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「幻を追い求めて」22話
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「幻を追い求めて」22話
シャワーの音と共に雨音も外から聞こえる。
ここは雪があまり降らない代わりに冬は雨が多くなる。ザーザーと雨粒が冬の海に叩きつけられ、波紋を作っている。
ボーッとその光景を眺めていると、後ろでよく聞くスマホの通知音が聞こえた。
追田のスマホの液晶画面が暗い部屋で白く光っている。
成瀬は電気を点けて何の気なしに追田のスマホを一瞥した。
そこにはチャットの緑色のメッセージ通知が目立つように表示されていた。
きっと自分は知らない取引先か知り合いからだろうと思い、成瀬は追田のスマホを覗き込んだ。
するとそこには高校の同級生の名前が緑色のメッセージ通知にメッセージと共に表記されていた。
高校生活を送っていた時でも全く交流は無かったが、名前は一応覚えていた。
まさか知っている名前だと思わなかったので、思わず成瀬は視線を名前から下に表記されているメッセージの内容にまで移してしまった。
そこには同窓会のお誘いが手短に書かれてあった。
成瀬は試しに自分のスマホの電源ボタンを押したが、何もメッセージは来ていなかった。
高校時代の追田が頭を過ぎる。あの、クラスのみんなに囲まれて朗らかに笑っている追田。あの時、恐らく普通科であろう女子と歩いていた追田。
最近あまりにも奇行が多かった為、追田が高校時代、クラスのみんなと仲良く青春を送っていたことを今思い出した。
そんなことを思案していると後ろのドアが開いてタオルを頭に乗せた追田が出てきた。
「おかえり。雨、降られなかった?」
「ちょうど帰ったら降ってきたんだ。」
追田はソファに腰を下ろしたかと思えば、スケッチブックを手にして座り直してしまった。
スマホには目をくれなかったので、成瀬は口を開いた。
「描くのは後にしたらどうだ。なんかスマホに通知きてるぞ。」
「えー。」
追田がまるで子どもが駄々を捏ねるような声を出したので成瀬は辛抱たまらなくなり、追田にスマホを指差して言った。
「高校の同級生から連絡きてるぞ。ちゃんと既読つけた方がいいだろ。」
追田は渋々とソファから立ち上がってテーブルに置かれてある自分のスマホを手に取った。画面は見えなかったが恐らくチャットアプリを立ち上げたのだろう。追田は指を下へスワイプさせている。暫く画面を見ていたが、またすぐにスマホをテーブルに置いてソファに座り、スケッチブックを手にした。
成瀬は頭に浮かんだ疑問をそのまま口に出した。
「行くのか?」
追田は2B鉛筆を手に持ちながら答えた。
「行かない。」
「なんで。」
「興味ないから。」
追田がアタリを取り始める。音は出会った学生時代と変わらないなと成瀬は思った。
「興味ない?どうして?」
追田はまさかまた質問されるとは思ってなかったのか、動かしていた鉛筆の動きが止まる。
「どうしてって興味がないからだよ。」
追田が訝しげにこちらを見る。あまり見ない表情だ。成瀬は少し怯んだが、どうしてか気になった。普段、いわゆる陽キャの人間にしては珍しい反応だったからだ。
ーひょっとして、仲違いしたのか?いや、それだったら俺と同じようにチャットで連絡しなければいいだけだ。
成瀬が思いを巡らせていると、追田は再びそんな百面相している成瀬を楽しそうに描き始めた。
シャワーの音と共に雨音も外から聞こえる。
ここは雪があまり降らない代わりに冬は雨が多くなる。ザーザーと雨粒が冬の海に叩きつけられ、波紋を作っている。
ボーッとその光景を眺めていると、後ろでよく聞くスマホの通知音が聞こえた。
追田のスマホの液晶画面が暗い部屋で白く光っている。
成瀬は電気を点けて何の気なしに追田のスマホを一瞥した。
そこにはチャットの緑色のメッセージ通知が目立つように表示されていた。
きっと自分は知らない取引先か知り合いからだろうと思い、成瀬は追田のスマホを覗き込んだ。
するとそこには高校の同級生の名前が緑色のメッセージ通知にメッセージと共に表記されていた。
高校生活を送っていた時でも全く交流は無かったが、名前は一応覚えていた。
まさか知っている名前だと思わなかったので、思わず成瀬は視線を名前から下に表記されているメッセージの内容にまで移してしまった。
そこには同窓会のお誘いが手短に書かれてあった。
成瀬は試しに自分のスマホの電源ボタンを押したが、何もメッセージは来ていなかった。
高校時代の追田が頭を過ぎる。あの、クラスのみんなに囲まれて朗らかに笑っている追田。あの時、恐らく普通科であろう女子と歩いていた追田。
最近あまりにも奇行が多かった為、追田が高校時代、クラスのみんなと仲良く青春を送っていたことを今思い出した。
そんなことを思案していると後ろのドアが開いてタオルを頭に乗せた追田が出てきた。
「おかえり。雨、降られなかった?」
「ちょうど帰ったら降ってきたんだ。」
追田はソファに腰を下ろしたかと思えば、スケッチブックを手にして座り直してしまった。
スマホには目をくれなかったので、成瀬は口を開いた。
「描くのは後にしたらどうだ。なんかスマホに通知きてるぞ。」
「えー。」
追田がまるで子どもが駄々を捏ねるような声を出したので成瀬は辛抱たまらなくなり、追田にスマホを指差して言った。
「高校の同級生から連絡きてるぞ。ちゃんと既読つけた方がいいだろ。」
追田は渋々とソファから立ち上がってテーブルに置かれてある自分のスマホを手に取った。画面は見えなかったが恐らくチャットアプリを立ち上げたのだろう。追田は指を下へスワイプさせている。暫く画面を見ていたが、またすぐにスマホをテーブルに置いてソファに座り、スケッチブックを手にした。
成瀬は頭に浮かんだ疑問をそのまま口に出した。
「行くのか?」
追田は2B鉛筆を手に持ちながら答えた。
「行かない。」
「なんで。」
「興味ないから。」
追田がアタリを取り始める。音は出会った学生時代と変わらないなと成瀬は思った。
「興味ない?どうして?」
追田はまさかまた質問されるとは思ってなかったのか、動かしていた鉛筆の動きが止まる。
「どうしてって興味がないからだよ。」
追田が訝しげにこちらを見る。あまり見ない表情だ。成瀬は少し怯んだが、どうしてか気になった。普段、いわゆる陽キャの人間にしては珍しい反応だったからだ。
ーひょっとして、仲違いしたのか?いや、それだったら俺と同じようにチャットで連絡しなければいいだけだ。
成瀬が思いを巡らせていると、追田は再びそんな百面相している成瀬を楽しそうに描き始めた。
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