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第87話:美佳の婿選び
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1567年11月、大和の国もすっかり秋模様である。
多聞山城の御殿では岳人とお市、なずなたちが庭園で穏やかな時間を過ごしていた。
「あの都での夜が嘘みたいだな。」
岳人は妙覚寺で織田軍に襲われたことを思い出していた。
「我らのありがたみもこれでわかっていただけましたか?」
満面の笑みを浮かべながらみずはは岳人の肩を揉んでいる。
「みずはは護衛の任を外されたとき三日間寝込んだのよ。」
もみじがお茶菓子を食べながら言う。
「それは言わないで・・・。」
「悪気はなかったんだ。ただね、色々と思うことがあってね。ごめんね。」
「いえ・・・こうして無事に戻られてまた側でお仕えできるのですから・・・。」
そんな岳人とみずはのやり取りを微笑みながら見つめるお市。
「市姫・・・よろしいのですか?」
なずなはお市の心が心配だった。
結婚後、なずなたちは岳人の護衛の任を解かれたのだった。
今回の件があって再び護衛の職に返り咲くことができてはいたが・・・
「もしかして皆さんが岳人の護衛から外されたのはわたしの命令だと思っている?」
お市の言葉になずなたちは明らかに動揺がしていた。
「いえ・・・その・・・あの・・・」
れんかはしどろもどろに言い訳しようとする。
「あれは岳人なの。わたしに気を遣ったみたいだけどね。」
お市はすみれの膝の上に頭を乗せる。
「そうなんですね♪」
すみれはお市の髪を触りながらうなずく。
「わたしはそんな小さな女子ではないよ。いずれは大和の守護になる男の妻であるのだから、いつでも覚悟はできているわ。」
お市のその言葉を聞いて思わず驚きの表情を浮かべるみずはともみじ。
「だからね、皆さん・・・岳人をお願いするわ。」
「はい!!」
なんだか・・・いつの時代も凄いな・・・女子の団結力って。
でも僕がこんなまるでハーレム状態になるとはね・・・。
岳人は苦笑するしかなかった。
茶室で寝転ぶ私、その両脇を挟むように朋美と真紅が座っている。
あの・・・凄く・・・安らがないんですけど・・・
そんな私を尻目に二人は話をしていた。
「もうこの人としたの?」
朋美の言葉に
「いえ・・・殿は一度も私に手を出されたことはありません。」
真紅は笑顔で首を横に振る。
「あなた・・・真紅さんはそう言っているけどどうなの?」
「いやねえ・・・そのねえ・・・」
「男だったら男らしくしなさい!!真紅さんは側室なんでしょ!! 喜ばせないでどうする!!」
朋美が語気を強める。
そんな・・・勝手な・・・。あなたのジェラシーのせいで修行させされたこともあるじゃんかよ・・・
私はとても複雑な思いであった。
「ああ・・・秋空最高!!」
美佳は天守閣から城下や奈良の街並みを眺めていた。
なんか旅したい気分・・・無性に旅に出たい・・・
「・・・ということでわたしは旅に出ます。」
茶室に来た美佳の唐突な言葉に私たちは固まった。
「美佳・・・もうあなたは姫なの。パパは大名なのよ。迂闊に出歩いたらこの前の岳人のように狙われるからダメよ!!」
朋美は即座にダメ出し。
「御前様の言われる通りです。美佳様・・・ご自重なされてください。」
真紅も朋美に同調する。
「パパは? ねえ・・・護衛付ければ大丈夫じゃん♪」
「いや・・・よく考えてくれよ。皆それぞれにやるべきことがあるんだ。美佳の我儘に振り回される余裕はない。それに織田家のこともあるし、秀吉殿も行方不明だし。」
「バカ・・・くそオヤジ!!」
捨て台詞を吐いて美佳は出ていった。
バカ・・・? くそオヤジ・・・? マジか・・・マジかよォ・・・
明らかに私の心に突き刺さった美佳の捨て台詞。
憐みの目で私を見つめる朋美と真紅であった。
「姫・・・ダメなものはダメですぞ。」
「なんで? ちょっと前までは自由だったじゃん!!」
「今までがおかしかったのです。殿は大和国守護に任命されました。その姫君としてもっとしっかりとされてくだされ!!」
大手門への途中で美佳は光秀に外出を制止された。
ああ・・・面白くない・・・何だろ・・・何だろこの気持ち?
美佳は不貞腐れながら城内を彷徨っていると
「美佳様。いかがされました?」
景兼がやってくる。
「なるほど・・・。」
「だからさあ・・・何していいのかわからないのよ。」
美佳は景兼に愚痴をこぼしていた。
「若君と市姫の件も原因と御見受けられますが?」
「そんなこと・・・ない・・とも言い切れないのが悲しいね・・・。」
「ならば美佳様もご結婚を考えればよろしいのでは?」
「え・・・」
景兼の言葉に美佳は思わずたじろぐ。
むむむ・・・結婚・・・結婚は・・・無理だ・・・どうしていいかわからんわ・・・
「ならば婿殿を募集してみましょうか・・・前例がありませんが・・・」
「へ?」
「美佳様の美貌は評判でございますし。」
「え? マジ? そうなの?」
「はい。色々な感情を抜きにすれば単純に美しいですぞ。」
「何それ・・・感情抜きって・・・まあ・・・やってみようかな♪」
その会話を盗み聞きしていたのは通りすがりの千之助であった。
諸国を行き来して諜報活動を続ける日々であったが、久しぶりに城に帰ってきていた。
美佳様が婿を取る? 楓さんに知らせねば!!
