正義ノ魔王と四天王

ふるーつさんど。

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最初とさいご

さいごは至って簡単で。

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ずっと、この時が続いて欲しかった。
このまま、この毎日がずっと。

平和のまま、最期を迎えたかった。
否、最期なんて考えもしなかった。

別れることなんて無いと思ってた。
ずっとずっと、この生活が続いて、
笑顔の儘最期を迎えられると思っていた。

だが、本当のさいごはそんな簡単じゃなかった。
我自身も、他の皆も。

続いて欲しいなんて言う思いは無情にも続くとは限らない。
誰かに簡単に壊されてしまうのが“現実”なのだ。

何もかも何れは変わってしまうだろう。
昔あったものは枯れ果て、また新しいものが生まれる。
総じてこの世界は成り立っているのだから。

諦めきれないと思っても、残虐に壊され、朽ちていく。
保つことはここまで難しかっただろうか。

嗚呼、そうか。
“保つこと”は簡単でも、“保ち続けること”は
難しいのか。

もう、我らには何も残っていないのか?
我は此の儘壊されるところを見ている事しか出来ないのか?

蹲っていることしか、残っていない。
何故?それは我の元にも相手が来てしまったからだ。

此奴は我らを【悪】とみている。
悪行などしていない。

ただ、【魔王】という上澄みを見て、決め付けているのだ。
此奴だけじゃない。
敵国の王家共は皆、そう考え、簡単に発言するのだ。

事実に目を向けず、言葉だけを信じ込み、行動する。
これを自分勝手とも、傲慢だとも、我儘だとでも云うのだろう。

そんな事を述べたとて、其奴らは述べるだけで終わらせる。
結局は誰も何もせず、終わってしまうのだ。

目を瞑り、現実から離れようとしても叶わない。
ゆっくりと瞼を開く。

強く開けられた扉は、毎朝メイドが我を起こしに来てくれる時に、
其れは其れは丁重に開いてくれただろう。

隅まで丁寧に掃除をしてくれて、汚いところなど無く、
ずっと同じ景色だった。

この館内は何時までも変わらないんだと思っていた。
外の景色は年が経つ事に変わっていく。

それでもこの館内は毎日同じ景色。
保ち続いた。

もう、終わりなのだ。
この館も。我が信じていた未来も。
永遠に続くと思っていた幻想も。

全て今、終止符を打ってしまったのだ。
もう良い。今、終わらせるから。

外の景色は紅く染まった。
吟遊詩人の唄う、優雅な音色も。
剣士が交える、剣の鋭い音も。
魔法使いが創る、破裂音も。
メイドが撃つ、銃の発射音も。

全て聞こえない。
紅色に染まってしまったのだから。

敵国の軍も四天王等に始末された様だ。
その分、四天王等も重傷を重ね、最期を迎えているだろう。

それならば、我は彼奴等が安心して永遠の眠りにつける様、
目の前の此奴を叩いてしまおう。

魔力を溜め、鋭い槍を創る。
こんな奴、もう二度と産まれてこない様、願いを込めて。

心臓目掛けて思い切り飛ばす。
一瞬で我の部屋も紅く染まった。

壁にベタりと付いた血。
床には今も尚流れ出ている血。

そして、バタンッと勢いよく倒れた醜姫。
二度と開くことの無い目。
彼女が着ている純白のドレスには紅い血痕がベッタリと着いている。

魔力の槍はブれ、我の手に戻るように消えていった。
その時に頭に過去の記憶が蘇る。
四天王達と過ごしたあの記憶だ。

其奴らを守れないのであれば、
どれだけ強い力を持っていたとしても意味なんて無い。
其れなら、もう、こんな力要らない。

自分自身ごと、全てこの場に封印してしまおう。
持っている魔力全てを此処に放出し、自分を封印する。

ゆっくりと瞼が落ちる。

この封印は永遠に目覚めないものだ。
もうこの世界も、景色も見ることは無い。

しかし、四天王達が居ないなら、
こんな世界なんて我にはもう要らない。

この力も、権力も、記憶すらも。
全て。
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