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第30話:避けられぬ運命
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香酔峠では
「ハァッ!!」
一馬の槍が敵の騎馬武者を叩き落とす。
「手強いな。」
義成も槍で敵兵を突き倒す。
しかし、豊井の兵は主を失ったことにより強さを増していた。
清興たちを先に行かせたがここまで手間取るとは・・・
確かに我々も兵の数は増やしているが熟練度が低い。
実戦経験の差が出ている。
景兼は表情に焦りの色が伺えた。
一馬と義成は顔を見合わせる。
「一馬・・・景兼様が・・・。」
「ああ・・・わかっている。俺たちで何とかせねば!!」
そのときだった・・・
「ぐわッ!!」「あれ・・・!?」「なんじぇッ!?」
次々と豊井の兵が斬り倒されていく。
景兼が単騎で吐山目指して突撃していった。
その剣のあまりのキレに一馬と義成は見入ってしまう。
「一馬!!」
「遅れるな、義成!!」
二人もすぐに後を追っていった。
「数が多すぎる・・・くそが!!」
清興は奮戦するも先に進めない。
「ぐぬッ・・・」
高城光重も敵陣の真ん中で苦戦していた。
そこに福住順弘配下の騎馬武者が迫ってくる。
「我は福住家家臣長滝慎之助・・・いざ勝負!!」
「小僧が!!赤埴家家臣の高城光重じゃ!!」
光重と長滝慎之助は一騎打ちとなった。
「くッ!!」
九兵衛も大刀を振るい次々と福住の兵をなぎ倒していくも先に進めない。
するとその横を源之進が駆け抜けていった。
「お先です♪」
源之進は両手に刀を握りしめていた。
そしてまるで舞うかのように二本の刀を振るい敵兵を斬り倒していく。
相変わらず太刀筋の読めない剣だな・・・
九兵衛は戦いながら源之進の姿をチラ見していた。
すると目の前に一人の騎馬武者がやってきた。
「俺は苣原家家臣苣原英順。滝谷九兵衛勝秀・・・勝負しろ!!」
「数秒で終わらす!!」
九兵衛と苣原英順の一騎打ちも始まった。
戦いは膠着状態ではあったが、徐々に形勢が傾いていった。
多田家の援軍が吐山城へと攻め入ったのだ。
浮足立つ山田軍に九兵衛は檄を飛ばす。
「耐えろ!!」
「余所見している場合か!!」
九兵衛に苣原英順は容赦なく攻撃を仕掛けてくる。
確かに・・・こいつは強いが・・・
九兵衛は気合を込めて大刀を一閃。
「うおッ・・・」
躱しきることができずに苣原英順は落馬した。
しかし止めを刺すこともなく九兵衛は大声を上げる。
「城を守れ!!」
九兵衛以下吐山の兵は城へと戻ろうとするも
「追撃しろ!!」
福住軍が追い打ちをかけてくる。
「ヌウッ・・・!?」
光重は長滝慎之助に圧倒されている。
「どうした・・・この程度かァァッ!!」
慎之助の槍が光重の肩を貫いた。
「ぐはッ!!」
吐血し落馬する光重に止めを刺そうとする慎之助だが、
「なっ!?」
戻って来た九兵衛が慎之助の槍を大刀で真っ二つにへし折った。
「高城様、ご無事で・・・クッ・・・。」
しかし九兵衛は福住軍の兵に囲まれてしまう。
「ワシに構うな九兵衛・・・あの若造はワシには強すぎた。」
光重は起き上がると槍を構える。
「無理でございます!!ここは私が血路を開きます。」
九兵衛は大刀を振りかぶった。
福住順弘は勝利を確信していた。
多田の兵が吐山城を制圧しつつある。
兵力差で山田軍を追い詰めている。
「ハッハッハ!!これで終いじゃ!!」
順弘は声高らかに笑うも
「オマエが終いじゃ・・・ということだ。」
目の前で家臣たちが何者かに全員斬られていた。
「この我が軍をたった一人で・・・じゃと・・・!?」
順広は腰を抜かしてへたり込む。
「・・・久しぶりに死線を感じたぞ・・・。」
