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中学校編
金獅子
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金髪リーゼント『湯中の金獅子』こと鬼塚 亮(おにづか りょう)が右手を高く上げると、仲間の9人が一気に龍一・タカヒロ・中村・花田に襲い掛かった。そもそもヤンキーではなく、ちょっと悪い程度の4人…いや、タカヒロは少しヤンキー寄りではあったが、この時代は正直『絡んだもん勝ち』みたいなところがあったので、相手が真面目だろうとヤンキーだろうと喧嘩が始まればみんな同じだった。
考えも無しに突っ込んで来る奴に対しては基本的にかわしながら打ち込むカウンターが有効である、大概は飛び蹴りや飛び膝だからかわしやすいがカウンターを取りにくいので、避けることに集中する、避けられれば相手は無防備だからやりたい放題だ。だが相手は圧倒的に人数が多いので、一番手っ取り早い『避けて後ろを取ってスリーパーホールド』は狙えない、龍一は飛び蹴りを読んで左に避け、着地に合わせて後ろから右フックを顔面に叩き込んだ、思いっきり気持ちいい程綺麗に決まった。相手の顔面からバキ!と言う木の枝を折ったような音がした。と、同時に龍一の右拳にも激痛が走った。パンチが綺麗に決まったが相手の骨と龍一の拳の骨がぶつかり、中指の拳が割れたようだった。風が吹いても痛みを感じる程激痛は持続し、痛いどころの騒ぎではなかった。次に襲い掛かってきた相手を殴るがその激痛たるや凄まじく、龍一はたまらず悲鳴を上げた。『うわぁあああああ!!!』
その叫び声を龍一の気合いの掛け声と勘違いし、タカヒロも声をあげた『うらぁあああああああああ!!!!』続くように中村も花田も『しゃおらぁあああああああ』と大声を張り上げた。士気が高まった3人と不本意だが燃え上がった重症1人。単純計算で1人3人潰せば残りは金獅子なのだが、そう簡単にはいかない。金獅子に付いているくらいなので雑魚レベルではない、番格がわざわざ会いに来るくらいだ、どこかの地方の喧嘩自慢であることは間違いない。龍一はそれを読んでいた。
『鬼塚ぁ!こいつらボッコボコにしていいんだろ?』
相手の1人が金獅子に言葉を発しているうちに龍一が脇腹に得意のミドルキックを食らわせる、肋骨を抉り上げるように蹴る独特のミドルキックは一発でそのヤンキーをうずくまらせた、その顔面目掛けて中村が膝を入れぶっ倒す!その中村に飛び蹴りを入れるヤンキー、吹っ飛ぶ中村、着地したヤンキーの水月に重い花田の発勁が決まる。転んだ中村に数人が蹴りを入れた、そこにヒップアタックで突っ込んで蹴散らしたのはタカヒロだった、タカヒロが中村を起こしている間に龍一と花田が蹴散らされたヤンキーに追撃を入れる。顔面、脇腹、所かまわず蹴り上げた。4人対9人の割には善戦している戦況だった。
ガツン!
