99 / 114
高校編
たかが五千円
しおりを挟む
帰宅した龍一はすぐさまシャワーに入ろうと服を脱いだ。
『いてて、いてっ、ぬわっ』
服が擦れて身体中が痛いのだ、服が破れているわけでもないが、外部からの刺激と生地が擦れてできたキズなのだろう、それが身体中にできていた。
擦れて出来た傷はストレスを感じる程の嫌な痛みを感じるのだった。
もちろん打撲痕もあちこちに出来ており満身創痍と言ったところだろう。
その痣を見て、過去に受けた「いじめによる暴力」を思い出す。
奥歯を噛みしめ、つま先から這い上がって来る震えを深い深呼吸をすることで抑え付けた、閉じた目を開けるとそこには今があった、今がある事に安心すると少し口角を上げて風呂場に入った。
熱いシャワーを浴びた途端に激痛が全身を包み込んだ、沁みる。
あちこちについた擦り傷がみるみる赤みを増し、龍一の身体にある痛覚が悲鳴を上げた、だが龍一はそれが楽しくもあった。
痛みが楽しいのだ、痛いのは今日の成果、その痛みは働いてきた証、そう思うと痛いけど笑顔がこぼれた。
シャンプーすると泡が出ず、真っ黒な泥水となって風呂場の床に流れ出すのが見えた。『きたねぇ…なんだこれ』洗い流してシャンプーを繰り返し、3回目のシャンプーでやっと白くて綺麗な泡になった。
---------------------------------------------------
学校から帰って来た龍一が食卓につく。
テレビを見ている父親、ソファーに座っている母親。
龍一が口を開く。
『今日のバイトさ、めちゃくちゃ大変でさ』
『龍一、仕事ってものは大変なものなんだ』
『いや、そう言う事じゃなくて』
『いいか、働いてお金を貰うって事はだな…』
『うるせぇな、また始まるのかよ』
『なんだと!なんて言った今!』
『話の腰を折るなよ、大変なのはわかってるよ、俺が話したいのはそう言う事じゃないんだよ、話しをちゃんと聞いてくれよ』
『お前は社会での経験がないんだから1日くらい働いたからと言ってな』
『聞けって言ってんだろ』
いつもこうだ、龍一が口を開けばすぐに話の腰を折る、一言一言にいちいち持論を説いて来る、話が進まないのもあるし、わかり切った事を改めてさもさも説法を解くかのように言われるのが本当に嫌いだった。だから父親とは話をするのが嫌で距離を置いてしまう、父親はもともと寡黙なので余程の事が無い限り、父親である康平から話しかける事はない。時々優しい言葉をかける事もあり、距離が縮まったと感じる事もあったが、いつもこう言う事で喧嘩になり、また距離を感じる。
歩み寄りたいと言う気持ちでも無ければ仲良くなりたいとかそう言う感情ではない、ただただ普通に話をしたいだけなのにうまく行かない。
『親父さん、龍一の話し聞いてあげなさいよ』
母親が康平に声をかけるが康平は聞く耳を持たない。
『1日仕事しただけだろ?それで大変だって話しだろ?そんな話なんか聞かなくてもいい』と言い、ガンとして受け入れる気がなく、立ち上がって煙草を買いに行く始末。
龍一はとても悲しくなって、食事も半分にして部屋に戻った。
どんな仕事だったとか、こんな人と仕事したとか、そんな事を話したかっただけだったのだが、康平が話を受け入れずにすっかり気持ちが沈んでしまう。
『くそがよ』
ガッカリしたとはいえ、怒りの感情が無いわけではない。
なぜ話を聞かないのか、なぜ勝手に話を作り、なぜ勝手に怒るのか、
一方的に自分の考えをベラベラとしゃべり、反論も意見も聞かずに煙草を買いに行く、カードゲームで言えば次は俺のターンじゃないのか?言いたいこと言って立ち去るのか?なんだそれ…考えれば考える程にムカムカと腹が立って仕方がない。
いっそこの感情が怒りではなく虚無感だったらどんなに楽だったろうとさえ感じる。龍一の経験上、虚無感は眠れるが怒りの感情は鎮まるまで寝られない。
