4 / 30
「幻を追い求めて」4話
しおりを挟む
「幻を追い求めて」4話
「ねぇねぇ、昨日のキンさん観たぁ?」
「観た観た!キンさん、めちゃくちゃ整体で痛がってるの笑ったんだけど。」
教室ではクラスメイトたちがテレビ番組の事について話している。もちろん、その中には追田もいた。
「追田さぁ、器用なんだから整体とかもいけんじゃね?」
「まさか。でも、肩揉みぐらいなら出来るよ。」
「アハハ!それは俺でも出来るわ!」
男女半々のグループがふざけ合いながら追田の席の周りを囲んでいる。
ーくだらない。
そう冷めた目で一瞥する。今日は休み時間に鉛筆を握る気にはなれなかった。
ーやはりどうにも暇だ。絵を描こうか。
そう思い、筆箱に手を伸ばした瞬間、この間の父と母の会話が頭を過ぎり、そっと手を机に置いた。
すると、一人のクラスメイトが自分を指差した。
「整体って言ったら成瀬が一番必要なんじゃない?猫背だし。」
成瀬の姿勢は日に日に悪くなっていた。あんなに真っ直ぐで姿勢だけでいったら品行方正そのものだったというのに、今では彼の背はぐにゃりと曲がり、まるで映画に出てくる下っ端のゴロツキのようだった。
「成瀬くん。」
ハッと顔を上げると隣に追田が座っていた。
追田は互いの顔をデッサンしたあの日以来、挨拶以外で進んで一人で話しかけてくる事はなかった。
久々に間近で見る彼の顔はあの時と変わらず、生き生きとしていた。
「成瀬くん、昨日観たテレビで姿勢が良くなるツボのことを言っててね。」
そう言うや否や追田は自分の肩にそっと手を置いた。肩が強張る。
「成瀬くん、初めて会った時はあんなに姿勢が良かったんだから、もう少し姿勢に目を向けてもいいんじゃないかな?」
容赦なく白い手が自分の身体に力を入れてくる。
周りのクラスメイトの視線、皆の薄らと嘲笑する為に空いた口が端に見える。
成瀬はそのまま追田を見る。追田はあの時と変わらない微笑みでこちらを見ていた。
ーなんとアンバランスなのだろう。
成瀬は追田の肩を自分の肘で少し強めに押した。
追田が驚いた顔でこちらを見ていた。
さっきまでジロジロ見ていたクラスメイト達はまるで配慮ができない子どもを見るような目で見ている。
「追田、この間のノート見せてよ。」
先程まで追田と話していたクラスメイトが少し離れた席から話しかける。
追田は一瞬キョトンとした顔を見せたが、すぐに「あー、あれね。」と澄ました顔で成瀬の肩から手を離す。
向こうに行く途中、追田はこちらを一度振り向いたが、またすぐに視線を前に戻した。
その日は、ずっと鉛筆をクルクルと回し、授業で描いた絵もすぐにくしゃくしゃに丸めてしまった。
追田の事はいつもなるべく見ないようにしていた。でも、越えたくて越えたくて仕方がない存在でもある。
ーあいつ、馴れ馴れしく触ってきやがって。
また一つ、絵がくしゃくしゃになる。
ームカつく。
放課後に教師から返された、初日に描いた絵を丸めて手に持ち、リュックサックを背負って一階の階段をのしのしと降りる。
「成瀬。」
気怠そうな声が聞こえた。
振り返ると、初日にあのデッサンの指導をした教師が立っていた。
「ねぇねぇ、昨日のキンさん観たぁ?」
「観た観た!キンさん、めちゃくちゃ整体で痛がってるの笑ったんだけど。」
教室ではクラスメイトたちがテレビ番組の事について話している。もちろん、その中には追田もいた。
「追田さぁ、器用なんだから整体とかもいけんじゃね?」
「まさか。でも、肩揉みぐらいなら出来るよ。」
「アハハ!それは俺でも出来るわ!」
男女半々のグループがふざけ合いながら追田の席の周りを囲んでいる。
ーくだらない。
そう冷めた目で一瞥する。今日は休み時間に鉛筆を握る気にはなれなかった。
ーやはりどうにも暇だ。絵を描こうか。
そう思い、筆箱に手を伸ばした瞬間、この間の父と母の会話が頭を過ぎり、そっと手を机に置いた。
すると、一人のクラスメイトが自分を指差した。
「整体って言ったら成瀬が一番必要なんじゃない?猫背だし。」
成瀬の姿勢は日に日に悪くなっていた。あんなに真っ直ぐで姿勢だけでいったら品行方正そのものだったというのに、今では彼の背はぐにゃりと曲がり、まるで映画に出てくる下っ端のゴロツキのようだった。
「成瀬くん。」
ハッと顔を上げると隣に追田が座っていた。
追田は互いの顔をデッサンしたあの日以来、挨拶以外で進んで一人で話しかけてくる事はなかった。
久々に間近で見る彼の顔はあの時と変わらず、生き生きとしていた。
「成瀬くん、昨日観たテレビで姿勢が良くなるツボのことを言っててね。」
そう言うや否や追田は自分の肩にそっと手を置いた。肩が強張る。
「成瀬くん、初めて会った時はあんなに姿勢が良かったんだから、もう少し姿勢に目を向けてもいいんじゃないかな?」
容赦なく白い手が自分の身体に力を入れてくる。
周りのクラスメイトの視線、皆の薄らと嘲笑する為に空いた口が端に見える。
成瀬はそのまま追田を見る。追田はあの時と変わらない微笑みでこちらを見ていた。
ーなんとアンバランスなのだろう。
成瀬は追田の肩を自分の肘で少し強めに押した。
追田が驚いた顔でこちらを見ていた。
