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「幻を追い求めて」18話
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「幻を追い求めて」18話
「おい、どうしたんだよ。」
追田は成瀬の心配した声にも反応せず、床に胡座をかいて自分が描いたデッサンを見上げる。
「僕はね、ここの空間に来るのが唯一の救いなんだ。」
追田は後ろに手をついて微笑む。
「この、幻の空間に来るのが、ね。」
追田の言葉に周りを見渡すが、どこをどう見ても背筋が伸びた自分でしかないので、成瀬は首を捻った。
よくみると、追田の目の下には薄らと隈ができてるのが見える。
「疲れてるのか?ゆっくりしてけよ。まあ、ここお前の家だけど。」
追田は返事をしない代わりにそんな成瀬を一瞥すると、ポツリ、ポツリと話始めた。
「僕はね、高校に入るまではコンクールとかに自分の絵を出したことなんてないんだ。」
成瀬は目を丸くして追田を見た。確かに、こんな凄いやつがいたら入学前から話題になっていたはずだ。
「ただ、絵を描ければ良かったんだ。ただ、自分の描きたいものを描ければ僕は満足だったんだ。」
追田がこちらに目を向ける。
「それが、僕があの学校のデザイン科に入学しようと決めた理由。」
「お前にしてはありきたりな理由なんだな。」
意外だと思ったので、成瀬は思わず口から本音が出てしまった。
「みんな大体はそうなんじゃない?」
追田は後ろについていた手を膝の上に置く。
そして、膝を抱え込んで成瀬を見た。
「僕はね、入学初日に君の姿に一目惚れしたんだ。」
追田は成瀬を凝視する。
「あの日、覚えてる?成瀬くん、僕が話しかけるまでずっと絵を描いていたでしょ。」
あの日のことは正直思い出したくないが、はっきりと記憶に刻まれていた。成瀬は渋々と頷く。
不服そうな成瀬とは裏腹に追田は目を輝かせて話し始めた。
「あの時、絵を描いている君がね、背筋を伸ばして自信たっぷりに絵を描いてる君が、眩しくて、眩しくて。」
追田は恍惚な表情を浮かべている。
「あれを見た時、僕の描きたいものはこれだって思ったんだ。」
成瀬は追田を見遣る。
追田はまるで欲しいおもちゃを買ってもらった子供のようにはしゃいでいた。それは、何だか見てるこちらが気恥ずかしく感じる程だった。
しかし、突然追田は動きを止め、また胡座をかいて膝に手を置く。
「でもね、いざ僕が君を画用紙に描こうと思ったら、それは突然、幻になって消えちゃったんだ。」
追田は目を細めた。
「あの後、君は見る見るうちに姿勢は悪くなって、自信のない顔つきに変わっていった。」
ドキリとした。追田はあの時の自分をよく観察していたのだ。
「初めはどうしてなんだろうって思ってたけど、君の態度を見ていて気づいたんだ。僕のせいなんだってね。」
ハッとして成瀬は追田の顔を見た。追田はどこか遠い、もう一生戻ってこない景色を眺めてるかのように虚空を見つめていた。
「知らなかったんだ。ただ、好きに絵を描いてるだけで他人を追い詰めるなんて、あの時の僕は知らなかった。」
「おい、どうしたんだよ。」
追田は成瀬の心配した声にも反応せず、床に胡座をかいて自分が描いたデッサンを見上げる。
「僕はね、ここの空間に来るのが唯一の救いなんだ。」
追田は後ろに手をついて微笑む。
「この、幻の空間に来るのが、ね。」
追田の言葉に周りを見渡すが、どこをどう見ても背筋が伸びた自分でしかないので、成瀬は首を捻った。
よくみると、追田の目の下には薄らと隈ができてるのが見える。
「疲れてるのか?ゆっくりしてけよ。まあ、ここお前の家だけど。」
追田は返事をしない代わりにそんな成瀬を一瞥すると、ポツリ、ポツリと話始めた。
「僕はね、高校に入るまではコンクールとかに自分の絵を出したことなんてないんだ。」
成瀬は目を丸くして追田を見た。確かに、こんな凄いやつがいたら入学前から話題になっていたはずだ。
「ただ、絵を描ければ良かったんだ。ただ、自分の描きたいものを描ければ僕は満足だったんだ。」
追田がこちらに目を向ける。
「それが、僕があの学校のデザイン科に入学しようと決めた理由。」
「お前にしてはありきたりな理由なんだな。」
意外だと思ったので、成瀬は思わず口から本音が出てしまった。
「みんな大体はそうなんじゃない?」
追田は後ろについていた手を膝の上に置く。
そして、膝を抱え込んで成瀬を見た。
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「あの日、覚えてる?成瀬くん、僕が話しかけるまでずっと絵を描いていたでしょ。」
あの日のことは正直思い出したくないが、はっきりと記憶に刻まれていた。成瀬は渋々と頷く。
不服そうな成瀬とは裏腹に追田は目を輝かせて話し始めた。
「あの時、絵を描いている君がね、背筋を伸ばして自信たっぷりに絵を描いてる君が、眩しくて、眩しくて。」
追田は恍惚な表情を浮かべている。
「あれを見た時、僕の描きたいものはこれだって思ったんだ。」
成瀬は追田を見遣る。
追田はまるで欲しいおもちゃを買ってもらった子供のようにはしゃいでいた。それは、何だか見てるこちらが気恥ずかしく感じる程だった。
しかし、突然追田は動きを止め、また胡座をかいて膝に手を置く。
「でもね、いざ僕が君を画用紙に描こうと思ったら、それは突然、幻になって消えちゃったんだ。」
追田は目を細めた。
「あの後、君は見る見るうちに姿勢は悪くなって、自信のない顔つきに変わっていった。」
ドキリとした。追田はあの時の自分をよく観察していたのだ。
「初めはどうしてなんだろうって思ってたけど、君の態度を見ていて気づいたんだ。僕のせいなんだってね。」
ハッとして成瀬は追田の顔を見た。追田はどこか遠い、もう一生戻ってこない景色を眺めてるかのように虚空を見つめていた。
「知らなかったんだ。ただ、好きに絵を描いてるだけで他人を追い詰めるなんて、あの時の僕は知らなかった。」
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