全身傷だらけの景兼が刀を手にして立っていた。
「おぬし・・・何者じゃ?」
「疋田景兼・・・。」
「なっ・・・!?」
恐怖に怯えた福住順弘は四つん這いで逃げようともがいていたが
「けッ!?」
次の瞬間、順弘の首と身体が離れていった。
「間に合いました勝秀様・・・」
「まあ不覚をとることはないと思っておりましたが・・・」
九兵衛のところに一馬と義成が救援にかけつけた。
更に豊井の軍を打ち破った援軍が押し寄せてくる。
クッ・・・ヤバい・・・
長滝慎之助は死んでいる兵から槍を奪うと必死に血路を開いていた。
こんなところでやられるわけにはいかないのだ・・・
土豪の出である慎之助は槍の才を認められここまで上り詰めてきた。
いずれは自分の名を畿内に轟かせてみせるという野望があった。
「強いヤツ見つけた♪」
慎之助の目の前に源之進が現れた。
「ウオォォォッ!!」
慎之助は咆哮すると槍を構えて源之進に飛びかかる。
福住順弘を失った福住軍は統制を失い、逃げる者、降伏する者で大混乱となった。
そんな中でも慎之助と源之進はただ一騎打ちを繰り広げていた。
お互いに互角・・・。
戦っている中で慎之助の中に新たな感情が芽生えてきた。
こんな強いヤツが・・・
源之進も心中で舌を巻いていた。
義輝様が気に入りそうなヤツだ・・・
やがて福住軍、多田軍も撤退していった。
慎之助と源之進は手を止めた。
「もうやめだ・・・俺の負けでいい。好きにしろ・・・」
慎之助は槍を投げ棄てる。
「いや・・・私の負けでも構わないぞ。」
源之進は二本の刀を地面に突き刺すと座り込んだ。
二人は顔を見合わせると笑い出した。
「疋田様、助かりました・・・ありがとうございます。」
九兵衛は景兼に平伏する。
「いや・・・九兵衛。おぬしの働きが大きい。よくぞこらえてくれた。」
「ハッ!!」
九兵衛は心の底から喜びを感じていた。
こうして吐山城を無事に守り抜くことができたのだった。
宇陀川城の大広間にて
「八滝源之進でございます。」
「長滝慎之助でございます。」
私のところに二人の若者が挨拶に訪れた。
「この二人もまた我らの未来を担う存在ですぞ。」
景兼が言う。
なんでこんなにも私の下に優れた人財が集まるのだろう?
不思議な気持ちになるものだ。
「良かった・・・。」
美佳は報告を受けて安堵のため息をついた。
一馬と義成は笑顔でうなずく。
だが、また新たなる危機が迫っていた。
大和の国筒井城
「山田大輔ですか・・・。」
つぶやく一人の若者、筒井家当主筒井順慶である。
「福住、山田、多田・・・山田大輔の軍の前に風前の灯でございます。」
筒井家重臣松倉重信が言う。
「どうにも敵とは思えんのだが・・・略奪行為もないし、降伏しない捕虜は全員解放しているという話ではないか・・・。」
順慶は考え込む。
「松永と戦うには山田大輔と手を組むが得策と・・・。」
筒井家重臣の森好之が提言する。
「うむ・・・森様のおっしゃられる通りです。あちらには島殿もお仕えになっておられます。高山家も配下にしているその山田大輔の胆力は殿のお力になりますぞ。」
同じく家臣の岸田忠氏も同調した。
「いや・・・あの山田は北畠と繋がっております。松永の勢力が弱まっている今こそ山田大輔を徹底的に潰すべきかと・・・。」
筒井家筆頭家臣の慈明寺順国は首を横に振った。
「慈明寺殿に賛同いたす!!」
同じく筆頭家臣の布施行盛は言うと順慶を見る。
順慶にとって布施行盛は命の恩人であった。
松永弾正によって筒井城を奪われた際に匿ってくれた。
そして今回、再び筒井城を奪還できたのも布施行盛の力が大きかった。
致し方あるまい・・・
「早速、各地より家臣たちを集めよ。評定を開く。山田との戦の準備をしなければならぬ・・・。」
順慶は命じると天を仰いで嘆息した。
