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第31話:義輝と義秋
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1566年も夏になった。
満を持して攻め入った景兼率いる山田軍の前に貝那木山城は陥落した。
多田家当主多田延実は筒井家を頼って逃亡した。
私も遂に我が家を離れて貝那木山城に入った。
朋美も美佳も連れてきた。
やはり立場的に前線に出ないといけない。
景兼曰く、兵の士気が上がるらしいが実感はない。
すぐに福住城攻略に向けて軍が編成された。
総大将に疋田景兼。八滝源之進、長滝慎之助、龍口千之助を引き連れている。
総勢五百の兵で福住城に攻め入った。
福住順弘亡き後、後を継いだ福住定慶は近隣の仁興城の仁興家や苣原城の苣原家の援軍を得るも、兵たちの士気が上がらずに苦戦していた。
そんな中、仁興家の援軍を率いる仁興英圭は孤軍奮闘を続けていた。
群がる山田軍の兵たちを蹴散らしていると
「仁興英圭か・・・。」
「貴様・・・長滝慎之助ェ!!」
英圭の前に長滝慎之助が現れた。
「この戦いは先が見えている。降伏しろ。」
「黙れ!!」
二人は一騎打ちとなった。
二刀流の慎之助に対し英圭の得物は鉄棒。
その一撃が重く刀がすぐに悲鳴を上げていることに慎之助は気づいた。
「英圭・・・無駄な戦いだと思わんか?」
「思わんぞ!!」
英圭の攻撃を躱す慎之助。
「慎之助。私がやる。」
そこに景兼が槍を手に割り込んできた。
「なんだ・・・うおッ!?」
英圭は景兼の槍さばきに圧倒される。
そしてバランスを崩し落馬した。
「ぐッ・・・くそがァ!!」
山田軍の兵たちによって捕縛された英圭。
「一気に攻め落とせ!!」
景兼の声が響き渡る。
山田軍の前に福住城は落城。城主福住定慶は城を棄てて逃げていった。
龍王山城に福住城攻略の朗報が伝わった。
「さすが軍師殿はやるね♪」
義輝は上機嫌。
「これで次のステップに行けるね・・・義輝さん。」
岳人が地図を広げながら言う。
「ああ・・・冬までには・・・落とす。」
二人の視線の先にあるのは多聞山城だった。
その頃、龍王山城の門の前に一人の男が立っていた。
やっとか・・・
その男は笑顔を見せていた。
「義輝様。客人が参られてますが?」
大広間に元規が入ってきた。
「俺に客?」
「はい・・・弟だとおっしゃられてます。」
元規の言葉に義輝は固まる。
「いないと言っておけ!!」
義輝が言ったとき、
「世知辛いですなあ・・・兄上。」
一人の男が大広間に入ってきた。
「義秋・・・オマエ何をしに来た?」
義輝は冷たい目線でその男を見る。
義秋・・・義昭?まさか・・・足利義昭!?
