一緒だ。

「キ・・・キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」
巨漢の若者は美佳を見るなり叫ぶ。

「ヤバス・・・激ヤバス・・・ミカタソ萌え・・・ブヒブヒ・・・」

美佳はたじろぐも懐かしさを感じていた。

アキバで遊んでいた頃はこういう人たちばかりだったな・・・。

そして美佳は一馬や義成、大雅を見る。

まさか戦国時代にタイムスリップしてイケメン達に囲まれるなんてね・・・。

「本気だすブヒよ!!」
巨漢の若者は木刀を構えた。

「!?」
一馬達三人は驚いた。

「この構えは・・・新陰流・・・。」
義成がつぶやく。
「ああ・・・景兼様と同じ構えだ。」
一馬はうなずく。

「私が相手をしよう。」
大雅が木刀を持って巨漢の若者の前に立ちはだかった。

「かかってきなさい・・・ブヒブヒ。」
巨漢の若者が挑発してくる。

しかし大雅は動けなかった。

「確かにあのデ●は隙のない構えだ・・・」
一馬が言う。
「デ●のくせにやるな・・・」
義成もうなずく。

「さっきからギャラリーがデ●だの、肥満体だの、豚バラブロックだのうるさいブヒブヒ。」
巨漢の若者が怒り出す。

そこまで言ってねえよ・・・。
一馬と義成はリアクションに困っていた。

「ゆくぞ!!」
大雅が巨漢の若者にかかっていく。

「ぶべぼォー!?」
大雅の木刀が脳天を直撃し、地響きを立てて巨漢の若者は倒れた。

「・・・。」
一馬と義成は口をポカンと開けるしかなかった。


・・・なんかいい匂いがするブヒ・・・

巨漢の若者は目を覚ました。

・・・ここは・・・ブヒ?

「大丈夫? 全くクロちゃんってば手加減しないもんね。」
練兵所の屋敷の中、枕元で美佳が座っていた。

天使だブヒ・・・♡

「脳震盪で良かった・・・。」「大丈夫か?」
一馬と義成も近くにいた。

イケメンたちも性格いいブヒ・・・部下にしたいブヒ・・・


そのとき練兵所に一人の男が入って来た。

「!?」
顔を見た一馬と義成は平伏する。
美佳は驚くも笑顔で手を振る。
北畠家前当主の北畠具教だ。

「帰るぞ・・・具房。」
「ヤダ・・・帰らないブヒよ・・・ここにいるブヒ。」
「黙れ・・・。」
具教は巨漢の若者を引きずりながら立ち去っていく。

「すまぬな・・・大輔殿に挨拶もできずにの。」
具教は立ち止まると美佳たちの方へ振り返った。

「北畠殿・・・もしや・・・その方は・・・?」
義成が恐る恐る聞くと
「こやつが北畠家言当主の北畠具房だ。」
具教の言葉に一同固まった。

こいつが・・・いや・・・この御方が「太り御所」こと北畠具房様・・・

「ミカタソ・・・またくるブヒ・・・くるブヒから~」
遠くなっていく具房の声。

「・・・デ●って言ってしまった・・・」
「私もだ・・・。」
一馬と義成は硬直している。

「いい人っぽいけどちょっと無理かな・・・。」
美佳はつぶやいた。


具教に引きずられている具房は思い出していた。

堺の町中で偶然に美佳を見つけて一目惚れしたことをブヒ・・・
父の命で社会勉強のための旅先で出会ったんだブヒ・・・

今回、初めて間近で見たブヒ・・・絶対に僕のモノにするブヒ・・・


「なんと・・・北畠家の当主様を・・・」
巨漢の若者の正体を知った大雅は狼狽すると脇差を抜いた。

「死んでお詫びを・・・」
「待てって!!死ぬなって!!」
「離せェ!!」
腹を切ろうとする大雅。
必死に止める一馬と義成。

「何やってんだか・・・」
美佳は呆れ顔だった。


その頃、十市家家臣小夫氏の居城小夫城。

「ぐわァッ!!」「ギャァー!?」
小夫城の兵たちが次々と倒されていく。
城に火の手が上がる。

「好きにはさせんぞ、十市も山田も・・・」
筒井家家臣福住順弘は燃え上がる小夫城を見てつぶやく。

「その通りですぞ・・・福住殿。ましては筒井も容赦してはなりませぬ。」
「わかっておるぞ・・・幻柳斎。」
福住順弘の隣には幻柳斎がいた。

「山田を攻める際は私に先陣を!!」
槍を手にした侍が姿を現した。
山田順清の子の山田順智である。

「北には行かせん・・・これ以上好きにはさせんぞ。」
筒井家家臣豊井城城主豊井権助が言う。

「吐山じゃ・・・吐山を攻め落とすぞ。」
福住軍は吐山城へと進路をとった。
その兵の数は1500。

吐山城を任せられている九兵衛に危機が迫っていた。
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