タカヒロの頭を広場に置いてあった角材で殴ったヤンキー。『あ…』と一言いうとタカヒロは地面にドサリと倒れた。舞い上がる土埃で受け身を取らずに倒れたことがわかった。もう一度角材を振り上げたヤンキーに対し、タックルを仕掛けたのは中村だった。『離せこの野郎!』周りが見えていないその角材ヤンキーに走り寄って右のローキックを入れると中村がその勢いで押し倒し、顔面に手刀を落して失神させたが、その中村の後ろ頭を蹴り飛ばす別のヤンキー。たまらず中村は後頭部を抑えてうずくまる。その蹴った足とは別の軸足に横からサイドキックを入れた龍一。蹴られたヤンキーの足はあらぬ方向に曲がった。転げまわるヤンキーの顔面を蹴り上げる龍一、どうやらスイッチが入ったようだ。狂ったように戦場を走り回り、次々と蹴る殴るを繰り返した、その姿に中村が奮起し、花田もタカヒロの側で構え直し、集まるヤンキーをなぎ倒して行った。
しかし圧倒的な強さの違いがあるわけではないので、人数の違いによるハンデは時間と共に大きく差が出て来た。龍一は割れた拳がクリームパンの様に晴れ上がり、その痛さからくる苦痛も加えて疲労困憊だった。もはやパンチとは思えないへろへろのパンチで殴り合う、立っているのは龍一と花田だけだった。そんな花田も顔面血まみれで鼻からはボタボタと血が滴り落ちていた。
『なんだよ、俺とやる前にコタコタじゃねーの』
文字通り高みの見物をしていた金獅子がヘラヘラ笑いながら積み上げられた資材の上から飛び降りた。
『大したボスじゃねーの、兵隊にやらせて弱らせたところに登場ってか?』
花田が鼻血を腕で拭いながら金獅子を睨みつける。
『龍一、俺が行く』
どう見てもボロボロな花田だが、目は死んでいなかった。その覚悟を感じ取り、龍一は黙って頷いた。
『うらぁああああ!』叫びながら構えを取り、金獅子が射程範囲に入るのを待つ花田、そこに躊躇なくズカズカと歩いて来る金獅子。入った!とばかりに花田が渾身の突きを見舞う!金獅子がその右の突きを上半身だけで右にかわし、花田の左わき腹に右のボディアッパーをめり込ませた。膝から崩れ落ちる花田。
『さて、一番派手に踊ったお前の番だ、来いよ。』
龍一に対して指を差し、挑発する金獅子。いつもならボキボキと指を鳴らすのが龍一のスタイルなのだが、今回ばかりは拳が割れていてそれは出来ない。龍一は左構えを取った。
『ふん、余程右手が痛いんだな、でも手は抜かねぇよ?』
『うるせぇんだよ』
『クソが!』そう言うと一気に間合いを詰めて来た金獅子。先ほどの上半身の動きでボクシング経験者だと見抜いた龍一は、相手の得意な右が打ちにくいよう、左構えに変えたのだった。左ジャブが2回飛んでくるが、前に出した右手で流す龍一。そのたびに激痛が走ったが、ここで負けるわけにはいかない。金獅子が上半身を一瞬捻り、右ボディフックが飛んでくる。龍一は左手をひっかけるようにそのフックを流し、右の突きを見舞ったが金獅子の左返しの左フックと拳が衝突した。
ガツン!
あまりの痛さに龍一は4歩ほど後ろにトトトと下がり、尻もちを付いた。
『なんだよ、拳割れてるんじゃねーの?俺も右手使わないでやろうか?はっはっはっはっは、だっせぇ!はっはっは』
『龍一・・・龍一・・・』
蹲っていた中村がそのままの姿勢で声をかける。
『ここまで誘い出せ、とっ捕まえるから。』
『わかった』
龍一は一人じゃない事に気が付き、勇気が湧いた。
この理不尽な戦いに希望の光が差し込んだのだった。
『金獅子だかタンポポだか知らねぇけどよ、やってやるから来いよ』
龍一が左構えを取ってニヤリと笑った。
『ふん、雑魚が』
つかつかと歩いて来る金獅子に見え見えの右ジャブを見舞う、案の定簡単に上半身だけでスルリとかわされ、右ボディアッパーが飛んでくる。龍一はとっさに左膝を立てて左肘を下ろすと、金獅子の左ボディアッパーをガッチリ防いだ。『ワンパターンなんだよ!』と言うと龍一はそのままヘッドロックをして足を前に出して全体重を金獅子の首にかけると、地面に顔面を打ち付けるように金獅子が倒れた。龍一はヘッドロックを外さずギリギリと締め上げる。