岳人は驚愕の表情。
「若狭の武田義統を頼ろうと思っておりましたが、噂を聞いて訪れてみたのです。」
足利義秋は義輝に笑顔を見せながら続けた。
「山田大輔なる者の配下の義輝という名の武将が凄まじい強さで次々と大和の国人たちを制圧していると・・・。」
「・・・」
「あのとき兄上の死体が見つからなかったという噂もありましたし。」
「・・・」
無言の義輝の前で義秋は止まらない。
「私を匿って欲しいのです。」
「断る。」
義秋の願いを義輝は即答で断った。
「兄上に将軍に戻れとは言っておりません。私がやりますから。」
義秋が言うも
「無理だ。」
義輝は首を横に振る。
「次の将軍と噂されている義栄よりは私の方が!!」
「わかっている・・・オマエに将軍職が無理だと言っているわけではない。」
「では?」
「足利による政治が最早無理だというのだ!!」
義輝は立ち上がった。
「この日の本には新しい風が吹かねばならぬ・・・わかるか?」
「わかりませぬ!!」
義秋も立ち上がった。
「俺は武を極めたつもりだ。それは御所で三好や松永の襲撃されたときに気づいた。俺は強い・・・だがそれだけだった。」
義輝は義秋の肩に手を置く。
「武によって成されることはまた武によって滅される。これからは武ではなく政の時代にならねば・・・。その覚悟や考えはあるのか?」
義秋は無言でひざまずいた。
「結局は誰が将軍をやろうとも周りの人たちの掌の上で踊らされているだけなんじゃないかな。」
岳人が口を開いた。
「だから一度壊さないといけないと思う。そして作り直す。例えば将軍も農民も同じ法で裁かれる社会・・・。大袈裟だけどね。」
「理解できませぬ・・・。」
義秋は大広間を出ていく。
「やはり第13代将軍義輝は死んでいたということ・・・私は足利の名を守る。」
そう言い残していった。
義輝と義秋のやり取りをただ茫然と見ていた元規。
「わ・・・若君? どういうこと・・・なのでしょうか?」
元規の言葉に岳人は悲し気な表情で答えた。
「元規の想像に任せるよ・・・多分、そんな感じかな。」
「・・・そ・・・そんな・・・。」
元規は義輝を見つめる。
「あ~!! なんか重くなったな・・・スマンな岳人、元規。」
義輝は笑顔をみせるも
義輝さん・・・
岳人や元規には空元気にしか見えなかった。
龍王山城の門から出た義秋。
「いかがでしたか?」
聞く一人の男。その脇には数人の従者が控えていた。
「光秀・・・人違いだった。兄上が生きているわけあるまい。」
義秋は悲し気な笑みを浮かべる。
嘘が下手な御方だ・・・
その男は龍王山城を見つめていた。
明智十兵衛光秀。
後に日本の歴史に残る本能寺の変の首謀者となる予定の男である。
「若狭がダメならば越前ですな。」
光秀の言葉に
「ああ・・・頼む。私は絶対に足利家の覇権を取り戻してみせる。」
義秋は強く拳を握りしめると歩き出す。
「義秋様、先に若狭に行かれてください。私は用事ができました。」
「好きにせい・・・。。」
義秋と従者たちが去っていくのを光秀は見送ると逆の方角へと歩き出した。
会ってみたくなったぞ・・・山田大輔とやら・・・
そして貝那木山城にも福住城攻略の報が伝わった。
「いいのかな・・・なんか侵略している気がするんだけど。」
私は大広間で五右衛門と金蔵、源次、権八と黒●げ危機一髪をしていた。
岳人が小さい頃に買ったおもちゃだが意外と面白いものだ。
一応は福住城攻略の報告は聞いているつもりではある。
「うおッ・・・やっちまった!!」
権八が黒●げを飛ばしてしまった。