やることもないし体中が痛いし疲れているので眠りたい、だがベッドに横になり、目を閉じても瞼を上げたくなる、何か目に見えない力でこじ開けられるかのように。
しかし、数十分後には疲れが後押しして知らぬ間に眠りに堕ちた龍一。
---------------------------------------------------
午前7時。
目覚めて居間に行くと、母親だけが居た。
『おはよう』
『おはよう』
『昨日渡そうと思ってたんだけどさ…』
そう言うと、5.000円を母親に差し出した。
『ん?なに?』
『いや、居候って約束だから少ないけどまずさ…』
『5.000円貰ったって何にもならないから使いなさい』
『え?』
『5.000円貰ったってどうすんのさ』
『あ、少なすぎて足しにもならないって事?』
『入学でいくらかかったと思ってんの、5.000円ってあんた…』
『初給料だから貰って欲しかったんだけどね、喜んでくれると思ったよ』
『いらない』と言いながら手で払う動きをした。
邪魔ものを追い払うシッシッの動作、あれである。
『何が気にくわないんだよ言ってくれよ』
『早くしっかり仕事して家にまとまったお金入れてちょうだいや!』
『それが本音か…わかったよ』
立ち上がると玄関に座り込み『出かけるわ』と一言告げる龍一。
靴を履いている時にはもう涙がこぼれ落ちそうで奥歯を噛みしめた。
行先なんか決まっちゃいない、プラプラと歩き出しただけだ。
『このまま消えて無くられたらいいのになぁ…蒸発して水蒸気みたいに空にフワッと…』学校はそれとなく続けられそうな雰囲気だが、相反して家族として続けるのがとても苦しくなってきたのだった。一難去ってまた一難とは言うけれど、龍一はずっと一難ばっかりが続いている気がしていた、一難どころか難しかないとさえ。
『俺の人生って何なんだ…何なんだ?難だけに?ふふっ』
あまりのバカくささに笑みがこぼれたが、一緒に涙もこぼれ落ちた。
哀しみではなく、悔しさ。
喜んでくれると思っていた5.000円。
3.000円のはずが5.000円貰ったから渡したくなったのではない、最初から全部渡すつもりでいたのだ、が故に悔しさが込み上げる。少ないのはわかっている、だが受け取っても貰えないとは思わなかった、ありがとうって言ってくれると思っていた。母親にしてみればたかが5.000円なのだろう。『たかが5.000円か…いくらなら受け取るんだ…どんな思いして手にした5.000円だと思ってるんだ』
話しも聞いてもらえない、頑張ったお金は受け取ってもらえない。
気が付いた時は裏山に来ていた。
エロ本通り四丁目、タカヒロとよく来ていたあの場所だった。
タカヒロに別段思いがあるわけではない、去る者は追わない龍一。
良い事なんか何もなかったと思っていたが、自分の心地よい空間はちゃんと作っていたようだった、考えて見たら中学卒業まで1つも良い思い出が無いなんてことは考えにくいわけで、龍一もちょっとばかりは良い思い出があったようだ。この場合は良い思い出と言うよりは、心地よい場所と言うべきなのだけれど。
あの日の土管は無いけれど、あの土管より大きくて短い土管があり、龍一はその中に入ってマルボロを深く深く吸った。
目を閉じると途端に泣きたくなったので、目を見開いた。
目を見開くと煙草の煙が思い切り目に刺さって涙が出た。
『結局涙が出るんじゃねーかよ』
土管の中で泣きながら煙草を吸う、悔しくて悔しくて涙が止まらなかった。
『なにやってんだ俺…』
涙が止まりだしたころ、雨が降っている事に気が付いた。
地面に落ちる雨音が土管の中で反響する、なんと心地よいことか。
『これは船なんだ、川を下って海に出るんだ、そして広い世界に』
妄想、空想、それが龍一の現実逃避の手段。
現実逃避と言っても彼の妄想と空想にはいつも希望があった。
諦めなければ永遠に輝き続ける希望が。
