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「ちゃんちゃら」12話
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「ちゃんちゃら」12話
空島は大地にいま気づいたようで、大地の顔を見て仰天する。
「大地さん!?」
空島はあんぐりと口を開けていたが、次第に口は閉じていき、黙りこくってしまった。明らかに芳しくないことがここのBARで起きたことは容易に想像できた。大地は空島の横でグラスを拭き始めたマスターに事情を聞くことに決めた。
「なあ、なにかあったのか?」
マスターは小さく溜め息をつきながらグラスを拭く。
「さっきまで、あんたたちのお仲間が来てたんだけど、まあ気分が悪くてね。帰ってもらったのよ。」
大地は目を丸くした。普段、自分たちが馬鹿騒ぎをしても追い出さないマスターが追い出すなんて、よっぽどのことである。
「そんなに酷かったのか?」
「ええ。それはね。」
マスターは今度は大きな溜め息をつく。
「海斗ちゃんがΩだったのは知ってるんでしょ?」
大地は顔を引き攣った。やはり海斗の状況を理解している様子に見える。
「ほら、書類とか証明書に第二性の欄、書き換えないといけないじゃない?大学にそれを言ったら事務員がプチ騒ぎしてるのをあの子たち聞いちゃったみたいでね。ここで騒いでたのよ。」
「騒いでたって、どんな」
マスターは眉間に皺を寄せた。
「今でもΩの子に対して差別的な発言する人いるでしょ?」
大地は息を呑む。マスターの前に座っている空島も顔を俯かせる。
「うちは、人道主義者しか受け入れてないって言って追い出しちゃったわ。」とウインクするマスターを見て苦笑する。あの屈強な体に敵う人間は男でもそうはいないだろう。
大地はここで海斗のことを話す悪友たちを想像した。いつもは仲が良いのにΩだと知った途端、態度を変えたのは少し驚きだった。普段、そういった第二性のことは話さない為、みんなのイデオロギーなど把握したことがなかった。
しかし、いくら自業自得と言えども、ついこの間まで一緒に笑っていた人間が貶められてるのを聞くのは良い気分はしなかった。
「それにしても、海斗先輩大丈夫でしょうかね。体調悪くしてましたし。」
空島はようやく顔を上げて口を開いた。表情はずっと困り眉だった。
「大地さんのこと、ずっと探してたみたいでしたし、大地さんのこと、頼りにしてるんじゃないすか?」
空島の言葉に大地の目は少し吊り上がった。
「それ、どういう意味だよ。あいつ、また俺を探してたのか?」
空島が硬直する。何かいけないことでも聞いたのかと不思議そうな表情をしている。
「え?だって、大地さんのこと、この間まで探して」
「お前は海斗の味方なのか!あいつのせいだろ、妊娠したのは!」
マスターと空島はジッとこちらを見ている。その表情だけでも動揺が伝わってきた。カランと空島の前に置かれてあるグラスの中の氷が鳴る。
この時、ようやく自分が墓穴を掘ったことに気づいた。
動揺しながらもマスターはわなわなと口を開く。
「あんた!海斗ちゃん、妊娠させたの!?」
「あいつがΩだなんて知らなかった。騙されたんだ!!」
大地は間髪入れずに否定する。二人の糾弾の目をどうにか振り払おうとした。
しかし、無かったことにしようと思っても、空島はまるで名探偵のように顎に手を当てて思案し始めていた。
「そうか。それで、海斗先輩」と影を落とす。一方、マスターは大地を凝視している。真剣な表情に少し大地は後退る。
「あんた、海斗ちゃんと、ちゃんと話したの?」
大地が目を泳がせたのをマスターは見逃さなかった。
「なんでちゃんと話さないの!海斗ちゃんの置かれた状況わかってるでしょ!」
「あいつ、俺にΩだってこと隠してたんだぞ!俺に近づいてきてバレないように色目使って!それなのに、俺にいけしゃあしゃあと被害者面して!おかしいだろ!」
本当は海斗に言いたかったことをマスターに八つ当たりするように弁明する。
