マイホーム戦国

石崎楢

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第129話:永禄最強大武道会開幕

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1569年京都御所。
白い雪が舞い降りる中、日ノ本の各地から夢と野望に満ち溢れた猛者たちが集まっていた。

正親町天皇や公家たち、そして将軍義栄を目の前に誰もが緊張を隠せないように見えた。
そんな中で一番最初に名乗りを上げたのは

「相模国から参りました。北条氏政でございます。」
東国の覇者北条氏政である。
その配下に控えるのは風魔小太郎。

おお・・・帝かよ・・・神というよりは我らと変わらんではないか・・・

そんな小太郎だが、非常に強い殺気だった視線に気付く。

服部半蔵に石川五右衛門かい・・・俺を殺す気満々じゃねえか。
でも、残念だな。この大会では殺してはいけないんだよねえ♪

服部半蔵正成と五右衛門をチラ見するとニタつくのだった。


「駿河国から参りました。今川氏真でございます。」
没落の一途をたどる今川家の当主である。
その配下には六人の顔を頭巾で覆った男たち。

「今川氏真。その方の配下の者共、帝や義栄公の前で頭巾とは無礼ではないか!!」
その様子を見た細川藤孝が一喝する。

「申し訳ございませぬ。この者どもはかつての流行病で顔が爛れており、人前にさらせませぬ。ただその武芸の腕は駿河でも随一の者共であるが故にご容赦を!!」
平伏する氏真と六人の頭巾の男たち。

「まあ、藤孝殿。良いではないか。今川家は名よりも実をとったということじゃろうて。」
五摂家の一つである二条家当主の二条晴良が藤孝をなだめることでこの件は落ち着いた。

それで良いのじゃろ・・・大輔殿。

二条春良は私を見た。

ありがとうございます、関白様。

私は頭を下げると五右衛門たちを見た。

「やはりどう見てもあの男たちではないか。これなら六兵衛も疋田様も来ただろうに。」
いきり立つ五右衛門。
「九兵衛の敵は俺がとるぞ。」
清興も同じく怒りを露わにしていた。

この大会は大武道会で殺し合いは厳禁なんですけど・・・

「落ち着け五右衛門、清興。」
「ガルルル!!」

私がなだめるも既に野獣と化した二人、さすがの慶次も呆れ顔だ。
そのとき、柳生厳勝が口を開いた。

「あの今川氏真・・・気を付けねばなりませぬ。蹴鞠好きのうつけ者と云われておりますが、その剣の腕は並外れております。人数的に見て、あの六人と共に出場するでしょう。それ程の腕なのだと・・・。」

厳勝の言葉の後に平伏している氏真の顔をよく見ると、狂気の笑みを浮かべているではないか。

殺さない限りは何をしてもいいんだよねえ・・・殺さない限りは!!


続いて甲斐の武田家、越後の上杉家、三河の徳川家と続いた。

そしてその次は

「伊勢国国司北畠具房でございますだブヒ。」
太り御所北畠具房である。どうやら北畠家も参加するようだ。

「マジか・・・焼き豚が参加するのかよ!!」
どこからか野次が飛んでくる。

「黙れだブヒよ。父上が参加したいっていうからだブヒ。」
顔を真っ赤にして野次に激怒する具房。

道楽、道楽♪ ワシの腕が本当のところどのぐらいかを試すにはもってこいの舞台じゃしな。

北畠具教は満面の笑みを浮かべている。
その脇で鳥屋尾満栄と大宮景連が私たちの方を向くと頭を下げた。


「続きまして私が山城国大和国河内国和泉国守護に任じられております山田大輔と申す者でございます。」
私が名乗ると日ノ本各地から集った猛者たちの視線が一気に突き刺さってくる。


あれが・・・山田大輔か・・・ふうむ・・・穏やかそうな男だ。切支丹への理解が深いのもわかるな。
是非とも主について語り合いたいものじゃ。

大友宗麟が私をじっと見ている。
どうやら好意的なようだが、基本は無宗派なので宗教の勧誘はお断りです。


「・・・。」
中国地方の覇者である毛利元就は老体に鞭打って上洛していた。
しかし、その視線は私ではなくて違う方向に向けられている
しかも、その表情がこわばっていることに毛利家の猛者たちは気付いていた。


