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ハーメルンの笛吹き男
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自称ゾンビマニアの如月は、虎徹の運転するトラックの助手席で記憶の引き出しを色々開けていた。音が鳴るとすればスカン!スカン!スカン!スカン!と小気味よく一定のリズムに違いない。
【だいたいこういう調達部隊は誰か死ぬか、帰ってこない。行った先がはるかに想像を超えている場合と、十分な準備が無かったドジによるものが多いのだけれど、準備はまぁ良いとすると、問題は現場よね。想像以上と言うより、想像すらできないから話にならないけれど、ここは想像ではなく策を考えるのが得策だと思うのよね、策って言うか、現場でパニックになるのが一番怖いから、到着したら何をどうするのか?を明確にしなきゃって事よね。あと・・・よくある仲間の裏切りだけれど・・・】
そう頭で想像しながら運転する虎徹の横顔をじっと見た。
『無いな』
そう呟くと、ニッコリ微笑んだ。
『なんじゃ?可愛い顔して惚れたか?』
『いあ、あのさ虎徹さん、着いてからの行動だけど、虎徹さんの刀捌きに期待して、広い範囲で私の後ろをカバーして欲しいの、その間に私は鍵を開ける。ドアを開けて中を確認して、物資があったら私も戦闘に参加して、周囲のゾンキーの全滅作業。』
『全滅?数えきれんほど居たらどうするんじゃ』
『その時は作戦Bよ。私が囮になって引き付けるから虎徹さんは隠れて、動けるようになったら荷物を積んでほしいの、そのかわり、囮作戦になったら私はここに戻らない。逃げ回ってスタジアムに戻る、だからあなた達が最初に入ってきたドアを開けて置いてほしい』
『囮っておま・・・』
『虎徹さん走れるの?走れないよね?走り切れないよね?意味わかるよね。』
暫し虎徹は無言で運転をする、長い沈黙に感じたが実際は数秒。
『わかった、他に考えも無いしな、大量に居ない事を祈ろう』
『そうね』
【これも囮になったら大概死ぬ、いわゆる死亡フラグってやつよね。でも私はそうはならない、ドラマや映画はね、引き付けることに集中し過ぎるのよ、だから知らぬ間に囲まれる。私は大丈夫・・・だってずっとそうしてきたし。】
如月は頭で自分を納得させ、恐怖を楽しさに変換するのだった。【脳内変換】これが如月の圧倒的強さである、よくスピーチで緊張するなら来客を野菜だと思え等と聞くが、それと原理は同じ、ただ1つ違うのは如月のそれは、楽しむのが目的だと言う事。『楽しむ』、この散々な状況に置いて誰一人出来ない行為であり、心情。しかし彼女にとっての楽しむは生きる事を意味する、病弱で苦しんだ彼女だからこそ生きる事をどんな状況でも楽しめるのだった。
倉庫が見えるところまで直進できた。
一度車を止めて様子を伺う。
『そんなに居ないね・・・』
『そうじゃな、これなら全滅プランで行けるな』
『オッケー、行きましょ』
ゆっくりとアクセルを踏み込む虎徹。
グルルと音を立てて、メリメリとタイヤが軋む。
第三と白で印刷されたドアの前に到着し、荷台を後ろにして、扉を開けたらすぐにトラックに積み込める体勢を取った。バックする時の警告音が静かな静寂を切り裂く。その間に数体のゾンキーが集まってきたので、軽トラックが止まる前に如月が飛び降りた。荷台のマットに投げ入れていた鉄の棒を握ると、寄ってきたゾンキーの頭に縦に一撃。振り向きざまに背後のゾンキーの頭を横から粉砕。その後ろのゾンキーの膝を横から砕き、前蹴りで突き飛ばす。
『オーライ虎徹さん!早く代わって!』
『ほいきた!』
そう返事をすると車を降り、虎徹は腰に虎徹を差し込み、音もなく愛刀虎徹を抜いた。夕焼けに照らされた虎徹が、唸りを上げるたびにオレンジ色の尾を引く。美しい光景だが、その瞬間には血しぶきが舞う。この状況を楽しめるのは如月くらいだろう。
