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「幻を追い求めて」10話
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「幻を追い求めて」10話
「中々打ち合わせが終わらなくて。成瀬くん、もう帰っちゃったかなぁと思ったんだけど、後ろ姿が成瀬くんぽい人いるなぁと思って近づいたら、やっぱり成瀬くんだった!」と追田は少し窓ガラスから顔を出して矢継ぎ早に言った。
成瀬はジロジロと追田を見て小さくため息をついた。不意な元クラスメイトの登場に呆気に取られる。
「え、なに。なんの用?」
「いや、久々の再会だから少し話がしたいだけだよ。」
追田の言葉に少し身構えて、持っていたトートバッグに力が入る。
「あ、その袋。」と追田がトートバッグから少しはみ出た水色の合掌袋を指差す。
「シュークリーム。食べなかったの?甘いものは嫌い?」
今日起きたことで頭の整理が追いつかず、何となく今日は口に入れたくなかっただけなのだが、本人の前だと罰が悪かった。
「いや、別に嫌いじゃない。」
それを聞いて追田はいつものように朗らかに笑う。
「そっか。良かった。寒くなってきてるけど、痛む前に食べてね。」
成瀬はそっとトートバッグの中に合掌袋を押し込んで、追田と向き直った。
「ここで話すのもなんだし、一回家に来ない?歓迎するよ。」
ドキリとした。
ー家?親しくもない相手と?
他に人もいるなら良かったが、コイツと一対一だなんてゴメンだ。
成瀬は一度落ち着ける為に小さく深呼吸をした。
「家って、どこの?実家?」
追田は被りを振った。
「ここの近くのマンションを買ったんだ。景色が綺麗なんだよ。」
前を向くと自分が帰る場所である赤錆なのか本来のペンキの色なのか分からない建物が見えた。
「いや、いい。今日は疲れたから帰る。」
「そっか。じゃあ、また明日。」
少し追田の眉が下がったが、また元通りに微笑んでミラーを下げた。
ヘッドライトが自分を追い越していくのを成瀬は黙って眺めていた。
次の日、また次の日も追田は成瀬たちの現場にやってきた。
成瀬たちには少し雑談を振るだけで、その後は遠くからこちらを見ているようだった。こちらからは追田が何をしているのかよく分からない。
「何か、描いてるみたいっすよ。」
突然、隣にいた竹田がこちらの気持ちを読んだかのように目を細めながら声をかけてきた。
「芸術家の考えてる事はよく分からないっすね。」と吐き捨てるように竹田は自分の持ち場に帰って行った。
遠くて豆粒のようにしか見えない為、追田の姿はどこかぼやけて見える。
思えば、初めて会った時から追田は自分に友好的だった。
挨拶もしてくれたし、たまに話しかけることもあった。
それなのに、自分は勝手な対抗心であいつに冷たい態度を取ってしまった。
ー「そういえば、さっき追田くん?ていう子が家に来たわよ。」
あの時の嬉しそうな母の声が頭に響く。
ー「なんか静に聞きたいことがあるみたいだったわよ。明日の昼過ぎにあそこ、学校近くの海岸に行くから会わないか?だって。」
帰り道、成瀬は遠くに薄ら見える海岸を眺めた。
「中々打ち合わせが終わらなくて。成瀬くん、もう帰っちゃったかなぁと思ったんだけど、後ろ姿が成瀬くんぽい人いるなぁと思って近づいたら、やっぱり成瀬くんだった!」と追田は少し窓ガラスから顔を出して矢継ぎ早に言った。
成瀬はジロジロと追田を見て小さくため息をついた。不意な元クラスメイトの登場に呆気に取られる。
「え、なに。なんの用?」
「いや、久々の再会だから少し話がしたいだけだよ。」
追田の言葉に少し身構えて、持っていたトートバッグに力が入る。
「あ、その袋。」と追田がトートバッグから少しはみ出た水色の合掌袋を指差す。
「シュークリーム。食べなかったの?甘いものは嫌い?」
今日起きたことで頭の整理が追いつかず、何となく今日は口に入れたくなかっただけなのだが、本人の前だと罰が悪かった。
「いや、別に嫌いじゃない。」
それを聞いて追田はいつものように朗らかに笑う。
「そっか。良かった。寒くなってきてるけど、痛む前に食べてね。」
成瀬はそっとトートバッグの中に合掌袋を押し込んで、追田と向き直った。
「ここで話すのもなんだし、一回家に来ない?歓迎するよ。」
ドキリとした。
ー家?親しくもない相手と?
他に人もいるなら良かったが、コイツと一対一だなんてゴメンだ。
成瀬は一度落ち着ける為に小さく深呼吸をした。
「家って、どこの?実家?」
追田は被りを振った。
「ここの近くのマンションを買ったんだ。景色が綺麗なんだよ。」
前を向くと自分が帰る場所である赤錆なのか本来のペンキの色なのか分からない建物が見えた。
「いや、いい。今日は疲れたから帰る。」
「そっか。じゃあ、また明日。」
少し追田の眉が下がったが、また元通りに微笑んでミラーを下げた。
ヘッドライトが自分を追い越していくのを成瀬は黙って眺めていた。
次の日、また次の日も追田は成瀬たちの現場にやってきた。
成瀬たちには少し雑談を振るだけで、その後は遠くからこちらを見ているようだった。こちらからは追田が何をしているのかよく分からない。
「何か、描いてるみたいっすよ。」
突然、隣にいた竹田がこちらの気持ちを読んだかのように目を細めながら声をかけてきた。
「芸術家の考えてる事はよく分からないっすね。」と吐き捨てるように竹田は自分の持ち場に帰って行った。
遠くて豆粒のようにしか見えない為、追田の姿はどこかぼやけて見える。
思えば、初めて会った時から追田は自分に友好的だった。
挨拶もしてくれたし、たまに話しかけることもあった。
それなのに、自分は勝手な対抗心であいつに冷たい態度を取ってしまった。
ー「そういえば、さっき追田くん?ていう子が家に来たわよ。」
あの時の嬉しそうな母の声が頭に響く。
ー「なんか静に聞きたいことがあるみたいだったわよ。明日の昼過ぎにあそこ、学校近くの海岸に行くから会わないか?だって。」
帰り道、成瀬は遠くに薄ら見える海岸を眺めた。
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