『待ってたぜ!よくやった龍一!』
そう叫びながら起き上がった中村が金獅子の背中にエルボードロップを落した。『がふっ!』と叫んだ金獅子。龍一はヘッドロックをしたまま金獅子の顔面を左の拳でガツガツと殴る、龍一の左拳は血に染まった。恐らく鼻血が出ているのだろう、それでも構わず殴り続ける龍一。金獅子の背中をメッタメタに殴った中村が、羽交い締めにするようにして金獅子を起き上がらせると、フラフラと立ち上がったタカヒロが振りかぶった凄まじいビンタを一発金獅子に入れた。花田も起き上がったが、冷静に状況を判断し『落ちてるよそいつ、もういいんじゃね?』と言うと、中村が羽交い締めを外した。
ドサ
金獅子は膝から身体を落し、前にそのまま倒れ込んだ。
『帰ろうぜ・・・』
タカヒロの一声に、3人は『そうだな・・・』と言うと、足を引きずり、ヨタヨタしながら4人で肩を組んで無言で空港に向かった。
考えも無しに突っ込んで来る奴に対しては基本的にかわしながら打ち込むカウンターが有効である、大概は飛び蹴りや飛び膝だからかわしやすいがカウンターを取りにくいので、避けることに集中する、避けられれば相手は無防備だからやりたい放題だ。だが相手は圧倒的に人数が多いので、一番手っ取り早い『避けて後ろを取ってスリーパーホールド』は狙えない、龍一は飛び蹴りを読んで左に避け、着地に合わせて後ろから右フックを顔面に叩き込んだ、思いっきり気持ちいい程綺麗に決まった。相手の顔面からバキ!と言う木の枝を折ったような音がした。と、同時に龍一の右拳にも激痛が走った。パンチが綺麗に決まったが相手の骨と龍一の拳の骨がぶつかり、中指の拳が割れたようだった。風が吹いても痛みを感じる程激痛は持続し、痛いどころの騒ぎではなかった。次に襲い掛かってきた相手を殴るがその激痛たるや凄まじく、龍一はたまらず悲鳴を上げた。『うわぁあああああ!!!』
その叫び声を龍一の気合いの掛け声と勘違いし、タカヒロも声をあげた『うらぁあああああああああ!!!!』続くように中村も花田も『しゃおらぁあああああああ』と大声を張り上げた。士気が高まった3人と不本意だが燃え上がった重症1人。単純計算で1人3人潰せば残りは金獅子なのだが、そう簡単にはいかない。金獅子に付いているくらいなので雑魚レベルではない、番格がわざわざ会いに来るくらいだ、どこかの地方の喧嘩自慢であることは間違いない。龍一はそれを読んでいた。
『鬼塚ぁ!こいつらボッコボコにしていいんだろ?』
相手の1人が金獅子に言葉を発しているうちに龍一が脇腹に得意のミドルキックを食らわせる、肋骨を抉り上げるように蹴る独特のミドルキックは一発でそのヤンキーをうずくまらせた、その顔面目掛けて中村が膝を入れぶっ倒す!その中村に飛び蹴りを入れるヤンキー、吹っ飛ぶ中村、着地したヤンキーの水月に重い花田の発勁が決まる。転んだ中村に数人が蹴りを入れた、そこにヒップアタックで突っ込んで蹴散らしたのはタカヒロだった、タカヒロが中村を起こしている間に龍一と花田が蹴散らされたヤンキーに追撃を入れる。顔面、脇腹、所かまわず蹴り上げた。4人対9人の割には善戦している戦況だった。
ガツン!
タカヒロの頭を広場に置いてあった角材で殴ったヤンキー。『あ…』と一言いうとタカヒロは地面にドサリと倒れた。舞い上がる土埃で受け身を取らずに倒れたことがわかった。もう一度角材を振り上げたヤンキーに対し、タックルを仕掛けたのは中村だった。『離せこの野郎!』周りが見えていないその角材ヤンキーに走り寄って右のローキックを入れると中村がその勢いで押し倒し、顔面に手刀を落して失神させたが、その中村の後ろ頭を蹴り飛ばす別のヤンキー。たまらず中村は後頭部を抑えてうずくまる。その蹴った足とは別の軸足に横からサイドキックを入れた龍一。蹴られたヤンキーの足はあらぬ方向に曲がった。転げまわるヤンキーの顔面を蹴り上げる龍一、どうやらスイッチが入ったようだ。狂ったように戦場を走り回り、次々と蹴る殴るを繰り返した、その姿に中村が奮起し、花田もタカヒロの側で構え直し、集まるヤンキーをなぎ倒して行った。
