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「ちゃんちゃら」エピローグ
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「ちゃんちゃら」エピローグ
二階から眺める光景はそれはそれは美しかった。綺麗に整えられた庭に二人の夫夫が歩いてくる。片方の男の手に握られたものは夫子手帳だった。二人が手を繋ぎながら玄関へ向かっていく様子を金城大和は自分の部屋の椅子に腰掛けながら眺めていた。
パートナーの男はお腹を大事そうに摩っている。その表情は明るく笑っている。そのことにひどく安心感を覚えた。実のところを言うと、自分の息子が普段どんな人とお付き合いしているのかは自身の会社から然程遠くない学校を通る際に、ある程度は把握していた。当時は正直言うと趣味が悪いと思っていた。そんな不安がある中で、今回の彼が登場してくれたことに大和は心から感謝していた。
浜田海斗が息子の大地と友人だったのは知っていた。しかし、それは自分で得た情報ではない。
「失礼致します。」
情報を寄越した張本人がドアを開けて部屋に入ってくる。部屋に入るなり大原は窓の外を眺める。視線の先は海斗と大地だった。二人は玄関に向かったと思ったが、花壇が気になるようで、並んでしゃがんでいる。その様子を大原はジッと眺めていた。
「大地はお前に似たんじゃないか?」
「何がです?」
「女の趣味だ。」
大原が目を丸くしている。
「大地様はあなたの子どもでしょう。」
「でも、お前とずっと一緒にいただろう。伝染したんじゃないのか?」
訝しみながら大原はこちらを睨む。
「大地様はあなたのお若い頃とそっくりですよ。よくそんな人をパートナーに選んだものだと、いつも目を疑っていました。雨音様と雫様と出会って本当に良かったです。」
大和が鼻を鳴らす。
「今日はよく口が回るじゃないか。」
「ええ。めでたい日ですからね。」
窓の外の二人はどうやら記念に花や木を植えようかと相談し合っている様子だった。楽しそうに将来のことを話す夫夫に二人の中年男性たちが思わず笑みを溢す。
「もういいんじゃないか?婚姻届も出して、妊娠もして。」
大原は大和の発言にキョトンとしている。何を言ってるのか分からないという顔だ。
「いや、驚いたんだぞ。海斗くんが最初の妊娠の際に、この家で療養するって話になって、お前が住み込みで働くって言い始めた時は。」
「当たり前でしょう。」
「いや、何も当たり前じゃない。」
大和は大きな溜息をついた。
「心配なのは分かるが、過保護過ぎるんじゃないか?二人の時間が欲しいってなる頃合いだろう。もう住み込みで働くのはやめたらどうだ。」
「お二人がそう言ったら、私は潔く引きますよ。でも、これからが大変になるんですから、私も是非協力させて貰いますよ。」とウキウキした大原の表情をジト目で大和は見遣る。
「潔く引くって、どの口が言うんだ。俺が住み込みはやめとけって言った時は聞きもしなかった癖に。」
大原は素知らぬ顔で淹れてきた日本茶を大和の机に置く。
「これ以上にない機会なので。」
「まったく、今頃になって父親気分を味わいおって」
「もっと早く味わいたかったんですけどねぇ」
大原の溜息に大和も釣られる。
「その女も計算高い奴だな。子どもが産まれるなり、お前を悪者に仕立て上げ、行方をくらましたと思ったら多額の養育費の請求など。信じられないぞ。」
大原は困り眉のままこちらを見てくる。それ以上なにも言えない姿に大和は呆れ返る。
すると、庭の方からの笑い声がこちらまで届いた。大原と大和はまたそちらの方に顔を向け、じっくり眺める。
「無事に子どもが産まれたら抱っこさせてもらえるでしょうか。」
「あー、その時はお前より俺が先に抱っこする。」
「いや、順当に考えて私でしょう。あなたは仕事で忙しくて、すぐに病院に行けないでしょうから。」
「いーや、俺だ!!」
未来の二人の祖父が些細な争い事をしていたことなど、大地と海斗の子どもは知る由もなく、すくすくと育っていくのだった。
