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「ゼロから千まで」11話
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「ゼロから千まで」11話
「百合愛。」
百合愛は零一の方を向いていた。千歳からは表情が読めなかった。
「どうしたの?一緒に帰る?」
優しい彼の声はどこか大人びて聞こえた。しかし、百合愛は首を振り、「今日は千歳ちゃんと帰る。」と言った。千歳は驚いた。この状況でまさか自分が選ばれるとは思っていなかったからだ。零一は「そっか。」と一言言ってこちらに手を振り、歩いて行ってしまった。
百合愛は千歳の手を握って歩き始めた。千歳は驚いたが、彼女の手の温かさに妙に安心感を覚えた。
「さっき、二人でなに話してたの?」
百合愛の優しい笑顔から良いしれぬ圧力を感じた。今の百合愛に変に零一との関係性を隠すような発言は逆効果だろうと察し、素直に千歳は百合愛に零一とは幼馴染だということを明かした。百合愛は話終わるまで黙って聞いていた。
「そう。千歳ちゃんは零一くんと仲良かったんだね。全然そんな話聞かなかったから。」
「今は、そんな感じじゃないよ!」と慌てて千歳は否定した。
「いいの?」
「え?」
百合愛がこちらの顔を覗き込むように見てくる。彼女の長いまつ毛が不安そうな瞳に掛かる。
「私、体育祭終わったら、零一くんに告白してみようと思うんだ。」
千歳は目を丸くさせながら頷く。
「う、うん。」
「千歳ちゃんは、いいの?」
ギョッとさせながら千歳は首を激しく横に振った。
「全然いいよ!うち零一とはそんな感じじゃないから!」
強く否定したところを見て百合愛は安心したように微笑んでいた。しかし、その表情はどこか無理矢理作られたような、そんな作り物の雰囲気も同時に感じた。
「そう。ありがとう、千歳ちゃん。」
その後、体育祭は開催され、零一が出ていたバレーボールの部では黄色い声援がずっと止まなかった。子どもの頃、サッカークラブで自分は自分はと前へ出る者が多い中、零一だけはチームの為を思ってプレイしていた。そんな零一がちゃんと今は評価され、注目されているのを見て千歳は嬉しかった。たくさんの女子が二階のギャラリーに集まっていたので、少しだけ零一の姿を見てから千歳は二葉たちと共に別のエリアへ向かった。男子たちの方も百合愛に良いところを見せようと張り切っていたが、百合愛は律儀に自分のクラスを応援しているようだった。
結果、体育祭は零一のクラスが総合優勝した。それもあってか、放課後は他クラスの人たちも零一のクラスの打ち上げを覗きに行っていた。
その際、二葉たちと一緒に打ち上げは行く予定だったのだが、百合愛に勇気を貸してほしいと呼び止められ、零一のクラスの打ち上げをしている学生に優しい安い食べ放題のお店へ向かった。
それからはなんて事なかった。百合愛が零一を呼びに行くのに付き添い、あっという間に盛り上がる同級生たちを背に、百合愛と零一は晴れて付き合うことになった。零一は同級生たちの冷やかしにあって頬を赤らめていた。百合愛も幸せそうに微笑んでいるのを見て、千歳は友人の恋路が上手くいったことに嬉しいような、百合愛が遠い世界に行ってしまって寂しいような、恋人ができた友人ではよくある悩みを感じ取っていた。
つい四ヶ月程前まではそうだったのだ。本当によくある学生の恋愛を目撃して、それを応援し、ただ見守っているだけだった。
それだけだったのに、どうして自分の隣に零一がいるのだろう?
なぜ、零一は百合愛の隣にいないのだろう。
「百合愛。」
百合愛は零一の方を向いていた。千歳からは表情が読めなかった。
「どうしたの?一緒に帰る?」
優しい彼の声はどこか大人びて聞こえた。しかし、百合愛は首を振り、「今日は千歳ちゃんと帰る。」と言った。千歳は驚いた。この状況でまさか自分が選ばれるとは思っていなかったからだ。零一は「そっか。」と一言言ってこちらに手を振り、歩いて行ってしまった。
百合愛は千歳の手を握って歩き始めた。千歳は驚いたが、彼女の手の温かさに妙に安心感を覚えた。
「さっき、二人でなに話してたの?」
百合愛の優しい笑顔から良いしれぬ圧力を感じた。今の百合愛に変に零一との関係性を隠すような発言は逆効果だろうと察し、素直に千歳は百合愛に零一とは幼馴染だということを明かした。百合愛は話終わるまで黙って聞いていた。
「そう。千歳ちゃんは零一くんと仲良かったんだね。全然そんな話聞かなかったから。」
「今は、そんな感じじゃないよ!」と慌てて千歳は否定した。
「いいの?」
「え?」
百合愛がこちらの顔を覗き込むように見てくる。彼女の長いまつ毛が不安そうな瞳に掛かる。
「私、体育祭終わったら、零一くんに告白してみようと思うんだ。」
千歳は目を丸くさせながら頷く。
「う、うん。」
「千歳ちゃんは、いいの?」
ギョッとさせながら千歳は首を激しく横に振った。
「全然いいよ!うち零一とはそんな感じじゃないから!」
強く否定したところを見て百合愛は安心したように微笑んでいた。しかし、その表情はどこか無理矢理作られたような、そんな作り物の雰囲気も同時に感じた。
「そう。ありがとう、千歳ちゃん。」
その後、体育祭は開催され、零一が出ていたバレーボールの部では黄色い声援がずっと止まなかった。子どもの頃、サッカークラブで自分は自分はと前へ出る者が多い中、零一だけはチームの為を思ってプレイしていた。そんな零一がちゃんと今は評価され、注目されているのを見て千歳は嬉しかった。たくさんの女子が二階のギャラリーに集まっていたので、少しだけ零一の姿を見てから千歳は二葉たちと共に別のエリアへ向かった。男子たちの方も百合愛に良いところを見せようと張り切っていたが、百合愛は律儀に自分のクラスを応援しているようだった。
結果、体育祭は零一のクラスが総合優勝した。それもあってか、放課後は他クラスの人たちも零一のクラスの打ち上げを覗きに行っていた。
その際、二葉たちと一緒に打ち上げは行く予定だったのだが、百合愛に勇気を貸してほしいと呼び止められ、零一のクラスの打ち上げをしている学生に優しい安い食べ放題のお店へ向かった。
それからはなんて事なかった。百合愛が零一を呼びに行くのに付き添い、あっという間に盛り上がる同級生たちを背に、百合愛と零一は晴れて付き合うことになった。零一は同級生たちの冷やかしにあって頬を赤らめていた。百合愛も幸せそうに微笑んでいるのを見て、千歳は友人の恋路が上手くいったことに嬉しいような、百合愛が遠い世界に行ってしまって寂しいような、恋人ができた友人ではよくある悩みを感じ取っていた。
つい四ヶ月程前まではそうだったのだ。本当によくある学生の恋愛を目撃して、それを応援し、ただ見守っているだけだった。
それだけだったのに、どうして自分の隣に零一がいるのだろう?
なぜ、零一は百合愛の隣にいないのだろう。
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