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「幻を追い求めて」21話
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「幻を追い求めて」21話
「今日はよく飲みますね~。夏じゃあるまいし。」
成瀬が2リットルのペットボトルをラッパ飲みしているのを竹田は感心したように見ていた。
「イライラすると喉が渇く。」
「まーたいつものやつっすか?」
竹田をギロリと睨むと竹田は慌てて自分が持っている500mlのペットボトルを口にした。
「相手の目的がおおよそ分かったから、別にいつものやつじゃない。」
竹田が思わずペットボトルの飲み口から口を離す。
「え。その、別にイケメンでもない先輩の絵を描くっていう謎の趣味っすか。」
自分でも端正な顔立ちとはお世辞にも言えないので顔に関しては反論は無い。しかし、成瀬は竹田に一つだけ反論があった。
「趣味じゃない。」
「え?」
竹田は素っ頓狂な声を出したが、成瀬の顔を見て何か察したのか、それ以上その事については何も追及してこなかった。
「今でも勝手に横で描かれるのは嫌だが、」
成瀬はペットボトルの蓋をきつく締める。
「別に描かれてもいいかなって思うようにはなった。」
竹田は成瀬の発言に最初は怪訝そうな顔をしていたが、またいつものヘラヘラ笑いを浮かべて緑色のラベルが貼られてあるペットボトルを口にする。
「慣れって怖いっすねぇ。」
竹田のペットボトルは空になり、腕を下に下ろした。
「良かったじゃないすか。なんか上手くいってて。じゃあ、なんでそんなにイライラしてるんすか?」
確かにそうだ。良かったには良かったのだが、今日の朝食での会話を思い出し、どうも成瀬は煮え切らなかった。
「相手のことを少しは理解できても、友だちのように仲良くなれるとは限らないってことだ。」
「あー。」
竹田が納得した顔をすると、少し訝しげに持っていたペットボトルを見る。
「なんかこれ、思ってたより後味苦いっすね。」
成瀬は竹田の持っているペットボトルを見た。ラベルには「後味スッキリ!気分爽快!」と書かれてあった。
「作った側は後味スッキリしたんじゃないか?」
「そんな身勝手な。」
すると、成瀬は近くにある公園の時計に目を向けた。それを見た竹田がごねた。
「あ、もう時間っすか。えー戻りたくないなぁ。今日も残業なんでしょ?」
「仕方ないだろ。雪が降る前にどうにかしたいって上司が騒いでるんだ。」
竹田が恐る恐る聞く。
「この地域で雪なんて降ることあるんすか?」
「去年は降ったなぁ。」
「げー。」
成瀬はすっかり暗くなった夜道を歩いていた。もう日はすっかり短くなり、ジングルベルの曲が街に鳴り響いていた。
ホールの前でトナカイの着ぐるみを着た人物が通行人に手を振っている。
成瀬は白い息を吐き、ポケットに手を突っ込んだ。
辺りを見渡すと、たくさんのイルミネーションの明かりが木から吊るされている。色鮮やかな明かりは遠くからはどこかぼやけて見えた。
ー「俺も、手に入れるまで頑張ってみても良いかもしれないって思えた。」
成瀬はあの時の自分の言葉を思い出した。
今までは絵を描くこと自体を拒絶していたし、別に描かなくても生きていけることを知った。
しかし、それと同時に自分の人生において絵は別に描いてもいい、ということも知った。
特にこれといった焦りや嫌悪感などはないが、どうも筆を持とうという気持ちにはなれなかった。
追田の住むマンションに帰ると、追田はすでに帰ってきているのか、リビングのテーブルの上にスマホが置かれてあった。加えてシャワーの音が廊下から聞こえた。
「今日はよく飲みますね~。夏じゃあるまいし。」
成瀬が2リットルのペットボトルをラッパ飲みしているのを竹田は感心したように見ていた。
「イライラすると喉が渇く。」
「まーたいつものやつっすか?」
竹田をギロリと睨むと竹田は慌てて自分が持っている500mlのペットボトルを口にした。
「相手の目的がおおよそ分かったから、別にいつものやつじゃない。」
竹田が思わずペットボトルの飲み口から口を離す。
「え。その、別にイケメンでもない先輩の絵を描くっていう謎の趣味っすか。」
自分でも端正な顔立ちとはお世辞にも言えないので顔に関しては反論は無い。しかし、成瀬は竹田に一つだけ反論があった。
「趣味じゃない。」
「え?」
竹田は素っ頓狂な声を出したが、成瀬の顔を見て何か察したのか、それ以上その事については何も追及してこなかった。
「今でも勝手に横で描かれるのは嫌だが、」
成瀬はペットボトルの蓋をきつく締める。
「別に描かれてもいいかなって思うようにはなった。」
竹田は成瀬の発言に最初は怪訝そうな顔をしていたが、またいつものヘラヘラ笑いを浮かべて緑色のラベルが貼られてあるペットボトルを口にする。
「慣れって怖いっすねぇ。」
竹田のペットボトルは空になり、腕を下に下ろした。
「良かったじゃないすか。なんか上手くいってて。じゃあ、なんでそんなにイライラしてるんすか?」
確かにそうだ。良かったには良かったのだが、今日の朝食での会話を思い出し、どうも成瀬は煮え切らなかった。
「相手のことを少しは理解できても、友だちのように仲良くなれるとは限らないってことだ。」
「あー。」
竹田が納得した顔をすると、少し訝しげに持っていたペットボトルを見る。
「なんかこれ、思ってたより後味苦いっすね。」
成瀬は竹田の持っているペットボトルを見た。ラベルには「後味スッキリ!気分爽快!」と書かれてあった。
「作った側は後味スッキリしたんじゃないか?」
「そんな身勝手な。」
すると、成瀬は近くにある公園の時計に目を向けた。それを見た竹田がごねた。
「あ、もう時間っすか。えー戻りたくないなぁ。今日も残業なんでしょ?」
「仕方ないだろ。雪が降る前にどうにかしたいって上司が騒いでるんだ。」
竹田が恐る恐る聞く。
「この地域で雪なんて降ることあるんすか?」
「去年は降ったなぁ。」
「げー。」
成瀬はすっかり暗くなった夜道を歩いていた。もう日はすっかり短くなり、ジングルベルの曲が街に鳴り響いていた。
ホールの前でトナカイの着ぐるみを着た人物が通行人に手を振っている。
成瀬は白い息を吐き、ポケットに手を突っ込んだ。
辺りを見渡すと、たくさんのイルミネーションの明かりが木から吊るされている。色鮮やかな明かりは遠くからはどこかぼやけて見えた。
ー「俺も、手に入れるまで頑張ってみても良いかもしれないって思えた。」
成瀬はあの時の自分の言葉を思い出した。
今までは絵を描くこと自体を拒絶していたし、別に描かなくても生きていけることを知った。
しかし、それと同時に自分の人生において絵は別に描いてもいい、ということも知った。
特にこれといった焦りや嫌悪感などはないが、どうも筆を持とうという気持ちにはなれなかった。
追田の住むマンションに帰ると、追田はすでに帰ってきているのか、リビングのテーブルの上にスマホが置かれてあった。加えてシャワーの音が廊下から聞こえた。
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