マイホーム戦国

石崎楢

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第89話:風雲!!大輔城 中編

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第一の関門である●境の壁。

「うわ~ん!! 姫君と結婚したかったよォォォ~」

大泣きしている真柄直澄を置き去りに勝者たちは先を急ぐ。


「ようこそ・・・第二の関門へ。」

待ち構えていたのは英圭。
その先には館風の迷路が見えている。

「次は何なんだ?」
一馬が聞くも、英圭が一喝する。
「口の利き方を慎め!!」


「な・・・なんだと・・・」
「まあまあ・・・キャラづくりしてるのよ、英圭も。」
憤怒の一馬を義成がなだめた。

「この迷路・・・いや・・・この屋敷には二匹の悪魔が住んでいる。その悪魔たちに捕まり顔を墨で塗られたり、逃げるのに失敗して池に落ちたら失格だ。」
英圭が冷たい視線を一馬たちに向ける。

「て・・・テメー・・・」
「ところでお聞きいたしますが、その悪魔たちを倒してもよろしいのでしょうか?」
ますます憤る一馬の隣で、義成が丁寧な口調で質問するも

「できるのか? 武器は禁止だぞ・・・貴様らにできるのかな・・・?」
「あ~・・・キレた・・・殴ったる!!」
英圭の不遜な態度に義成もキレてしまったが、今度は源之進がなだめた。


「これってさあ・・・た●し城の悪●の館だよね・・・」
私は思わずつぶやく。
「いえ・・・悪魔の屋敷です。」
気がつくと隣に景兼が立っていた。
「恐ろしい悪魔が二匹・・・下手をすればここで全滅ですぞ。」
光秀もニヤニヤしながら悪魔の屋敷を眺めていた。


「では最初の者・・・」
「待って・・・英圭。見本を見せてあげてよ。」
面白がった顔で美佳が声を上げる。

「な・・・なんと・・・」
「仁興殿、姫のご期待に背くわけにいきますまい。」
源之進が英圭の耳元で囁く。
一馬と義成がニタニタと笑いながらそれを見つめている。

「・・・やるぞォ!!」
英圭は気合の一声を上げると悪魔の屋敷に入っていった。

そして数秒後・・・

ドカッ、バキッ、ボコッと鈍い音が響き渡る。
そして何かが落ちる大きな水音がした。

参加者一同は池を見ると戦慄が走った。

「!?」

ズタボロになった英圭が池に浮いていた。
それを見て美佳はただ苦笑いするばかり。

「英圭・・・死んでないよな。」
忍びたちの手で運ばれていく英圭を見つめて青ざめる一馬。
皆、足がすくんで先に進めそうにない状態であったが、

「よし・・・それならばワシが行こうか!!」
そんな中で先陣を切るべく名乗りを上げたのは本田平八郎。

「おお!!強そうな人だ!!」
「腕試しにもってこいじゃ・・・参るぞ!!」
皆の声に押されて、平八郎は悪魔の屋敷の中へと入っていた。

ドカッ、バキッ、ボコと鈍い音が響き渡る。
しかし、それがひたすら長く続いていくと

「こ・・・こやつ・・・強いって・・・ぐえッ・・・痛いって!!」
「死なばもろともじゃあああ!! グオォォォッ!! ぐがッ!!」

聞こえてきたのは一馬たちには聞き覚えのあるの声だった。
その後に平八郎の断末魔にも似た叫び声。

そして池に何かが落ちた水音が響き渡ると二人の男が浮かんできた。

「石川様・・・確かに悪魔だ・・・」
水に浮かんでいたのは五右衛門だった。

よくやってくれた三河の侍よ・・・。

一馬たちは安堵の表情を見せていた。


「平八郎がやられた・・・? 馬鹿な・・・。」
榊原康政は青ざめている。

「痛え・・・ったくこのガキ・・・本気で殴ってくるから参ったぜ。」
五右衛門は失神した平八郎を抱きかかえると池から上がってきた。


「石川様が悪魔・・・ということはもう一匹の悪魔は?」
恐る恐る義成が聞くと五右衛門は笑みを浮かべて答えた。
「ああ・・・慶次だよ。前田慶次。」

その言葉を聞くと、一同固まってしまった。

「石川様に前田慶次郎利益殿・・・これって我らを婿にする気がないということですか?」
重友が悲し気な表情で座り込む。

「前田利益殿か・・・参ったな。」
康政も苦笑いを浮かべるしかなかった。

「名前は聞いている。相当な傾奇者だが、腕は恐ろしい程立つと。」
「得物があればそれなりに戦えるだろうが・・・ここにいる我らは。」
土屋昌続と北条景広がため息交じりにつぶやいたときだった。

