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「幻を追い求めて2」15話
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「幻を追い求めて2」15話
徐々に日没の時間が早まり、帰る頃にはすっかり遅くなっていた。
今日もいつも通り成瀬と帰り道を歩く。仕事にも慣れ始め、口下手の成瀬と一緒に帰るのも特に気にならなくなっていた。
「それで、どうなんすか?」
「なにが。」
「追田紡求と何があったのかっすよ。地味に気になるんすけど。」
「どうだっていいだろ。」
一壱は態とらしくつまらなさそうな顔で頬を膨らませた。ホストも辞めて低賃金で単調な仕事を毎日熟す。毎日が暇で暇で仕方なかったので、成瀬関連の話題は一壱にとっては完全に娯楽だった。
あれから長からの返事はこうだ。
「そうなのか。決まって良かった。頑張れ。」
少し拍子抜けしたが、しつこく言及されないのが一番だと胸を撫で下ろした。
「あれ?」
一壱はふと前を見ると、自分の住むアパートのすぐ横に大きなトラックが停まっていることに気づいた。
トラックの横に立っているのは入居初日から会ってはたまに雑談する大家さんだった。
一壱は思わず駆け寄って大家さんに話しかけた。
「あの、どうしたんすか?」
大家は辛うじて残ってる白髪を触り、困り眉で話した。
「あー君たちか。すまないね。」
大家の目尻の皺が深くなる。
「実はこのアパート、違法建築だったみたいでね~建て直すことになったんだよ。ホント、嫌になっちゃうよなあ!」
大家の言葉に一壱はヘラヘラと笑っていた表情が固まり、血の気が引いていくのを感じた。
「まあ、ボロボロアパートだって散々言われてたし、ちょうど良いっちゃ、ちょうど良いよなぁ!」
大家の不謹慎なジョークもいつもは軽く乗っていたのだが、今はそれどころの気分では無かった。
隣を見ると、成瀬の顔はすっかり青くなっていた。まあ、割と最近よく見る顔だったので、面白味はなにも無かった。
「ごめんね~ちゃんとお金は払うから。悪いけど、アパート、退去してね。」
大家の無責任な言葉に一壱はすぐさま思案を巡らせた。
ーどうする?今日は友人の家に無理言って泊まるか?いや、今から連絡取るのも面倒だからそこら辺のホテルでいいか?
一壱の考えがまとまりそうなところで突然スマホがポケットの中で踊り出した。びっくりして思わず取り出してよく見ずに通話ボタンを押してしまっていた。迂闊だった。そう思ったのは、電話の向こうの声がもうしばらく聞かなくて良いと思っていた相手だったからだ。
「一壱。大丈夫か?」
「は?」
思わず聞き返すと、相手は小さく笑って再び聞き返してきた。
「今、一壱のアパート近くを通ったんだが、何やら揉めてるように見えて。」
ハッと思わずアパートのさらに奥を目を凝らしながら見遣る。そこには見覚えのある黒い外車が停まっていた。
一壱は慌てて言った。
「あー、なんか、大丈夫。何も無いよ。」
「アパート退去のやり方なんだけど~」
後ろから大きな声で大家が何か言っている。
「アパート退去?大丈夫か?」
一壱の頬に一筋の冷や汗が落ちて行った。後ろにいる大家を気づかれないようジロリと睨む。
「じゃあ、今日はうちで泊まるといい。近くで最近仕事で使ってるマンションがあるんだ。」
「え!?なんで!兄貴となんて、絶対に嫌だ!」
思わず思ってることをそのまま言ってしまった。しまったと口に手を当てる。すると、長の寂しそうな声が聞こえる。
「そんなこと言わないでくれ。次のアパートが決まるまでだから、な?」
マズイと一壱は思った。
ーただでさえさっきの発言で気まずいのに。どうしよう。
ふと顔を上げるとまだ青い顔をしている成瀬がうんうんと悩んでいるのが見える。
すぐさま一壱は「ちょっと待って!」と言って電話を切り、成瀬に駆け寄った。
「どうしよう。兄貴の家に行かなくちゃいけなくなっちゃいました!!」
成瀬がこっちの兄弟仲を察したようだったが、肩を落として自分の事情を話し始めた。
「でも、良かったじゃないか。それでも泊まれそうな場所が出来たんだろう?俺はちょっと困ってるんだよ。」
「良くないですよ!兄貴と二人っきりなんて…」と愚痴をこぼそうとしたところで、一壱は思い止まった。
ーそうだ。まだこの友達がいなさそうな哀れな先輩がいるじゃないか!
一壱は態とらしく顎に手を当てる。
「待てよ。成瀬先輩も一緒に来ればいいんじゃないか?」
さすがに弟の会社の先輩相手に長も転職先について下手なことは言わないだろう。
幸い、成瀬も乗り気になったようで、先程まで青かった顔に血が通い始める。
「じゃあ、お言葉に甘えて…」
「ちょっと待った。」
一壱は眉を顰めて後ろを振り返った。すると、そこには最近よく見る癖っ毛の顔があった。
徐々に日没の時間が早まり、帰る頃にはすっかり遅くなっていた。
今日もいつも通り成瀬と帰り道を歩く。仕事にも慣れ始め、口下手の成瀬と一緒に帰るのも特に気にならなくなっていた。
「それで、どうなんすか?」
「なにが。」
「追田紡求と何があったのかっすよ。地味に気になるんすけど。」
「どうだっていいだろ。」
一壱は態とらしくつまらなさそうな顔で頬を膨らませた。ホストも辞めて低賃金で単調な仕事を毎日熟す。毎日が暇で暇で仕方なかったので、成瀬関連の話題は一壱にとっては完全に娯楽だった。
あれから長からの返事はこうだ。
「そうなのか。決まって良かった。頑張れ。」
少し拍子抜けしたが、しつこく言及されないのが一番だと胸を撫で下ろした。
「あれ?」
一壱はふと前を見ると、自分の住むアパートのすぐ横に大きなトラックが停まっていることに気づいた。
トラックの横に立っているのは入居初日から会ってはたまに雑談する大家さんだった。
一壱は思わず駆け寄って大家さんに話しかけた。
「あの、どうしたんすか?」
大家は辛うじて残ってる白髪を触り、困り眉で話した。
「あー君たちか。すまないね。」
大家の目尻の皺が深くなる。
「実はこのアパート、違法建築だったみたいでね~建て直すことになったんだよ。ホント、嫌になっちゃうよなあ!」
大家の言葉に一壱はヘラヘラと笑っていた表情が固まり、血の気が引いていくのを感じた。
「まあ、ボロボロアパートだって散々言われてたし、ちょうど良いっちゃ、ちょうど良いよなぁ!」
大家の不謹慎なジョークもいつもは軽く乗っていたのだが、今はそれどころの気分では無かった。
隣を見ると、成瀬の顔はすっかり青くなっていた。まあ、割と最近よく見る顔だったので、面白味はなにも無かった。
「ごめんね~ちゃんとお金は払うから。悪いけど、アパート、退去してね。」
大家の無責任な言葉に一壱はすぐさま思案を巡らせた。
ーどうする?今日は友人の家に無理言って泊まるか?いや、今から連絡取るのも面倒だからそこら辺のホテルでいいか?
一壱の考えがまとまりそうなところで突然スマホがポケットの中で踊り出した。びっくりして思わず取り出してよく見ずに通話ボタンを押してしまっていた。迂闊だった。そう思ったのは、電話の向こうの声がもうしばらく聞かなくて良いと思っていた相手だったからだ。
「一壱。大丈夫か?」
「は?」
思わず聞き返すと、相手は小さく笑って再び聞き返してきた。
「今、一壱のアパート近くを通ったんだが、何やら揉めてるように見えて。」
ハッと思わずアパートのさらに奥を目を凝らしながら見遣る。そこには見覚えのある黒い外車が停まっていた。
一壱は慌てて言った。
「あー、なんか、大丈夫。何も無いよ。」
「アパート退去のやり方なんだけど~」
後ろから大きな声で大家が何か言っている。
「アパート退去?大丈夫か?」
一壱の頬に一筋の冷や汗が落ちて行った。後ろにいる大家を気づかれないようジロリと睨む。
「じゃあ、今日はうちで泊まるといい。近くで最近仕事で使ってるマンションがあるんだ。」
「え!?なんで!兄貴となんて、絶対に嫌だ!」
思わず思ってることをそのまま言ってしまった。しまったと口に手を当てる。すると、長の寂しそうな声が聞こえる。
「そんなこと言わないでくれ。次のアパートが決まるまでだから、な?」
マズイと一壱は思った。
ーただでさえさっきの発言で気まずいのに。どうしよう。
ふと顔を上げるとまだ青い顔をしている成瀬がうんうんと悩んでいるのが見える。
すぐさま一壱は「ちょっと待って!」と言って電話を切り、成瀬に駆け寄った。
「どうしよう。兄貴の家に行かなくちゃいけなくなっちゃいました!!」
成瀬がこっちの兄弟仲を察したようだったが、肩を落として自分の事情を話し始めた。
「でも、良かったじゃないか。それでも泊まれそうな場所が出来たんだろう?俺はちょっと困ってるんだよ。」
「良くないですよ!兄貴と二人っきりなんて…」と愚痴をこぼそうとしたところで、一壱は思い止まった。
ーそうだ。まだこの友達がいなさそうな哀れな先輩がいるじゃないか!
一壱は態とらしく顎に手を当てる。
「待てよ。成瀬先輩も一緒に来ればいいんじゃないか?」
さすがに弟の会社の先輩相手に長も転職先について下手なことは言わないだろう。
幸い、成瀬も乗り気になったようで、先程まで青かった顔に血が通い始める。
「じゃあ、お言葉に甘えて…」
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一壱は眉を顰めて後ろを振り返った。すると、そこには最近よく見る癖っ毛の顔があった。
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