マイホーム戦国

石崎楢

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第136話:更なる激戦へ

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1569年2月16日、比叡山の試合会場。
雪が降り積もる中、今川家と里見家が対峙していた。
既に疲労困憊気味の両陣営である。

赤龍たちは黒炎たちを追い払ったものの、その幻術に苦戦していた。
そして里見家も風魔忍軍の襲撃を受けていたのだ。

「行けるか?」
里見家当主里見義弘が声をかけた先にいる八人の男たち。

「全く問題はございませぬ。」
傷一つない八人の男たちは風魔忍軍をものともせずに返り討ちにしていた。

「一番手は俺が行こうか・・・。」
その男は鋭い眼光で今川家を見つめる。

「里見はやる気十分じゃが、我らはどうじゃ?」
今川氏真は赤龍たちを見回す。

「私が行きましょう。」
白虎が前へ出て行った。

その様子を偵察しているのは竹中半兵衛重治。

あの白き男が、義輝様と互角に渡り合ったという者か・・・

「今川家一番手白虎。」
白い頭巾で顔を隠した白虎が木刀を構える。

「里見家一番手獅子王。」

審判の声を聞いた重治はズッコケた。

殿曰く、『里見の八犬士の由来はそれぞれの名字が犬だからだ』・・・何故に獅子・・・
話が違いますぞ・・・犬じゃないよ!?

その男獅子王も木刀を構えると白虎に対して笑みを見せる。

「始め!!」
審判の声と共に両者は鋭い出足で一気に距離を詰めるのだった。



その頃、大徳寺。

「なんだと・・・。」
狼狽する上杉輝虎。

その目の前では猛将柿崎景家が失神していた。

「ハアハア・・・。」
尼子家側ではひざまずいていた男が立ち上がる。

「勝負あり!! 勝者鬼石!!」
尼子家の鬼石と呼ばれている男は吐血しながら手を上げて勝利を示した。

「恐るべし男じゃ・・・鬼石。」
「常識が通じませぬな。」
義輝と霞丸は鬼石の両肩を抱きかかえる。

「日ノ本にはあのような男がおると・・・若ければ負けてたな・・・」
鬼石は倒れている柿崎景家を見つめていた。

圧倒的な武の力に追い詰められていた鬼石だったが、柿崎景家の槍を腹に受けながらそのまま持ち上げてしまう。
そして地面に叩きつけての大逆転勝ちなのであった。


その鬼石の様子を見つめている集団がいた。
薩摩の島津家である。
当主の島津義久は憮然とした表情を浮かべていた。

「あれはどう考えても義弘様でございますな。」
家臣の一人が義久に声をかける。

「又四郎じゃ・・・あやつがワシらに参加せぬせいで負けたというのに・・・。」

そう・・・鬼石の正体は島津家当主義久の弟の島津義弘である。
ある日突然、島津家を出奔したと思ったら尼子家家臣としてこの大武道会に参加していた。

義弘には子飼いの凄腕の家来たちがいたが、義弘不在の為に島津家代表として参加せずに終わった。
それ故の毛利家への敗北だったのだ。

「上杉家二番手は小島弥太郎。」
上杉家最恐の男が前へと出てきた。

「尼子家二番手は飛鼠。」
飛鼠はドン引きした顔で恐る恐る前へと出ていく。

聞いてない・・・聞いてないって・・・あれが噂の鬼小島・・・ワシがあれと戦うの?

「優男風情がワシに挑むというのか・・・尼子がどれだけ傑物揃いかと思っておればこのような輩もおるのじゃな・・・ガハハハ!!」
小島弥太郎は木刀を手に高笑い。

「お~い、飛鼠!!」
義輝が飛鼠を呼び寄せた。
仕方なく近づいてきたその耳元で義輝が囁いた。

「四国の覇者になれ・・・鬼若子・・・」
「マジか・・・義輝様からその名前で呼ばれるとはね・・・嬉しいぜ!!」

飛鼠の表情が一変した。
その身体からは強者の証の如く闘気が湧き上がっていた。

「ほう・・・先程のは失言じゃった。すまぬ・・・飛鼠殿・・・。今のおぬしは飛鼠コウモリではなくまるで大鷲のようじゃ・・・。」
小島弥太郎の身体からも闘気が湧き上がる。

そのとき、上杉輝虎は義輝の顔を凝視していた。

ま・・・まさか・・・

義輝はその視線に気づいており目を合わせない。

バレたか・・・?

