マイホーム戦国

石崎楢

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第199話:新たなる道筋

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近江国姉川付近、山田軍の本陣。
そこにただ表情を変えずに佇む岳人の姿。そしてその前には五右衛門やすみれたち。
青彪と緑霊、白虎も傍らに控えていた。

「すまないね・・・自分でも驚いている。なんで僕はこんなに冷静なんだと・・・」
岳人はそう言うと顔を手で覆った。

なんで涙が出ない・・・こんなに悲しいのに・・・どうしようもないのに・・・

「若君・・・俺が責任を取る。腹を切ろう・・・そして・・・」
「五右衛門さん、あなたが腹を切ってもお市は帰ってこない。そういう時代はもうすぐ終わるから。」
五右衛門の言葉を岳人は制した。

「ただ・・・やはり敵討ちという気持ちは強い。日本人なんだよな、僕は。ただその敵討ちも六角家が動けないからね。」


六角義定を失った六角家。正史と異なりまだ義定に世継ぎがいないという状況である。

「隠遁されている義治様を再び擁立する。」
家臣団の一部からはそのような意見も出たが、大半の家臣たちは否定的であった。

確かに義治様を再び立てるのは本筋だが、国人衆の大半からは忌み嫌われている。
これを付け入るべき隙として浅井が絡んでくるのは必須。

蒲生賢秀も観音寺騒動の二の徹は踏むまいと考えていた。

「兄上、元より我らには六角式目がござろう。それぞれが領地を守れば良いのでは?」
実弟である青地茂綱からの提案。

「まずはその形をとるか・・・少し考えねばならないが・・・」

この問題が私にとって更なるイベントを引き起こすことになるのだ。



大和国多聞山城。

「なんということだ・・・」
私は度重なる悲劇に打ちひしがれるばかり。
息子の嫁と盟友を同時に失うことになるとは・・・

私は茶室に引き籠ってしまうのだった。


大広間では家臣団が朋美と真紅を交えて評定を開いていた。
六角家から朋大か暁人のどちらかに養子として家督を相続して欲しいとの要請があったのだ。

「・・・わたしは朋大を手元から離せないわ・・・」
朋美は首を横に振る。

「暁人は越智家を継ぎます。不義理はできません。」
真紅も首を縦に振らなかった。

「では今後も踏まえて殿に更なる御子をと考えますが・・・」
竹中半兵衛重治の言葉に敵意をむき出しにする朋美と真紅。

「私はこれ以上の出産は厳しいわ。年齢的にも体力的にも。真紅に任せるわよ。」
「・・・わたしは構いませんが、次も出来るとは限りません。それでもよろしいですか、朋美様?」
「それは・・・」

要はもっと私の子が必要だということである。
岳人の存在が不安定な今、先を見据えて後継者候補は多い方がいいということを重治は提案しているのだ。


そんな中、茶室に引き籠っている私のもとへ一人の女が姿を現した。

「失礼いたします。」
「なずなちゃんじゃないの・・・」
なずなは顔を赤らめて私の側に近づいてきた。

「殿の心中を察すると胸が苦しくなりまして・・・何かわたしに出来ることはありませんか?」

その言葉が私の胸に響いた。
朋美も真紅も育児に夢中で私に見向きもしてくれなくなった今日この頃。
あれだけ私を求めていた真紅も素っ気ないものだと内心へこんでいたのだ。

「殿・・・ずっとお慕い申し上げておりました・・・」
そう言うとなずなは私の手を取って自分の胸に当ててくる。

分かってました・・・分かってましたよ。あなたが私に好意を寄せてくれているのは・・・
でも理性で抑えていたのですよ。
現代では朋美ひとすじで生きてきたのです。
そういう気持ちをアダルトなDVDで抑止する。夜な夜な家族が寝静まった後の話だ。
しかし、戦国の世にそういうものはない。人々は欲望のままに発情しまくる始末だ。
いいのか・・・いいのか・・・

自問自答を繰り返す私の脳裏に声が聞こえてきた。

「やっちゃえよ、大輔!!」

いや・・・そんな車のCMみたいなこと言わないでくれ・・・田村麻呂さん。

そんなこと思いながらいつの間にか私はなずなと舌を絡めているのであった。
彼女の右手がいつの間にかリトル大輔を細かく刺激してきたのが大きい。

「くのいちって・・・どうなんだ?」
「んあ・・・し、真紅様はどうでしたか・・・?」
「凄かったけど・・・なずなちゃんはもっと・・・」
「嬉しい♥」

これは大変なことになりそうだ・・・リアルに”くのいち忍法帖”のような・・・うお・・・!?