『いてて、いてっ、ぬわっ』
服が擦れて身体中が痛いのだ、服が破れているわけでもないが、外部からの刺激と生地が擦れてできたキズなのだろう、それが身体中にできていた。
擦れて出来た傷はストレスを感じる程の嫌な痛みを感じるのだった。
もちろん打撲痕もあちこちに出来ており満身創痍と言ったところだろう。
その痣を見て、過去に受けた「いじめによる暴力」を思い出す。
奥歯を噛みしめ、つま先から這い上がって来る震えを深い深呼吸をすることで抑え付けた、閉じた目を開けるとそこには今があった、今がある事に安心すると少し口角を上げて風呂場に入った。
熱いシャワーを浴びた途端に激痛が全身を包み込んだ、沁みる。
あちこちについた擦り傷がみるみる赤みを増し、龍一の身体にある痛覚が悲鳴を上げた、だが龍一はそれが楽しくもあった。
痛みが楽しいのだ、痛いのは今日の成果、その痛みは働いてきた証、そう思うと痛いけど笑顔がこぼれた。
シャンプーすると泡が出ず、真っ黒な泥水となって風呂場の床に流れ出すのが見えた。『きたねぇ…なんだこれ』洗い流してシャンプーを繰り返し、3回目のシャンプーでやっと白くて綺麗な泡になった。
---------------------------------------------------
学校から帰って来た龍一が食卓につく。
テレビを見ている父親、ソファーに座っている母親。
龍一が口を開く。
『今日のバイトさ、めちゃくちゃ大変でさ』
『龍一、仕事ってものは大変なものなんだ』
『いや、そう言う事じゃなくて』
『いいか、働いてお金を貰うって事はだな…』
『うるせぇな、また始まるのかよ』
『なんだと!なんて言った今!』
『話の腰を折るなよ、大変なのはわかってるよ、俺が話したいのはそう言う事じゃないんだよ、話しをちゃんと聞いてくれよ』
『お前は社会での経験がないんだから1日くらい働いたからと言ってな』
『聞けって言ってんだろ』
いつもこうだ、龍一が口を開けばすぐに話の腰を折る、一言一言にいちいち持論を説いて来る、話が進まないのもあるし、わかり切った事を改めてさもさも説法を解くかのように言われるのが本当に嫌いだった。だから父親とは話をするのが嫌で距離を置いてしまう、父親はもともと寡黙なので余程の事が無い限り、父親である康平から話しかける事はない。時々優しい言葉をかける事もあり、距離が縮まったと感じる事もあったが、いつもこう言う事で喧嘩になり、また距離を感じる。
歩み寄りたいと言う気持ちでも無ければ仲良くなりたいとかそう言う感情ではない、ただただ普通に話をしたいだけなのにうまく行かない。
『親父さん、龍一の話し聞いてあげなさいよ』
母親が康平に声をかけるが康平は聞く耳を持たない。
『1日仕事しただけだろ?それで大変だって話しだろ?そんな話なんか聞かなくてもいい』と言い、ガンとして受け入れる気がなく、立ち上がって煙草を買いに行く始末。
龍一はとても悲しくなって、食事も半分にして部屋に戻った。
どんな仕事だったとか、こんな人と仕事したとか、そんな事を話したかっただけだったのだが、康平が話を受け入れずにすっかり気持ちが沈んでしまう。
『くそがよ』
ガッカリしたとはいえ、怒りの感情が無いわけではない。
なぜ話を聞かないのか、なぜ勝手に話を作り、なぜ勝手に怒るのか、
一方的に自分の考えをベラベラとしゃべり、反論も意見も聞かずに煙草を買いに行く、カードゲームで言えば次は俺のターンじゃないのか?言いたいこと言って立ち去るのか?なんだそれ…考えれば考える程にムカムカと腹が立って仕方がない。
いっそこの感情が怒りではなく虚無感だったらどんなに楽だったろうとさえ感じる。龍一の経験上、虚無感は眠れるが怒りの感情は鎮まるまで寝られない。
やることもないし体中が痛いし疲れているので眠りたい、だがベッドに横になり、目を閉じても瞼を上げたくなる、何か目に見えない力でこじ開けられるかのように。