大広間にて
「なにッ!! 美佳が婿を取るだとォ!!」
私はまたまた面食らった。
戦以外でこれだけ起伏の激しい一日は久しぶりではないだろうか。
「いいの? 九兵衛のことは大丈夫?」
「分かってくれるよ・・・。」
「そう・・・なら好きにしなさい。」
そんな美佳の言葉に朋美は理解を示す。
「あのさ、パパ・・・ママ・・・。」
「ん?」「どうしたの?」
「必ずしも結婚するわけじゃないからね。」
美佳のその一言に私は安堵した。
「あと書類選考はしっかりとしてね・・・軍師さん。」
「ははッ!! 明智殿と熟考いたします。」
景兼は大広間から立ち去っていった。
そして大和国守護山田大輔の姫が婿を探しているという噂は畿内全域に瞬く間に広まった。
「遂にこの時が来た・・・ブヒ。」
伊勢国守護大名の北畠具房は立ち上がった。
閑散とした霧山城の大広間にその声が響き渡る。
「おい・・・アンタ奥さんいるだろが・・・」
「誰だブヒ?」
具房に対する失辣な声が聞こえてきた。
「奥さんがいて家督を継いだのに他国に婿入りかい・・・このデ●野郎。」
「とても失礼だブヒ!!」
主だった面々で大広間にいるのは具房と大宮景連だけである。
「ということで拙者が大和に参ります。」
「ええッ!!」
「大御所様に既に許可も頂いておりますが故に・・・じゃあね♪」
「くうッ!!」
具房は立ち去る景連を見つめながら着物の袖を噛み締めた。
摂津国芥川城。
「殿、ご乱心召されるな!!」
岩成友通たちが必死に三好義継をなだめている。
「良いではないか・・・山田とは戦を抜きに一度は会いたいと思っておった。」
「しかし・・・。」
「ワシはやるといったらやるぞ!!」
「奥方様は?」
「足利の血などいらぬわ!!」
どうやら三好義継も美佳の婿候補に名乗りを上げたいようだ。
書類選考とやらで落とされるであろうに・・・
岩成友通は呆れ顔であった。
こうして美佳の婿選びが始まることになった。
果たしてどのような強者、変人共が集まってくるのであろうか。
多聞山城の御殿では岳人とお市、なずなたちが庭園で穏やかな時間を過ごしていた。
「あの都での夜が嘘みたいだな。」
岳人は妙覚寺で織田軍に襲われたことを思い出していた。
「我らのありがたみもこれでわかっていただけましたか?」
満面の笑みを浮かべながらみずはは岳人の肩を揉んでいる。
「みずはは護衛の任を外されたとき三日間寝込んだのよ。」
もみじがお茶菓子を食べながら言う。
「それは言わないで・・・。」
「悪気はなかったんだ。ただね、色々と思うことがあってね。ごめんね。」
「いえ・・・こうして無事に戻られてまた側でお仕えできるのですから・・・。」
そんな岳人とみずはのやり取りを微笑みながら見つめるお市。
「市姫・・・よろしいのですか?」
なずなはお市の心が心配だった。
結婚後、なずなたちは岳人の護衛の任を解かれたのだった。
今回の件があって再び護衛の職に返り咲くことができてはいたが・・・
「もしかして皆さんが岳人の護衛から外されたのはわたしの命令だと思っている?」
お市の言葉になずなたちは明らかに動揺がしていた。
「いえ・・・その・・・あの・・・」
れんかはしどろもどろに言い訳しようとする。
「あれは岳人なの。わたしに気を遣ったみたいだけどね。」
お市はすみれの膝の上に頭を乗せる。
「そうなんですね♪」
すみれはお市の髪を触りながらうなずく。
「わたしはそんな小さな女子ではないよ。いずれは大和の守護になる男の妻であるのだから、いつでも覚悟はできているわ。」
お市のその言葉を聞いて思わず驚きの表情を浮かべるみずはともみじ。
「だからね、皆さん・・・岳人をお願いするわ。」
「はい!!」
なんだか・・・いつの時代も凄いな・・・女子の団結力って。
でも僕がこんなまるでハーレム状態になるとはね・・・。
岳人は苦笑するしかなかった。
茶室で寝転ぶ私、その両脇を挟むように朋美と真紅が座っている。
あの・・・凄く・・・安らがないんですけど・・・
そんな私を尻目に二人は話をしていた。
「もうこの人としたの?」
朋美の言葉に
「いえ・・・殿は一度も私に手を出されたことはありません。」
真紅は笑顔で首を横に振る。
「あなた・・・真紅さんはそう言っているけどどうなの?」
「いやねえ・・・そのねえ・・・」
「男だったら男らしくしなさい!!真紅さんは側室なんでしょ!! 喜ばせないでどうする!!」
朋美が語気を強める。
そんな・・・勝手な・・・。あなたのジェラシーのせいで修行させされたこともあるじゃんかよ・・・