『虎徹さん!いい!美しすぎる!』
そう言うと如月は扉の鍵を開け始めた。
『キン!』まさしく開いたと言わんばかりの音が鳴った。
重い鉄の扉に手をかけ、片足を扉の枠にあてがい、思い切りその身を反る様に引いた。
ゴォオオオオオオ・・・ンン
『開いたよ虎徹さん!』
『こっちも片付くところじゃ!中を確認してくれ!』
一歩踏み入った如月の目に映ったのは、倉庫を埋め尽くすほどの食料だった。暗くてよく観えないが、箱に入っているとは言え密室だっただけに食べ物の香りが優しく充満していた。倉庫と言うよりはコンテナによく似た形状のもので、クレーンなどでそのまま動かせそうだったが、あいにくクレーンはない。
殲滅作業を終えた虎徹も入ってきた。
『倉庫と言うよりコンテナじゃな、40フィートってところじゃろ、んーと・・・奥行約12メートルとちょっと、高さが・・・2メートルと500mmくらいじゃったかのう・・・これは4人だと結構食えるのう、当たりじゃな如月よ』
『うん、大当たりだね。全部運べないのはアレだけど、ライヴが成功したら危険度も下がるから、次の補充は結構楽かも。なんなら次の補充でスティ・・羽鐘に来てもらえば吹き飛ばせるし』
『そうじゃな、今回あやつを外したのは喉を思ってのことじゃな?お主は優しいのう如月よ、そして賢い。』
『ちょ!やめてよ、ジジィのタランチュラで来ただけです!』
『ボランティアじゃろうに・・・』
2人は最悪調理無しでも食べられる食材を選んで積むことにした。この倉庫はスタジアム一階にあるレストランの食料倉庫。旬のものを食べられるのが売り文句だったが、実はフリーズドライが主。ゼウスの開発した技術は野菜を丸ごとフリーズドライにすることができ、水をかければ、食のプロですらわからない程採り立てに近い状態に復活することができる。よって、旬のものを食べられると言うのは、あらがち嘘とも言い切れないわけである。
『フリーズドライだから水も積まなきゃね』
『そうじゃな、美味い野菜が食えそうじゃわい。』
2人は夢中で積み込んでいた。如月が虎徹に渡し、虎徹が積み込む。これを何分、何十分やっただろうか・・・暗くなってきたので虎徹が車のライトをつけた。
軽四トラックと言えどもドッと疲れる程には積めるものである。虎徹の性格なのか、ほとんど狂いなく、キチンと整列して荷物が積み込まれていた。
『虎徹さんってA型?』
『ワシャガタガタじゃ』
『おもんな』
しかし、集中するあまりゾンキーの忍び寄る陰には気づかなかった。
『うお!いつの間に!!!如月!集まってきたぞ!』
『うそ!マジ?』
ガシャン!
グシャァ!ドサドサ!ドン!
倉庫の隣のビルからゾンキーがドサドサと落ちてきた。喰いたい意思しかないので、落ちたらどうなる?と言う余計な思考が邪魔をしない、生死を懸けた戦闘に置いて一番邪魔と言えるのは理性、彼らにはそれがない、躊躇しない、死を恐れない最強の兵士。
もちろん落ちて頭が割れてそのまま動かなくなるゾンキー、脚が砕けて這ってくるゾンキー、首がへし折れて背中に顔がある状態のゾンキーなどなど、機能停止を逃れたゾンキーが、凄まじい姿で集まってきた。
『上から来るとは思わなんだわい、盲点じゃったな、やるぞ如月!』
『いあ、多すぎるわ、虎徹は隠れて!作戦Bよ!』
『囮か!いかんいかん!ワシャあいつらに会わせる顔がないぞ!』
『約束したでしょ!私が無事に帰れば面目は保たれる!いい?必ず帰るから!』
『ソ。。。そうか。。。如月・・・最後になるかもしれん・・・それじゃその・・・パンツ見せてくれないだろうか・・・』
『なんで帰るだけのアンタが元気貰おうとしてんのよ!んもう!ほら!』
如月はスカートの前を思い切り持ち上げ、虎徹の前で仁王立ちした。車のライトによる逆光で、そのパンツは神々しく真っ白に輝いた。腰の横で結び紐がひらひらと揺れる少し大人なレースのヒモパンが美しかった。
