マイホーム戦国

石崎楢

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第45話:高校の修学旅行以来の京の都です

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戦の準備で慌ただしい貝那木山城。
そこに一人の僧がやってきた。

こんな山の中にしてはにぎやかな城下町ですなあ・・・

そこにひときわ行列のできている店があった。
『茶処いまい』である。

「おお・・・ここか・・・。」
その僧は行列を通り抜けると入り口の茶屋娘に声をかけた。

「あの・・・本日予約していた恵瓊と申します。」
「恵瓊さん・・・恵瓊さん・・・ありました。東福寺の恵瓊さんどうぞ♪」
その恵瓊と名乗る僧は茶屋娘の案内で店内の個室に入っていった。

「恵瓊殿、ご無沙汰してますな。」
「これは今井宗久殿。お忙しいところ申し訳ございませぬ。」
宗久が個室の中で待っていた。
恵瓊は宗久の対面に座ると書状を取り出した。

「宗久殿の頼みであった東福寺から山田大輔殿への書状・・・」
「まあまあ・・・それよりこのお茶を飲んでください。」
宗久は恵瓊の話を遮ると一杯のお茶を差し出した。
「はあ・・・ではいただきます。」

ゴクリ・・・恵瓊の舌を伝わり喉に入り込むそのお茶。

「うーーまーーぁぁあいいいいぞおおおおおッ!!」
恵瓊の口から緑の光線が発射される。
その光線が壁に茶畑と茶摘み娘の絵を浮かび上がらせた。

「と・・・ともかくこの草餅もどうぞ。」
リアクションにドン引きの宗久は更に草餅をすすめる。

「この草餅を作ったのは誰だぁ!!」
恵瓊の声にびっくりする宗久。
「あっしですが・・・何かありましたか?」
源次が慌てて調理場からやって来た。

「うーーまーーぁぁあいいいいぞおおおおおッ!!」
恵瓊の口から緑の光線が発射される。
その光線が壁にヨモギの茂った草むらで踊る小豆とミツバチを浮かび上がらせた。

「よくお分かりになりましたねえお坊さん。この餡は蜂の蜜をふんだんに使ってるんですわ。」
源次は頭を下げると調理場に戻っていく。

源次さん・・・おかしいでしょ。
このお坊さんってば口から光線出して壁に絵を浮かび上がらせているんですよ。
そのうちノリで海の上を走りそうですよ。

宗久は届かぬツッコミを心の中にしまい込むと恵瓊に言った
「恵瓊殿。私を通さぬとも殿に会いにいけばいいですぞ。」
「え?」
「殿は会われてくだされ。城に向かってくだされ。」
「ありがとうございます。」

こうして恵瓊は城の大広間にて私と会うことになった。

「東福寺の恵瓊殿・・・でしたっけ?何のご用件ですか?」
私は宗教の勧誘は警戒するタイプだ。
家の表札脇にも『セールス・勧誘お断り』のステッカーを貼っていた。

「東福寺からの書状でございます。」
恵瓊が書状を差し出す。
「殿・・・失礼いたします。」
私が受け取ると光秀が手に取り広げた。

「・・・。」
光秀は目を通すと無言で私に手渡した。

「五右衛門を呼んでくれ!!」
私も目を通すと五右衛門を大広間に呼んだ。

「殿様・・・ど~したの~。」
生気を失った顔で五右衛門が大広間にやってきた。
「おまえの呪いを解く方法がわかった。」
「!?」
私の言葉に五右衛門の眼光が一瞬だけ鋭くなった。

五右衛門はあの烈海との戦い以降、ずっと体調を崩していた。
しかし、冬までには多聞山城攻めは始まる。
五右衛門は貴重な戦力である。
故に早く体調を取り戻して欲しかったのだ。
大和の国の様々な祈祷師を日替わりで呼んだが効果はなかった。
そして京の都に関わりの深い宗久にお願いして調べてもらったのだ。

「鞍馬ならば強い呪縛も解き放つことができるであろうと書かれているぞ。」
私は五右衛門の顔を見る。
「・・・。」
五右衛門はうなずいた。


ということで私は京の都を目指して歩いている。
五右衛門は相変わらず顔色は悪い。
その為に真紅と銀八、千之助も同行してくれた。
恵瓊が道案内である。
ちなみにこの恵瓊というお坊さんは後の安国寺恵瓊になる予定の人らしい。
後日、岳人に教えてもらうことになる。

「光秀様、キレてますよ・・・絶対にキレてますって。」
千之助が心配そうに私を見る。
「やっぱ黙って城を抜け出したのマズイかな? 一応書置きは残していたけど。」
「でもそういうノリが素敵よ・・・山田の殿様♥」
真紅が私の頬を手でなぞる。

ああ・・・真紅ちゃん可愛い!!

「ねえねえ、真紅ちゃん?」
「何?」
「長門守さんのところ辞めてウチに来ない。倍は出すよ♪」
「ホント? 山田忍軍に入る~!!」
朋美には絶対に知られたくないことであったが、
かつて若かりし頃、一時期だけキャバクラにハマったことがある。
あっという間にお金が飛ぶ日々だったがとても楽しかった。
真紅ちゃんと話をしているとあの二十代後半の頃を思い出すもんだね。

ここで閃いた・・・『茶処いまい』に続く第二弾は・・・
『クラブ真紅』・・・戦国時代にキャバクラ・・・これしかない!!
その次は『GOEMON』・・・そうホストクラブだ。
目指せ・・・戦国時代の●王・・・夜の王様!!

妄想が膨らむ私。
気がつくと一人遅れていた。

「オッサン、遅えって!!」
千之助が怒っている。

遂に千之助にもオッサン扱いされますか・・・

ともかく忍びとお坊さんの一行なので歩くのが早い。
二日もすれば鞍馬に着きそうだ・・・

そして一日で京の都に到着した。
半日は歩いただろうか・・・非常に疲れた。
都祁を出たのは朝なのに京の都に着いた時は夜だった。
高校の修学旅行以来の京の都。
まさか戦国時代に訪れることになるとは・・・

私たちは恵瓊の手配した宿に泊まり、翌朝に鞍馬に向かった。
本当はじっくりと観光したかったのだが我慢だ。
京の都の北の外れにある鞍馬山。
ここに行けば五右衛門の呪いが解けるのだ。


しかし、この先で待ち受けるのは常軌を逸脱した摩訶不思議な世界であった。
果たして五右衛門の呪いを本当に解くことができるのだろうか。
そして無事に大和の国に帰れるのだろうか。
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