罰ゲームはデコピンである。
「痛え~ッ!! 殿さまのデコピン最低じゃ!!」
私のデコピンで極悪なはずの啄木鳥の権八が悶え苦しんでいる。
「ハッハッハ!! 殿さまはデコピンなら天下取れるな♪」
五右衛門たちは大喜び。
「あの・・・福住城を落としたことについては?」
一馬と義成が顔をひきつらせている。
「あんなオッサンたちほっといてと・・・」
美佳が私の代わりに大広間の上段の間に座った。
「福住城にはそのままブンちゃんに入ってもらって。仁興、苣原、山田の動向には気を付けて。動くとすれば筒井が同調したときだから。」
美佳が言う。
「はッ!!」
一馬と義成は笑顔で答える。
私より殿様しているじゃないの・・・譲りたいよ。
私はそう思いながら黒●げの樽にナイフを刺すと・・・
「うほッ!!殿さまアウトォ!!」「よっしゃ・・・下剋上♪」
五右衛門たちは大喜びで私に迫ってくる。
「ぎゃースッ!?」
忍びたちの容赦ないデコピン地獄に私は倒れ伏した。
しかしこの後、歴史を変える運命の邂逅が待ち受けているとは知る由もなかった。
満を持して攻め入った景兼率いる山田軍の前に貝那木山城は陥落した。
多田家当主多田延実は筒井家を頼って逃亡した。
私も遂に我が家を離れて貝那木山城に入った。
朋美も美佳も連れてきた。
やはり立場的に前線に出ないといけない。
景兼曰く、兵の士気が上がるらしいが実感はない。
すぐに福住城攻略に向けて軍が編成された。
総大将に疋田景兼。八滝源之進、長滝慎之助、龍口千之助を引き連れている。
総勢五百の兵で福住城に攻め入った。
福住順弘亡き後、後を継いだ福住定慶は近隣の仁興城の仁興家や苣原城の苣原家の援軍を得るも、兵たちの士気が上がらずに苦戦していた。
そんな中、仁興家の援軍を率いる仁興英圭は孤軍奮闘を続けていた。
群がる山田軍の兵たちを蹴散らしていると
「仁興英圭か・・・。」
「貴様・・・長滝慎之助ェ!!」
英圭の前に長滝慎之助が現れた。
「この戦いは先が見えている。降伏しろ。」
「黙れ!!」
二人は一騎打ちとなった。
二刀流の慎之助に対し英圭の得物は鉄棒。
その一撃が重く刀がすぐに悲鳴を上げていることに慎之助は気づいた。
「英圭・・・無駄な戦いだと思わんか?」
「思わんぞ!!」
英圭の攻撃を躱す慎之助。
「慎之助。私がやる。」
そこに景兼が槍を手に割り込んできた。
「なんだ・・・うおッ!?」
英圭は景兼の槍さばきに圧倒される。
そしてバランスを崩し落馬した。
「ぐッ・・・くそがァ!!」
山田軍の兵たちによって捕縛された英圭。
「一気に攻め落とせ!!」
景兼の声が響き渡る。
山田軍の前に福住城は落城。城主福住定慶は城を棄てて逃げていった。
龍王山城に福住城攻略の朗報が伝わった。
「さすが軍師殿はやるね♪」
義輝は上機嫌。
「これで次のステップに行けるね・・・義輝さん。」
岳人が地図を広げながら言う。
「ああ・・・冬までには・・・落とす。」
二人の視線の先にあるのは多聞山城だった。
その頃、龍王山城の門の前に一人の男が立っていた。
やっとか・・・
その男は笑顔を見せていた。
「義輝様。客人が参られてますが?」
大広間に元規が入ってきた。
「俺に客?」
「はい・・・弟だとおっしゃられてます。」
元規の言葉に義輝は固まる。
「いないと言っておけ!!」
義輝が言ったとき、
「世知辛いですなあ・・・兄上。」
一人の男が大広間に入ってきた。
「義秋・・・オマエ何をしに来た?」
義輝は冷たい目線でその男を見る。
義秋・・・義昭?まさか・・・足利義昭!?