その姿に色気は無い、だが恐ろしい程の勢いはあった。
『いい!エネルギー満タンね?』
『うっしゃー!生きててよかったわい!』
『じゃ!必ず届けてよね!』
『うむ、お主は必ず帰ってこい!』
後ろ向きに手を振り、鉄の棒の横振りで2体のゾンキーの頭を割った。倉庫の壁をでガンガンガンガンガンと5回叩いて音を出し、『腐れ野郎!来いよ!来いよほら!』と叫んだ。
30いや、50体は居るであろうゾンキー全てが如月に向いた。
続けてアスファルトをガガガガガガガと鉄の棒でひっかきながら火花を出して移動した。足の速いゾンキーは倒しながら、時折声を上げて挑発し、ゾンキーの群れを連れ去った、その姿はまるで・・・
ハーメルンの笛吹き男だった・・・。
如月が見えなくなるのを確認し、残り3体となったゾンキーを虎徹は静かに葬った虎徹が軽トラックに乗り込んでアクセルを踏む。
『如月!すまん!待っておるぞ』
虎徹は心が締め付けられる思いだったが、共倒れをする訳に行かない状況なのも察していた。今できるのは、如月が帰ってくる事を信じるしかなかった。来た道を、後ろ髪引かれる思いで戻る。もうライトなしでは走れない程暗くなっていた。とても長く長く感じた帰り道を経て、虎徹はスタジアムに到着。
クラクションを3回鳴らすと、扉が開いた。
ゆっくり中に入るとゾンキーが2体入り込んだので、冷静にパイロンがバールで頭を割り、仕留める。その間に羽鐘は扉を絞めて施錠した。
『凄い食料!やっぱあったんすね!』
降りてきた虎徹に羽鐘が満面の笑みで喜んで見せた。
『どこ?』
ひときは大きな声でパイロンが切り出した。
『ねぇどこなの?睦月はどこなの?』
『聞いてくれ羽鐘、パイロン・・・あの・・・』
話を聞かずにパイロンはいきなり虎徹の胸倉を掴み、グッとその右手を持ち上げ、虎徹の顎を上げさせ引き寄せた。
おでこをガン!とぶつけ、そのまま睨み付けたパイロンは『睦月はどうしたの!答えなさい!』と凄んでみせた。
『虎徹・・・まさか・・・大丈夫っすよね?』
『落ち着け、手を離せパイロン、ちゃんと聞きなさい、羽鐘も座れ、話すから』
ゆっくり虎徹の襟首から手を離して座るパイロン。
その隣に座って、パイロンの背中を優しく摩る羽鐘。
倉庫で起きたことを虎徹は丁寧に話した。
しかし、包み隠さず、言葉も選ばず、素直にそのまま話した。
如月の言葉も間違いなく伝えた。
パンツを見せてもらったことだけは隠して・・・。
『それで?置いてきたのかよジジィ!行かせたのかよジジイ!』
怒りでまた掴みかかろうとするパイロン、捕まえて必死で抑える羽鐘。
『パイロン・・・お主がワシじゃったらどうしてた。あやつを止められたと言うのか?』
『私とあなたは違う!あなたは大人でしょ!?』
『都合のいい時だけガキ面すんじゃねぇぞパイロン!彼女は囮になるとき、必ず届けてくれと言った、だからこうして届けたのじゃ、これが彼女の意思じゃ。自分が囮になってでもお前らに食わせたかったんじゃろ。ワシはあやつの知識と力を信じておるわ・・・お前らはどうじゃ?彼女を信じられないと言うのか?仲間を信じられんと言うのなら勝手にせい。』
『・・・・・』
パイロンから力が抜けたので、羽鐘も捕まえる力を緩めた。
『申し訳ございません・・・・』
静かにパイロンが虎徹に言い、力なく倒れるように横になって2人に背中を向けて猫の様に丸くなった。
『もう離れたくなかったの・・・申し訳ございません。でぼ・・・帰ってぐるがら泣がない・・・泣きばぜんから。・・・グスッ』
パイロンが仰向けになり、星空に伝えるようにそう呟いて涙をこぼした。
隣に一緒に並んで横になり、仰向けになって羽鐘が言った。
『私も!如月さんバカみたいに強いし・・・あと・・・なんだかこざかしいし!大丈夫って気しかしないっす』