さっきまでジロジロ見ていたクラスメイト達はまるで配慮ができない子どもを見るような目で見ている。
「追田、この間のノート見せてよ。」
先程まで追田と話していたクラスメイトが少し離れた席から話しかける。
追田は一瞬キョトンとした顔を見せたが、すぐに「あー、あれね。」と澄ました顔で成瀬の肩から手を離す。
向こうに行く途中、追田はこちらを一度振り向いたが、またすぐに視線を前に戻した。
その日は、ずっと鉛筆をクルクルと回し、授業で描いた絵もすぐにくしゃくしゃに丸めてしまった。
追田の事はいつもなるべく見ないようにしていた。でも、越えたくて越えたくて仕方がない存在でもある。
ーあいつ、馴れ馴れしく触ってきやがって。
また一つ、絵がくしゃくしゃになる。
ームカつく。
放課後に教師から返された、初日に描いた絵を丸めて手に持ち、リュックサックを背負って一階の階段をのしのしと降りる。
「成瀬。」
気怠そうな声が聞こえた。
振り返ると、初日にあのデッサンの指導をした教師が立っていた。
0
あなたにおすすめの小説
恵方巻を食べてオメガになるはずが、氷の騎士団長様に胃袋を掴まれ溺愛されています
水凪しおん
BL
「俺はベータだ。けれど、クラウス様の隣に立ちたい」
王城の厨房で働く地味な料理人ルエンは、近衛騎士団長のクラウスに叶わぬ恋をしていた。身分も属性も違う自分には、彼との未来などない。そう諦めかけていたある日、ルエンは「伝説の恵方巻を食べればオメガになれる」という噂を耳にする。
一縷の望みをかけ、ルエンは危険な食材探しの旅へ! しかし、なぜかその旅先にはいつもクラウスの姿があって……?
勘違いから始まる、ベータ料理人×氷の騎士団長の胃袋攻略ラブファンタジー!
新訳 美女と野獣 〜獣人と少年の物語〜
若目
BL
いまはすっかり財政難となった商家マルシャン家は父シャルル、長兄ジャンティー、長女アヴァール、次女リュゼの4人家族。
妹たちが経済状況を顧みずに贅沢三昧するなか、一家はジャンティーの頑張りによってなんとか暮らしていた。
ある日、父が商用で出かける際に、何か欲しいものはないかと聞かれて、ジャンティーは一輪の薔薇をねだる。
しかし、帰る途中で父は道に迷ってしまう。
父があてもなく歩いていると、偶然、美しく奇妙な古城に辿り着く。
父はそこで、庭に薔薇の木で作られた生垣を見つけた。
ジャンティーとの約束を思い出した父が薔薇を一輪摘むと、彼の前に怒り狂った様子の野獣が現れ、「親切にしてやったのに、厚かましくも薔薇まで盗むとは」と吠えかかる。
野獣は父に死をもって償うように迫るが、薔薇が土産であったことを知ると、代わりに子どもを差し出すように要求してきて…
そこから、ジャンティーの運命が大きく変わり出す。
童話の「美女と野獣」パロのBLです
【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?
キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。
知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。
今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど——
「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」
幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。
しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。
これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。
全8話。
【完結】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―
綾波絢斗
BL
この世界には、二つの特別な称号を持つ者たちが存在する。
一つは、絶対的な権力を持つ王の称号――ルガル(lugal)。
もう一つは、ルガルと対をなし、その力を補う「番」――ムル(mul)。
ルガルは生まれながらに選ばれし存在。
国家からエリート教育と地位を与えられ、能力に応じて厳格なランク分けが行われる。
最上位のルガルは、政治さえも動かす絶対者だ。
一方で、ムルは生まれた瞬間にはその正体がわからない。
遺伝子検査や学力テストを経て候補が絞られるが、
最終的に「真のムル」かどうかを見極められるのは――ルガルだけ。
ムルが覚醒したとき、同じ場所に「紋章」が現れ、その瞬間から、ルガルとムルの力は共鳴し始める。
ムルの能力はルガルの力を最大限に引き出す。
ゆえにルガルたちは、自らのムルを求め、時には他人のムル候補を奪い合う。
そして、すべての出生データと遺伝情報を管理するのは、
巨大企業イルジオン――国家をも超える存在。
その頂点に立つ社長、一条レイ。
冷徹なルガルの頂点に君臨する彼が「自分のムル」と出会った。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる