マイホーム戦国

石崎楢

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第53話:多聞山城の戦い(5)

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天に掲げた黒漆剣に雷が落ちる。

「殿・・・殿にこんな力があるとは・・・」
義成が驚いている。

まあ・・・剣を手にしている私自身が一番驚いているんですけど・・・

そして私が黒漆剣を振り下ろす。
なんと空間が割れて妖怪たちが次々と現れる。

「な・・・なんだとォ・・・。」
青彪は思わず後ずさりを始めた。
「ヒィッ・・・」
義成も腰を抜かしてへたり込む。

「ぬらりひょん・・・。」
「泥田坊・・・。」
「塗り壁ェ~。」
次々と現れる妖怪たち。

「あの青い鎧の男とその仲間たちを懲らしめてやりなさい!!」
私の命令で妖怪たちは青彪と青装束の一団に襲い掛かる。

「百目ェ~!!」
「狗神ィ~!!」
更に次々と妖怪たちが姿を現す。

「ジ~●ニャン♪」

また来たね♪ 僕の友達!!

「フンガーフンガー!!」

フラン●ンって・・・次はド●キュラですか?

「ホッホッホ・・・私の戦闘力は5●万です。」

あの・・・あなたは強すぎますってば・・・

なんか人気キャラの紛い物に、外国の人造人間に、宇宙の帝王みたいなモノまで呼んでしまいました。
黒漆剣・・・予想できませんよ、全く。

「黒炎と同じ力だと・・・。」
青彪は妖怪たちに囲まれて完全に臆している。

「黒炎という男を知っているようですね・・・お仲間ですか?」
私は強気に出てみた。
「・・・。」
青彪は答えずに十文字槍で妖怪たちを突いていく。

「痛いって何すんねん?」「やめてくんろ!?」
妖怪たちは痛がるだけでダメージが全くない。

「やはり無理ということか・・・」
青彪が苦笑いを浮かべた時だった。
「!?」
義成がその隙を突いて青彪の喉元へ槍を突き立てる。
紙一重でかわすも青彪の頬をかすめた。

血・・・血か・・・いつ以来だろうか・・・
この俺に血を流させるとは・・・

青彪は目を見開くと義成に言った。
「オマエの命は必ず俺が貰い受ける。」

青彪と青装束の一団はまるで消えるかのように姿を消した。
「ハァ・・・ハァ・・・」
義成は緊張の糸が切れたのか力無くへたり込む。

「勝った・・・私は勝ったのか・・・。」
私は周囲を見回した。
そして絶句するしかなかった。

「助けてくれ~!!」「ヒイィィィッ!?」
私が呼び寄せた妖怪たちが行き場を失い、我が軍の兵たちに憑りつこうとしているではないか!!


そこに急使がやってきた。
「疋田景兼様が・・・」
「なんだと!!」
私はその報を受けて慌てて黒漆剣を天にかざす。
すると妖怪たちは光となって封印された。


夜になり、私たちはまたも一旦兵を退いた。
徐々に攻略することにより敵兵を疲弊させる作戦でもある。
兵糧庫を焼いたことも功を奏すだろう。


私は景兼の陣にいた。義輝と光秀も一緒だ。

「申し訳ございませぬ・・・。」
景兼は苦しそうな表情で身体を起こす。
「景兼・・・無理しないでください。」
「不覚を取りました・・・。」

そして景兼から事の次第を聞かせてもらったが
「人の顔が変わる・・・信じられませぬな。」
光秀は腕組みをして考え込む。

「俺が戦った男と関係がありそうだな。」
義輝が口を開いた。

「今まで戦った中で一番強いと感じた程の男だった・・・。伊勢守殿や卜伝殿よりも強いであろうな。」
「な・・・なんですと・・・」
義輝の言葉に景兼は驚きを隠せない。

「私が戦った者も大雅に深手を負わせ、義成が手に負えぬ程でしたよ。」
私も言うのだが・・・
誰も答えない・・・
スルーされた・・・というか私が戦ったこと自体が信じて貰えていない気がする。

「石川殿が戦った勝秀殿を討ち取った男・・・義輝様のお相手・・・殿が戦った青い鎧の男、そして鞍馬に現れた黒装束の男、柳生で疋田殿が戦われた紫恩なる男・・・繋がりますな。」
光秀は言い終えると私を見つめる。

やった・・・さすが光秀さん。
私を信じてくれているよ!!