『そうね・・・・』
『そうじゃ、きっと帰ってくる。あやつが届けてくれた飯を食って待つとしようや。』
『うん』『はい』
【だいたいこういう調達部隊は誰か死ぬか、帰ってこない。行った先がはるかに想像を超えている場合と、十分な準備が無かったドジによるものが多いのだけれど、準備はまぁ良いとすると、問題は現場よね。想像以上と言うより、想像すらできないから話にならないけれど、ここは想像ではなく策を考えるのが得策だと思うのよね、策って言うか、現場でパニックになるのが一番怖いから、到着したら何をどうするのか?を明確にしなきゃって事よね。あと・・・よくある仲間の裏切りだけれど・・・】
そう頭で想像しながら運転する虎徹の横顔をじっと見た。
『無いな』
そう呟くと、ニッコリ微笑んだ。
『なんじゃ?可愛い顔して惚れたか?』
『いあ、あのさ虎徹さん、着いてからの行動だけど、虎徹さんの刀捌きに期待して、広い範囲で私の後ろをカバーして欲しいの、その間に私は鍵を開ける。ドアを開けて中を確認して、物資があったら私も戦闘に参加して、周囲のゾンキーの全滅作業。』
『全滅?数えきれんほど居たらどうするんじゃ』
『その時は作戦Bよ。私が囮になって引き付けるから虎徹さんは隠れて、動けるようになったら荷物を積んでほしいの、そのかわり、囮作戦になったら私はここに戻らない。逃げ回ってスタジアムに戻る、だからあなた達が最初に入ってきたドアを開けて置いてほしい』
『囮っておま・・・』
『虎徹さん走れるの?走れないよね?走り切れないよね?意味わかるよね。』
暫し虎徹は無言で運転をする、長い沈黙に感じたが実際は数秒。
『わかった、他に考えも無いしな、大量に居ない事を祈ろう』
『そうね』
【これも囮になったら大概死ぬ、いわゆる死亡フラグってやつよね。でも私はそうはならない、ドラマや映画はね、引き付けることに集中し過ぎるのよ、だから知らぬ間に囲まれる。私は大丈夫・・・だってずっとそうしてきたし。】
如月は頭で自分を納得させ、恐怖を楽しさに変換するのだった。【脳内変換】これが如月の圧倒的強さである、よくスピーチで緊張するなら来客を野菜だと思え等と聞くが、それと原理は同じ、ただ1つ違うのは如月のそれは、楽しむのが目的だと言う事。『楽しむ』、この散々な状況に置いて誰一人出来ない行為であり、心情。しかし彼女にとっての楽しむは生きる事を意味する、病弱で苦しんだ彼女だからこそ生きる事をどんな状況でも楽しめるのだった。
倉庫が見えるところまで直進できた。
一度車を止めて様子を伺う。
『そんなに居ないね・・・』
『そうじゃな、これなら全滅プランで行けるな』
『オッケー、行きましょ』
ゆっくりとアクセルを踏み込む虎徹。
グルルと音を立てて、メリメリとタイヤが軋む。
第三と白で印刷されたドアの前に到着し、荷台を後ろにして、扉を開けたらすぐにトラックに積み込める体勢を取った。バックする時の警告音が静かな静寂を切り裂く。その間に数体のゾンキーが集まってきたので、軽トラックが止まる前に如月が飛び降りた。荷台のマットに投げ入れていた鉄の棒を握ると、寄ってきたゾンキーの頭に縦に一撃。振り向きざまに背後のゾンキーの頭を横から粉砕。その後ろのゾンキーの膝を横から砕き、前蹴りで突き飛ばす。
『オーライ虎徹さん!早く代わって!』
『ほいきた!』
そう返事をすると車を降り、虎徹は腰に虎徹を差し込み、音もなく愛刀虎徹を抜いた。夕焼けに照らされた虎徹が、唸りを上げるたびにオレンジ色の尾を引く。美しい光景だが、その瞬間には血しぶきが舞う。この状況を楽しめるのは如月くらいだろう。
『虎徹さん!いい!美しすぎる!』
そう言うと如月は扉の鍵を開け始めた。
『キン!』まさしく開いたと言わんばかりの音が鳴った。
重い鉄の扉に手をかけ、片足を扉の枠にあてがい、思い切りその身を反る様に引いた。
ゴォオオオオオオ・・・ンン
