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「幻を追い求めて」13話
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「幻を追い求めて」13話
「あ。わざわざモデルが近くに来てくれた。」
追田が見るからに嬉しそうにこちらを見てきた。
スケッチブックの中の自分は綺麗に背筋を伸ばして憂いを帯びた目をしていた。
「成瀬くん、休憩?ちょっと隣に座ってくれる?近距離でも描いてみたいんだ。」
追田は脇目も振らず、自分の顔を覗き込みながらスケッチブックに鉛筆を立てた。特に陽射しは強くないが、奴の目はキラキラと反射している。
「するわけないだろ!!」
成瀬は強めに追田の肩を押してその場を立ち去った。
本当は追田に自分のデッサンを描くことを止めさせたかったが、これ以上関わることの方が百倍嫌だった。
徐々に日没の時間が早まり、帰る頃にはすっかり遅くなっていた。
今日もいつも通り竹田と帰り道を歩く。
「それで、どうなんすか?」
「なにが。」
「追田紡求と何があったのかっすよ。地味に気になるんすけど。」
「どうだっていいだろ。」
竹田がつまらなさそうな顔で頬を膨らます。
成瀬は辺りを見回した。この間まで紅葉が綺麗だった木はもうすっかり葉を散らし、裸になっていた。風は冷たく、成瀬の頬を撫でる。
「あれ?」
竹田の訝しげな声が気になり、成瀬は再び前を向く。
そこには赤錆が目立つアパートの隣に大きなトラックが停まっていた。
トラックの横に立っているのは入居初日に挨拶したっきりの大家さんだった。
竹田が駆け寄って話しかける。
「あの、どうしたんすか?」
大家は辛うじて残ってる白髪を触り、困り眉で話した。
「あー君たちか。すまないね。」
大家の目尻の皺が深くなる。
「実はこのアパート、違法建築だったみたいでね~建て直すことになったんだよ。ホント、嫌になっちゃうよなあ!」
大家の言葉に頭が真っ白になる。まだ雪には早いはずなんだが。
「まあ、ボロボロアパートだって散々言われてたし、ちょうど良いっちゃ、ちょうど良いよなぁ!」
大家の不謹慎なジョークも全く頭に入ってこなかった。
隣を見ると、ただでさえ肌が白い竹田の肌はすっかり血の気が引いていた。普段、上司に叱られても全く動じず、太々しい竹田が顔を青ざめているのを見るのは少し愉快だった。まあ、そんなことを言っている場合ではないわけだが。
「ごめんね~ちゃんとお金は払うから。悪いけど、アパート、退去してね。」
大家の無責任な言葉に段々と現実が見え始める。
ーどうする?今日はどこか、カプセルホテルとか探すか?
自分に事情を話して泊まらせてくれる友人などいない。一か八か同じ状況の竹田に頼ってみるかと思い、横を見ると竹田は誰からか電話が掛かってきたようで通話していた。
「え!?なんで!兄貴となんて、絶対に嫌だ!」
何やらまたお兄さんと揉めているようだ。竹田がスマホを耳に当てて声を荒げている。その間、呆然とアパートを見上げる。
ーどうしよう。実家に帰ろうか。いや、実家からだと遠いし面倒だな。
そんな漠然と悩んでいると竹田が慌ててこちらにやってきた。
「どうしよう。兄貴の家に行かなくちゃいけなくなっちゃいました!!」
竹田の青ざめた表情を見て、兄弟仲が良くないのは一目瞭然だった。
「でも、良かったじゃないか。それでも泊まれそうな場所が出来たんだろう?俺はちょっと困ってるんだよ。」
「良くないですよ!兄貴と二人っきりなんて…」
そう竹田は言い掛けてその場で何か考え始めた。
「待てよ。成瀬先輩も一緒に来ればいいんじゃないか?」
手を顔に当てたまま竹田はこちらを見て言った。竹田の目は輝き、期待で満ちているのが分かった。
普段の成瀬だったらここで断るはずだろう。しかし、今はそんな事を言っている場合では無かったし、他人と泊まるのは気が引けるが、それでも今晩泊まれる場所を確保できるというのは成瀬にとって大きかった。