こうして筒井順慶との戦いは避けられない状況になってしまうのであった。
「ハァッ!!」
一馬の槍が敵の騎馬武者を叩き落とす。
「手強いな。」
義成も槍で敵兵を突き倒す。
しかし、豊井の兵は主を失ったことにより強さを増していた。
清興たちを先に行かせたがここまで手間取るとは・・・
確かに我々も兵の数は増やしているが熟練度が低い。
実戦経験の差が出ている。
景兼は表情に焦りの色が伺えた。
一馬と義成は顔を見合わせる。
「一馬・・・景兼様が・・・。」
「ああ・・・わかっている。俺たちで何とかせねば!!」
そのときだった・・・
「ぐわッ!!」「あれ・・・!?」「なんじぇッ!?」
次々と豊井の兵が斬り倒されていく。
景兼が単騎で吐山目指して突撃していった。
その剣のあまりのキレに一馬と義成は見入ってしまう。
「一馬!!」
「遅れるな、義成!!」
二人もすぐに後を追っていった。
「数が多すぎる・・・くそが!!」
清興は奮戦するも先に進めない。
「ぐぬッ・・・」
高城光重も敵陣の真ん中で苦戦していた。
そこに福住順弘配下の騎馬武者が迫ってくる。
「我は福住家家臣長滝慎之助・・・いざ勝負!!」
「小僧が!!赤埴家家臣の高城光重じゃ!!」
光重と長滝慎之助は一騎打ちとなった。
「くッ!!」
九兵衛も大刀を振るい次々と福住の兵をなぎ倒していくも先に進めない。
するとその横を源之進が駆け抜けていった。
「お先です♪」
源之進は両手に刀を握りしめていた。
そしてまるで舞うかのように二本の刀を振るい敵兵を斬り倒していく。
相変わらず太刀筋の読めない剣だな・・・
九兵衛は戦いながら源之進の姿をチラ見していた。
すると目の前に一人の騎馬武者がやってきた。
「俺は苣原家家臣苣原英順。滝谷九兵衛勝秀・・・勝負しろ!!」
「数秒で終わらす!!」
九兵衛と苣原英順の一騎打ちも始まった。
戦いは膠着状態ではあったが、徐々に形勢が傾いていった。
多田家の援軍が吐山城へと攻め入ったのだ。
浮足立つ山田軍に九兵衛は檄を飛ばす。
「耐えろ!!」
「余所見している場合か!!」
九兵衛に苣原英順は容赦なく攻撃を仕掛けてくる。
確かに・・・こいつは強いが・・・
九兵衛は気合を込めて大刀を一閃。
「うおッ・・・」
躱しきることができずに苣原英順は落馬した。
しかし止めを刺すこともなく九兵衛は大声を上げる。
「城を守れ!!」
九兵衛以下吐山の兵は城へと戻ろうとするも
「追撃しろ!!」
福住軍が追い打ちをかけてくる。
「ヌウッ・・・!?」
光重は長滝慎之助に圧倒されている。
「どうした・・・この程度かァァッ!!」
慎之助の槍が光重の肩を貫いた。
「ぐはッ!!」
吐血し落馬する光重に止めを刺そうとする慎之助だが、
「なっ!?」
戻って来た九兵衛が慎之助の槍を大刀で真っ二つにへし折った。
「高城様、ご無事で・・・クッ・・・。」
しかし九兵衛は福住軍の兵に囲まれてしまう。
「ワシに構うな九兵衛・・・あの若造はワシには強すぎた。」
光重は起き上がると槍を構える。
「無理でございます!!ここは私が血路を開きます。」
九兵衛は大刀を振りかぶった。
福住順弘は勝利を確信していた。
多田の兵が吐山城を制圧しつつある。
兵力差で山田軍を追い詰めている。
「ハッハッハ!!これで終いじゃ!!」
順弘は声高らかに笑うも
「オマエが終いじゃ・・・ということだ。」
目の前で家臣たちが何者かに全員斬られていた。
「この我が軍をたった一人で・・・じゃと・・・!?」
順広は腰を抜かしてへたり込む。
「・・・久しぶりに死線を感じたぞ・・・。」
全身傷だらけの景兼が刀を手にして立っていた。
「おぬし・・・何者じゃ?」
「疋田景兼・・・。」
「なっ・・・!?」
恐怖に怯えた福住順弘は四つん這いで逃げようともがいていたが
