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「ちゃんちゃら」47話
「ちゃんちゃら」47話
海斗は縮こまりながらソファの端に座っていた。震えた手でどうにかして出した麦茶が入ったグラスを金城大和が礼を言って口にしている。
リビングに通した際に速攻でテレビの電源は消した。さすがに目の前に本人がいるというのに、あの番組を続けて観る勇気は無かった。
大原はまだ上で掃除をしている。家が広いせいか、終わるのに時間が掛かるらしい。海斗が大原を呼びに行こうとしたが、金城大和は「その内来るだろう」と言われ、大人しく待つことになった。海斗はひたすら大原がリビングに来るのを祈るばかりだった。
「君は、いつ頃からこの家で暮らしているんだね。」
海斗の肩が強張った。威圧感のある声に震え上がる。
「先月の、ま、末頃から」
「そうか。」
向こうからしてみたら海斗は異色であり、そういえば、この家にいることを金城大和自身からは許可を得ていないことに海斗は気づいた。遠回しに「なぜこの家にいるのか」と責められているようで居た堪れなくなり、逃げ出したくなった。
「体調が悪いと聞いたが、大丈夫なのかね。」
「あ、はい。大丈夫です。」
海斗はまるでさっきの面接練習の続きをしているような気がしてきていた。しかし、大原とは違ってかなり威圧感が増したことにより、練習というより本番になっていた。
海斗がすっかり俯いて固まっていると、それまでずっと視界が床だったところに人間の頭が映った。
「うちのバカ息子が迷惑を掛けて本当にすまなかった。」
金城大和が床に膝をついてこちらに頭を下げていた。なにが起きてるのか分からず、海斗はただ金城大和の白髪混じりの頭を暫く呆然と眺めていた。
「あの子が君に失礼な態度を取ったのも、あの子が幼少期に私が雫と再婚したことが原因だ。全ては私の責任だ。本当に申し訳ないことをした。なんでも言ってくれ。」
ようやく今なにが起きてるのか脳が理解し始め、海斗は慌てて床に膝をついた。
「いや!その、俺も、迷惑掛けて、すんません。ここの人たちには、とてもお世話になってます。」
海斗も床に頭をくっつけた。恐る恐る顔を上げると金城大和は正座をしてこちらを見守っていた。この時、ようやく海斗は大和の顔をちゃんと見ることができた。眉の形や顔の輪郭が大地にそっくりだった。
「そうか。嫌がっていないなら良かった。」
先ほどまで険しい顔だった大和の表情が少し柔らかくなる。その微笑みは渋みがあって魅力的で、いかにもαらしい荘厳な雰囲気を纏っているのは海斗でもすぐ理解した。
「あの、今日はどうしてここに?」
海斗が正座している大和に顔を窺いながら訊ねる。
「君に謝罪をしにきた。本当ならすぐ会って話さなければならなかったんだが、仕事が立て込んでしまってね。遅れて申し訳ない。大原や大地、雫からも話は色々聞いている。君の気が済むまでここにいて構わない。」
再び大和は海斗に頭を下げる。海斗も釣られて頭を下げる。この時、海斗の大和への印象はテレビや大地の言っていたような厳格な仕事人間というよりは、雫の言っていたような責任感の強い真面目で不器用な男へ変わっていた。
「ありがとうございます。」と頭を下げたまま海斗は言うのを見て、大和は微笑みながら海斗の肩に優しく手を置いた。
「大原から話は聞いた。就職活動をしているんだって?君が真心があって心根の優しい人物なのは分かっている。面接、合格できると信じているよ。」
さっきまで威圧的に感じていた声が急に自分の力になっていくのを海斗は感じた。これ以上にない励ましを貰ったような、自分の存在を受け止めてもらった気がして瞳が潤む。
その様子を見た大和が顔を青ざめ、慌てて海斗の顔を覗き込む。
「大丈夫かい!?よく周りからも怖いと言われるんだ。怒っていないよ。」
検討外れの彼の発言に思わず笑いが溢れる。慌てた様子は大地にそっくりだった。恐らく、雫の妊娠が発覚した時も彼にこんな表情を見せていたのだろう。
自分の体温がほんのり温かくなるのを海斗は肌で感じていた。