しかし圧倒的な強さの違いがあるわけではないので、人数の違いによるハンデは時間と共に大きく差が出て来た。龍一は割れた拳がクリームパンの様に晴れ上がり、その痛さからくる苦痛も加えて疲労困憊だった。もはやパンチとは思えないへろへろのパンチで殴り合う、立っているのは龍一と花田だけだった。そんな花田も顔面血まみれで鼻からはボタボタと血が滴り落ちていた。
『なんだよ、俺とやる前にコタコタじゃねーの』
文字通り高みの見物をしていた金獅子がヘラヘラ笑いながら積み上げられた資材の上から飛び降りた。
『大したボスじゃねーの、兵隊にやらせて弱らせたところに登場ってか?』
花田が鼻血を腕で拭いながら金獅子を睨みつける。
『龍一、俺が行く』
どう見てもボロボロな花田だが、目は死んでいなかった。その覚悟を感じ取り、龍一は黙って頷いた。
『うらぁああああ!』叫びながら構えを取り、金獅子が射程範囲に入るのを待つ花田、そこに躊躇なくズカズカと歩いて来る金獅子。入った!とばかりに花田が渾身の突きを見舞う!金獅子がその右の突きを上半身だけで右にかわし、花田の左わき腹に右のボディアッパーをめり込ませた。膝から崩れ落ちる花田。
『さて、一番派手に踊ったお前の番だ、来いよ。』
龍一に対して指を差し、挑発する金獅子。いつもならボキボキと指を鳴らすのが龍一のスタイルなのだが、今回ばかりは拳が割れていてそれは出来ない。龍一は左構えを取った。
『ふん、余程右手が痛いんだな、でも手は抜かねぇよ?』
『うるせぇんだよ』
『クソが!』そう言うと一気に間合いを詰めて来た金獅子。先ほどの上半身の動きでボクシング経験者だと見抜いた龍一は、相手の得意な右が打ちにくいよう、左構えに変えたのだった。左ジャブが2回飛んでくるが、前に出した右手で流す龍一。そのたびに激痛が走ったが、ここで負けるわけにはいかない。金獅子が上半身を一瞬捻り、右ボディフックが飛んでくる。龍一は左手をひっかけるようにそのフックを流し、右の突きを見舞ったが金獅子の左返しの左フックと拳が衝突した。
ガツン!
あまりの痛さに龍一は4歩ほど後ろにトトトと下がり、尻もちを付いた。
『なんだよ、拳割れてるんじゃねーの?俺も右手使わないでやろうか?はっはっはっはっは、だっせぇ!はっはっは』
『龍一・・・龍一・・・』
蹲っていた中村がそのままの姿勢で声をかける。
『ここまで誘い出せ、とっ捕まえるから。』
『わかった』
龍一は一人じゃない事に気が付き、勇気が湧いた。
この理不尽な戦いに希望の光が差し込んだのだった。
『金獅子だかタンポポだか知らねぇけどよ、やってやるから来いよ』
龍一が左構えを取ってニヤリと笑った。
『ふん、雑魚が』
つかつかと歩いて来る金獅子に見え見えの右ジャブを見舞う、案の定簡単に上半身だけでスルリとかわされ、右ボディアッパーが飛んでくる。龍一はとっさに左膝を立てて左肘を下ろすと、金獅子の左ボディアッパーをガッチリ防いだ。『ワンパターンなんだよ!』と言うと龍一はそのままヘッドロックをして足を前に出して全体重を金獅子の首にかけると、地面に顔面を打ち付けるように金獅子が倒れた。龍一はヘッドロックを外さずギリギリと締め上げる。
『待ってたぜ!よくやった龍一!』
そう叫びながら起き上がった中村が金獅子の背中にエルボードロップを落した。『がふっ!』と叫んだ金獅子。龍一はヘッドロックをしたまま金獅子の顔面を左の拳でガツガツと殴る、龍一の左拳は血に染まった。恐らく鼻血が出ているのだろう、それでも構わず殴り続ける龍一。金獅子の背中をメッタメタに殴った中村が、羽交い締めにするようにして金獅子を起き上がらせると、フラフラと立ち上がったタカヒロが振りかぶった凄まじいビンタを一発金獅子に入れた。花田も起き上がったが、冷静に状況を判断し『落ちてるよそいつ、もういいんじゃね?』と言うと、中村が羽交い締めを外した。
ドサ
金獅子は膝から身体を落し、前にそのまま倒れ込んだ。
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