二階から眺める光景はそれはそれは美しかった。綺麗に整えられた庭に二人の夫夫が歩いてくる。片方の男の手に握られたものは夫子手帳だった。二人が手を繋ぎながら玄関へ向かっていく様子を金城大和は自分の部屋の椅子に腰掛けながら眺めていた。
パートナーの男はお腹を大事そうに摩っている。その表情は明るく笑っている。そのことにひどく安心感を覚えた。実のところを言うと、自分の息子が普段どんな人とお付き合いしているのかは自身の会社から然程遠くない学校を通る際に、ある程度は把握していた。当時は正直言うと趣味が悪いと思っていた。そんな不安がある中で、今回の彼が登場してくれたことに大和は心から感謝していた。
浜田海斗が息子の大地と友人だったのは知っていた。しかし、それは自分で得た情報ではない。
「失礼致します。」
情報を寄越した張本人がドアを開けて部屋に入ってくる。部屋に入るなり大原は窓の外を眺める。視線の先は海斗と大地だった。二人は玄関に向かったと思ったが、花壇が気になるようで、並んでしゃがんでいる。その様子を大原はジッと眺めていた。
「大地はお前に似たんじゃないか?」
「何がです?」
「女の趣味だ。」
大原が目を丸くしている。
「大地様はあなたの子どもでしょう。」
「でも、お前とずっと一緒にいただろう。伝染したんじゃないのか?」
訝しみながら大原はこちらを睨む。
「大地様はあなたのお若い頃とそっくりですよ。よくそんな人をパートナーに選んだものだと、いつも目を疑っていました。雨音様と雫様と出会って本当に良かったです。」
大和が鼻を鳴らす。
「今日はよく口が回るじゃないか。」
「ええ。めでたい日ですからね。」
窓の外の二人はどうやら記念に花や木を植えようかと相談し合っている様子だった。楽しそうに将来のことを話す夫夫に二人の中年男性たちが思わず笑みを溢す。
「もういいんじゃないか?婚姻届も出して、妊娠もして。」
大原は大和の発言にキョトンとしている。何を言ってるのか分からないという顔だ。
「いや、驚いたんだぞ。海斗くんが最初の妊娠の際に、この家で療養するって話になって、お前が住み込みで働くって言い始めた時は。」
「当たり前でしょう。」
「いや、何も当たり前じゃない。」
大和は大きな溜息をついた。
「心配なのは分かるが、過保護過ぎるんじゃないか?二人の時間が欲しいってなる頃合いだろう。もう住み込みで働くのはやめたらどうだ。」
「お二人がそう言ったら、私は潔く引きますよ。でも、これからが大変になるんですから、私も是非協力させて貰いますよ。」とウキウキした大原の表情をジト目で大和は見遣る。
「潔く引くって、どの口が言うんだ。俺が住み込みはやめとけって言った時は聞きもしなかった癖に。」
大原は素知らぬ顔で淹れてきた日本茶を大和の机に置く。
「これ以上にない機会なので。」
「まったく、今頃になって父親気分を味わいおって」
「もっと早く味わいたかったんですけどねぇ」
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「その女も計算高い奴だな。子どもが産まれるなり、お前を悪者に仕立て上げ、行方をくらましたと思ったら多額の養育費の請求など。信じられないぞ。」
大原は困り眉のままこちらを見てくる。それ以上なにも言えない姿に大和は呆れ返る。
すると、庭の方からの笑い声がこちらまで届いた。大原と大和はまたそちらの方に顔を向け、じっくり眺める。
「無事に子どもが産まれたら抱っこさせてもらえるでしょうか。」
「あー、その時はお前より俺が先に抱っこする。」
「いや、順当に考えて私でしょう。あなたは仕事で忙しくて、すぐに病院に行けないでしょうから。」
「いーや、俺だ!!」
未来の二人の祖父が些細な争い事をしていたことなど、大地と海斗の子どもは知る由もなく、すくすくと育っていくのだった。
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