「けッ!?」
次の瞬間、順弘の首と身体が離れていった。
「間に合いました勝秀様・・・」
「まあ不覚をとることはないと思っておりましたが・・・」
九兵衛のところに一馬と義成が救援にかけつけた。
更に豊井の軍を打ち破った援軍が押し寄せてくる。
クッ・・・ヤバい・・・
長滝慎之助は死んでいる兵から槍を奪うと必死に血路を開いていた。
こんなところでやられるわけにはいかないのだ・・・
土豪の出である慎之助は槍の才を認められここまで上り詰めてきた。
いずれは自分の名を畿内に轟かせてみせるという野望があった。
「強いヤツ見つけた♪」
慎之助の目の前に源之進が現れた。
「ウオォォォッ!!」
慎之助は咆哮すると槍を構えて源之進に飛びかかる。
福住順弘を失った福住軍は統制を失い、逃げる者、降伏する者で大混乱となった。
そんな中でも慎之助と源之進はただ一騎打ちを繰り広げていた。
お互いに互角・・・。
戦っている中で慎之助の中に新たな感情が芽生えてきた。
こんな強いヤツが・・・
源之進も心中で舌を巻いていた。
義輝様が気に入りそうなヤツだ・・・
やがて福住軍、多田軍も撤退していった。
慎之助と源之進は手を止めた。
「もうやめだ・・・俺の負けでいい。好きにしろ・・・」
慎之助は槍を投げ棄てる。
「いや・・・私の負けでも構わないぞ。」
源之進は二本の刀を地面に突き刺すと座り込んだ。
二人は顔を見合わせると笑い出した。
「疋田様、助かりました・・・ありがとうございます。」
九兵衛は景兼に平伏する。
「いや・・・九兵衛。おぬしの働きが大きい。よくぞこらえてくれた。」
「ハッ!!」
九兵衛は心の底から喜びを感じていた。
こうして吐山城を無事に守り抜くことができたのだった。
宇陀川城の大広間にて
「八滝源之進でございます。」
「長滝慎之助でございます。」
私のところに二人の若者が挨拶に訪れた。
「この二人もまた我らの未来を担う存在ですぞ。」
景兼が言う。
なんでこんなにも私の下に優れた人財が集まるのだろう?
不思議な気持ちになるものだ。
「良かった・・・。」
美佳は報告を受けて安堵のため息をついた。
一馬と義成は笑顔でうなずく。
だが、また新たなる危機が迫っていた。
大和の国筒井城
「山田大輔ですか・・・。」
つぶやく一人の若者、筒井家当主筒井順慶である。
「福住、山田、多田・・・山田大輔の軍の前に風前の灯でございます。」
筒井家重臣松倉重信が言う。
「どうにも敵とは思えんのだが・・・略奪行為もないし、降伏しない捕虜は全員解放しているという話ではないか・・・。」
順慶は考え込む。
「松永と戦うには山田大輔と手を組むが得策と・・・。」
筒井家重臣の森好之が提言する。
「うむ・・・森様のおっしゃられる通りです。あちらには島殿もお仕えになっておられます。高山家も配下にしているその山田大輔の胆力は殿のお力になりますぞ。」
同じく家臣の岸田忠氏も同調した。
「いや・・・あの山田は北畠と繋がっております。松永の勢力が弱まっている今こそ山田大輔を徹底的に潰すべきかと・・・。」
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「慈明寺殿に賛同いたす!!」
同じく筆頭家臣の布施行盛は言うと順慶を見る。
順慶にとって布施行盛は命の恩人であった。
松永弾正によって筒井城を奪われた際に匿ってくれた。
そして今回、再び筒井城を奪還できたのも布施行盛の力が大きかった。
致し方あるまい・・・
「早速、各地より家臣たちを集めよ。評定を開く。山田との戦の準備をしなければならぬ・・・。」
順慶は命じると天を仰いで嘆息した。
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