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「幻を追い求めて」29話
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「幻を追い求めて」29話
「大丈夫?成瀬くん。」
上を見上げると小さくくるくると巻いてる茶髪が暗くても見える。
追田は不思議そうに成瀬を見ていたが、にっこり笑って手を差し出してきた。
「成瀬くん、これ以上姿勢悪くなっちゃヤダよ。」
「またそれかよ。」
成瀬は追田の手をしっかり握って立ち上がろうとしたが、何か追田は思いついたようにスケッチブックを片手で取り出そうとした。それを見た成瀬は慌てて制止させた。
「おい!後にしろ!」
そう言われて仕方なく追田は名残惜しそうにスケッチブックを仕舞った。
やはり、底が知れない男かもしれないと成瀬は危うく考えを改めかけた。
気を取り直して成瀬は追田の肩に掴まった。まだ身体は言うことを聞かないが、転びたてより少しはマシに感じた。
追田は成瀬の肩に手を回しながら聞いた。
「どうだった?同窓会。」
成瀬は上を見上げる。この斜面を登るのかと辟易した。
「らしくないことは、するもんじゃないって思った。」
「そう。」
追田から自分のスマホをもらい、二人はゆっくりだが土手の斜面を登って行った。その時なにか鼻に冷たいものが当たったと思って空を見上げると小雪が降り始めていた。
「良かったね。助かった後で。」と何も言わずとも追田が言及する。そう話している内に斜面の天辺が見えてくる。
「そういえば成瀬くん。どうしてあんなところで寝そべってたの?」
その質問に成瀬はハッと顔を上げた。そこには成瀬が踏んづけたであろう茶色い何かが鎮座していた。
成瀬が恐る恐る様子を伺うと、それは茶色いカエルだった。カエルは微動だにしない。あれだけ強く踏んづけてしまったんだ。もう息はしていないことを成瀬は察した。
成瀬の顔が見る見るうちに青ざめていくのを追田は不思議そうに眺めていると、一歩前へ出てカエルを拾い上げて吟味する。
「あ。これ、僕がデザインしたカエルの玩具だ。」
成瀬は一瞬なにを言われているのか分からず目が点になる。
「おもちゃ?」
追田は元気良く頷いた。
「そうそう!この間に依頼されてね。僕が描いたカエルをスクイーズの玩具にしてもらったんだよ。可愛いでしょ。」と成瀬の目の前にカエルを突き出してくる。よく見るとどこか現実の蛙とは違ってお惚けた顔をしている。
成瀬はカエルを受け取り、呆然と眺める。横で人差し指を立てて追田が語り始める。
「確かカプセルトイで最近発売されたから、子どもとか落としていったんじゃない?」と何食わぬ顔で言っている。
成瀬はフツフツと湧き起こってきた怒りを追田の肩にぶつけた。
「腹いせ反対だよ~」と追田はヘラヘラ笑っていた。
「じゃあ病院は明日にして、今日はもう帰ろう、成瀬くん。」
追田は雪が積もっても分からないほど白いセダンのフロントドアを開けた。追田は助手席側のフロントドアを開けて乗るよう目配せした。
しかし、成瀬はフロントドアを開けるのを躊躇った。先ほどの派手な転倒で自分の身体が泥塗れなことに気づいていたからだ。
「なあ、車汚れるんじゃないか?白いから余計目立つぞ。」
追田は呆気に取られているようで、ポカンと口を開けている。すると笑いを噛み殺すようにクククと肩を震わせた。
「成瀬くん!僕たち、学生時代は白いキャンバスをいつもカラフルに塗ったくってたじゃない!なにを今更。」
それを聞いた成瀬も呆気に取られた。
「お前から見たら高級車もキャンバスか。」
成瀬は気を取り直してハンドルを茶色く塗り、助手席に腰を下ろした。
「それに。」
追田も運転席に乗り込む。
「僕、茶色が一番好きなんだ。」
成瀬は思わず口角が上がる。
「なあ、家に帰る前に寄りたいところがあるんだけど。」
追田がアクセルを踏んで先程まで歩いていた土手道を颯爽と走り抜ける。
「実は、僕もそうなんだ。」
隣を見ると、追田も微笑んでいる。
「たぶん、成瀬くんと同じ気持ちだよ。」
成瀬はサイドウィンドウを開けた。少し顔を出すと、波の音がはっきり聞こえ、潮の香りも強く漂い始める。