私はとても複雑な思いであった。
「ああ・・・秋空最高!!」
美佳は天守閣から城下や奈良の街並みを眺めていた。
なんか旅したい気分・・・無性に旅に出たい・・・
「・・・ということでわたしは旅に出ます。」
茶室に来た美佳の唐突な言葉に私たちは固まった。
「美佳・・・もうあなたは姫なの。パパは大名なのよ。迂闊に出歩いたらこの前の岳人のように狙われるからダメよ!!」
朋美は即座にダメ出し。
「御前様の言われる通りです。美佳様・・・ご自重なされてください。」
真紅も朋美に同調する。
「パパは? ねえ・・・護衛付ければ大丈夫じゃん♪」
「いや・・・よく考えてくれよ。皆それぞれにやるべきことがあるんだ。美佳の我儘に振り回される余裕はない。それに織田家のこともあるし、秀吉殿も行方不明だし。」
「バカ・・・くそオヤジ!!」
捨て台詞を吐いて美佳は出ていった。
バカ・・・? くそオヤジ・・・? マジか・・・マジかよォ・・・
明らかに私の心に突き刺さった美佳の捨て台詞。
憐みの目で私を見つめる朋美と真紅であった。
「姫・・・ダメなものはダメですぞ。」
「なんで? ちょっと前までは自由だったじゃん!!」
「今までがおかしかったのです。殿は大和国守護に任命されました。その姫君としてもっとしっかりとされてくだされ!!」
大手門への途中で美佳は光秀に外出を制止された。
ああ・・・面白くない・・・何だろ・・・何だろこの気持ち?
美佳は不貞腐れながら城内を彷徨っていると
「美佳様。いかがされました?」
景兼がやってくる。
「なるほど・・・。」
「だからさあ・・・何していいのかわからないのよ。」
美佳は景兼に愚痴をこぼしていた。
「若君と市姫の件も原因と御見受けられますが?」
「そんなこと・・・ない・・とも言い切れないのが悲しいね・・・。」
「ならば美佳様もご結婚を考えればよろしいのでは?」
「え・・・」
景兼の言葉に美佳は思わずたじろぐ。
むむむ・・・結婚・・・結婚は・・・無理だ・・・どうしていいかわからんわ・・・
「ならば婿殿を募集してみましょうか・・・前例がありませんが・・・」
「へ?」
「美佳様の美貌は評判でございますし。」
「え? マジ? そうなの?」
「はい。色々な感情を抜きにすれば単純に美しいですぞ。」
「何それ・・・感情抜きって・・・まあ・・・やってみようかな♪」
その会話を盗み聞きしていたのは通りすがりの千之助であった。
諸国を行き来して諜報活動を続ける日々であったが、久しぶりに城に帰ってきていた。
美佳様が婿を取る? 楓さんに知らせねば!!
大広間にて
「なにッ!! 美佳が婿を取るだとォ!!」
私はまたまた面食らった。
戦以外でこれだけ起伏の激しい一日は久しぶりではないだろうか。
「いいの? 九兵衛のことは大丈夫?」
「分かってくれるよ・・・。」
「そう・・・なら好きにしなさい。」
そんな美佳の言葉に朋美は理解を示す。
「あのさ、パパ・・・ママ・・・。」
「ん?」「どうしたの?」
「必ずしも結婚するわけじゃないからね。」
美佳のその一言に私は安堵した。
「あと書類選考はしっかりとしてね・・・軍師さん。」
「ははッ!! 明智殿と熟考いたします。」
景兼は大広間から立ち去っていった。
そして大和国守護山田大輔の姫が婿を探しているという噂は畿内全域に瞬く間に広まった。
「遂にこの時が来た・・・ブヒ。」
伊勢国守護大名の北畠具房は立ち上がった。
閑散とした霧山城の大広間にその声が響き渡る。
「おい・・・アンタ奥さんいるだろが・・・」
「誰だブヒ?」
具房に対する失辣な声が聞こえてきた。
「奥さんがいて家督を継いだのに他国に婿入りかい・・・このデ●野郎。」
「とても失礼だブヒ!!」
主だった面々で大広間にいるのは具房と大宮景連だけである。
「ということで拙者が大和に参ります。」
「ええッ!!」
「大御所様に既に許可も頂いておりますが故に・・・じゃあね♪」
「くうッ!!」
具房は立ち去る景連を見つめながら着物の袖を噛み締めた。
摂津国芥川城。
「殿、ご乱心召されるな!!」
岩成友通たちが必死に三好義継をなだめている。
「良いではないか・・・山田とは戦を抜きに一度は会いたいと思っておった。」
「しかし・・・。」
「ワシはやるといったらやるぞ!!」
「奥方様は?」
「足利の血などいらぬわ!!」
どうやら三好義継も美佳の婿候補に名乗りを上げたいようだ。
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