海斗は縮こまりながらソファの端に座っていた。震えた手でどうにかして出した麦茶が入ったグラスを金城大和が礼を言って口にしている。
リビングに通した際に速攻でテレビの電源は消した。さすがに目の前に本人がいるというのに、あの番組を続けて観る勇気は無かった。
大原はまだ上で掃除をしている。家が広いせいか、終わるのに時間が掛かるらしい。海斗が大原を呼びに行こうとしたが、金城大和は「その内来るだろう」と言われ、大人しく待つことになった。海斗はひたすら大原がリビングに来るのを祈るばかりだった。
「君は、いつ頃からこの家で暮らしているんだね。」
海斗の肩が強張った。威圧感のある声に震え上がる。
「先月の、ま、末頃から」
「そうか。」
向こうからしてみたら海斗は異色であり、そういえば、この家にいることを金城大和自身からは許可を得ていないことに海斗は気づいた。遠回しに「なぜこの家にいるのか」と責められているようで居た堪れなくなり、逃げ出したくなった。
「体調が悪いと聞いたが、大丈夫なのかね。」
「あ、はい。大丈夫です。」
海斗はまるでさっきの面接練習の続きをしているような気がしてきていた。しかし、大原とは違ってかなり威圧感が増したことにより、練習というより本番になっていた。
海斗がすっかり俯いて固まっていると、それまでずっと視界が床だったところに人間の頭が映った。
「うちのバカ息子が迷惑を掛けて本当にすまなかった。」
金城大和が床に膝をついてこちらに頭を下げていた。なにが起きてるのか分からず、海斗はただ金城大和の白髪混じりの頭を暫く呆然と眺めていた。
「あの子が君に失礼な態度を取ったのも、あの子が幼少期に私が雫と再婚したことが原因だ。全ては私の責任だ。本当に申し訳ないことをした。なんでも言ってくれ。」
ようやく今なにが起きてるのか脳が理解し始め、海斗は慌てて床に膝をついた。
「いや!その、俺も、迷惑掛けて、すんません。ここの人たちには、とてもお世話になってます。」
海斗も床に頭をくっつけた。恐る恐る顔を上げると金城大和は正座をしてこちらを見守っていた。この時、ようやく海斗は大和の顔をちゃんと見ることができた。眉の形や顔の輪郭が大地にそっくりだった。
「そうか。嫌がっていないなら良かった。」
先ほどまで険しい顔だった大和の表情が少し柔らかくなる。その微笑みは渋みがあって魅力的で、いかにもαらしい荘厳な雰囲気を纏っているのは海斗でもすぐ理解した。
「あの、今日はどうしてここに?」
海斗が正座している大和に顔を窺いながら訊ねる。
「君に謝罪をしにきた。本当ならすぐ会って話さなければならなかったんだが、仕事が立て込んでしまってね。遅れて申し訳ない。大原や大地、雫からも話は色々聞いている。君の気が済むまでここにいて構わない。」
再び大和は海斗に頭を下げる。海斗も釣られて頭を下げる。この時、海斗の大和への印象はテレビや大地の言っていたような厳格な仕事人間というよりは、雫の言っていたような責任感の強い真面目で不器用な男へ変わっていた。
「ありがとうございます。」と頭を下げたまま海斗は言うのを見て、大和は微笑みながら海斗の肩に優しく手を置いた。
「大原から話は聞いた。就職活動をしているんだって?君が真心があって心根の優しい人物なのは分かっている。面接、合格できると信じているよ。」
さっきまで威圧的に感じていた声が急に自分の力になっていくのを海斗は感じた。これ以上にない励ましを貰ったような、自分の存在を受け止めてもらった気がして瞳が潤む。
その様子を見た大和が顔を青ざめ、慌てて海斗の顔を覗き込む。
「大丈夫かい!?よく周りからも怖いと言われるんだ。怒っていないよ。」
検討外れの彼の発言に思わず笑いが溢れる。慌てた様子は大地にそっくりだった。恐らく、雫の妊娠が発覚した時も彼にこんな表情を見せていたのだろう。
自分の体温がほんのり温かくなるのを海斗は肌で感じていた。
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