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「ちゃんちゃら」27話
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「ちゃんちゃら」27話
海斗はぼんやりとリビングでテレビを眺めていた。先程、大原が持ってきてくれた朝食も喉が通らなかった。栄養バランスが整った朝食なんて人生で一度も摂った事がなかったのに、惜しい事をしたとソファで体育座りをする。
テレビは賑やかなバラエティをやっていたが、海斗の耳には入らなかった。なぜなら、さっきの大地との会話が頭から離れなかったからだ。
ーあいつ、なんで大学を辞めるなんて。
海斗は大地の行動が理解出来なかった。あんなに実家の家業を継ぎたくないと言っていたのに。海斗のお腹の中にはもう誰もいない。大地は、もうこの一件から解放されているというのに。
ー俺が大学辞めるって言っちゃったからかな。
大原という執事に昨日話したことは伝わっているはず。なぜ大地は自分を見限らないのか、海斗には不思議で仕方がなかった。
ーまさか、俺の為に大学辞めるんじゃないだろうな。
だとしたら、海斗は大地を止めなければならない。自分のやりたいことを断念してまですることなのだろうかと海斗は悶々とソファで体育座りをしたまま蹲った。
「具合、悪いんですか?」
突然、頭上から声が聞こえたので驚いて顔を上げると大原が心配そうにこちらを見下ろしていた。
海斗は慌てて体育座りをやめて座り直す。
「あ、大丈夫です。」
「今日はベッドから離れていたので体調が良いのかと思ったのですが」
「ちょっと、考え事してただけなんで。」と余所余所しい態度を取ってソファの端に移動する。
海斗は次第に考える事に疲れ、テレビを眺める事にした。テレビの話題は今年盛り上がったドラマの特集になっていた。司会の男が腰に手を当て、嬉しそうに話す。
「いやー、今年のドラマと言ったら「ちゃんちゃら」でしょう!」
他の出演者も皆、頷いている。
「面白かったですよねー!私も全部観ました!」と若い女性タレントも興奮した様子で話す。
「このギャグとシリアスなところの塩梅がまた良くてー」
「ちょっと盛り上がり過ぎぃ」
彼女の興奮具合に笑いが起きる。
「設定は笑える内容じゃないんだけどねぇ」と年配の温厚そうな学者と思われる人が口を開き、ストーリーを説明し始める。
「学生のΩの男が事故で妊娠して、相手にも捨てられ、でも子どもを産んで育てていく。周りの人たちは、主人公の状況を「ちゃんちゃらおかしい」と言うけど、主人公は前を進んで生きていくんです。そうしてまた新しい恋をして家庭を持って、幸せになっていくんですよね。」
司会の男が大きく頷く。
「本当に主人公は立派ですよね~中々決断できないことをやってのけたんですから!いやー苦労しながら育児していく様がまた泣けるんですよ。」
すると、また女性タレントが興奮気味に口を挟む。
「本当に凄いですよね~出産シーンなんて、私泣いちゃいましたよ!この時流れる主題歌の「ちゃんちゃら」もまた効いててー」
突然、テレビの画面が真っ黒になり、頬杖をついている自分が薄ら映る。振り返ると、大原がリモコンを持って佇んでいた。大原は海斗の視線に気づき、咳払いを一回して何事を無かったかのようにリモコンを置いた。
「海斗様、お昼は何が食べたいですか?」
「え?」
海斗は突然の質問によく頭が回らず、曖昧な返事をしてしまう。
「うーん、まあ、今はなんでも。」
「そうですか。消化の良いものでもお作りしましょうかね。」
大原がそう言うと、リビングのドアを開けて出て行ってしまう。
海斗はテレビに映る自分の姿をぼんやり眺める。
現実はそんなハッピーエンドではない。
海斗は、少しやつれた顔の自分を睨み付けるように見る。
そんな簡単に前向きになんてなれないし、新しい恋をしたいとも思わない。自分を祝福なんて、できない。