『開いたよ虎徹さん!』
『こっちも片付くところじゃ!中を確認してくれ!』
一歩踏み入った如月の目に映ったのは、倉庫を埋め尽くすほどの食料だった。暗くてよく観えないが、箱に入っているとは言え密室だっただけに食べ物の香りが優しく充満していた。倉庫と言うよりはコンテナによく似た形状のもので、クレーンなどでそのまま動かせそうだったが、あいにくクレーンはない。
殲滅作業を終えた虎徹も入ってきた。
『倉庫と言うよりコンテナじゃな、40フィートってところじゃろ、んーと・・・奥行約12メートルとちょっと、高さが・・・2メートルと500mmくらいじゃったかのう・・・これは4人だと結構食えるのう、当たりじゃな如月よ』
『うん、大当たりだね。全部運べないのはアレだけど、ライヴが成功したら危険度も下がるから、次の補充は結構楽かも。なんなら次の補充でスティ・・羽鐘に来てもらえば吹き飛ばせるし』
『そうじゃな、今回あやつを外したのは喉を思ってのことじゃな?お主は優しいのう如月よ、そして賢い。』
『ちょ!やめてよ、ジジィのタランチュラで来ただけです!』
『ボランティアじゃろうに・・・』
2人は最悪調理無しでも食べられる食材を選んで積むことにした。この倉庫はスタジアム一階にあるレストランの食料倉庫。旬のものを食べられるのが売り文句だったが、実はフリーズドライが主。ゼウスの開発した技術は野菜を丸ごとフリーズドライにすることができ、水をかければ、食のプロですらわからない程採り立てに近い状態に復活することができる。よって、旬のものを食べられると言うのは、あらがち嘘とも言い切れないわけである。
『フリーズドライだから水も積まなきゃね』
『そうじゃな、美味い野菜が食えそうじゃわい。』
2人は夢中で積み込んでいた。如月が虎徹に渡し、虎徹が積み込む。これを何分、何十分やっただろうか・・・暗くなってきたので虎徹が車のライトをつけた。
軽四トラックと言えどもドッと疲れる程には積めるものである。虎徹の性格なのか、ほとんど狂いなく、キチンと整列して荷物が積み込まれていた。
『虎徹さんってA型?』
『ワシャガタガタじゃ』
『おもんな』
しかし、集中するあまりゾンキーの忍び寄る陰には気づかなかった。
『うお!いつの間に!!!如月!集まってきたぞ!』
『うそ!マジ?』
ガシャン!
グシャァ!ドサドサ!ドン!
倉庫の隣のビルからゾンキーがドサドサと落ちてきた。喰いたい意思しかないので、落ちたらどうなる?と言う余計な思考が邪魔をしない、生死を懸けた戦闘に置いて一番邪魔と言えるのは理性、彼らにはそれがない、躊躇しない、死を恐れない最強の兵士。
もちろん落ちて頭が割れてそのまま動かなくなるゾンキー、脚が砕けて這ってくるゾンキー、首がへし折れて背中に顔がある状態のゾンキーなどなど、機能停止を逃れたゾンキーが、凄まじい姿で集まってきた。
『上から来るとは思わなんだわい、盲点じゃったな、やるぞ如月!』
『いあ、多すぎるわ、虎徹は隠れて!作戦Bよ!』
『囮か!いかんいかん!ワシャあいつらに会わせる顔がないぞ!』
『約束したでしょ!私が無事に帰れば面目は保たれる!いい?必ず帰るから!』
『ソ。。。そうか。。。如月・・・最後になるかもしれん・・・それじゃその・・・パンツ見せてくれないだろうか・・・』
『なんで帰るだけのアンタが元気貰おうとしてんのよ!んもう!ほら!』
如月はスカートの前を思い切り持ち上げ、虎徹の前で仁王立ちした。車のライトによる逆光で、そのパンツは神々しく真っ白に輝いた。腰の横で結び紐がひらひらと揺れる少し大人なレースのヒモパンが美しかった。
その姿に色気は無い、だが恐ろしい程の勢いはあった。
『いい!エネルギー満タンね?』
『うっしゃー!生きててよかったわい!』
『じゃ!必ず届けてよね!』
『うむ、お主は必ず帰ってこい!』
