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「ゼロから千まで」35話
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「ゼロから千まで」35話
千歳の友人三人組から別れた後、零一は電話を掛ける。ポケットから取り出すのに時間が掛かったのだろう。三コール目程で電話の主は出た。
「はいはい!どったの?」
体育祭前の帰路の時とは打って変わって明るい声が耳に響く。
「ちーちゃん、今どこにいる?家?」
メッセージアプリでのやり取りでも良かったのだが、千歳はメッセージに気づかないこともあるので、電話の方が都合が良かった。まずは千歳が電話に出たことにホッとしていると、電話の向こうから「いま外に出てるー」と軽い返事が聞こえた。
百合愛の一件ですっかり警戒心が身についた零一は「どこに行ってるの?」と聞き返すと、電話の向こうから「零一の家ー」とパタパタ歩く足音と共に千歳の声が聞こえてくる。
確かに零一は千歳に今日もまた家に来るか訊ねて、千歳は行くと答えたが、まさか入居者より先に向かうとは思わず、零一は早歩きから爆走へ変えた。急いで永遠家の方面から自身のアパートの方面へ切り替える。
あの月明かりで照らされた目が据わった百合愛の顔とカッターが頭を過ぎる。段々と息が上がる。零一は笑顔でこちらに手を振る千歳を必死に思い浮かべた。
頼むからなにも起きないでくれ、と願いながら右に大きく曲がり角を曲がると、見覚えのある黒茶の長い髪が目に入った。
「ちーちゃん!!」
零一の大きな声に千歳はこちらを振り向く。笑顔ではなかったが、口にアイスを咥えていた。千歳は零一が物凄い勢いでこちらへ走ってきたので驚いてアイスを落としそうになった。目を見開きながら千歳は「れいちゃん?」と小首を傾げている。
「ちーちゃん。」
くしゃりと顔を歪める零一をさらに首を傾げながら千歳は見つめている。零一を眺めることに集中していたのか、千歳はついにアイスを地面に落とした。
「あー!!」
大きな声を上げながら口惜しそうに水色がかったコンクリートを睨みつけている。そんな千歳を愛おしく思い、零一は抱きしめた。びっくりした千歳の顔を覗き込み、「代わりのアイス買うよ。なにがいい?」と笑顔で訊く。
初めはきょとんとしていた千歳だったが、次第に表情は明るくなり、近くのコンビニを指差す。
「じゃあ、ボリボリくん買って!!」
「寒くないの?ちーちゃん。」
「うん。ボリボリはいつ食べても美味しい。」
相変わらずの千歳の様子に安心しながら零一は手を差し出す。千歳も慣れてきたのか、零一の手を取って一緒に自動ドアを潜っていった。
二人でボリボリくんを咥えながら夜道を歩く。風が冷たかったが、繋がった互いの手は温かく、冬に向けての寒風など物ともしなかった。
千歳の友人三人組から別れた後、零一は電話を掛ける。ポケットから取り出すのに時間が掛かったのだろう。三コール目程で電話の主は出た。
「はいはい!どったの?」
体育祭前の帰路の時とは打って変わって明るい声が耳に響く。
「ちーちゃん、今どこにいる?家?」
メッセージアプリでのやり取りでも良かったのだが、千歳はメッセージに気づかないこともあるので、電話の方が都合が良かった。まずは千歳が電話に出たことにホッとしていると、電話の向こうから「いま外に出てるー」と軽い返事が聞こえた。
百合愛の一件ですっかり警戒心が身についた零一は「どこに行ってるの?」と聞き返すと、電話の向こうから「零一の家ー」とパタパタ歩く足音と共に千歳の声が聞こえてくる。
確かに零一は千歳に今日もまた家に来るか訊ねて、千歳は行くと答えたが、まさか入居者より先に向かうとは思わず、零一は早歩きから爆走へ変えた。急いで永遠家の方面から自身のアパートの方面へ切り替える。
あの月明かりで照らされた目が据わった百合愛の顔とカッターが頭を過ぎる。段々と息が上がる。零一は笑顔でこちらに手を振る千歳を必死に思い浮かべた。
頼むからなにも起きないでくれ、と願いながら右に大きく曲がり角を曲がると、見覚えのある黒茶の長い髪が目に入った。
「ちーちゃん!!」
零一の大きな声に千歳はこちらを振り向く。笑顔ではなかったが、口にアイスを咥えていた。千歳は零一が物凄い勢いでこちらへ走ってきたので驚いてアイスを落としそうになった。目を見開きながら千歳は「れいちゃん?」と小首を傾げている。
「ちーちゃん。」
くしゃりと顔を歪める零一をさらに首を傾げながら千歳は見つめている。零一を眺めることに集中していたのか、千歳はついにアイスを地面に落とした。
「あー!!」
大きな声を上げながら口惜しそうに水色がかったコンクリートを睨みつけている。そんな千歳を愛おしく思い、零一は抱きしめた。びっくりした千歳の顔を覗き込み、「代わりのアイス買うよ。なにがいい?」と笑顔で訊く。
初めはきょとんとしていた千歳だったが、次第に表情は明るくなり、近くのコンビニを指差す。
「じゃあ、ボリボリくん買って!!」
「寒くないの?ちーちゃん。」
「うん。ボリボリはいつ食べても美味しい。」
相変わらずの千歳の様子に安心しながら零一は手を差し出す。千歳も慣れてきたのか、零一の手を取って一緒に自動ドアを潜っていった。
二人でボリボリくんを咥えながら夜道を歩く。風が冷たかったが、繋がった互いの手は温かく、冬に向けての寒風など物ともしなかった。
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