岳人は驚愕の表情。
「若狭の武田義統を頼ろうと思っておりましたが、噂を聞いて訪れてみたのです。」
足利義秋は義輝に笑顔を見せながら続けた。
「山田大輔なる者の配下の義輝という名の武将が凄まじい強さで次々と大和の国人たちを制圧していると・・・。」
「・・・」
「あのとき兄上の死体が見つからなかったという噂もありましたし。」
「・・・」
無言の義輝の前で義秋は止まらない。
「私を匿って欲しいのです。」
「断る。」
義秋の願いを義輝は即答で断った。
「兄上に将軍に戻れとは言っておりません。私がやりますから。」
義秋が言うも
「無理だ。」
義輝は首を横に振る。
「次の将軍と噂されている義栄よりは私の方が!!」
「わかっている・・・オマエに将軍職が無理だと言っているわけではない。」
「では?」
「足利による政治が最早無理だというのだ!!」
義輝は立ち上がった。
「この日の本には新しい風が吹かねばならぬ・・・わかるか?」
「わかりませぬ!!」
義秋も立ち上がった。
「俺は武を極めたつもりだ。それは御所で三好や松永の襲撃されたときに気づいた。俺は強い・・・だがそれだけだった。」
義輝は義秋の肩に手を置く。
「武によって成されることはまた武によって滅される。これからは武ではなく政の時代にならねば・・・。その覚悟や考えはあるのか?」
義秋は無言でひざまずいた。
「結局は誰が将軍をやろうとも周りの人たちの掌の上で踊らされているだけなんじゃないかな。」
岳人が口を開いた。
「だから一度壊さないといけないと思う。そして作り直す。例えば将軍も農民も同じ法で裁かれる社会・・・。大袈裟だけどね。」
「理解できませぬ・・・。」
義秋は大広間を出ていく。
「やはり第13代将軍義輝は死んでいたということ・・・私は足利の名を守る。」
そう言い残していった。
義輝と義秋のやり取りをただ茫然と見ていた元規。
「わ・・・若君? どういうこと・・・なのでしょうか?」
元規の言葉に岳人は悲し気な表情で答えた。
「元規の想像に任せるよ・・・多分、そんな感じかな。」
「・・・そ・・・そんな・・・。」
元規は義輝を見つめる。
「あ~!! なんか重くなったな・・・スマンな岳人、元規。」
義輝は笑顔をみせるも
義輝さん・・・
岳人や元規には空元気にしか見えなかった。
龍王山城の門から出た義秋。
「いかがでしたか?」
聞く一人の男。その脇には数人の従者が控えていた。
「光秀・・・人違いだった。兄上が生きているわけあるまい。」
義秋は悲し気な笑みを浮かべる。
嘘が下手な御方だ・・・
その男は龍王山城を見つめていた。
明智十兵衛光秀。
後に日本の歴史に残る本能寺の変の首謀者となる予定の男である。
「若狭がダメならば越前ですな。」
光秀の言葉に
「ああ・・・頼む。私は絶対に足利家の覇権を取り戻してみせる。」
義秋は強く拳を握りしめると歩き出す。
「義秋様、先に若狭に行かれてください。私は用事ができました。」
「好きにせい・・・。。」
義秋と従者たちが去っていくのを光秀は見送ると逆の方角へと歩き出した。
会ってみたくなったぞ・・・山田大輔とやら・・・
そして貝那木山城にも福住城攻略の報が伝わった。
「いいのかな・・・なんか侵略している気がするんだけど。」
私は大広間で五右衛門と金蔵、源次、権八と黒●げ危機一髪をしていた。
岳人が小さい頃に買ったおもちゃだが意外と面白いものだ。
一応は福住城攻略の報告は聞いているつもりではある。
「うおッ・・・やっちまった!!」
権八が黒●げを飛ばしてしまった。
罰ゲームはデコピンである。
「痛え~ッ!! 殿さまのデコピン最低じゃ!!」
私のデコピンで極悪なはずの啄木鳥の権八が悶え苦しんでいる。
「ハッハッハ!! 殿さまはデコピンなら天下取れるな♪」
五右衛門たちは大喜び。
「あの・・・福住城を落としたことについては?」
一馬と義成が顔をひきつらせている。
「あんなオッサンたちほっといてと・・・」
美佳が私の代わりに大広間の上段の間に座った。
「福住城にはそのままブンちゃんに入ってもらって。仁興、苣原、山田の動向には気を付けて。動くとすれば筒井が同調したときだから。」
美佳が言う。
「はッ!!」
一馬と義成は笑顔で答える。
私より殿様しているじゃないの・・・譲りたいよ。
私はそう思いながら黒●げの樽にナイフを刺すと・・・
「うほッ!!殿さまアウトォ!!」「よっしゃ・・・下剋上♪」
五右衛門たちは大喜びで私に迫ってくる。
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忍びたちの容赦ないデコピン地獄に私は倒れ伏した。
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