後ろ向きに手を振り、鉄の棒の横振りで2体のゾンキーの頭を割った。倉庫の壁をでガンガンガンガンガンと5回叩いて音を出し、『腐れ野郎!来いよ!来いよほら!』と叫んだ。
30いや、50体は居るであろうゾンキー全てが如月に向いた。
続けてアスファルトをガガガガガガガと鉄の棒でひっかきながら火花を出して移動した。足の速いゾンキーは倒しながら、時折声を上げて挑発し、ゾンキーの群れを連れ去った、その姿はまるで・・・
ハーメルンの笛吹き男だった・・・。
如月が見えなくなるのを確認し、残り3体となったゾンキーを虎徹は静かに葬った虎徹が軽トラックに乗り込んでアクセルを踏む。
『如月!すまん!待っておるぞ』
虎徹は心が締め付けられる思いだったが、共倒れをする訳に行かない状況なのも察していた。今できるのは、如月が帰ってくる事を信じるしかなかった。来た道を、後ろ髪引かれる思いで戻る。もうライトなしでは走れない程暗くなっていた。とても長く長く感じた帰り道を経て、虎徹はスタジアムに到着。
クラクションを3回鳴らすと、扉が開いた。
ゆっくり中に入るとゾンキーが2体入り込んだので、冷静にパイロンがバールで頭を割り、仕留める。その間に羽鐘は扉を絞めて施錠した。
『凄い食料!やっぱあったんすね!』
降りてきた虎徹に羽鐘が満面の笑みで喜んで見せた。
『どこ?』
ひときは大きな声でパイロンが切り出した。
『ねぇどこなの?睦月はどこなの?』
『聞いてくれ羽鐘、パイロン・・・あの・・・』
話を聞かずにパイロンはいきなり虎徹の胸倉を掴み、グッとその右手を持ち上げ、虎徹の顎を上げさせ引き寄せた。
おでこをガン!とぶつけ、そのまま睨み付けたパイロンは『睦月はどうしたの!答えなさい!』と凄んでみせた。
『虎徹・・・まさか・・・大丈夫っすよね?』
『落ち着け、手を離せパイロン、ちゃんと聞きなさい、羽鐘も座れ、話すから』
ゆっくり虎徹の襟首から手を離して座るパイロン。
その隣に座って、パイロンの背中を優しく摩る羽鐘。
倉庫で起きたことを虎徹は丁寧に話した。
しかし、包み隠さず、言葉も選ばず、素直にそのまま話した。
如月の言葉も間違いなく伝えた。
パンツを見せてもらったことだけは隠して・・・。
『それで?置いてきたのかよジジィ!行かせたのかよジジイ!』
怒りでまた掴みかかろうとするパイロン、捕まえて必死で抑える羽鐘。
『パイロン・・・お主がワシじゃったらどうしてた。あやつを止められたと言うのか?』
『私とあなたは違う!あなたは大人でしょ!?』
『都合のいい時だけガキ面すんじゃねぇぞパイロン!彼女は囮になるとき、必ず届けてくれと言った、だからこうして届けたのじゃ、これが彼女の意思じゃ。自分が囮になってでもお前らに食わせたかったんじゃろ。ワシはあやつの知識と力を信じておるわ・・・お前らはどうじゃ?彼女を信じられないと言うのか?仲間を信じられんと言うのなら勝手にせい。』
『・・・・・』
パイロンから力が抜けたので、羽鐘も捕まえる力を緩めた。
『申し訳ございません・・・・』
静かにパイロンが虎徹に言い、力なく倒れるように横になって2人に背中を向けて猫の様に丸くなった。
『もう離れたくなかったの・・・申し訳ございません。でぼ・・・帰ってぐるがら泣がない・・・泣きばぜんから。・・・グスッ』
パイロンが仰向けになり、星空に伝えるようにそう呟いて涙をこぼした。
隣に一緒に並んで横になり、仰向けになって羽鐘が言った。
『私も!如月さんバカみたいに強いし・・・あと・・・なんだかこざかしいし!大丈夫って気しかしないっす』
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『そうじゃ、きっと帰ってくる。あやつが届けてくれた飯を食って待つとしようや。』
『うん』『はい』
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