すると、テレビも消え、静かになっていた家の中にインターフォンの音が鳴り響いた。
海斗はぼんやりとリビングでテレビを眺めていた。先程、大原が持ってきてくれた朝食も喉が通らなかった。栄養バランスが整った朝食なんて人生で一度も摂った事がなかったのに、惜しい事をしたとソファで体育座りをする。
テレビは賑やかなバラエティをやっていたが、海斗の耳には入らなかった。なぜなら、さっきの大地との会話が頭から離れなかったからだ。
ーあいつ、なんで大学を辞めるなんて。
海斗は大地の行動が理解出来なかった。あんなに実家の家業を継ぎたくないと言っていたのに。海斗のお腹の中にはもう誰もいない。大地は、もうこの一件から解放されているというのに。
ー俺が大学辞めるって言っちゃったからかな。
大原という執事に昨日話したことは伝わっているはず。なぜ大地は自分を見限らないのか、海斗には不思議で仕方がなかった。
ーまさか、俺の為に大学辞めるんじゃないだろうな。
だとしたら、海斗は大地を止めなければならない。自分のやりたいことを断念してまですることなのだろうかと海斗は悶々とソファで体育座りをしたまま蹲った。
「具合、悪いんですか?」
突然、頭上から声が聞こえたので驚いて顔を上げると大原が心配そうにこちらを見下ろしていた。
海斗は慌てて体育座りをやめて座り直す。
「あ、大丈夫です。」
「今日はベッドから離れていたので体調が良いのかと思ったのですが」
「ちょっと、考え事してただけなんで。」と余所余所しい態度を取ってソファの端に移動する。
海斗は次第に考える事に疲れ、テレビを眺める事にした。テレビの話題は今年盛り上がったドラマの特集になっていた。司会の男が腰に手を当て、嬉しそうに話す。
「いやー、今年のドラマと言ったら「ちゃんちゃら」でしょう!」
他の出演者も皆、頷いている。
「面白かったですよねー!私も全部観ました!」と若い女性タレントも興奮した様子で話す。
「このギャグとシリアスなところの塩梅がまた良くてー」
「ちょっと盛り上がり過ぎぃ」
彼女の興奮具合に笑いが起きる。
「設定は笑える内容じゃないんだけどねぇ」と年配の温厚そうな学者と思われる人が口を開き、ストーリーを説明し始める。
「学生のΩの男が事故で妊娠して、相手にも捨てられ、でも子どもを産んで育てていく。周りの人たちは、主人公の状況を「ちゃんちゃらおかしい」と言うけど、主人公は前を進んで生きていくんです。そうしてまた新しい恋をして家庭を持って、幸せになっていくんですよね。」
司会の男が大きく頷く。
「本当に主人公は立派ですよね~中々決断できないことをやってのけたんですから!いやー苦労しながら育児していく様がまた泣けるんですよ。」
すると、また女性タレントが興奮気味に口を挟む。
「本当に凄いですよね~出産シーンなんて、私泣いちゃいましたよ!この時流れる主題歌の「ちゃんちゃら」もまた効いててー」
突然、テレビの画面が真っ黒になり、頬杖をついている自分が薄ら映る。振り返ると、大原がリモコンを持って佇んでいた。大原は海斗の視線に気づき、咳払いを一回して何事を無かったかのようにリモコンを置いた。
「海斗様、お昼は何が食べたいですか?」
「え?」
海斗は突然の質問によく頭が回らず、曖昧な返事をしてしまう。
「うーん、まあ、今はなんでも。」
「そうですか。消化の良いものでもお作りしましょうかね。」
大原がそう言うと、リビングのドアを開けて出て行ってしまう。
海斗はテレビに映る自分の姿をぼんやり眺める。
現実はそんなハッピーエンドではない。
海斗は、少しやつれた顔の自分を睨み付けるように見る。
そんな簡単に前向きになんてなれないし、新しい恋をしたいとも思わない。自分を祝福なんて、できない。
すると、テレビも消え、静かになっていた家の中にインターフォンの音が鳴り響いた。
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