顔を乗り出すと、先ほどまで黒かった大海に、曙色の朝焼けが一面に広がっていた。
「大丈夫?成瀬くん。」
上を見上げると小さくくるくると巻いてる茶髪が暗くても見える。
追田は不思議そうに成瀬を見ていたが、にっこり笑って手を差し出してきた。
「成瀬くん、これ以上姿勢悪くなっちゃヤダよ。」
「またそれかよ。」
成瀬は追田の手をしっかり握って立ち上がろうとしたが、何か追田は思いついたようにスケッチブックを片手で取り出そうとした。それを見た成瀬は慌てて制止させた。
「おい!後にしろ!」
そう言われて仕方なく追田は名残惜しそうにスケッチブックを仕舞った。
やはり、底が知れない男かもしれないと成瀬は危うく考えを改めかけた。
気を取り直して成瀬は追田の肩に掴まった。まだ身体は言うことを聞かないが、転びたてより少しはマシに感じた。
追田は成瀬の肩に手を回しながら聞いた。
「どうだった?同窓会。」
成瀬は上を見上げる。この斜面を登るのかと辟易した。
「らしくないことは、するもんじゃないって思った。」
「そう。」
追田から自分のスマホをもらい、二人はゆっくりだが土手の斜面を登って行った。その時なにか鼻に冷たいものが当たったと思って空を見上げると小雪が降り始めていた。
「良かったね。助かった後で。」と何も言わずとも追田が言及する。そう話している内に斜面の天辺が見えてくる。
「そういえば成瀬くん。どうしてあんなところで寝そべってたの?」
その質問に成瀬はハッと顔を上げた。そこには成瀬が踏んづけたであろう茶色い何かが鎮座していた。
成瀬が恐る恐る様子を伺うと、それは茶色いカエルだった。カエルは微動だにしない。あれだけ強く踏んづけてしまったんだ。もう息はしていないことを成瀬は察した。
成瀬の顔が見る見るうちに青ざめていくのを追田は不思議そうに眺めていると、一歩前へ出てカエルを拾い上げて吟味する。
「あ。これ、僕がデザインしたカエルの玩具だ。」
成瀬は一瞬なにを言われているのか分からず目が点になる。
「おもちゃ?」
追田は元気良く頷いた。
「そうそう!この間に依頼されてね。僕が描いたカエルをスクイーズの玩具にしてもらったんだよ。可愛いでしょ。」と成瀬の目の前にカエルを突き出してくる。よく見るとどこか現実の蛙とは違ってお惚けた顔をしている。
成瀬はカエルを受け取り、呆然と眺める。横で人差し指を立てて追田が語り始める。
「確かカプセルトイで最近発売されたから、子どもとか落としていったんじゃない?」と何食わぬ顔で言っている。
成瀬はフツフツと湧き起こってきた怒りを追田の肩にぶつけた。
「腹いせ反対だよ~」と追田はヘラヘラ笑っていた。
「じゃあ病院は明日にして、今日はもう帰ろう、成瀬くん。」
追田は雪が積もっても分からないほど白いセダンのフロントドアを開けた。追田は助手席側のフロントドアを開けて乗るよう目配せした。
しかし、成瀬はフロントドアを開けるのを躊躇った。先ほどの派手な転倒で自分の身体が泥塗れなことに気づいていたからだ。
「なあ、車汚れるんじゃないか?白いから余計目立つぞ。」
追田は呆気に取られているようで、ポカンと口を開けている。すると笑いを噛み殺すようにクククと肩を震わせた。
「成瀬くん!僕たち、学生時代は白いキャンバスをいつもカラフルに塗ったくってたじゃない!なにを今更。」
それを聞いた成瀬も呆気に取られた。
「お前から見たら高級車もキャンバスか。」
成瀬は気を取り直してハンドルを茶色く塗り、助手席に腰を下ろした。
「それに。」
追田も運転席に乗り込む。
「僕、茶色が一番好きなんだ。」
成瀬は思わず口角が上がる。
「なあ、家に帰る前に寄りたいところがあるんだけど。」
追田がアクセルを踏んで先程まで歩いていた土手道を颯爽と走り抜ける。
「実は、僕もそうなんだ。」
隣を見ると、追田も微笑んでいる。
「たぶん、成瀬くんと同じ気持ちだよ。」
成瀬はサイドウィンドウを開けた。少し顔を出すと、波の音がはっきり聞こえ、潮の香りも強く漂い始める。
顔を乗り出すと、先ほどまで黒かった大海に、曙色の朝焼けが一面に広がっていた。
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