「・・・景綱。あの尼子の髭の御方は何者じゃ?」
「はッ。あの者は武輝丸と申す武芸者だと伺っております。」
上杉家重臣直江景綱は即答すると北条景広を見た。

ありがとうございます。山田大輔殿の義弟とバレたら一大事・・・助かりまする。

その景広の思いも勘違いであった。
上杉輝虎には忘れることのできない顔なのである。

間違いない・・・先代将軍義輝公じゃ・・・

輝虎は確信していた。あの武輝丸は足利義輝であると・・・。


そして伏見稲荷では

「何をしておる・・・。」
北条氏政は憤りを隠せなかった。
既に開始して三連敗を喫していたのである。

すまぬな・・・殿。我らはかなり戦力を失ってしもうた・・・

風魔小太郎は薄ら笑いを浮かべていた。
上忍たちを休ませて中忍たちで戦わせているのだった。

しかも毛利の一番手はバケモンだ・・・あやつらは島津戦で温存しておったということ。仕方ないねえ。

毛利家の一番手は吉川元春。その勇名は中国地方どころか四国、九州、畿内にまで轟くほどであった。

「父上・・・」
吉川元資はその様子をただ無表情で眺めていた。

「北条は何を考えておるのでしょうか・・・いくら兄上といえどこうも簡単に・・・」
小早川隆景は毛利元就に向かって疑問を投げかけた。

「そうじゃな・・・しかし・・・勝てる戦に乗らぬは損。元春に任せておけばよかろうて。」
毛利元就は軽口を叩きながらもその眼は風魔小太郎を見据えていた。

おお・・・怖いねえ・・・毛利の爺さん。のために色々としているでしょうが?

小太郎は目をそらすと再び薄ら笑いを浮かべるのだった。



そして大覚寺。

「山田家一番手は高井義成!!」
義成が槍を構えて前に出ていく。

「あれが松永弾正を討ち取った山田家の若武者か・・・見事な姿じゃ。」
武田信玄は義成の落ち着いた佇まいに感嘆の声を上げる。

「では拙者が行かねばなりますまい。」
武田陣営から出てくるのは三枝昌貞。

「武田家一番手は三枝昌貞!!」
昌貞も槍を得物に義成と向かい合う。

「始め!!」

義成と昌貞は互いの間合いを確認しながらけん制し合う。

おお・・・これが武田の兵か・・・強いな・・・

義成は流れるような足捌きで昌貞の放つプレッシャーを受け流す。

むう・・・この者・・・強さの見当がつかぬ・・・ならば!!

昌貞は鋭く踏み込むと高速で槍を突きまくる。
それを鮮やかにかわす義成。

「これならば!!」
更に鋭い回転を加えた昌貞の槍は威力を増して義成に襲い掛かる。

「くッ・・・」
槍で弾き返そうとするもその鋭い回転の突きは防御を打ち破る。

「出るぞ・・・三枝殿の奥義!!」
武藤喜兵衛が叫ぶ。

「喰らえィ!! 牙竜昇天突がりゅうしょうてんとつ!!」
穂先をドリルのように回転させながらの高速の突きが義成を捉えた。

「!?」
決まったかのように見えた一撃、しかしその場に居るものが驚嘆する光景がそこにあった。

「バカな・・・」
昌貞は一瞬固まってしまった。
義成が上半身をのけ反る形で必殺の一撃をかわしていたのだ。

そのまま昌貞の手を強く蹴り上げながら後方に一回転する義成。
思わず槍を落としてしまう昌貞。

「ぐはッ・・・。」
次の瞬間、義成の槍が昌貞のみぞおちを抉っていた。
白目を剥いて崩れ落ちていく姿を見た審判の声

「勝負あり!! 勝者高井義成!!」

「なんか義成が大きく見えてきたぞ・・・。」
思わず感嘆する私であったが、その言葉に大きく反応したのは一馬と慎之介。

「次は私が・・・」
「待て・・・私の方が・・・」
二人が言い争いをする最中、

「私が行きましょう。」
柳生厳勝が一足先に試合場に足を踏み入れた。
そして勝利を収めた義成とハイタッチした。


各試合場で戦いが始まった。
私たち山田家は見事に先勝することができたが、次の試合はどうなるのか?
武田家の底力に打ち勝つことができるのであろうか・・・

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