「じゃあ、お言葉に甘えて…」
「ちょっと待った。」
「あ。わざわざモデルが近くに来てくれた。」
追田が見るからに嬉しそうにこちらを見てきた。
スケッチブックの中の自分は綺麗に背筋を伸ばして憂いを帯びた目をしていた。
「成瀬くん、休憩?ちょっと隣に座ってくれる?近距離でも描いてみたいんだ。」
追田は脇目も振らず、自分の顔を覗き込みながらスケッチブックに鉛筆を立てた。特に陽射しは強くないが、奴の目はキラキラと反射している。
「するわけないだろ!!」
成瀬は強めに追田の肩を押してその場を立ち去った。
本当は追田に自分のデッサンを描くことを止めさせたかったが、これ以上関わることの方が百倍嫌だった。
徐々に日没の時間が早まり、帰る頃にはすっかり遅くなっていた。
今日もいつも通り竹田と帰り道を歩く。
「それで、どうなんすか?」
「なにが。」
「追田紡求と何があったのかっすよ。地味に気になるんすけど。」
「どうだっていいだろ。」
竹田がつまらなさそうな顔で頬を膨らます。
成瀬は辺りを見回した。この間まで紅葉が綺麗だった木はもうすっかり葉を散らし、裸になっていた。風は冷たく、成瀬の頬を撫でる。
「あれ?」
竹田の訝しげな声が気になり、成瀬は再び前を向く。
そこには赤錆が目立つアパートの隣に大きなトラックが停まっていた。
トラックの横に立っているのは入居初日に挨拶したっきりの大家さんだった。
竹田が駆け寄って話しかける。
「あの、どうしたんすか?」
大家は辛うじて残ってる白髪を触り、困り眉で話した。
「あー君たちか。すまないね。」
大家の目尻の皺が深くなる。
「実はこのアパート、違法建築だったみたいでね~建て直すことになったんだよ。ホント、嫌になっちゃうよなあ!」
大家の言葉に頭が真っ白になる。まだ雪には早いはずなんだが。
「まあ、ボロボロアパートだって散々言われてたし、ちょうど良いっちゃ、ちょうど良いよなぁ!」
大家の不謹慎なジョークも全く頭に入ってこなかった。
隣を見ると、ただでさえ肌が白い竹田の肌はすっかり血の気が引いていた。普段、上司に叱られても全く動じず、太々しい竹田が顔を青ざめているのを見るのは少し愉快だった。まあ、そんなことを言っている場合ではないわけだが。
「ごめんね~ちゃんとお金は払うから。悪いけど、アパート、退去してね。」
大家の無責任な言葉に段々と現実が見え始める。
ーどうする?今日はどこか、カプセルホテルとか探すか?
自分に事情を話して泊まらせてくれる友人などいない。一か八か同じ状況の竹田に頼ってみるかと思い、横を見ると竹田は誰からか電話が掛かってきたようで通話していた。
「え!?なんで!兄貴となんて、絶対に嫌だ!」
何やらまたお兄さんと揉めているようだ。竹田がスマホを耳に当てて声を荒げている。その間、呆然とアパートを見上げる。
ーどうしよう。実家に帰ろうか。いや、実家からだと遠いし面倒だな。
そんな漠然と悩んでいると竹田が慌ててこちらにやってきた。
「どうしよう。兄貴の家に行かなくちゃいけなくなっちゃいました!!」
竹田の青ざめた表情を見て、兄弟仲が良くないのは一目瞭然だった。
「でも、良かったじゃないか。それでも泊まれそうな場所が出来たんだろう?俺はちょっと困ってるんだよ。」
「良くないですよ!兄貴と二人っきりなんて…」
そう竹田は言い掛けてその場で何か考え始めた。
「待てよ。成瀬先輩も一緒に来ればいいんじゃないか?」
手を顔に当てたまま竹田はこちらを見て言った。竹田の目は輝き、期待で満ちているのが分かった。
普段の成瀬だったらここで断るはずだろう。しかし、今はそんな事を言っている場合では無かったし、他人と泊まるのは気が引けるが、それでも今晩泊まれる場所を確保できるというのは成瀬にとって大きかった。
「じゃあ、お言葉に甘えて…」
「ちょっと待った。」
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