「イク時は一緒よ・・・忍法筒じらし!!」
「うお・・・上手過ぎ・・・うう・・・そういえばなずなちゃん?」
「なぁ~にぃ・・・♥」
「忍法火炎乳とかはできないよね?」
「それってぇ~?」
「乳首から炎が出て敵を焼き殺すんです。」
「そんなの出来たらわたしは人じゃないわ。でもこれならどう? 忍法乳ばさみ♥」
「うお・・・やわらかジューシー・・・」

なずなの繰り出す忍法の前に私は成す術がないまま・・・身を任せるのだった。


そろそろか・・・なずな殿・・・頼みましたぞ。私も今宵は頑張ろうか・・・。

重治はそう心の中でつぶやくと天を仰ぐ。

「何をニヤついているの、半兵衛さん。」
朋美が鋭く突っ込む。

なずながいない・・・まさか・・・そういうことね・・・

真紅は呆れた顔で重治を見つめるのだった。
そしてその重治の思惑通りに事が運ぶのである・・・。



その頃、姉川の浅井軍本陣。

「貴様・・・なんということを!!」
浅井長政はダルハンを殴り飛ばしていた。

「市姫の件は事故でございましょう。」
それを諫めるのは重臣の赤尾清綱。

「貴様ら異国の者の武を信じておったのだ!!それがなんたるザマじゃ・・・たわけが!!」
ダルハンは長政の蹴りを顔に貰うと鮮血を飛び散らしながら倒れ込む。
家臣団が長政を抑え付ける中、ひたすら平伏するダルハン。

なんという・・・屈辱・・・国を追われて・・・流れ着いて・・・このザマか・・・


晩になって一人対岸の山田軍を見つめるダルハン。
腫れあがった顔と握りしめられた拳。

「誰だ・・・」
そのとき、何者かの気配を感じたダルハン。

「夜は割と涼しいよね・・・」
そんな言葉と共に現れた男の姿にダルハンを言葉を失った。

「安心してよ、殺しに来たわけではない。まず、あなたと戦っても僕は勝てないしね。」
岳人は穏やかな表情でダルハンの隣に立つ。

「山田岳人か・・・」
先日の戦いで一瞬でも心を奪われた敵将である岳人。しかし、ダルハンは自分でも思いもがけぬ言葉を口にするのである。

「私は明より更に北からこの日ノ本に流れ着いた。権力争いに敗れた王族の生き残りだ。」
「そうなんだ。ならば、いずれはあなたを王族に戻してあげるよ。いや、王になればいい。あなたはきっとそれに相応しい漢だから。ただ僕がもっと上に立つけどね。」

何となくだがこのような言葉を待っていた。だからこそこの岳人おとこに心を奪われたのかもしれん。

ダルハンの目からは涙がとめどなく溢れてきていた。
それを見た岳人は地べたに腰を下ろす。

「いずれは僕についてきて欲しい。そのときは声をかけるから。」
「ははッ・・・」

岳人が自分の野望を叶える為の最強の剣を手に入れた瞬間であった。



近江国のとある山中の村。
1人の少年が木刀を振るいながら山中を駆け回っていた。

「えいやあああ!!」
大木を木刀で斬りつける。鮮やかな太刀筋は齢七つの少年とは思えないものであった。
彼の名は京極小法師。かつては名門として名を馳せた京極家の嫡男である。

「うう・・・」
「何やつじゃ!!」
突然のうめき声に険しい顔つきになる小法師。

「・・・み・・・水を・・・俺は構わぬ。この御方に・・・」
全身傷だらけの男が美しい女性を抱きかかえながら姿を現した。

な・・・なんて美しい女性ひと・・・

小法師はその女性を見ると顔を赤らめてしまう。
しかしすぐさま我に返ると

「今すぐ誰か大人を呼んでまいります。」
物凄い勢いで山を駆け下りていった。

「市姫・・・どうやら助かりそうだぞ・・・」
「・・・」

それは風魔小太郎とお市であった。
しかし、安堵の表情を浮かべる小太郎に対し、お市はまるで人形のように表情を失っていた。

急がねば・・・急がねば・・・

必死に駆け下りていくこの少年、京極小法師。後の名将京極高次である。


何とか生き延びていたお市と風魔小太郎。
この二人と京極小法師の出会いがまた新たなる改変をもたらすことになるのであった。

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