マスターは一瞬、怪訝そうな表情をし、そして今日一大きな溜め息をついた。
「なに言ってんの。海斗ちゃん狙ってたのは、あんたでしょ。」
空島は大地にいま気づいたようで、大地の顔を見て仰天する。
「大地さん!?」
空島はあんぐりと口を開けていたが、次第に口は閉じていき、黙りこくってしまった。明らかに芳しくないことがここのBARで起きたことは容易に想像できた。大地は空島の横でグラスを拭き始めたマスターに事情を聞くことに決めた。
「なあ、なにかあったのか?」
マスターは小さく溜め息をつきながらグラスを拭く。
「さっきまで、あんたたちのお仲間が来てたんだけど、まあ気分が悪くてね。帰ってもらったのよ。」
大地は目を丸くした。普段、自分たちが馬鹿騒ぎをしても追い出さないマスターが追い出すなんて、よっぽどのことである。
「そんなに酷かったのか?」
「ええ。それはね。」
マスターは今度は大きな溜め息をつく。
「海斗ちゃんがΩだったのは知ってるんでしょ?」
大地は顔を引き攣った。やはり海斗の状況を理解している様子に見える。
「ほら、書類とか証明書に第二性の欄、書き換えないといけないじゃない?大学にそれを言ったら事務員がプチ騒ぎしてるのをあの子たち聞いちゃったみたいでね。ここで騒いでたのよ。」
「騒いでたって、どんな」
マスターは眉間に皺を寄せた。
「今でもΩの子に対して差別的な発言する人いるでしょ?」
大地は息を呑む。マスターの前に座っている空島も顔を俯かせる。
「うちは、人道主義者しか受け入れてないって言って追い出しちゃったわ。」とウインクするマスターを見て苦笑する。あの屈強な体に敵う人間は男でもそうはいないだろう。
大地はここで海斗のことを話す悪友たちを想像した。いつもは仲が良いのにΩだと知った途端、態度を変えたのは少し驚きだった。普段、そういった第二性のことは話さない為、みんなのイデオロギーなど把握したことがなかった。
しかし、いくら自業自得と言えども、ついこの間まで一緒に笑っていた人間が貶められてるのを聞くのは良い気分はしなかった。
「それにしても、海斗先輩大丈夫でしょうかね。体調悪くしてましたし。」
空島はようやく顔を上げて口を開いた。表情はずっと困り眉だった。
「大地さんのこと、ずっと探してたみたいでしたし、大地さんのこと、頼りにしてるんじゃないすか?」
空島の言葉に大地の目は少し吊り上がった。
「それ、どういう意味だよ。あいつ、また俺を探してたのか?」
空島が硬直する。何かいけないことでも聞いたのかと不思議そうな表情をしている。
「え?だって、大地さんのこと、この間まで探して」
「お前は海斗の味方なのか!あいつのせいだろ、妊娠したのは!」
マスターと空島はジッとこちらを見ている。その表情だけでも動揺が伝わってきた。カランと空島の前に置かれてあるグラスの中の氷が鳴る。
この時、ようやく自分が墓穴を掘ったことに気づいた。
動揺しながらもマスターはわなわなと口を開く。
「あんた!海斗ちゃん、妊娠させたの!?」
「あいつがΩだなんて知らなかった。騙されたんだ!!」
大地は間髪入れずに否定する。二人の糾弾の目をどうにか振り払おうとした。
しかし、無かったことにしようと思っても、空島はまるで名探偵のように顎に手を当てて思案し始めていた。
「そうか。それで、海斗先輩」と影を落とす。一方、マスターは大地を凝視している。真剣な表情に少し大地は後退る。
「あんた、海斗ちゃんと、ちゃんと話したの?」
大地が目を泳がせたのをマスターは見逃さなかった。
「なんでちゃんと話さないの!海斗ちゃんの置かれた状況わかってるでしょ!」
「あいつ、俺にΩだってこと隠してたんだぞ!俺に近づいてきてバレないように色目使って!それなのに、俺にいけしゃあしゃあと被害者面して!おかしいだろ!」
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「なに言ってんの。海斗ちゃん狙ってたのは、あんたでしょ。」
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