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「幻を追い求めて」20話
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「幻を追い求めて」20話
飛行機が遠くで飛んでる音が聞こえる。まだ日は昇っていないが、時計は朝の時刻を差していた。
寝惚け眼で成瀬が起きると、すでに卵が焼ける匂いとフツフツ白身が沸騰する音が聞こえた。
ドアを開けると追田が目玉焼きを狐色に焼き上がったトーストに乗せていた。
「今日も仕事忙しいのか。」
そう成瀬が聞くと、追田はトーストを咥えながら頷いた。
「成瀬くんの分の目玉焼きもあるよ。」とトーストを咀嚼して飲み込んでから追田が言った。
フライパンの蓋を開けると、そこには白身が少し泡立って固まった目玉焼きが鎮座していた。それをフライ返しで掬い、お皿に移す。
目玉焼きは白身の先がボコボコと小さく凹凸していて、まるで砂浜に打ち出された白波のようだった。
それを見て成瀬は、昨日の追田の言う幻の空間で二人で話したことを思い出した。
振り向くと、昨日追田が渡してくれた画用紙がキャビネットの上に立て掛けられている。
あんなに見るのが嫌だった自分が描いた絵も、今は目を見据えることさえできる。もはや思い出の一つとさえ思えた。
「なぁ、どうして俺を描きたいって思ったんだ?」
追田はちょうど別添えで置いてあるサラダを口に運ぼうとしていたところだった。
「どうしてって昨日言ったじゃないか。」
「そうだけど。他にも自信満々に絵を描く奴なんて腐る程いるだろ。特に、あの教室の中ならな。」
追田はポカンと口を開けていたが、肩をすくめて、今度こそ細切りにされた野菜たちを口に運んだ。
その様子が妙に鼻についた。
「おい、別におかしなことは聞いてないだろ。」
「成瀬くんは分かってないなぁ。」
追田の口からシャキシャキと野菜が咀嚼される音が聞こえる。
「僕はね、傲慢さこそが人を人たらしめていると思うんだよね。」
「は?」
思わず不快そうな声が口をついて出る。
追田はそんな声など全く気にせず再びサラダをフォークで掬った。
「だって人間って、こんな点と線で出来たものから美しさも醜さも感受しようとするんだよ。傲慢じゃないか。」と追田は手で丸を作り、それを望遠鏡のように覗き込んだ。
成瀬は追田の言葉を頭の中で反芻させたが、やっぱり意味は分からなかった。
「成瀬くんの姿はそれを体現しているようなものでね。それを初めて見た時は僕、興奮しちゃって寝れなかったんだよ!」
成瀬は改めて自分がいかに凡人なのかを、追田がいかに常軌を逸した感覚の持ち主なのかを再認識した。
眉を顰めていると食事を終えた追田はさも当たり前のようにスケッチブックを取り出した。
「おい。何してるんだよ。」
「成瀬くんの食べてる姿を描いたら僕の求めてる姿に近づけそうな気がして。」
「今すぐやめろ。」
飛行機が遠くで飛んでる音が聞こえる。まだ日は昇っていないが、時計は朝の時刻を差していた。
寝惚け眼で成瀬が起きると、すでに卵が焼ける匂いとフツフツ白身が沸騰する音が聞こえた。
ドアを開けると追田が目玉焼きを狐色に焼き上がったトーストに乗せていた。
「今日も仕事忙しいのか。」
そう成瀬が聞くと、追田はトーストを咥えながら頷いた。
「成瀬くんの分の目玉焼きもあるよ。」とトーストを咀嚼して飲み込んでから追田が言った。
フライパンの蓋を開けると、そこには白身が少し泡立って固まった目玉焼きが鎮座していた。それをフライ返しで掬い、お皿に移す。
目玉焼きは白身の先がボコボコと小さく凹凸していて、まるで砂浜に打ち出された白波のようだった。
それを見て成瀬は、昨日の追田の言う幻の空間で二人で話したことを思い出した。
振り向くと、昨日追田が渡してくれた画用紙がキャビネットの上に立て掛けられている。
あんなに見るのが嫌だった自分が描いた絵も、今は目を見据えることさえできる。もはや思い出の一つとさえ思えた。
「なぁ、どうして俺を描きたいって思ったんだ?」
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「どうしてって昨日言ったじゃないか。」
「そうだけど。他にも自信満々に絵を描く奴なんて腐る程いるだろ。特に、あの教室の中ならな。」
追田はポカンと口を開けていたが、肩をすくめて、今度こそ細切りにされた野菜たちを口に運んだ。
その様子が妙に鼻についた。
「おい、別におかしなことは聞いてないだろ。」
「成瀬くんは分かってないなぁ。」
追田の口からシャキシャキと野菜が咀嚼される音が聞こえる。
「僕はね、傲慢さこそが人を人たらしめていると思うんだよね。」
「は?」
思わず不快そうな声が口をついて出る。
追田はそんな声など全く気にせず再びサラダをフォークで掬った。
「だって人間って、こんな点と線で出来たものから美しさも醜さも感受しようとするんだよ。傲慢じゃないか。」と追田は手で丸を作り、それを望遠鏡のように覗き込んだ。
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「成瀬くんの姿はそれを体現しているようなものでね。それを初めて見た時は僕、興奮しちゃって寝れなかったんだよ!」
成瀬は改めて自分がいかに凡人なのかを、追田がいかに常軌を逸した感覚の持ち主なのかを再認識した。
眉を顰めていると食事を終えた追田はさも当たり前のようにスケッチブックを取り出した。
「おい。何してるんだよ。」
「成瀬くんの食べてる姿を描いたら僕の求めてる姿に近づけそうな気がして。」
「今すぐやめろ。」
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