「・・・。」
マスク侍が無言で悪魔の屋敷の中へと入っていく。

「あの怪しい人が・・・」
「どうなるんだよって・・・」

一馬たちはただ見送るしかなかった。


ドカッ、バキッ、ボコッと鈍い音が辺り一面に響き渡ると何かが池に落ちた音がした。


「なんだって・・・・!?」

池に浮かんでいたのは慶次だった。

あのマスク侍はそんなに強いのか・・・。

一同、悪魔の屋敷の中へと入っていく・・・と

「マスク侍殿・・・。」

グレート●スケのマスクを黒く塗りつぶされた男が壁にもたれて倒れていた。

「ありがとう・・・マスク侍殿!!」
その声に反応して弱々しくマスク侍は親指を立てた。
そしてそのままガクッと気を失ったのだった。

「何ということですか・・・。」
「あの御方の持つ義侠心が仇になったと・・・。」
景兼と光秀は頭を抱えている。

「凄い戦いだったね、岳人・・・世の中にはこんな強い人がいるんだね。」
お市はマスク侍を見て感動している。

ハハハ・・・義輝さん。何しているんですか・・・。

岳人はただ茫然とマスク侍を見つめるしかなかった。


参加者たちが次の関門へと向かっている最中、マスク侍が私たちのところへやってきた。

「お・・・お疲れさまでした。」
美佳の言葉にうなずくマスク侍。

「何やってんの・・・義輝。」
「義兄上、すまぬ。ありゃバケモンだって。」

私の言葉にマスク侍はその覆面を脱ぐと投げ棄てた。

「お・・・叔父さま・・・。」
美佳は驚きの声をあげた。

マスクを脱いだ義輝は顔がボコボコに腫れていた。



「第三の関門はこれだァァァッ!!」
参加者を待ち受けていたのは六兵衛だった。
その背後には一人分の幅の手摺りがない吊り橋が架けられていた。

「これはジブ●ルタル海峡だよね?」
「いえ・・・この関門の名は淡路海峡です。」
私の質問に景兼が即答した。

「皆の衆、これからこの吊り橋を一人ずつ渡っていただく。」
「おお・・・ゆっくりと進めば簡単そうだ。」
そんな声も次々と上がっているが

「ただし、大砲が狙い撃ちをしてくる。それをかわしながら進むのだ。」
「それ死んじゃいますって!!」
六兵衛の言葉にすかさず重友がツッコミを入れた。
木陰に潜んだ清興が大砲で狙いを定めている。
「無論、大砲は連発できないからその次は鉄球攻撃となっておる。」
重友が木陰を見ると元規が棘付きの鉄球を投げる準備をしていた。

「おい・・・アンタら頭イカれてるだろ!?」
「安心せい・・・大砲は鉄の玉ではない。鉄球も当たっても死ぬことはないだろうシロモノを準備しておる。」

え・・・死ぬことのないだろう? ということは死ぬ可能性もあるというか棘付き鉄球なんて危険すぎるだろうが・・・

参加者は皆、腕に覚えのある猛者たちであるが、その表情に段々と陰りが見え始めていた。
しかし、勇気を振り絞った最初の一人が吊り橋を渡り始める。

「発射!!」
「ハハハ・・・死ね!!」

六兵衛の声と共に邪悪な笑みを浮かべた清興が大砲を撃つ。

「ひッ・・・うわあああッ!?」

最初の男は弾丸をなんとかかわすもバランスを崩し吊り橋から転落し池に落ちた。

弾・・・速過ぎですやん・・・当たったら死ぬって・・・

参加者一同、ただ青ざめた表情で立ち尽くす。
そしてその後も次々と転落していく者たちばかり。

「フハハハハ・・・怖かろう!!」
高笑いする清興。

「ふん・・・オマエらなど怖くないわ・・・清興、小原殿!!」
そのとき重友が吊り橋に向かって歩き出した。

「ほう・・・若ではないか。手加減せんぞ。」
「構わん。」

「始め!!」
六兵衛の号令と共に重友は全力で走り出す。

「なッ・・・しまった!!」
対応が遅れた清興は慌てて大砲を発射する間に合わない。
元規が鉄球を投げるもわずかに届かず、重友は吊り橋を渡り切った。
重い鉄球を投げた元規は肩を痛めて悶絶している。

「凄い・・・シゲちゃんカッコいい!!」
美佳の声に満面の笑みで手を振る重友。

「ぬう・・・高山様に先を越された・・・私が行くぞ!!」
続いて源之進も全力で吊り橋を駆け抜けていく。

しかし、清興の大砲の前にバランスを崩し

「南無三!!」

源之進は池の中へと消えていった。

しかし、その後は一馬や義成たちも何とか吊り橋を渡り切った。
残されたのは一馬、義成、重友、榊原康政、土屋昌続、北条景広の六名。

「揃いも揃っていい男ばかりね♪」
朋美はまんざらでもなさそうな顔でそれを見つめている。
「そうだな・・・美佳の婿には申し分のない者たちばかりだ。」
私がそう言って美佳の方を向くと

おいおい・・・何してんの?

美佳は景兼、光秀、義輝、楓と何やら小声で談合を始めていた。

「ヤバいよ・・・このままじゃ・・・誰かしら合格しちゃうよ。」
「断れば良いではないですか。」
景兼が言うも
「こんなに頑張っている人を断れないよ・・・。」
美佳は六名の方を見る。

「おお・・・山田の姫君。」
榊原康政は指鉄砲を美佳の方に向けてウィンクする。

あら・・・イケメン♪

美佳は笑顔で手を振る。

「ヤバい・・・超イケメンじゃないの!!」
朋美がそれを見て更に興奮している。

「てめえ・・・三河の野郎!! 美佳様に抜け駆けすんな。」
「や・・・やめてくだされィ・・・。」
康政は一馬と義成と重友に詰め寄られていた。


「それでは・・・次が最終関門になります。」
光秀の声と共に残った六名は最終関門の前に立った。



果たしてその最終関門とは一体何なのだろうか?
そして勝者となるのは誰なのであろうか。

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