「摂津国の三好義継じゃ。安心せい、我らが勝ち残るからのう。」
私の次は三好義継である。
いきなり無礼極まりない発言に周囲の者たちは怒りを通り越して呆れかえっていた。

これは勝てぬな。大体、こういう出方をする奴は噛ませになるのが王道じゃて・・・

肩を落とす岩成友通であった。


「安芸国の毛利元就でございまする。この大武道会は恨みっこ無しでお願いいたしますじゃ。」
毛利元就の姿に諸国の傑物たちはくぎ付けになった。

あの御方が毛利元就か・・・ただの爺さんじゃねえな・・・。


しかし、毛利家の者共は次に名乗る男に目を奪われていた。

「隠岐国の尼子勝久と申します。小国なれど精一杯の武勇をお見せしたいと思っておりまする。」
尼子勝久は才気に満ちた表情を見せる若者であった。

そして毛利家だけでなく私たちも尼子勝久の配下の者共の姿を見て驚く。

おいおいおい・・・飛鼠に霞丸、そしてあの御方までおるとは・・・

吉川元長は額から流れ落ちる季節外れの汗をぬぐった。

「お・・・おい・・・どう見ても義輝様じゃ・・・。」
「髭でごまかしているけれど我らを欺くことはできないって。」
一馬と慎之介は義輝らしき男を尼子勝久の配下に見つけると焦るしかなかった。

「これは・・・義輝様と戦える絶好の機会じゃねえか。」
「マジでやる気になってきたぜ!!」
五右衛門と慶次はベクトルが違う方向を向いているようだ。

義輝・・・意味不明だぞ・・・

私は義輝をただ見つめることしかできなかった。
そんな義輝も私を見る。

義兄上すまない。ただ俺は敵になったつもりはない。尼子として参加することに意味があるのだ。

そうか・・・お前なりの考えがあるのなら構わないよ。

私は義輝の心中を察すると笑顔を見せてあげた。
ただ頭を下げる義輝。その目には涙が浮かんでいたのだった。

「山田義輝殿、本当に上手くいくのか?」
そんな義輝に声をかけるのは尼子家家臣山中鹿助。
「俺の義兄上ならば上手くまとめてくれるぞ。安心せい、鹿介、庵助、兵庫介。」
「ははッ!!」

尼子十勇士の一人である鹿介、秋上庵助、横道兵庫介は嬉しそうに声を上げた。
その傍らでは・・・

「霞丸はいつになったら出羽に帰るん?」
「義輝様の宿願が成就されるまでだ。」

飛鼠と霞丸の二人は噛み合わないながらも話をしている。

「祥鶴がいなくなったと思ったら今度はだもんね。参ったぜよ。」
飛鼠の視線の先には鋭い眼光で殺気を放っている男の姿。

「鬼石というその名は飾りではない。こいつは本物の鬼の如き男じゃ。」
霞丸はその男を鬼石と呼ぶのだった。


「九州探題の大友宗麟でございまする。上洛の機会を与えていただき帝や公家の衆、将軍義栄公、そして山田殿に感謝でございます。」
九州の覇者大友宗麟である。

出たな・・・この剃毛野郎の切支丹かぶれが!!

毛利元就は憎しみに満ちた目を宗麟に向ける。

ジジイ・・・裁きの時間は近いぞ。

大友宗麟は元就に向けて十字を切った。


他の参加国は安房の里見義弘、飛騨の姉小路頼綱、備前の浦上宗景、日向の伊東義祐、薩摩の島津義久の計16国となった。

「それでは予選の組み合わせを発表いたしまする。」
細川藤孝の声を一同静まり返った。

「予選は四つに別れており一つの予選に四つの国が入ります。」

こうして発表されたの結果がこうである。

比叡山組が里見、今川、浦上、大友。
大徳寺組が上杉、徳川、姉小路、尼子。
大覚寺組が武田、北畠、山田、伊東。
伏見稲荷組が北条、三好、毛利、島津。


「では明朝辰の刻より各所で予選を始める。皆の者、天下を頼む・・・。それでは永禄最強大武道会の開幕じゃァァァ!!」
義栄の言葉で永禄最強大武道会が開幕となった。


見るからに噛ませ的な存在も見受けられるが、この大武道会の結末はいかに!?
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