「景兼が戦った顔の変わる者も含めて要注意ですよ。そして明日で決めます!!」
「はッ。」
私の言葉で締めくくることが出来た。


多聞山城では

「くそがァ!!」
松永久通は家臣団を蹴り飛ばし当たり散らしていた。

青彪も他の者もあの忌々しい伊勢守も消えやがった・・・
くそ・・・どうすればいいんだよォ!!

その様子を見ていた多羅尾光俊は呆れるしかなかった。

もう・・・終いだな・・・



多聞山城攻めも3日目となった。
再び大手門、搦手門、東の斜面から山田軍が攻め入る。

「押し返せ!! 正面突破だ!!」
久通は全軍をまとめて大手門から活路を開こうとしていた。
それにより城内は大乱戦状態と化した。

「あれが・・・松永久通か・・・。」
清興は目ざとく久通を見つける。

義輝様にとっての敵・・・
俺が討ち取るわけには・・・
だが・・・

清興は三叉槍を振るい久通に襲い掛かる。
「我こそ山田家家臣島清興だァ!!松永久通・・・覚悟ォ!!」

「しゃらくせえ!!」
久通も槍を構えて迎え撃つ。

激しい一騎打ち・・・槍と槍がぶつかり合う。
一瞬の隙が命取りになる戦い・・・。

清興は久通の腕前に内心舌を巻いていた。

こいつやるじゃねえか・・・

しかし久通は徐々に気持ちを削がれていた。

なんだよ・・・この男・・・底がしれねえんだけど・・・

清興の槍は打ち合うごとに威力を増していき久通は圧倒されていく。
そして横殴りの一撃が久通の脇腹を直撃した。

「グォッ!?」
血を吐いて落馬した久通に止めを刺そうとする清興。
しかし、久通は上手く乱戦の中に転がり込み逃げるのに成功した。

このまま上手く紛れて父上のところまで逃げてみせる。

久通は必死に逃げていく。
すると目の前に家臣の一人が立っていた。

「おい・・・助けろ!!」
久通は家臣の隣に立つ。
「はッ!!助けまする・・・」
その家臣は言うと刀を抜いて久通に斬りかかる。
「貴様!?」
久通は慌てて刀を抜いてその一撃を防ぎ、返す刀で家臣を斬り捨てるも・・・

「ガハァァァッ・・・」

なんと周りにいた松永軍の兵が久通に一斉に槍を突き立てた。

な・・・なんでだよ・・・

久通は全身に槍を突き立てられて絶命した。
その兵たちの中に毒蝮の金蔵がいた。

我儘が過ぎたということだな・・・

「松永久通様討死ィィィィィィ!!」
金蔵が大声で叫ぶ。

これにより戦意が喪失した松永軍の兵は次々と降伏していく。

その頃、乱戦の隙をついて真紅は久通の妻と子供たちを城の外へ連れ出していた。
「お逃げください・・・。」
真紅の言葉にうなずいた久通の妻は子供たちを連れて逃げていった。

どうぞ・・・ご無事で・・・

その後姿に切なさを感じてしまう真紅であった。


こうして多聞山城は陥落した。
城内のあちこちで山田軍・筒井軍の勝ちどきの声が上がる中、義輝は久通の死体を見つめていた。

武に溺れ・・・義をわきまえず・・・信に背いた末がコレか・・・

私は義輝の肩に手を置く。
「・・・。」
義輝は無言でうなずき、再び久通の死体を一別すると立ち去っていった。

「山田殿。」
そこに筒井順慶がやってきた。
「順慶殿、いかがされましたか?」
「やっと・・・松永久通を倒すことができました。ありがとうございまする。」
順慶が頭を下げる。

「これからも筒井家と私たちは共に手を取り合っていきたいね?」
「はい!!」
私と順慶は多聞山城の天守閣から古の都を見下ろす。
大仏殿や興福寺の五重塔が見える。


多聞山城攻略・・・これによりますます私の名が広まるのだろうな・・・
この先、本当にどうなっていくのだろう・・・
悠久の歴史を刻む街並みを見つめながら私は想うのだった。



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