しかし、数十分後には疲れが後押しして知らぬ間に眠りに堕ちた龍一。
---------------------------------------------------
午前7時。
目覚めて居間に行くと、母親だけが居た。
『おはよう』
『おはよう』
『昨日渡そうと思ってたんだけどさ…』
そう言うと、5.000円を母親に差し出した。
『ん?なに?』
『いや、居候って約束だから少ないけどまずさ…』
『5.000円貰ったって何にもならないから使いなさい』
『え?』
『5.000円貰ったってどうすんのさ』
『あ、少なすぎて足しにもならないって事?』
『入学でいくらかかったと思ってんの、5.000円ってあんた…』
『初給料だから貰って欲しかったんだけどね、喜んでくれると思ったよ』
『いらない』と言いながら手で払う動きをした。
邪魔ものを追い払うシッシッの動作、あれである。
『何が気にくわないんだよ言ってくれよ』
『早くしっかり仕事して家にまとまったお金入れてちょうだいや!』
『それが本音か…わかったよ』
立ち上がると玄関に座り込み『出かけるわ』と一言告げる龍一。
靴を履いている時にはもう涙がこぼれ落ちそうで奥歯を噛みしめた。
行先なんか決まっちゃいない、プラプラと歩き出しただけだ。
『このまま消えて無くられたらいいのになぁ…蒸発して水蒸気みたいに空にフワッと…』学校はそれとなく続けられそうな雰囲気だが、相反して家族として続けるのがとても苦しくなってきたのだった。一難去ってまた一難とは言うけれど、龍一はずっと一難ばっかりが続いている気がしていた、一難どころか難しかないとさえ。
『俺の人生って何なんだ…何なんだ?難だけに?ふふっ』
あまりのバカくささに笑みがこぼれたが、一緒に涙もこぼれ落ちた。
哀しみではなく、悔しさ。
喜んでくれると思っていた5.000円。
3.000円のはずが5.000円貰ったから渡したくなったのではない、最初から全部渡すつもりでいたのだ、が故に悔しさが込み上げる。少ないのはわかっている、だが受け取っても貰えないとは思わなかった、ありがとうって言ってくれると思っていた。母親にしてみればたかが5.000円なのだろう。『たかが5.000円か…いくらなら受け取るんだ…どんな思いして手にした5.000円だと思ってるんだ』
話しも聞いてもらえない、頑張ったお金は受け取ってもらえない。
気が付いた時は裏山に来ていた。
エロ本通り四丁目、タカヒロとよく来ていたあの場所だった。
タカヒロに別段思いがあるわけではない、去る者は追わない龍一。
良い事なんか何もなかったと思っていたが、自分の心地よい空間はちゃんと作っていたようだった、考えて見たら中学卒業まで1つも良い思い出が無いなんてことは考えにくいわけで、龍一もちょっとばかりは良い思い出があったようだ。この場合は良い思い出と言うよりは、心地よい場所と言うべきなのだけれど。
あの日の土管は無いけれど、あの土管より大きくて短い土管があり、龍一はその中に入ってマルボロを深く深く吸った。
目を閉じると途端に泣きたくなったので、目を見開いた。
目を見開くと煙草の煙が思い切り目に刺さって涙が出た。
『結局涙が出るんじゃねーかよ』
土管の中で泣きながら煙草を吸う、悔しくて悔しくて涙が止まらなかった。
『なにやってんだ俺…』
涙が止まりだしたころ、雨が降っている事に気が付いた。
地面に落ちる雨音が土管の中で反響する、なんと心地よいことか。
『これは船なんだ、川を下って海に出るんだ、そして広い世界に』
妄想、空想、それが龍一の現実逃避の手段。
現実逃避と言っても彼の妄想と空想にはいつも希望があった。
諦めなければ永遠に輝き続ける希望が。
1
あなたにおすすめの小説
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる