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「幻を追い求めて2」16話
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「幻を追い求めて2」16話
一壱は指を差した。
「あ!追田紡求!」
横に立っていた成瀬が溜め息をついてるのが分かる。自分も兄の長が来たら同じ反応をするだろう。
「成瀬くん。何だか大変そうだね。」
「お前に付き纏われるより大変なことなんて無い。」
まるで小型犬が大型犬に掴み掛かろうとしているように一壱には見えた。
しかし、どうして追田紡求がここにいるのだろうか?まだ先程まで電話していた長が出てきた方が現実味を帯びているようにさえ思う。
「成瀬くん、帰る家が無いなら僕の家に泊まりなよ。ほら、出勤も車に乗せて連れてってあげるよ。」
一壱が遠くを見遣るとアパート近くの駐車場に停められてある白いセダンが見えたのと同時にさらに奥の方に黒い外車が見えて凍りついた。
「いや、残念だけど俺、実家に帰ろうと思って」
「あー、君の実家にはさっき僕が連絡を入れておいたよ。僕の家に泊まるって。安心してたよ、お母さん。」
固まっている一壱を追田紡求は一瞬だけこちらを見た。背筋がゾッとした。あの底知れなさは長とどこか似たようなものを感じる。静かな佇まいを見せているが、少しでもこちらが隙を見せたらそのまま取って食われそうな獰猛さが追田紡求の目には宿っていた。
成瀬には悪いが明らかに関わってはいけない相手だと瞬時に悟り、後退りした。それを成瀬は見逃さなかった。
思わず成瀬は叫んだ。
「裏切り者!」
「いや、だって。」
「あんなについてきて欲しそうな目で見てただろう!」
ご尤もなので一壱は罰が悪そうに追田を一瞥すると、ニッコリとした笑顔の中に明らかに牽制の字が浮かんで見えた。
「俺だって兄貴に呼ばれてるのも嫌ですけど、あんなヤバそうな人に目をつけられるとか最悪じゃないすか!」と態と本人の前で言うことによって、相手の想像もしたくない何かのリストから外してもらおうと訴えた。
「いやー、良かった良かった!みんな泊まれる場所が見つかって。」
「あんたは対応が減って喜んでるだけだろう!」
思わず大家さんの発言に成瀬が口を挟んだところで一壱は一目散にその場を後にした。勿論、成瀬には謝った。心の中で。
「一壱!嫌がってたからもう来ないと思ってたよ。」
「ごめんなさい。」
一壱は素直に謝った。さすがに本人を前に悪口を言うバカまでは演じていないつもりだ。
長は顔を俯かせている一壱を見て苦笑しながらもフロントドアを開けた。
「今日は秘書の人いないの?」
「あぁ。もう家に帰るだけだしね。」
一壱は助手席に座り、長はエンジンを入れた。長がこの車を運転する姿は何気に初めて見るかもしれないと思い、一壱は思わず凝視してしまった。
長は一壱の視線に気づき、こちらを見てまた苦笑した。
「一人で仕事部屋として使ってるんだ。と言っても、一壱が泊まれる部屋はちゃんとあるから安心しろ。」
「だから、ごめんって。」
一壱の言葉に長は安堵したのか、マンションに帰るまで、二人は他愛もないお喋りをした。この間カフェでした会話より、長はずっと話しやすかった。
ーなんだ。案外、上手くやっていけるじゃないか、俺たち兄弟。
マンションに着くまで、一壱のスマホはずっと鞄の中だった。
一壱は指を差した。
「あ!追田紡求!」
横に立っていた成瀬が溜め息をついてるのが分かる。自分も兄の長が来たら同じ反応をするだろう。
「成瀬くん。何だか大変そうだね。」
「お前に付き纏われるより大変なことなんて無い。」
まるで小型犬が大型犬に掴み掛かろうとしているように一壱には見えた。
しかし、どうして追田紡求がここにいるのだろうか?まだ先程まで電話していた長が出てきた方が現実味を帯びているようにさえ思う。
「成瀬くん、帰る家が無いなら僕の家に泊まりなよ。ほら、出勤も車に乗せて連れてってあげるよ。」
一壱が遠くを見遣るとアパート近くの駐車場に停められてある白いセダンが見えたのと同時にさらに奥の方に黒い外車が見えて凍りついた。
「いや、残念だけど俺、実家に帰ろうと思って」
「あー、君の実家にはさっき僕が連絡を入れておいたよ。僕の家に泊まるって。安心してたよ、お母さん。」
固まっている一壱を追田紡求は一瞬だけこちらを見た。背筋がゾッとした。あの底知れなさは長とどこか似たようなものを感じる。静かな佇まいを見せているが、少しでもこちらが隙を見せたらそのまま取って食われそうな獰猛さが追田紡求の目には宿っていた。
成瀬には悪いが明らかに関わってはいけない相手だと瞬時に悟り、後退りした。それを成瀬は見逃さなかった。
思わず成瀬は叫んだ。
「裏切り者!」
「いや、だって。」
「あんなについてきて欲しそうな目で見てただろう!」
ご尤もなので一壱は罰が悪そうに追田を一瞥すると、ニッコリとした笑顔の中に明らかに牽制の字が浮かんで見えた。
「俺だって兄貴に呼ばれてるのも嫌ですけど、あんなヤバそうな人に目をつけられるとか最悪じゃないすか!」と態と本人の前で言うことによって、相手の想像もしたくない何かのリストから外してもらおうと訴えた。
「いやー、良かった良かった!みんな泊まれる場所が見つかって。」
「あんたは対応が減って喜んでるだけだろう!」
思わず大家さんの発言に成瀬が口を挟んだところで一壱は一目散にその場を後にした。勿論、成瀬には謝った。心の中で。
「一壱!嫌がってたからもう来ないと思ってたよ。」
「ごめんなさい。」
一壱は素直に謝った。さすがに本人を前に悪口を言うバカまでは演じていないつもりだ。
長は顔を俯かせている一壱を見て苦笑しながらもフロントドアを開けた。
「今日は秘書の人いないの?」
「あぁ。もう家に帰るだけだしね。」
一壱は助手席に座り、長はエンジンを入れた。長がこの車を運転する姿は何気に初めて見るかもしれないと思い、一壱は思わず凝視してしまった。
長は一壱の視線に気づき、こちらを見てまた苦笑した。
「一人で仕事部屋として使ってるんだ。と言っても、一壱が泊まれる部屋はちゃんとあるから安心しろ。」
「だから、ごめんって。」
一壱の言葉に長は安堵したのか、マンションに帰るまで、二人は他愛もないお喋りをした。この間カフェでした会話より、長はずっと話しやすかった。
ーなんだ。案外、上手くやっていけるじゃないか、俺たち兄弟。
マンションに着くまで、一壱のスマホはずっと鞄の中だった。
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